ご案内

私は10数名のヴォイストレーナーとともに、ヴォイストレーナーにも指導しているため、内外のヴォイストレーナーのアドバイザーやヴォイトレをしている人のセカンドオピニオンもたくさんやってきました。ヴォイストレーナー、指導者、専門家以外にも「ヴォイストレーナーの選び方」などに関する質問が多くなりました。以下を参考にしてください。

 

「ヴォイストレーナーの選び方要項」 http://www.bvt.co.jp/new/voicetrainer/

 

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「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.22 

〇身体から入る

 所詮、ヴォーカリストは、歌えればよいのです。声を出すのに、重量上げの選手ほどの筋力が必要なわけではありません。しかし声を出すことに関して、もっとパワフルかつ繊細にコントロールできる技術が必要なのです。それは表面だけをまねただけの弱々しい声の出し方からはできません。プロのピアニストの繊細なタッチには、私たちは到底、まねのできない強く確実にヒットさせる指の技術と力があるのです。小指の鍵盤を叩く強さ一つとっても違うのです。

 そうなると、まず、一流のヴォーカリストと比べて、中途半端だと思う声は、使えないからだめだという厳しい判断を自分の声に対して行うことです。一声出して明らかに差がついているなら、いくら一曲を何度も繰り返して歌っても同じレベルのことはできないからです。まずは、一声のシャウトの差を縮めること、そのコツやタイミングをつかむためにはパワーの差を縮めることです。つまり、身体にパワーを貯えていくこと、声に対して身体を使えるようにしていくところから始めることです。

〇身体と声との結びつきに深い息

 声に対して、身体をうまく使うための秘訣は深い息にあります。一流のヴォーカリストは、必ず、身体から深いブレスができる身体をもっています。息が身体の底まで一瞬に入り、出すときに自在にコントロールできます。声はその上にのって出ています。そういう身体づくりを少しでも早くするのが、ヴォーカルのためのヴォイストレーニングの第一歩です。チェックポイントは、次のようなことです。

1.腹式呼吸ができる、お腹の背や脇が動く

2.胸や背骨に声がひびく

3.吐いた息が身体に結びついている

4.声が太く、音色が変わらない

5.胸のまんなかと眉間(これは、最初は意識しなくてもよいです)に声が集まる

〇どういうヴォーカリストを参考にするか

 ヴォーカリストには、いろんなタイプがいます。オリジナリティ、個性だけを売りものにしている人もいますが、声に関しては、次のようなヴォーカリストを一度、お聞きすることをお勧めします(ただ、日本人は曲による出来、不出来が多いので、ここに掲げた曲を参考にしてください)。

日本人

1.さよならをもう一度    尾崎紀世彦

2.霧の摩周湖        布施明

3.愛は限りなく          村上進(カンツォーネ)

4.六月の詩             カルメン・マキ

5.愛のメモリー          松崎しげる

6.影を慕いて            森進一

7.川の流れのように     美空ひばり

8.あんたのバラード     世良正則

9.恋の季節              ピンキーとキラーズ

10.二人でお酒を          梓みちよ

外国人(各国の偉大なるヴォーカリスト)

 

1.シャルル・アズナブール  (シャンソン 男性)

 

2.ミルバ                  (カンツォーネ 女性)

 

3.エディット・ピアフ      (シャンソン 女性)

 

4.ジャニス・ジョプリン    (ロック 女性)

 

5.クラウディオ・ビルラ    (カンツォーネ 男性)

 

6.アマリア・ロドリゲス    (ファド 女性)

 

7.マヘリア・ジャクソン    (ゴスペル 女性)

 

8.メルセデス・ソーサ      (フォルクローレ  女性)

 

9.ビリー・ホリデイ     (ジャズ 女性)

 

10.ルイ・アームストロング       (ジャズ 男性)

 

11.エラ・フィッツジェラルド(ジャズ 女性)

 

12.パティ・ラベル          (ゴスペル 女性)

 

13.エンゲルト・フンパーディンク(ポップス 男性)

 

 

 日本人ヴォーカリストについては、多くの場合、声そのものは世界のレベルに達していません。特に、最近のヴォーカリストは、くせをつけて歌っているため、見本にすると危険でさえあります。トレーニングには正しい見本(基本のある人)をとる方がよいというだけで、ヴォーカリストとしての評価は、まったく別に考えてください。

 

 

〇外国人ヴォーカリストが日本語で歌ったものを聞く

 

 

 次のように外国人ヴォーカリストが日本語で歌った歌を聞くと、その深さや技量、音楽性がよくわかります。

 

1.夜明けの歌、愛の別れ  (クラウディオ・ビルラ)

 

2.ウナセラディ東京     (ミルバ)

 

3.アドロ                (グラシェラ・スサーナ)

 

 さらに、日本のヴォーカリストの歌った歌を外国人ヴォーカリストまたはグループが歌ったもの(カバー)を聞いてみるとよいでしょう。たとえば「上を向いて歩こう」(坂本九)は、「スキヤキ」として全世界でカバーされています。

 

 

〇オリジナリティの発見

 

 

 同じ歌をいろんなヴォーカリストが歌ったものを聞いて、自分の好みを知ってください。

 

1.聞くと気持ちのよい歌

 

2.このように歌いたいと思う歌

 

3.声そのものが好きな人(ヴォーカリスト、その他)

 

 たとえば、スタンダードナンバーのもの、クリスマスソングなど、同じ曲を違うヴォーカリストが歌っているのを全て聞き比べてみましょう。そして、その曲をあなたが歌ったときに、果たして〇番目としてふさわしい歌い方ができているかどうかがわかるはずです。

 

 たとえば、「SILENT NIGHT(聖しこの夜)」をマヘリア・ジャクソン、TAKE6、マライア・キャリー、グラディス・ナイト&ザ・ヒップス、「WHITE CHRISTMAS」をオーティス・レディング、エラ・フィッツジェラルド、グロリア・エステファン、マイケル・ボルトンで聞き比べてみましょう。ピアフの没後30周年として、「愛の讃歌」を多くのヴォーカリストがカバーしたものなども出ています。

 

 

〇声のバランス

 

 

 声は声帯で出るのですが、かなり複雑な筋肉の使い方と共鳴のさせ方で支えられています。同じ「ア」でも、たくさんの出し方がありましたね。ピッチについても同じです。これを自分自身の最高の声、ベストの声にしていくのです。

 

 このときに声を統一していくことと声に表情をつけていくことが、必ずしも一致しないことがあります。しかし、声のコントロールを最初は優先してください。

 

 いくら歌っていても、まったく歌のレッスンになっていない人が少なくありません。発声では、声を統一していき、歌では、その音に要求される音声的イメージの要素を満たさなくてはなりません。これを同時にできるのは、かなりの技術が必要だからです。もちろん、ヴォイストレーニングをしながら、音色のイメージについて深く学んでいくことは忘れてはなりません。

 

 

 次のことばで声をできるだけ長く出してください。

 

1.「アーーーー」

 

2.「エーーーー」

 

3.「イーーーー」

 

4.「オーーーー」

 

5.「ウーーーー」

 

 出したときから、止めるまで、完全にコントロールできたかどうか、チェックしましょう。

 

 

〇できるまでにできないことをやると上達しない

 

 

 発声習得の方法については、口のなかや喉の開け方をどのようにしようと、その日に解決できるものではありません。その日に解決できるなら、すでにできるのです。歌など単純ですから、すぐに歌えるのです。それができないのは基本ができていないからです。それを一日でやろうなどと思うから、間違うのです。そこに気をつけてください。

 

 たとえば、高い声を思いっきり、口蓋の上の方にあてて出すようなトレーニングをやっている人がほとんどです。判断力のない初心者にとって、それはいかにも早く上達しそうなトレーニングであり、いかにもノウハウのように思えます。確かに何度か繰り返すと、そのうち高い音が出るようになる人もいるのです。

 

 しかし、多くの場合、それは、ただ、悪いくせにさらに悪いくせをつけたのにすぎません。その声は、本当の意味では、まったく安定せず、メリハリをつけられず本当に表現するに使うには、ほど遠いのです。いつまでも使いものにならないのです。ピアノでいうと、ひじも指もふしぜんに使って、高い音を弾いたというだけです。こんなことをすれば、正しく時間をかけて、習得すればいずれ出せるようになった声の可能性まで、殺すことになるのです。届いたらそのうち表現できるに足る力強さが伴うわけではありません。むしろ逆だということは、日本の多くのタレントヴォーカリストを聞けばわかることです。

 

 

 低い音から高い音まで、どのくらい同じ音色(太さ)で統一できるかチェックしましょう。

 

 半音ずつ、一番自分の出る最も低い音から上げていきます。次のことばで言い切ってみましょう。言い切れないところは無理しないように。ひびく位置は変えないようにします。

 

1.ハイ

 

2.アオイ

 

3.ラララ

 

4.アー

 

5.ララー

 

 

〇できるまでは基本を繰り返し、待つしかない

 

 

 発声をしっかりと固めないと、一度獲得できたはずの音域が、あるとき、出せないなどということが起きます。これは、未熟だからでなく、最初から間違って獲得した音域だからです。ヴォーカリストにとって、こんなことが起こり得るなら、なんと恐いことでしょうか。もし、ステージだったら。歌はやり直しがききません。そんな不安定な声では、仮に偶然にうまく出ても、いつまでも自信をもてないでしょう。すでにステージに出るまえに負けています。何よりも困ったことはそのため、いつまでも身につかないことです。

 

 多くの人はスクールなどでレッスンを受け、1オクターブ半から2オクターブ出るといっていますが、私のところにくると、半オクターブどころか、1音も表現するに足らない場合がほとんどです。こんな誤解が生じるのは、理由があります。多くの場合、高い音が出ている人は、眉間にひびきがあたっていると感じます。そこで、眉間や鼻の上、頬骨などにひびきをあてるというトレーニングをしています。これは方法と結果を混同しています。それは、耳がよければ、出ている声そのものを厳密に判断すれば、すぐわかるはずです。本当に通用する声(ハイトーン)なのかどうかと問えばよいのです。この種の原因と結果を混同した間違いは、とても多いのです(これについては拙書「ヴォイストレーニングここがポイント」(音楽之友社)に詳しい)。そのため、発声が正しく身につかなくなります。

 

 つまり、ホームランが打てて初めて、それがベストのフォームだといえるわけです。それなのにフォームがしっかりとできてもいないのに打席でバットにボールがあたった、かすったと、一喜一憂しているのと同じくらい愚かなことなのです。

 

 

 高音域の発声をチェックしましょう。

 

 最も高い音で次のことばの読みとフレーズをやってみてください。それぞれ続けて、10回やって、同じようにコントロールできているかをチェックしましょう。

 

1.アエイオウ

 

2.アーエーイーオーウ

 

3.ひのひかりに(タンタンタータタタン)

 

メロディをつけます

 

4.ごらんなつのひの(レミミミファミファ)

 

5.とおくはなれかけた(ドレレレレレレードド)

 

「最強トレーニング」 Vol.2

〇パブリックな声と日常の声との違い

 

発声というのは、決して特別のものではありません。あなたも生活や仕事で、一日たりとも誰とも話さない日はないでしょう。家族や友人と話すのに、いちいち緊張したりあがったりしませんね。声を発するのに、発声を考えることもないでしょう。

 しかし、初対面の人や偉い人と話すときには、ドキドキしたりあがったりします。なぜでしょうか。

それでも、その相手と親しくなったら、そういうこともなくなるでしょう。すると、うまく話せないのは、シチュエーションの問題が大きいということがわかります。

 つまり、人前で話すパブリックなスピーキングにおいても、いつものフレンドリーで自然な状態がキープできれば、さして話すのは困難ではないということです。

 多くの人は、話すために、ではなく、違う人と違う場に立って何かすることに対して、声が緊張し、うまくいかなくなるのです。人前で声を使うとき、私たちはパブリックに話すということと平常心をもって場に立つということが同時に求められます。

ところが、私たち日本人の大半は、パブリックなスピーキングのトレーニングなどの経験は少なく、これが大変なことになるのです。スポーツや歌では、決して本番ではあがらない人まで、話すと言葉がしどろもどろになるのも、よく目にします。とても不自然な状態に陥ってしまうのです。

 

〇慣れていくことで解決できる

 

 話し方教室でのトレーニングなどでは、話の内容づくりよりも、人前に立って話すことに慣れる実習を重視しています。日頃の力を普通に発揮できたら、ともかくも半分の問題は解決します。自然に話すレベルまでは、誰もが到達できるのです。

 しかし、人前では、友だちに話すようにしても通用しません。ここで、私たち日本人の身内意識の構造、つまり見知らぬ人、はじめての人といった外側の人でなく、よく知っている人、同じところで一緒にいる人といった内の側の人としか話してきていないこと、つまり、先ほど述べたパブリックスピーキングの経験不足が大きく影響するのです。

 たとえば、昭和の頃の夫婦では「おい、メシ、フロ」で伝わるのが、日常生活でした。

それでは、「〇〇さん、今、戻ってきました。あすは〇〇時に出ます」「今日は〇〇が食べたいが、君はどうだ。それでは〇〇にしよう」と、すべてにおいて、対話してコミュニケーションをとりあっている外国人のようにはいかないのです。

 

〇声が必要になってきた

 

どこの国でも、自分の考え、意志、意見をはっきりともち、それを口頭で表現し、説得していかなくては、うまく生きていけないのが人間の社会です。黙っていたら、無視されるどころか敵意さえもたれます。ところが、これまで私たち日本人は、あまり、ものをはっきりといって伝えなくても済んでいました。むしろ、あまり語らず、察することが、一人前の社会人の条件でした。

しかし、同質の人で成り立っていた日本村も、変わりました。以前にまして、話し方や声が重要視されるようになってきたのです。

 

〇声を出すのは楽しいこと

 

「話すとドキドキする、声が緊張する、それが楽しい」などと思える人は、日本人にはほとんどいないでしょう。そのことが、生きている証しだといえるのなら、人前で話すことも随分と楽しくできるに違いありません。

 でも、声を出すことは、嫌なことでしょうか。

カラオケなどで声を出すと、スッキリします。一日中黙っていると、ストレスのたまる人もいるでしょう。つまり、多くの人にとって、声を出すことは楽しいことなのです。

このことをどこか念頭に入れておいてください。それが、一番、声がよくなる前提だからです。

 

〇リラックスした声を使おう

 

さて、ここでは、話し方や話の内容よりも、親しい人と話をしているときの自分のリラックスした自分の状態を確認しておきましょう。そのときでも、声や話し方を意識するやいなや、ぎくしゃくしたり、うまく口がまわらなくなったりして、不自然になるものです。トレーニングでは、そこに気をつけなくてはならないからです。

 親しい人との話は、おたがいがわかりあっているから、話の内容や意味にさして大きなウエイトはありません。むしろ、声の調子やトーンなどによって、無意識の内にいいたいことが伝わっています。それは意識したとたん、くずれます。

そして、あなたが思っているほど、きちんとした発音やしっかりとした声では、そもそも伝わっていないものなのです。

 

〇話せる人になろう

 

 パブリックなスピーキングでは、見知らぬ他の人に自分自身をアピールすることになります。そのためには、声を適確に使った上で、自分の考えや話の内容を聞いてもらうことになります。このときには、言葉(内容)以外の要素が、とても大切なのです。

ちなみに、これらをうまく使って働きかけているのが、話せる人です。

日本語では、話せる人というのは、わかる人という意味で使います。つまり、話し上手でなく聞き上手、それだけ話すことの力が問われないできたという証拠なのです。

今日から、日常の言葉やコミュニケーションの声に関心をもちましょう。

 

1.リラックスしているのは、いつでしょうか

2.そのときの声の感じはどうでしょうか

3.その感じの声を人前でしゃべっていると想定して、出してみましょう

「情報と表現」 No.404

現実は、いつも変化していて、

私たち自身、二度と同じ状態にならないのです。

 

この情報化社会では、「表現」が優先されます。

変化していく人間の方が、実在感を持てなくなってくるのです。

 

人間も世界も生きているものです。

知識万能主義で考えると、自分自身が矮小化していきます。

つまり、自分が生きてきた年月、経験が、自分の糧になっていかないのです。

 

知識は外にあります。

情報として扱うことができていても、

本当の意味では、自分自身で考えてはいないのです。

 

それでは、どうすればよいのか。

表現を知識や情報と切り離すことです。

自分の内にあるものをとり出すところでの

血肉のついた身体に基づく表現をするのです。

つまり、言語でなく、肉声で問うということです。

閑話休題 Vol.96「花道」(1)

草月流創始者 勅使河原蒼風

 

〇父と育ち

 

勅使河原蒼風は、1900年、勅使河原和風の長男として生まれました。父はそばで遊んでいる蒼風に、ただ真似事としてではなく、そこから生け花を好きにさせる、あるいは上手にさせようとする工夫をして仕向けました。そのため蒼風は花を扱うことを徐々に面白く思うようになったのです。

父は、必ず来客に我が子の生けた花を自慢げに話しました。皆から褒められているうちに蒼風も張り合いが出てきたのでしょう。小学校に行くようになっても、自分で花をとってきて父に見せて喜ばせようと頑張っていました。この幼い日々が蒼風の生涯を貫く心のエネルギーとなりました。

15歳で父の代稽古を務め子先生と呼ばれた蒼風は、父から学ぶべきところを全て習得した後、生け花についての考え方を異にするようになったのです。

「生け花は定められた形にいけるのではなく、作者の個性や自由な精神を表現すべきだ」という蒼風は、26歳のとき、父に勘当され妻とともに家を出たのです。

蒼風の人気は教室でも定着しており、その日からでもやっていけましたが誰にも居所を教えなかったのです。

 

〇独立内職時代

 

蒼風は、青山高樹町に家を借り「投入花盛花教授草月流」と看板を掲げ、新しく草月流を興しましたが、約1年間、誰も訪れませんでした。

蒼風は、研究に専念しました。封筒に肉筆で蘭や梅一枝を描くといった内職を始めました。彫刻が好きで板に文字を彫ったりしているうち、表札や看板を彫る仕事が来るようになったのです。

 

〇度胸―いけ花屋開業

 

花は花屋の残り花を、器は我楽多屋の店頭の赤錆びた焼き物の窯と支那料理店の前に転がっていた老酒の瓶を手に入れました。昼は看板彫りのアルバイト、夜は明けるのも知らず、その器に名作、名案を創造しては興奮する毎日が続きました。

蒼風は、新鮮な花やいろいろな容器、場所を使って、実際に人に見せることを通しての研究をやる必要を感じていました。そこで、次に人の花で研究する方法を考えだしたのです。料理店に行って頼んでいけさせてもらうのです。花は買ってもらいましたが、いけ賃はもらいませんでした。

古くからの流儀がよいと誰もが思っているので、「自分が作った草月流です。家元です」とは言えません。いけた作品だけが勝負です。「なかなかいいから、また来てちょうだい」となるのです。そうやっているうちに、なんとか板前さんとかおかみさんなどを相手に、花屋業から先生の方へ向きがつき始めました。

 

〇風体―師匠らしく

 

「どうもお花の師匠らしくないわね。見た形のことなんでしょうね。柔道家と間違えられたわ」蒼風の妻が言いました。若いし二十貫目余りある蒼風は、どうにもならぬままにも、渋い袋を下げたり無地の羽織をまとったりして、お花の先生らしくしました。

そうしているうちに近くの良家のお嬢さんが入門し、本当のお弟子を得たのです。弟子が弟子を呼び、稽古日がそれらしくなっていきました。蒼風は、「弟子は月謝を払って自分に勉強させているのだ」と決して手を抜きませんでした。

場所も変え、看板に「瓶花研究所」と彫りました。誰も知らぬ草月流より、より近代的で効果があると思ったのです。

 

〇実力―チャンスを逃さず

 

創流の翌年、ショーウインドーを飾りに行っていた千疋屋の勧めで、銀座、千疋屋二階で第一回草月流花展を開催しました。現代人の感覚、生活感のある生け花に新しい入門者が集まりました。

以後の蒼風は、持ち前のアイディアと行動力、それに絶対の信念を持って、固定観念の強い華道界で既成概念をはるかに超えるスケールで活躍していきます。

1932年の神田の如水会館では、初めて“入場料”をとる生け花展を開催しました。立派な展覧会なら、音楽や絵と同様、入場料を取るべきだと思ったのです。さらに、花のための会場構成を試みたり、花のシンフォニーを表現したくて7つの大小作品を組み合わせた大作「総合華」を飾ったり、当時としては大胆にも、音楽、照明による演出を試みました。これは鑑賞者の気持ちを統一するのと雑音を消す工夫です。当日は自ら講演し、草月流の理解にひと役買いました。生け花の作品の背景に自分の描いた絵を使うなど、いくつもの画期的なアイディアを生かしていたのです。

家元からの奥義・秘伝として口伝されるものを図解までして一般公開していた蒼風への華道人からの非難は強いものでした。しかし、前売りの入場券は完売、大成功を収めました。蒼風は演出の才にも長けていたのです。

「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.21

〇オリジナリティと共通ベース

 トレーニングを積みながら、自分の感覚というのを見つけ、鋭くしていくことを忘れないことです。声の判断基準をつけていくことがトレーニングの本質です。

いろいろなヴォーカリスト聞いて、その声を比べてみましょう。ある時期、一人のヴォーカリストにハマるのも悪くはありません。しかし、いつまでもそこから抜け出せなくては、よくありません。問われるのは、あなたのオリジナリティとしての表現だからです。

私は、課題曲を歌うときに、そのヴォーカリスト(創唱者)の感じが出たらよくないという基準で評価しています。

 オリジナリティとは、その人の心の奥、身体の底から出てくるものです。身体にしみつき、それが表現として出てくるには、それなりにたくさんのことを、ためこんでおかなくては、いけないはずです。

といって、奇をてらって、人の共感できぬものであってはよくありません。人の心を動かすのですから、人と違うなかでも必ず踏まえなくてはいけない共通のベースがあるのです。そこをなくしては、人は奇異に思うだけです。

 ヴォーカリストには、いろいろなタイプがあります。しかし、トレーニングのために聞くのなら、発声面から徹底的に分析してみるのもよいでしょう。

〇身体から声をだすために、ドラマチックな歌から入る

 同じ身体をもつヴォーカリストでも、歌のねらい、歌い方やスタイル、場によって全力で歌ったり、口先にひびかせたり、いろんな歌い方をしているものです。声の使い方は、ヴォーカリストによっても、曲によっても違います。ですから、それを決める上でも、自分にとっての最もよいヴォイストレーナーに自分がならなくてはいけないのです。 

この能力は、そのまま他のヴォーカリストの歌を聞いて、そこから地力(基本の力)を見抜く力にもなります。有能なスポーツトレーナーや一流の選手は、他の選手の調子やフォームの状態、そのときの身体の動き、長所や欠点を、自分の身体におきかえて捉えます。身体と耳ができるということは、そういうことです。

 最初は、一流のヴォーカリストが、できるだけ大きなフレーズで歌いあげているところを何度も聞いて、そのイメージを叩き込み、まねていくとよいでしょう。

 センスよく小ぎれいに歌うのも大切です。歌は一つの形にまとめていかなくてはなりません。人前で歌うためには、ある程度は見せることを意識して、そのようにしなくてはなりません。しかし、最初に小さく器をつくってしまっては、あとで大きくできません。

 ここのヴォイストレーニングでは、歌を小手先でうまく歌えるように急がせるよりも、できるだけ先に声そのものの器を大きくしようとします。最初からまとめようとすると、本当の声をうまく伸ばすことができないからです。ですから、あるレベルまでは歌うこととヴォイストレーニングとをわけて考えるとよいです。

声のことをある期間、徹底してやりましょう。そして、歌うときには、声のことを考えずに歌に専念することです。声はトレーニングを積むごとにうまく出せるようになります。耳では歌を学んでいきつつも、声をつくるためには、若いうちにできるだけ、大きな器をつくることを優先したいのです。

 身体が必要となるほどの歌い方を聞いているとしぜんと自分の身体も声もそうなってきます。これが喉をはずす、最もよい方法の一つです。

〇声の環境づくり、ヴォイスシャワーとヴォイスマラソン

 私は、「あなたの両親がオペラ歌手とゴスペル歌手だったら、あなたの声の問題の半分は解決している」といっています。幼いときから、そういう声や声の表現を耳や身体に入れておくと、音楽面での才能は伸びやすいです。逆に言うならば、日本人はそうでないから、それを補う勉強をたくさんしなくてはいけないのです。

 日本という風土そして、日本語のなかで声は出しにくく、出にくくなっています。それを何度もよい声を聞くことで、声のイメージそのものを変えていくのです。

 これを私は、ヴォイスシャワーといっています。口先で歌うよりもまず、浴びるほどよい声を聞くことで、自分の細胞から変えていこうというものです。毎日、最低60分以上、よい声と接する時間をとるのです。こうなると、外国に行ったり、洋画を見たりすることもトレーニングの一つになります。

 日本で声を変えていく確実な方法です。

 もちろん、聞いているだけでは変わりません。大切なことは、自分の声と身体を惜しまず使って、毎日トレーニングしていくことです。これをヴォイスマラソンといっています。

〇肉体的限界を破る

 発声とは最終的には、声を出すときに邪魔する要素を除いていくことです。そうはいでも、普通の人には、そんなことを意識的にはやれません。

 そこで、発声器官そのものをとりまいている条件の限界をはずしていくトレーニングが必要となります。

 いくら正確にボールを蹴れるサーカー選手でも、そのキック力が弱いなら、まったく無力でしょう。そのときは、そこの筋力から鍛えなくてはいけません。

 声帯は、筋肉のように、直接に働きかけるような強化トレーニングはできません。それを、最もうまく活かせるまわりの条件を整えていくことしかできないのです。しかし、空手などでもわかるとおり、人間の身体を最大限に活かすには筋力そのものより、タイミングや力のバランス、集中力がより重要です。それさえつかめば、子供でも瓦が割れるわけです。

 人間には、人間の身体が最もうまく働く条件があります。声もまた、そのコツを捉えることが大切です。数多くの長い時間のトレーニングは、コツに気づき、それを確実につかむためにあります。コツをつかむことが、トレーニングの秘訣なのです。

〇パワーとタイミング

 ホームランを打ちたいという初心者に対して、いくら、ホームランの打ち方を正しく教えても、ホームランは打てないでしょう。それと同様、声も、結局はかなりの量をこなしているなかで身につけていくしかないのです。量をこなし、パワーがついていく過程でのみ身についてきます。

飽きるほどの基本トレーニングのなかで身体の条件が整っていき、ある日、コツに気づき、それをものにしていくわけです。ホームランを打ちたい人は、まず、何百回と毎日、休みなく素振りをするところから始めるのです。

 

 声の扱い方ができるためには、声そのものが、深くなり、息でコントロールできるようになることが必要です。その方向に身体や息を近づけながら、パワーをつけ、そこで、タイミングをつかむのを待つのです。そのために、そこまでできるような条件、つまり息と身体の力がつくように整えていくことです。それによって、可能性が広がっていくようにトレーニングをしていきましょう。

「最強トレーニング」 Vol.1

〇声の力は伝える力

 

話は、口から出た言葉が一瞬一瞬で消えてしまうライブのようなものです。だから、一度、口にしてしまった言葉は取り返せません。やり直しがきかないのです。そこであなたが意識しようとしまいと、あなたの声から、醸し出された雰囲気や感覚は、話の内容以上に、その話の印象や価値を左右してしまいます。

どんなに内容にすぐれていても、あまり関係ありません。声でどう伝わるかどうかということによって、話の効果が大きく違ってくるのです。

つまり、話のよしあしは、話の内容だけでなく、話の伝え方で決まります。しかし、話す力をつけるのに、声の力も含めた伝え方を私たちはあまり学んでいません。ここでは、この大切な話すための声の力、話声力をつけることに重点をおきました。

 

〇声の判断

 

声の判断で難しいのは、

1.現在、自分がどのくらいのレベルにいて(現実)

2.どこに達しようとしていて(目的)

3.そのギャップをどのように埋めていったらよいのか(手段)

4.さらにどのようによくしていくのか(理論)

を、把握していないからです。

 

多くの人は、

1.客観的に自分の実力をつかんでいないまま 

2.不明確な目的に対し 

3.あいまいなやり方でくり返しています。

これでは、効果も期待できません。何の分野であれ、客観的に評価して正せる、もう1人の自分がいてこそ、上達するものです。

 

〇声の学び方

 

話というのは、どんな人が話しても、それなりに話として何となく聞けるものです。ですから上達の第一歩は、プロとどこが違うのかを、細かくみるところからです。

たとえば、自分の声を録音したなかに、プロの人の話を間にはさんで、友だちに聞かせても区別がつかないというレベルにもっていくというのを、目標とするのもよいでしょう。

声にも、実力アップのための基本となるスキルがたくさんあります。それを学びましょう。

次に現実に使う実践例で、まるごと声の使い方を習得してしまいましょう。

難しい理屈はさておき、ご自分の耳から入れ込むことで、いつでもスラスラとよい声でよい間合いで語ることができる、そうであってこそ、あなたの声もしぜんと根本的によくなるのです。

 

声の基礎づくりと話という表現活動とは、次元が異なるステップです。これを一緒にやろうとすると、どうしても声の基礎づくりがなおざりになるのです。話としての表現を考えつつ、声の基礎トレーニングをしましょう。

 

※日本語、敬語やことばづかいのマニュアルは、たくさん出ています。しかし、ことばより大切なもの、同じことばでもいい方や口調によってまったく効果が違うことに、多くの人は、まだまだ無自覚です。

どんなに滑舌や発音のトレーニングをしても、人間関係やビジネスはうまくいきません。人は、そのことばだけでなく、そこでの声のニュアンスで、本当のところを判断しているからです。

ここでは、多くの話し方やことばづかいのメソッドとは、一味違って、ビジネスや人間関係のシーンに役立つことばのトレーニングを集めました。生きた声を見本として、そのまま耳に入れることによって、声の使い方を実践的にマスターしていこうというものです。

これで、ことばを文字で理解し、伝えることの練習が徹底的にできます。ここにとりあげる声の表現法をしっかりとマスターすると、仕事や日常生活における問題は、大半、解決することでしょう。

 

必要なことは、演劇部や放送部での基礎トレーニングのようなものです。

これからの社会において、声の使い方は欠くことのできない必修資格となってくるでしょう。

ですから、今、人より先んじてこの学習することは、絶大な効果をもたらすでしょう。それはあたかも、外国語を学ぶ人のなかで、あなただけがラジオで直接、学ぶようなものです。

ビジネスでよく使用することばと合わせて、声を学ぶことができるのです。

私の長年携わってきたヴォイストレーニングのベーシックなトレーニングがお役に立つのは、とてもうれしいことです。是非、うまく活用して、人間関係における最強の武器である声とその使い方を手に入れてください。

 

〇話し手のタイプで声の使い方は違ってくる

 

話と一口にいっても、いろいろなタイプがあります。内容としての知識や情報を与えることを主とする人もいれば、話をイキイキと伝えることを中心としている人もいます。

どんな話し手も、いろんなスタイルが混ざっています。

私は、いつも人の話はメモをとって聞くのですが、話がうまいといわれる人は、いくらメモして話しても、そのよさは、他の人に伝わらないものです。その場にいなくては、味わえない“臨場感”に支えられたライブステージのようなものだからです。声もとても印象的です。

それに対して、内容の価値で評価される人は、いわば作品をパッケージして伝えられるスタジオ録音制作型とでもいえましょう。

同じ内容でも、声で伝えられるスキルによって、何倍もの効果が違ってきます。たとえ、つたない内容でも、人に魅力的に自分をアピールできるようにさえなります。また、よい内容なのに、皆に充分に伝わらないという憂き目にあうこともなくなるでしょう。

 

〇他の人の内容を借りて自分の声の力をチェック

 

 よい話には、内容と伝達力が必要ですが、これを両立させることは、なかなか難しいものです。そこでまずは、話すことに重点をおきます。両方、いっぺんにやろうとすると、どうしても内容、つまり、話の原稿の方ばかり気になるからです。

 それには、まねから始めてみるのが早いでしょう。すでにできあがっている他の人の話から内容を借りて、声のトレーニングをしてみましょう。

噺家のように、同じ話を何度も、練習するのです。すると、内容でなく、伝達での自分の実力もわかり、何を学べばよいかもはっきりとしてきます。

話の内容、組み立て、構成展開、声のトーン、使い方、間など、それぞれ人によっていろんな特色があります。

一人の声からも多くのことが学べますが、多くの人の声に手本をとると、その比較から得られることは、より大きいでしょう。よい話し手には、共通のルールというものがあるからです。

 

 他の人の話を文章に起こしてみるのも有効な手段です。内容、構成にさまざまな工夫が見えてきます。問題は、そこからです。同じ内容がどう話になるのか、原稿ではみえない話の声のノウハウを身につけていきましょう。

 同じ話を、話のうまい人と同じレベルで声を使えるようにできたら、それは話し手としてのノウハウを手に入れたことになります。

まずは、話の中に声の世界があること、それがどのようになっているのかに着目してみてください。

 

〇話し手のタイプについて

 

大きく分けると、話し手にも、いろんなタイプがいます。もちろん、話すときの相手や目的によっても変わります。自分のことを考えるときの参考にしてみてください。

 

1.話芸型

 

A…その人の声を聞けば元気になるハイパワーヴォイスタイプ

現われるなり出迎えた相手の肩を叩き握手を求めるような人。いつも、ハイテンションで人前に出て、そのまま熱情的な声で話す。この人が身体からの声で語りかけると、言葉に命が吹き込まれ、思わず皆が聞き惚れる。パワー、インパクト、スキンシップ、表現力、表情に秀でる。個性を売りものとする。

 

B…一芸として確立された〇〇節を披露する話芸ヴォイスタイプ

テーマはいつも同じ。噺家のように同じ展開、同じおちがつく。聞く人は、同じところで笑い、同じところでほっとする。間や手振り身振りなど芸が細かく洗練されている。話し口や声の使い方に独特のものがあり、その味わいに人は耳を傾ける。

 

C…パフォーマンス型の大道芸人香具師口上ヴォイスタイプ

声も大きく、身振りやジェスチャーも派手で見ているだけで飽きない。おもしろさや時流に応じた話材を的確に組み立て、提示する。観客コミュニケーションに重きをおく聴衆参加型。会場のなかをまわったり、小物の演出に凝る。ときに聴衆も質問を浴びせられたり、壇上にあげられたりして協力させられる。観客との一体感、コミュニケーションを重視する。欧米人に多い。発声、トーン、メリハリ、間合いにすぐれている。

 

2.内容(知識、情報)伝達型

 

D…プレゼンテーションタイプ

パソコン(スライド)など最新機器で動画や図表を使い、わかりやすく伝える。話をビジュアル化するので、わかりやすく、説得力がある。話の内容や情報を、うまくまとめている。企画営業マンタイプ。

 

E…スペシャリストタイプ

幅広い知識に支えられた持論を展開する。聞く人が理解できるレベルであるときには伝わる。話力はあまりない。博識、内容の質でカバーする。学者、大学の教授などにも多い。

 

F…コメンテータータイプ

身近な例や比喩を使って、難しい話を優しくおきかえて説明する。最新の情報、専門の分野については特に強い。鋭い切り口で分析をする。話の構成、組み立て、声での見せ方もうまい。若い人の趣向によく通じており、タイムリーで造語力にたけている。テレビや講演など、マスコミにも重宝される。評論家など。

 

G…ジャーナリストタイプ

数字、データ、多くの事例や経験によって、他の人のもっていない情報を売りものとする。専門分野をもつ人や、特定の業界、分野、国、仕事に詳しい。声は、人によってさまざま、テンポも使い方も、よい人も悪い人も幅がある。

「問うて考えておく」 No.403

人は、生きている限り、いろんな問題に取り囲まれています。

それは、意識すれば問いとしてあがってくるのです。

自分自身で考えなければ、

誰も考えてくれないことがたくさんあります。

考えても自分しかできないことが大半です。

 

いつでも誰でも、考えること、考えておくことは、必要です。

できれば、しっかりと深く考えることを望みたいものです。

時間をかけて追究していくと、

あらゆることにつながっていきます。

あとは実行するのみです。

閑話休題 Vol.95「歌合」(2)

<主な歌合>

 

在民部卿家歌合 : 仁和元年(885年)頃(記録に残る最古の歌合)<在原行平>

寛平御時后宮歌合 : 寛平元年(889年)

亭子院歌合 : 延喜13年(913年)

天徳内裏歌合 : 天徳4年(960年)<村上天皇>

寛和二年内裏歌合 : 寛和2年(986年)<花山天皇>

六百番歌合 : 建久3年(1192年)<九条良経>

千五百番歌合 : 建仁元年(1201年)頃<後鳥羽院>

水無瀬恋十五首歌合 : 建仁2年(1202年)<後鳥羽院>

 

<実例>

 

長元八年、1035年の516日に行われた、『賀陽院水閣歌合』

「賀陽院」とは藤原頼通の邸宅、10の題が出され、10番の戦い 計20首、9人 赤染衛門・相模・藤原公任・能因法師

最後の十番の歌 「恋」の題、

左方は能因法師

「黒髪の色も変わりぬ恋すとてつれなき人にわれぞ老いぬる」

右方は藤原頼宗(道長の次男)

「逢ふまではせめて命の惜しければ恋こそ人の祈りなりけれ」

勝ち 頼宗

和歌はただ思っていることを表現するものではありません。こうあってほしいという願いや、理想を表現するもの 「逢ふまでは」の歌は『後拾遺和歌集』にも選ばれました。

 

<歌会始(うたかいはじめ)>

 

和歌(短歌)を披露しあう「歌会」、年の始めに行うもの。年頭に行われる宮中での「歌会始の儀」 京都冷泉家 京都の風物詩

お題として漢字一字が指定、歌の中にこの字が入ることが条件。9月末頃の締め切り。

NHKの総合テレビで全国中継

 

明治天皇は、93,032首、昭憲皇太后は27,825

人倫道徳を指針とする教訓的なものを15首ずつ、合計30首選び、解説文を入れて昭和22年の正月から「大御心」(おおみこころ)と題して社頭にて授与する。藁半紙(わらばんし)でガリ版刷り、1円で授与。今のようなおみくじになったのは昭和48 年の正月から。昭和4320 首を選び「英文おみくじ」

 

2019年116日に皇居・宮殿で開かれる「歌会始の儀」の入選者10人を発表。平成最後の題は「光」。約2万2千首の中から選ばれた。召人(めしうど)、俳人の鷹羽狩行さん(88)。

 

かな:《藤原為家本土佐日記》の仮名の字源は、〈安以宇衣於加可幾支木久計介己御散之数須世曾所太多知州天止奈那仁尓奴祢乃能波八比不部保末美三武无女毛也由江与良利留礼呂和為恵遠乎〉の63字で、ほとんどすべて万葉仮名。

宮廷の後宮での女手は、歌合の文字として用いられる。

和歌を女手で書く慣習が成立し、勅撰集である《古今和歌集》は、女手が公的に用いられた。

紀貫之によって、初めて散文の日記文学へと用途が拡大される(《土佐日記》)

《竹取物語》《宇津保物語》以下、勅撰和歌集もすべて女手で書かれる。

 

<参考>

 

岡野玲子『陰陽師』第7巻(白泉社):天徳内裏歌合の経緯を描く。

『詠う!平安京』 真柴真 『月刊Gファンタジー』(スクウェア・エニックス)にて連載中。中学生・藤原定家 平安最強のプレイボーイ・在原業平 歌人達の和歌対決《歌合》に巻き込まれていく。在原業平/遍昭/文屋康秀/小野小町/紀貫之/紀友則

小林恭二『短歌パラダイス』(岩波新書) 19974

コトバンク(世界大百科事典第2)、日本大百科全書(ニッポニカ)、世界大百科事典(「仮名」より)NHK解説委員室「歌合 勝負を競う和歌」(視点・論点)、Wikipedia

「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.20 

〇感じたままに声を出す

 自分の心に感じる声や音を集めてみましょう。鳥や獣など、生き物の声、鐘や太鼓など、よくひびく音は、すべて私たちの心を動かします。心が動き、そこから、心が共鳴すると、自らもその音を奏でようとします。振動から、音を捉えましょう。自らの身体を動かし、ゆらし、そして、息が出て声帯を震わせ声となっていく、そういう気持ちになって、口から、しぜんと声が出ることを大切にしましょう。

 なつかしい人と突然会ったときの「あー」、とてもうれしいことのあったときの「あっ」、かわいい動物をみたときの「あ~」、いろんな「あ」が心の動きからでてきます。機械的な発声練習はやめて、何かを心に感じながら、それを声に表しましょう。

〇イメージの焦点を合わす

 これまで、音に耳を集中させ、それをまねることで、声の柔軟性とイメージしたものの再現能力を増すことをやってきました。

 しかし、人の声のまねや、他のさまざまな音の模倣は、必ずしも、あなたにとってのベストの発声ではありません。

 ただ、対象の声が、感情表現や聞きやすさにおいて、日常のあなたの声よりもすぐれている場合、そういう声を捉えて、出せるようにしていくことは、いろんな発見をもたらしてくれます。

 ここでもう一歩、進めて、自分と似た条件をもつ人で、声においてすぐれている人にお手本をとってみましょう。

 イメージした声がある程度うまく出せるようになれば、今度は自分にとってのベストの声を探究していくことになります。これには、今の自分にとってのベターの声と将来的に獲得できる本当の声であるベストの声があります。この違いを知ることが、次のレベルへの第一歩となるのです。そのために、まずは、自分のもっているベターの声を知りましょう。

 そこから少しでも将来のベストの声が明確に思い描けるならば、あなたのトレーニングは理想的に進んでいくでしょう。

〇ベターの声の発見から、ベストの声をイメージしていく

 誰にでも、これまでに自分が比較的うまく声の出た状態というのがあるでしょう。喉が疲れず、思う存分、出せたときの声、それがあなたにとってベターの声です。もし、その状態を24時間、保つことができれば、毎日、少しずつ確実にあなたの声はよくなっていきます。よくなっている時間が増えると、トレーニングの時間ではさらによくすることができるからです。次のようにして、自分の声がうまく出る状態を意識してください。

1)過去(今までの経験)から探す

1.いつ

2.どこで

3.どんなときに

4.どういうことば(音)で

2)力を抜いた声から探す

 できるだけ、リラックスできるところに行き、そこで次のようにして声を出してみてください。

1.柔軟運動をして、身体を動きやすくする

2.深呼吸をする

3.楽に声を「アー」と出す

3)笑い声から探す

 床に横になって、とにかく大声でお腹から笑い出してください。1分ほど笑って、疲れたら休み、これを繰り返します。そのなかで、最もベターの声を見つけてください。

 ベストの声、これは将来的に獲得される声ですから、最初はイメージのなかで構築するしかありません。しかし、この声への探究と、その条件を整えていくことこそ、ヴォイストレーニングで最も大切なことといえるのです。本当に優秀なヴォイストレーナーは、あなたに、このベストの声を示してくれる人です。しかし、多くは、ベターの声を出すことしか考えていない人が多いのです)。

 このときに、一流のヴォーカリストを聴き込むことや、これまでやってきた声を発見し発掘していく作業が大きなヒントになります。

・一流のヴォーカリストを聴き込む

・自分の声についてまとめてみる

・優れたヴォイストレーナーにつく

〇よい声の条件

 それでは、ベストの声を見つけるための基準を示しておきましょう。

 よい声の条件とは次のようなものです。

 1.ことばがはっきりと聞こえる。

 2.声がしぜんに流れ、無理がない。

 3.声に潤いとつやがある。

 4.若々しく魅力的な声である。

 5.息苦しさが感じられず、堂々としている。

 6.息のもれる音やかすれる音が入っていない。

 7.声が前にひびいている。

 8.音域にも音量にも余裕がある。

 9.小さな声も大きな声もまんべんなくきちんと聞こえる。

 10.身体から声が出ていて喉をしめつけない。

 そして、何よりも、強くやわらかく、やさしく包み込むようにあたたかく気持ちよく、一声聴くだけで魅了されてしまう声です(まったくそんな声がでないヴォイストレーナーが少なくありませんが、人を教えるまえに、自分の声をよくすべきだと思います)。

〇イメージで声帯をコントロールする

 出したい声のイメージが明確でなくては、なかなか求める声は出てきません。ヴォイストレーニングは、よりよい声を楽に出せるようにしていくわけです。その過程で声の判断基準をつけていくことに加え、スタイルや歌い方をもつくりあげていきます。ですから、求める声とそれをどう展開するかというパターンを何度も飽くことなく、思い浮かべなくてはなりません。ヴォーカリストのスタイル、歌い方を表面だけで捉えるのではなく、まず、声の表情、声のスタイルや声の使い方を聴き込んでください。好きなヴォーカリストを徹底的に分析した上で、一流とよばれるヴォーカリストの一流たるゆえんを理解してみてください。それがわからなくては、本当の声は、なかなか出せません。

〇フォームを身体で見抜く

 一流のヴォーカリストが歌うときに、どのように身体や声の感覚、ひびきが伝わるのかが自分でも感じられるようになったら、しめたものです。一流のスポーツ選手なら、同じく一流の人のプレーを的確に瞬時に分析できます。それは、自分の身体感覚におきかえて捉えられるからです。すぐに同じことができなくとも、少しずつ、今の力で、どこまでは自分が同じことができるかがわかってくるようになっていくことが大切です。

 差がわかればあとはそれ(技術)を時間をかけてつめていくだけです(その理解をまったく超えてしまう天才ヴォーカリストもなかには、いますが)。

 ヴォーカリストの歌を聴いて、自分が歌わなくとも、自分の身体や息がその動きを感じられるようになって初めて、同じ次元にのったといえるのです。

 素晴らしい声で表現しているヴォーカリストを、人種や育ちが違うといっていたのでは、永遠にそのレベルに近づけないでしょう。

「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.18

〇強調するときは、強くいうだけが能じゃない 

 

プロミネンスとは、強調してはっきりと伝えることです。だからといって、言葉すべてを強く言ってしまうと、均等化されてどれも目立たなくなります。そこで、とくに意味をもつ大切な言葉だけを強調するのです。ただ、大きく言ったために発音が不明瞭になったり、何を言ったのかわからなくなるようでは本末転倒です。強く言うと、声も大きく高くなりがちですが、結果的にしっかりと伝わっているかがポイントです。

プロミネンスの使い方には、個人の選択に任されている場合と、社会的習慣として決まっている場合があります。意味を正しくわかりやすく伝えるために、強調するということです。

どこにこのプロミネンスをおくかで、文章の意味が変わってくる場合であります。プロミネンスがあることで、違ってきます。どの語が際立っているかを、チェックしてみましょう。

 

「私は(1)、明日(2)、上海に(3)、出張します(4)」

誰が行くのですか(1)、いつ、行くのですか(2)、どこに行くのですか(3)、何をしに行くのですか(4)。

この4つの疑間のどれに最も強く答えるかによって、それぞれ際立たせたいところ、プロミネンスがおかれるところが違ってくるのです。

 

〇テンポ、ノリのよさが、コミュニケーションを決める

 

気持ちのよさとインパクトがその人なりにバランスよく整うと、聞きやすくなります。聞き手に聞く努力を強いず、スーッと耳に入りやすくなるのです。そのためには、伝えることのトータルイメージと、声の高低、メリハリ、テンポの取り方、一語一音を処理できる調音力が必要なのです。

 

〇リズム感がないと、心に響かない

 

聞き手は、話にリズムや歯切れといった心地よさを求めています。どんなによい声でも、話が単調に続くと眠くなったり飽きてしまいます。そのため、伝え方と内容の両面から、新鮮さやパワー、変化を、タイミングよく入れる必要があるのです。

 

[声の調子に変化をもたせるトレーニング]

ここでは、強調する部分の声の感じを変えることによって、気持ちを使い分けるトレーニングをしてみましょう。

 

「いやあ、うまくいかなかったね。」

1.深刻に

2.非難するように

3.励ましを込めて

4.あきらめがちに

 

〇間の悪い人は“間抜け”

 

「間」を語るうえでの格好の材料としては、「TED」などのスピーチでしょう。

ポンポンとリズミカルに喋りながら、その後スッと間をとって相手の反応を見るという話し方をしています。そうやって相手の反応を確認したあとで、またポンポンと話しだす、この繰り返しです。

これらは、アドルフ・ヒトラーやレーニン、J・F・ケネディにも見られる共通の特徴です。ある時期、高い人気を集めた政治家は、このような話し方をします。

この「間」は、聞く者に自分の語られざる声を聞いて、それに対してうなずいてくれているような安心感を与えると同時に、話す者への信頼感を高める役割を担っています。つまり、「間」とは語られない声を聞くことであり、語られない声で話すことなのです。

どんなに饒舌な人でも、間のない読み方をしてしまうと、聞いている方は疲れてしまうでしょう。話し手の方も、です。早口に聞こえてしまいます。

間は短すぎても長すぎてもいけません。その時間を状況に応じて選択しなくてはなりません。間を置くにも破るにも、センスが必要なのです。緩急、強弱といったメリハリのなかでの一方の極が、間であるといえます。

時間、空間、そして人間、すべてに間が入っています。それだけ重要なことだといってもよいでしょう。

間は、多くの場合、「こっちを向いてください」「私をみてください」「これから、大切なことを言います」という意味をもちます。この間のおき方によって、聞いている人にわかりやすく伝えることができます。うまく間をおいて読む人の言葉は、とても気持ちよく伝わり、残るものです。

間をとるために、どこかをより速く言うことです。慣れていきましょう。間とは、悪魔の間といわれます。つまり、使い方次第で、関心を強くひきつけることも飽きさせることもできる両刃の剣になるということです。

間は、息つぎにも関係してきます。体の状態のよくない人の言葉は、とても聞きとりにくいものです。

 

間をとって言葉の意味を強調する方法もあります。いろいろな間のあけ方を試してみましよう。

ここでは、読点(テン)のところで間をあけて読んでみましょう。その変化による意味の伝わり方の違いを感じましょう。

 

[間をとって読むトレーニング]

1.わたしは、あの人が、大嫌い、です。(「大嫌い」の前と後で間をあけて「大嫌い」と速く読む。)

2.わたしは、あの人が、だ、い、き、ら、い、です。(「大嫌い」の一つひとつの音をゆっくりと間をあけて読む。)

3.わたしは、あの人が、だーい、きらい、です。(「大嫌い」の前と後と、中間で間をあけ、「だーい」と伸ばす。)

4.わたしは、あの人が、だいっ、きらいっ、です。(「大嫌い」の前と後と、中間で間をあけ、速く読む。)

 

〇ブレスの使い方が表現力を決める

 

歌に息つぎがあるように、しゃべりにも息を吸うところがあります。ノンブレスでしゃべり続けることはできません。だからといって、息が苦しくなったら、どこでも吸ってよいのではありません。不しぜんなところでブレスすると、そこに別の意味が生じ、内容や意味が変わってしまうことさえあります。正確に伝えようとするときは、ブレスが目立たないようにしましょう。

呼吸は音声表現に大きくかかわってきます。呼吸の伴っていない言葉は、とても聞きにくいです。聞いている人も呼吸をしていることを忘れてはいけません。

話をうまく伝えるには、まず相手の呼吸に合わせることです。とくにクレーム処理のときは、ここが大きなポイントです。

 

〇緩急やチェンジオブペースがないと、眠くなる

 

チェンジオブペースとは、調子を変えることです。話が単調で味気がないと感じるのは、話の調子が変わらないためです。人前で話すことに慣れていないと、だいたいこうなります。変化のない話は退屈です。呼吸や間は、コミュニケーション上では大切なポイントなのです。

言葉の調子、語調、語気、語勢と主観的な表現、情感的な読みなどをたくさん入れ込んで表現のトレーニングをしましょう。長い「間」のあとは、やや高めに大きく入ると効果的です。 一語ずつ音が切れてしまうと幼稚に聞こえますから、音を持続させる気持ちでゆったり読むとよいでしょう。語調、語気、語勢、間と、いろいろ変えてみましょう。

 

[抑揚と強調のトレーニング]〉

「このたびは、大変に、お世話に、なりました。」

1.語調 高低

2.語気 強弱

3.語勢 緩急(テンポの変化)

4.間 その前後の音の高さに気をつけましょう。

 

〇ヴォイストレーニングの注意……喉を休ませること

 

今まであまり声を出していなかった人が、これまでの声の使用に加えて、ヴォイストレーニングを始めたら、喉が疲れるのは当然です。充分に間をとって、休みながら行いましょう。

集中力も欠け、喉の悪い状態でだらだらと声を使えば、当然おかしくなります。カラオケなどでは調子にのって歌いすぎるから、喉を痛める人が多いのです。トレーニング以外で、喉を無駄に疲れさせないことです。

・トレーニングの時間を短くする。

・一日のトレーニングを数回に分け、必ずウォーミングアツプから始める。

・一つのトレーニングが終わったら同じ長さの時間、休みを入れる。

トレーニングは、翌日、喉に疲れが残らない状態までがよいと判断してください。

疲れたら、すぐに喉を休ませましょう。

疲れるまえに、喉を休ませられるようになりましょう。

疲れるような、無理な出し方、雑な出し方はやめましょう。

喉をていねいにいたわって、声を磨いていきましょう。

 

〇声が見えるようにする

 

声という、捉えどころもないのに人間関係やビジネスに大きな影響をもたらすものをテーマに、実践的ヴォイストレーニングを述べてきました。声をよくするには、現状把握、問題の自覚、修正や鍛錬、結果とフィードバックのくり返しです。声に対する判断レベルを高めていくのです。

声のイメージという主観的なものを、少しでも客観視して捉えてよくするのが、トレーナーの役割です。この声のめざすべき指標を示してきました。がんばってください。

«「表現のエネルギー」No.402

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