〇強調するときは、強くいうだけが能じゃない
プロミネンスとは、強調してはっきりと伝えることです。だからといって、言葉すべてを強く言ってしまうと、均等化されてどれも目立たなくなります。そこで、とくに意味をもつ大切な言葉だけを強調するのです。ただ、大きく言ったために発音が不明瞭になったり、何を言ったのかわからなくなるようでは本末転倒です。強く言うと、声も大きく高くなりがちですが、結果的にしっかりと伝わっているかがポイントです。
プロミネンスの使い方には、個人の選択に任されている場合と、社会的習慣として決まっている場合があります。意味を正しくわかりやすく伝えるために、強調するということです。
どこにこのプロミネンスをおくかで、文章の意味が変わってくる場合であります。プロミネンスがあることで、違ってきます。どの語が際立っているかを、チェックしてみましょう。
「私は(1)、明日(2)、上海に(3)、出張します(4)」
誰が行くのですか(1)、いつ、行くのですか(2)、どこに行くのですか(3)、何をしに行くのですか(4)。
この4つの疑間のどれに最も強く答えるかによって、それぞれ際立たせたいところ、プロミネンスがおかれるところが違ってくるのです。
〇テンポ、ノリのよさが、コミュニケーションを決める
気持ちのよさとインパクトがその人なりにバランスよく整うと、聞きやすくなります。聞き手に聞く努力を強いず、スーッと耳に入りやすくなるのです。そのためには、伝えることのトータルイメージと、声の高低、メリハリ、テンポの取り方、一語一音を処理できる調音力が必要なのです。
〇リズム感がないと、心に響かない
聞き手は、話にリズムや歯切れといった心地よさを求めています。どんなによい声でも、話が単調に続くと眠くなったり飽きてしまいます。そのため、伝え方と内容の両面から、新鮮さやパワー、変化を、タイミングよく入れる必要があるのです。
[声の調子に変化をもたせるトレーニング]
ここでは、強調する部分の声の感じを変えることによって、気持ちを使い分けるトレーニングをしてみましょう。
「いやあ、うまくいかなかったね。」
1.深刻に
2.非難するように
3.励ましを込めて
4.あきらめがちに
〇間の悪い人は“間抜け”
「間」を語るうえでの格好の材料としては、「TED」などのスピーチでしょう。
ポンポンとリズミカルに喋りながら、その後スッと間をとって相手の反応を見るという話し方をしています。そうやって相手の反応を確認したあとで、またポンポンと話しだす、この繰り返しです。
これらは、アドルフ・ヒトラーやレーニン、J・F・ケネディにも見られる共通の特徴です。ある時期、高い人気を集めた政治家は、このような話し方をします。
この「間」は、聞く者に自分の語られざる声を聞いて、それに対してうなずいてくれているような安心感を与えると同時に、話す者への信頼感を高める役割を担っています。つまり、「間」とは語られない声を聞くことであり、語られない声で話すことなのです。
どんなに饒舌な人でも、間のない読み方をしてしまうと、聞いている方は疲れてしまうでしょう。話し手の方も、です。早口に聞こえてしまいます。
間は短すぎても長すぎてもいけません。その時間を状況に応じて選択しなくてはなりません。間を置くにも破るにも、センスが必要なのです。緩急、強弱といったメリハリのなかでの一方の極が、間であるといえます。
時間、空間、そして人間、すべてに間が入っています。それだけ重要なことだといってもよいでしょう。
間は、多くの場合、「こっちを向いてください」「私をみてください」「これから、大切なことを言います」という意味をもちます。この間のおき方によって、聞いている人にわかりやすく伝えることができます。うまく間をおいて読む人の言葉は、とても気持ちよく伝わり、残るものです。
間をとるために、どこかをより速く言うことです。慣れていきましょう。間とは、悪魔の間といわれます。つまり、使い方次第で、関心を強くひきつけることも飽きさせることもできる両刃の剣になるということです。
間は、息つぎにも関係してきます。体の状態のよくない人の言葉は、とても聞きとりにくいものです。
間をとって言葉の意味を強調する方法もあります。いろいろな間のあけ方を試してみましよう。
ここでは、読点(テン)のところで間をあけて読んでみましょう。その変化による意味の伝わり方の違いを感じましょう。
[間をとって読むトレーニング]
1.わたしは、あの人が、大嫌い、です。(「大嫌い」の前と後で間をあけて「大嫌い」と速く読む。)
2.わたしは、あの人が、だ、い、き、ら、い、です。(「大嫌い」の一つひとつの音をゆっくりと間をあけて読む。)
3.わたしは、あの人が、だーい、きらい、です。(「大嫌い」の前と後と、中間で間をあけ、「だーい」と伸ばす。)
4.わたしは、あの人が、だいっ、きらいっ、です。(「大嫌い」の前と後と、中間で間をあけ、速く読む。)
〇ブレスの使い方が表現力を決める
歌に息つぎがあるように、しゃべりにも息を吸うところがあります。ノンブレスでしゃべり続けることはできません。だからといって、息が苦しくなったら、どこでも吸ってよいのではありません。不しぜんなところでブレスすると、そこに別の意味が生じ、内容や意味が変わってしまうことさえあります。正確に伝えようとするときは、ブレスが目立たないようにしましょう。
呼吸は音声表現に大きくかかわってきます。呼吸の伴っていない言葉は、とても聞きにくいです。聞いている人も呼吸をしていることを忘れてはいけません。
話をうまく伝えるには、まず相手の呼吸に合わせることです。とくにクレーム処理のときは、ここが大きなポイントです。
〇緩急やチェンジオブペースがないと、眠くなる
チェンジオブペースとは、調子を変えることです。話が単調で味気がないと感じるのは、話の調子が変わらないためです。人前で話すことに慣れていないと、だいたいこうなります。変化のない話は退屈です。呼吸や間は、コミュニケーション上では大切なポイントなのです。
言葉の調子、語調、語気、語勢と主観的な表現、情感的な読みなどをたくさん入れ込んで表現のトレーニングをしましょう。長い「間」のあとは、やや高めに大きく入ると効果的です。 一語ずつ音が切れてしまうと幼稚に聞こえますから、音を持続させる気持ちでゆったり読むとよいでしょう。語調、語気、語勢、間と、いろいろ変えてみましょう。
[抑揚と強調のトレーニング]〉
「このたびは、大変に、お世話に、なりました。」
1.語調 高低
2.語気 強弱
3.語勢 緩急(テンポの変化)
4.間 その前後の音の高さに気をつけましょう。
〇ヴォイストレーニングの注意……喉を休ませること
今まであまり声を出していなかった人が、これまでの声の使用に加えて、ヴォイストレーニングを始めたら、喉が疲れるのは当然です。充分に間をとって、休みながら行いましょう。
集中力も欠け、喉の悪い状態でだらだらと声を使えば、当然おかしくなります。カラオケなどでは調子にのって歌いすぎるから、喉を痛める人が多いのです。トレーニング以外で、喉を無駄に疲れさせないことです。
・トレーニングの時間を短くする。
・一日のトレーニングを数回に分け、必ずウォーミングアツプから始める。
・一つのトレーニングが終わったら同じ長さの時間、休みを入れる。
トレーニングは、翌日、喉に疲れが残らない状態までがよいと判断してください。
疲れたら、すぐに喉を休ませましょう。
疲れるまえに、喉を休ませられるようになりましょう。
疲れるような、無理な出し方、雑な出し方はやめましょう。
喉をていねいにいたわって、声を磨いていきましょう。
〇声が見えるようにする
声という、捉えどころもないのに人間関係やビジネスに大きな影響をもたらすものをテーマに、実践的ヴォイストレーニングを述べてきました。声をよくするには、現状把握、問題の自覚、修正や鍛錬、結果とフィードバックのくり返しです。声に対する判断レベルを高めていくのです。
声のイメージという主観的なものを、少しでも客観視して捉えてよくするのが、トレーナーの役割です。この声のめざすべき指標を示してきました。がんばってください。