ご案内

私は10数名のヴォイストレーナーとともに、ヴォイストレーナーにも指導しているため、内外のヴォイストレーナーのアドバイザーやヴォイトレをしている人のセカンドオピニオンもたくさんやってきました。ヴォイストレーナー、指導者、専門家以外にも「ヴォイストレーナーの選び方」などに関する質問が多くなりました。以下を参考にしてください。

 

「ヴォイストレーナーの選び方要項」 http://www.bvt.co.jp/new/voicetrainer/

 

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閑話休題 Vol.90「忍者」(2)

〇現在との関わり

 

忍術伝書 伊賀と甲賀の万川集海、紀州藩の正忍記、服部半蔵の忍秘伝

神武不殺 針と切(きれ)

密法伝来の三密行法、身口意―印を結び、呪文を唱え、神仏に願う、気合と呼吸法

二重息吹―静かに長い呼吸を繰り返し、次に逆呼吸で行う。臍下丹田。

有声無声の気合い、「エイ」、「ヤア」、「トゥ」、「ハッ」

 

「忍者は乱定剣(らんじょうけん)といって、箸でも爪楊枝でも何でも打って刺せなければいけません」

「忍術というのは型にとらわれないもの、一つの固定観念にとらわれずに自由に発想を転換して、自由な価値観を身につける」

「人間にとって、死とは一番のストレス、内から湧き出る恐れや不安をみつめ、逃げずに乗り越える鍛錬を積むこと」

「日本文化を凝縮したもの」 日本文化の根本には神道

 

神道には表と裏があり、裏が本物・本質 日本を裏で動かしてきたのが忍びの者 忍ぶということは自分を消すこと、自分を消すことで相手の意識や時代の変化、過去・未来とも繋がって感じられるようになる。

摩訶不思議な術で敵をくらますイメージは、山伏の使った術が悪党や地侍へと引き継がれたもの。

 

禅の教義なども、正忍記の極秘伝

現存する忍術書には、交際術・対話術・記憶術・伝達術・呪術・医学・薬学・食物・天文・気象・遁甲・火薬など、研究。

忍びの条件は、智恵のある人、記憶力のよい人、コミュニケーション能力に秀でた人

 

忍者の心得 目立たない。敵を作らない。友人を多く持つ。サムライの心得「義、勇、仁」 

忍者は名は残さずとも任務を完遂して生還すること

同じ動きをしても先週と今週では感覚の差があるし、感覚が同じでも動画を撮ってみると違う場合もある。だから感覚、コンディション、動作の質を絶えずチェックしていく。

 

「用意」には「気をつける、意を用いる」の語義がある

「忍道」もあり、その理念 以忍成和(忍を以て和を成す)

 

忍術は生きて帰るための生存術であり、武術は忍術の一部

“術”から“道”への変化 乱世の忍術とは盗む術 

忍術の忍は堪忍の忍、現代における忍術とは“忍耐の術” 

皆が耐え忍ぶ心をもっていれば、そこに「和」が生まれます。

 

「行」には終わりがなく「業」には卒業がある。

「何事にもじっと耐え忍び、心は鉄壁で動揺せず、内には残忍の意味合いを秘めながら、争いを避け人々とは合意していく心こそが、忍びの根本なのである。」

 

自立、サバイバルのための全ての手段、人間関係、心を読み取る、観察眼、体力温存、健康寿命、メンタル、食料確保と保存、薬の制作、

 

〇諜報活動

 

忍者は、隠密行動を得意とし、諜報活動をしていました。

例えば、ギリシャ神話で描かれた「トロイの木馬」などが有名です。古代中国の兵法書「孫子」では、兵法に離間工作の方法、敵の間者を二重スパイとして活用する方法など。「スパイ」は敵側の諜報員、「エージェント」は味方側の諜報員を指します。中国語でも、敵側を「間諜」(かんじゃ)「細作」(さいさく)「姦細」(かんさい)、味方側を工作人員や政治指導員などと区別します。

「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.15

失われた声を取り戻す心を感じ声に表現する 

ヴォイストレーニングメニュー100

 ここでは、声のうまく出ない人や初心者、あるいはグループ(劇団・声優など、声をプロとして使っていきたい人たちも含む)でのトレーニングとして、楽しく効果的な材料をご紹介します。うまく工夫して使ってください。

1.赤ちゃん泣きのトレーニング

 仰向けになって、赤ん坊のつもりで、泣き声をあげてください。いきなり、やろうとせず、赤ん坊の気持ちになり切るところから始めます。

嬉しい、笑み、寂しい、誰もいない、ぐすん……そこからべそをかいて、そして……「アーンアーンアーン」泣いて泣いて泣きじゃくって、すっきりとなるまで楽しみます。泣き声に感情移入して、酔ってみます。この感覚を取り出します。

 気が済むまで泣いたら、次の点をチェックしてみましょう。

 □両肩さがる

 □胸は拡げる

 □下腹ひっこむ

 □喉は開く

 この機会に思いっきり若返りましょう。発声については、あなたも赤ん坊なのです。そして、生まれたばかりのときのエネルギーを感じ、元気になりましょう。

 生まれたときから出発しましょう。大声で泣くというのは、訴えること、まさに表現です。横隔膜も活発に動きます。

 疲れを感じたら、静かに休みましょう。赤ん坊の泣き声くらいに、人の心に働きかける声を感じましょう。

2.喃語のトレーニング

 生まれてからしばらくすると、赤ん坊は、見よう見まねで大人のすることをまねし始めます。ことばにならないことばで、声を発し始めます。その時期のことばを喃語といいます。

 それでは、何か思いを伝えるために、どんな音でもよいですから、適当に組み合わせて、力一杯、表現しましょう。でたらめことばをぶつけるのです。仲間とやっても、鏡に向かってやってもよいでしょう。

 例)「フニャームアー」

「タララ」

「マームン」

     「ウー」

3.簡単なことば(母音)のトレーニング

 次のことばを一度、読んでみたあと、似たようなことば(母音中心)で、自分の気持ちを即席に表してください。

 アーアーアー

 エーエーエー

 イーイーイー

 オーオーオー

 ウーウーウー

 アーエーイーオーウ

 アエ アイ アオ アウ

 エア エイ エオ エウ

 イオ イウ イア イエ

 オウ オア オエ オイ

 ウア ウエ ウイ ウオ

 アエイ エイオ イオウ オウア

4.強いことば(子音)での表現トレーニング

 「ダダダーン」「バキュンバババ」「ビシャーン」「バボビン」など、子音を中心に、ことばを組み合わせて、自分の持つ気持ちを強い感情として表現してみましょう。

5.でたらめ外国語のトレーニング

 何語でもよいですから、その国のことばらしく発して、会話をしてみてください。お手本は、タモリ氏の中国語です。難しければYouTubeなどで、よくわからない国のことばを似たように復唱してみるとよいでしょう。

6.ちゃんとした外国語のトレーニング

 NHKなどの外国語放送をかけて、よく聞いてできるだけ大きな声で復唱してみましょう。自分の耳にきれいに聞こえ、まねしやすそうなことばを選ぶとよいでしょう。特にラテン系の言語、イタリア語、スペイン語などは、おすすめです。

7.英語でシャウトのトレーニング

 

 次のことばを格好よくシャウトしましょう。

 

 Yes

 

 No

 

 HeyHeyHey

 

 Yah

 

 Oh

 

 DuDuDuDaDaDa

 

 

ことばにします。

 

 OneTwoThree

 

 Dance

 

 Sing

 

 Laugh

 

 Long

 

 Moon! Maria

 

その他、考えつくままに、発してみましょう。

 

 

8.胸郭を拡げ、息を感じる

 

 動物のように四つんばいになってみましょう。

 

 1)背のなかに向けて息を入れます(吸気)。犬のように「ハッハッハ」あるいは「ハアーハアー」と息を吐いてみましょう。よくわからない人は、そのまま数分間駆けまわるとわかります。

 

 2)脇の下から胸(助間筋)を拡げる

 

 最初は、息を吸う感じがあるかもしれませんが、やがて逆に拡がった分だけ息が入ってきます(上胸部のみで入れるくせをとってください)。

 

 3)背骨のまんなか、腰のうしろに中心を感じられますか。

 

 

9.心を響かす音

 

 ものまねをしてみましょう。感性をとぎすましながら、イメージの風景を拡げてみましょう。太鼓や鐘の音などは、人の心に何ともいえぬ情緒をもたらすものです。人間太鼓、人間鐘になれますか。

 

 次の例にとらわれず、自分の好きな音に変えてみてください。

 

 太鼓のまね「ドーンドーンドーン」

 

 鐘のまね 「キーンコーンカーンコーン」

 

 

10.耳をすます

 

 ジョン・ケージに<433秒>という曲があります。4分半もの時間、演奏者はじっと座っているだけです。その間にザワザワと周囲から聞こえる音が、曲なのです。

 

 耳を澄まし、他の人の咳払い、足の床にすれる音など、いろんな音を感じてみましょう。

 

 いろんな場で、5分近く、沈黙して、耳に神経を集中してください。

 

 さらに、いくつか、普段はゆっくりとあまり聞いたことのない曲をじっくりと味わってみてください。

 

 1)沈黙

 

 2)日本の童謡を聞きましょう

 

 3)ゴスペルを聞きましょう

 

 4)オペラを聞きましょう

 

 5)グレゴリオス聖歌を聞きましょう

 

「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.13

〇喉声と鼻声

 

声には、楽器である身体の出口から分けて、喉声と鼻声の2種類があります。鼻声とは、風邪をひいて鼻が詰まっているときの声、鼻をつまんで出したときの声です。要するに、鼻腔を通さずに出した声で、鼻を使わない声が鼻声なのです。喉声とは、鼻と口を使った声全般のことです。

 

〇鼻にかかりことばがはっきりしない

 

鼻にかかるのがあまりにひどい場合、鼻の病気(蓄膿症、アデノイド)かもしれません。耳鼻咽喉科にいってください。

すぐに鼻にかかってしまう人は、鼻にあまり抜けないように意識してください。「ナ」を出した状態のように、軟口蓋が下がっているのです。(開鼻声)

それに対し、鼻づまりのような声(閉鼻声)は、その逆のことが起きているのです。

ことばが言い切れずしどろもどろになっている人は、はっきりとことばを言い切るトレーニングをしましょう。

 

・鼻にかかる声、鼻づまりの声

一般的に鼻声というと、鼻から出てくる声と思うが、日本語では、鼻から出てこない声のことを鼻声という。鼻で共鳴されて出てくるのは、3000ヘルツ以上の成分が出ない。

 

・鼻に抜ける声

高い周波数成分が鼻から出ていることがわかる。ことばのフォルマントというのは、3000ヘルツまでは何を言っているかというのはわかる。「子音」は高周波なので、これがきれいに出るとすっきりと聞こえる。(「さしすせそ」がきれいに出るとさわやかに聞こえる。)

 

〇イキミ声、つめた声を直す

 

イキミ声は、浪曲の浪花節、落語漫才の上方、河内音頭の特長です。出産のときのイキんだ声のように、喉をしめつけ、胸も圧迫します。

トレーニングでは、舌根があがらないように、指やスプーンを入れておさえさせるトレーナーもいます。

しぶい声は、時代劇の侍の「拙者は」という声です。これも、喉、あご、胸に力が入っています。

つめた声というのは、浪曲声、荒れた声、ドスの効いた声を想像してください。口をあまり開かず、喉を押しつける声です。

発声障害なら治療する必要があります。声の使いすぎ、空気の悪いところで声を出すこと、飲みすぎ、たばこの吸いすぎも、原因となります。これらを治すには、喉の力を抜くことからです。口先に声をソフトにもってくるイメージにしてください。

舌が邪魔したり、あごしか動かしていない人、舌が長いことでそうなる人もいます。こういうときは、舌の動きをトレーニングしましょう。「タカラ」ということばを繰り返すとよいでしょう。

 

・だみ声

日本独自の歌、声明、義太夫、長唄、浪花節などには、ほぼすべてだみ声が使用されている。倍音、すなわち高調波と息の摩擦などによるノイズ音がたくさんのっている声といえる。

だみ声であれば高調波がずっと上のほうまでに伸びていく。

 

〇頭のてっぺんに響かせたキンキン声をやわらかく

 

声も声帯のところだけでは、喉頭原音と呼ばれる、鈍い音にすぎません。この喉頭原音が声道に響いて、話し声や歌う声となるのです。共鳴は、声を伝えるときには、なくてはならないものです。

音は空気中を伝染するのですから、声の響かせ方は、重要な要素となります。声量のコントロールや言葉のメリハリを決めていきます。この響きを邪魔して活かしきっていないなら、もったいないことです。

声がキンキンと響いている人は、大半は頭(顔)の方だけに無理に響かせているからです。自分には快感でも、浅く広がった響きは聞き苦しいし、ことばが聞きとりにくくなります。響きがうるさくない人のは、深い声を柔らかく扱っているからです。

一昔前の日本のおかあさま方が、電話に出たときのようなキンキンする声は、聞いていて疲れるものです。これは、ていねい、上品なイメージの場合もありますが、度を過ぎると不快です。

とはいえ、逆に地声、生声をストレートに響かせて使う人にも、疲れさせる印象になる人がいます。度を超えないように録音を聞いて調整しましょう。

 

・キンキン声

基本周波数が高く250くらい。かん高い声の成分は4000ヘルツくらいのところまで出てくる。通る声以上に、耳に障る声。

「器の大きい人」 No.397

ここでは、声の器づくりを言い続けてきました。

 

それでは、器の大きい人とは、どういう人でしょうか。

 

自分を犠牲にしても、他人を救おうとして生きているような人、

仕事でも、その他の活動でもよいのですが、

自分を殺す、無私になって生きている人が、

そのような人ではないかと思います。

 

サミュエル・ジョンソンというイギリスの文学者は、

次のように言っています。

 

「人を測る本当の尺度は、自分に何の利益ももたらさない人をその人がどう扱うかということである。」

閑話休題 Vol.89「忍者」(1)

〇イメージと文化関連

 

忍者の呼び名の定着は、昭和30年代になってから。

 

世代別

20代、天誅シリーズ、コンピュータゲームの忍者、忍術

30代、NARUTO―ナルト― 漫画やテレビアニメ、映画

40代 忍者ハットリくん、 

50代  仮面の忍者赤影1969年 

60代 サスケ、カムイ伝、  

70代 忍びの者

 

「忍者ハットリくん」伊賀流の少年忍者ハットリカンゾウ、好敵手甲賀流のケムマキケムゾウ「あずみ」「カムイ伝」「バジリスク~甲賀忍法帖~」「くノ一ツバキの胸の内」

 

テレビドラマ『NHK大河ドラマ 真田丸』  NHK番組「伊賀忍者の森」

 

小笠原昨雲による軍学書「軍法侍用集」(1618年)巻六「忍びの巻上」

 

甲賀と伊賀

大正時代に流行した立川文庫 映画「忍術御前試合」(1957年)豊臣方で甲賀流忍術の大名人である戸沢白雲斎の子・虎若丸と徳川方で伊賀流忍術の大家である百地三太夫とその弟子・石川五右衛門とが大阪城で忍術対決。

 

〇海外での人気、イメージ

 

海外、特に欧米では、過酷な修行を積み重ねたスーパーマン

格闘技術、武器を駆使する暗殺者、特殊部隊

闇に紛れて人を殺すアサシンとかスーパーヒーロー

漫画『NARUTO -ナルト-』の影響

 

エンターテイメントに影響

研究対象として関心

実際に忍術を修行し経験する人も。

 

1967年に映画化『007は二度死ぬ』(小説は1964年)で、現代版忍者の海外での最初のイメージを作った。タイガー田中が率いる忍者たち。

 

1970年には、欧文による最初の英語の忍者解説書『見えない暗殺者』が出版。

 

1980年代には米国製ニンジャ映画の大ヒットでアメリカにニンジャブーム、ショー・コスギは100万ドルハリウッドスター。

 

アメコミからアニメ化された『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』やゲーム『ウィザードリィ』シリーズなど。

 

「ブレイド」(1998)、「Ninja(2009)、「ニンジャ・アサシン」(2009)

 

映画「ジョン・ウィック:パラベラム」で、キアヌ・リーヴスに忍者の印。

 

〇定義

 

忍者とは体系的かつ組織的な技術を有し、その術を持って城や他家に潜入して目的を遂げる可能性を秘めた間諜を言う。その技術には、天の利、地の利、人の利を読み取り、かつそれらの利を誘導、創作できる能力も含まれる。

 

忍びは非武士の忍者で、忍士(しのびざむらい)は、武士の忍者である。忍者は、忍び、または忍士を言う。(「忍者を科学する」)

 

サムライに並ぶ国際語、日本文化の1つ。

 

戦うのが忍者なのではなく、いかに戦わないようにするかが忍者

 

忍びには、堪える、秘密にする、隠れる、の他に、窃盗の意味。

 

日の丸のような赤い丸の中に、忍を書いて、忍びの本精神を表す、太陽とともに、純粋無垢、混じり気のない心根の意味合いがある。

 

忍耐に加え、残忍の忍も含む。いざとなれば、ひと刺し。ある。

「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.14

〇ポピュラーの声の基準 強い声、ハスキーヴォイス

 

 本当のヴォイストレーニングは、声としては完全に統一できるのに近いところまで試みます。ポピュラーのヴォーカリスト(特に、ジャズ、ブルース、ゴスペルなど)は、芯のある声で歌っていることものです。

 高音や声量を獲得していくときに、いわゆる声楽的な美しい声をめざして高音域を獲得するために、響きをとるようなトレーニングをするより、音色でダイナミックに伝わる表現を優先するということです。(声楽は移調できないため、声域を必要とするという条件があります)

 こう考えると、最初は芯のある声を一つの状態としてイメージしつつ、より高い完成に変じることをめざすことが、ポピュラーとしては理にかなっていることがわかるでしょう。

 喉が弱い人ならば、なおさら、声の安定と安全のために、より高い完成度、つまり、無理なく疲れを残さない発声を、求めていけばよいのです。声を発声器官とともに人並みを超えたレベルまで鍛えていきます。

 

 一方、強い声、大きな声の人は、用心してください。せっかくの声を効果的に使いたいなら、完全なコントロールのために基本的なトレーニングをすべきです。(日本では、それだけでステージのテンションがあがり、できているように思うからです。)生じ大きな声が出るだけに、音楽的な部分で学べず、まとめられない人が多いからです。うまく歌うには、統一された声と音楽的感覚が不可欠です。

 ハードな声でステージをして、次の日に喉に影響の残らないヴォーカリストは、日本ではまれです。日頃からの基本づくりのトレーニングが大切なのです。

 ステージ、歌というのは、ヴォーカリストの最終的なレベルの個別問題です。たとえば、「ブルース・スプリングスティーンの声の出し方は正しいのか」という質問は意味がないのです。彼は、音楽の活動ができているのです。音楽や歌は、声を聴かせるわけではないのです。彼はそれで、ステージをもたせられるのですから、彼にとっては、それが正解です。実績があって、ヴォーカリストとして一番大切な魅力があって、大勢の支持してくれる人間がついているからです。

 「あなたが彼のような発声をしたとき喉がつぶれないか?」というのが問題であって、彼にとっての問題ではないということです。

 歌という作品は総合芸術です。喉が強いからよいというものではありません。ひとつのかたちにまとめて、ステージができるのなら問題ないのです。

 

 ハスキー・ヴォイスは喉声と混同されがちですが、一流のヴォーカリストなら、かなり身体を使う深い声のポジションをとった発声法をしています。かなり深いところで強く息(つまり身体)を使うと、あのような声になるのです。声帯が理想的に使われているかどうかは別にして、それなりの表現として動かしやすいのは、確かです。

 日本人で、そういう声をまねて、わざと声を潰している人がいます。声帯を力で押しつけると、マイクにも声が入りにくくなり、音域も狭くなります。声帯は弱いので、使い方を間違えると、壊れます。本当のハスキーヴォイスは、理にかなった使い方をして決して喉声ではないのです。深く統一された声で、やわらかくもしっとりとも出せるのです。

 

[フレーズを統一するトレーニング]

1)「ラ」で(「ドシラソファ」で高いところから低いところ)

2)「ラ」で(「ドシシ♭ララ♭」で高いところから低いところ)

3)「ラ」で(「ミレドレミ」で高いところから低いところ)

4)「ラ」で(「ドソファミレド」で高いところから低いところ)

5)「ラ」で(「ソソソファミ」で高いところから低いところ)

 

[フレーズを動かすトレーニング]

1)あまいゆめを(「ドシラソファ」で高いところから低いところ)

2)あーいしていた(「ドシシ♭ララ♭」で高いところから低いところ)

3)きみーだけーに(「ミレドレミ」で高いところから低いところ)

4)もう二度とーは(「ドソファミレド」で高いところから低いところ)

5)ふたーりだけ(「ソソソファミ」で高いところから低いところ)

「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.12

〇息苦しい声をなめらかな声に

 

相撲を取り終えた力士のインタビューでは、「ハアッハアッ」と息の上がった状態の声です。息が安定しないと、とても聞き苦しくなります。急激な運動をしたあとに、体を曲げ、肩を上下し胸が動くのは、体が酸素を急に取り込もうとしているためです。こういうときに、間に合わないために胸式呼吸が行われるのです。しかし、これは吸気優先であり、吐気でコントロールするには不適切な状態といえます。

しかし、平常でも息苦しく話す人がいます。「息苦しいならもっと吸えばいい」と考えがちですが、そうではありません。この場合はうまく吐くことができていないのです。

息は吐いたら入ってくるのです。ですから、あなたの声が息苦しく聞こえるのならば、問題は呼吸と発声(声立て)です。息が無駄に抜けているときは、口や舌に気をつけることです。息のコントロールカをつけ、長い息を使えるようにしましょう。腹筋や集中力も問われます。

 

・息苦しい、息のつまる、低くこもる声

アタックの部分に異常な成分が出てきている。声道を力でしめているのが原因。力士がいつも息苦しく、しめつけた声を出しているのは、取り組みのとき、異常な力を入れながら掛け声を出すので、それが普通の声の出し方になってしまったという見方ができる。

 

〇日本人はかすれ声が好き

 

日本人は、森進一さんや八代亜紀さんのようなハスキーな声を好みます。

尺八の渋い音色は、竹林をわたる風の音を理想としているそうです。風の音や虫など、しぜんの音は、かすれています。日本人が四季激しく移ろう日本の風土で育んできた感性、木や紙で作った家に聞こえてくる、風や雨の音に敏感に暮らしていたからでしょう。

日本人の好む音色に、サワリといわれるものがあります。これは、琵琶などで、弦の下にある小さな柱(フレット)に弦がかすかにふれ、うなりが生じることです。逆に日本人の浅い声の歌がどうして一つの音色でそろっていないのに、日本人には通じてしまうのかという理由にもなりそうです。

肉食の欧米人は立体的な顔であごが発達し、厚みのある体をしているため、体全体に共鳴させて発声します。日本人は、薄い小さい体のため、喉で絞って出していったのかもしれません。日本人の声は、喉の奥から上の方へあがっていくようで、カン高いのです。

 

〇息のもれる声、かすれる声

 

典型的なのは、明石家さんまさんや久本雅美さんの声です。職業上、喉に炎症を起こし、それが慢性化しています。声がガサガサしているときは、大体、喉の粘膜も荒れている。ノイズが出ている。これは、喉に炎症を起こし摩擦音が発生している状態である。粘膜にも異常がある。カラオケポリープというのは、声帯が炎症し、そこが腫れてポリープができてしまうこと。無理に喉を使いすぎるために起こる。日頃から、声をあまり使っていないのに、カラオケなどでいきなり声を張り上げたり、大声を出したりすると、炎症を起こしやすい。一曲歌ったら、喉を休ませたり、喉飴などで喉の粘膜を保護することが大切です。

 

〇かすれない声にしよう

 

息が効率よく声になっていないと、無駄に息もれしてしまいます。早く息がなくなって声が続かないということになります。呼気消費量が多いのです。これは声立て(息から声へ変換する)の問題です。

まずは体から大きな流れをもって、息を出すイメージにし、すべて効率的に声にすることです。いくら大きな声でも、かすれたり喉に詰まったりしていては、声は伸びやかに聞こえません。そういうときは、小さな声でことばを言うところから始めてみてください。少しずつ、大きな声にしていきます。かすれたら、やめて戻してください。

 

〇年をとるとノイズが出る

 

声にノイズが出ると、実年齢より上に見られがちです。声道の中の凹凸によって気流が渦を巻き、顔のしわと同じで、あればあるほど、高齢の声になってしまいます。

声の年齢を計る場合は、同じ音を続けて長く出してもらいます。口の形を同じにして、声を一定に伸ばしたときに、同じような一つの波形が出てくると、声が若いということになります。

年をとると、神経の伝達系や筋肉が衰え、口の形が一定でなかったり、空気の流れが一定ではなくなってくるので、 一つの波長と次の波長のところで、全く波形が変わってきます。その差を見ていくのが、年齢を調べるときのポイントです。つまり、声のノイズ成分が多くなると、年寄りの声に近づくということです。

また、こういう声の波形から、どういう職業の人かということがわかってきます。いつも大きな声を出していたりすると、セリの仲買人や八百屋の人とか、喉の炎症があれば、煙草を吸う人とか、そういう予測がつけられます。

 

・ハスキーな声

喉をしめがちである。データからもノイズが出ている。若干、高い周波数が少ない傾向があるが、一般的にハスキーな声というと、日頃から喉でしめた声を出しているといえる。

 

〇声の老化を止める

 

自分の声の中には、年齢が若い成分が出ている部分が必ずあるので、その声を重点的に使うようにします。どういうしゃべり方であれば、若く聞こえるか。何をしゃべっているところが、一番若いのか、そして、なぜそこがよかったのか、ということを追求していって、そこを使うようにすることです。一人ひとりによって違ってくるのです。

明石家さんまさんの声は、60代半ばくらいの声です。ノイズ成分が多く、慢性的な炎症が起きています。さんまさんの場合、引き笑いのときが、一番ノイズ成分が少なくて若いのです。ですから、そこを使うようにと、おもしろおかしく言っていたわけですが、さんまさんは、いわゆる声の使いすぎなのです。一番よいことは休ませることです。

人間というのは、一度引っかいたところを、引っかき、また同じところを何度も何度も引っかくということをやります。するとそこが慢性化してしまうのです。いわゆる痔と同じです。また同じところが切れてしまう。結果的に切れている同じところを切って、また新しい組織を生み出さなくてはいけないのです。

声の場合も、声の炎症を抑えるしかありません。そのためには、漢方薬や花梨のエキス、のど飴などもよいでしょう。

 

〇細い声や弱々しい声も個性になる

 

声は個人差の大きいものです。使う声量や声域、声質もさまざまです。声が太いと力強く、声が細いとどうしても弱々しく聞こえるものです。しかし、声が細い人は、それが自分の声が本来もっている個性なのですから、そこに磨きをかけるつもりでトレーニングをしてみることです。

トレーニングでは、声が大きくなる人もあまり変わらない人もいます。もともと声の小さい人は、無理に大きくするよりも大切なことがあります。細くてもよく通り、張りのある声であれば、充分に通用します。

もちろん、あまり声を出してこなかった人は、目一杯チャレンジしてみてください。いくら太い声で声量があっても、無理して出しているうちはよくありません。大きな声の人は、大きさに頼って雑なままになりがちです。

「やってみて、大きく変わることも、あまり変わらないこともある」のです。やってから考えたらよいでしょう。それも自分の声の個性を知ることになります。

 

〇タカタのトークの秘密

 

TVを見ている人の購買欲を高め、思わず買わせてしまうという、ジャパネットたかたの高田明社長のトーク術には、どんな秘密が隠されているのでしょうか。

彼の声を分析してみると、低い声から高い声まで、周波数成分が幅広く出ていて、表現力が豊かといえます。しかも、人間の耳の感度のいい周波数が強く出ているのが特徴的です。主婦が掃除機をかけていても聞こえるくらいに、よく通る質のよい声なのです。

加えて、売り文句のキーワードをゆっくり印象づけて繰り返す方法は、振り込め詐欺の手法にも共通しています。

「天敵、ライバル、問題となる相手をもつ」 No.396

緊張関係のある相手というのは、大切です。

刺激にもなるし、本能的に何かしら、意欲が湧いてくるものです。

 

まわりが心地よい人ばかりでは、人間、ぼけるだけではないでしょうか。

何の発想も出てこないし、生きる力さえ失われるかもしれません。

 

どこかでぶつかるとか、うまくいかなくなるとか、人生に、障害は、適度に必要です。

考えるトレーニングにもなり、それを乗り越えていくことで、処世術も身に付いていきます。

 

生きることに対する緊張感を失ってしまっては、ダメです。

気にくわない人、自分とうまくいかない人、批判する人をあえて、まわりにおき、自ら、接することに努めましょう。

閑話休題 Vol.88「槍」(3)

〇槍のいろいろ

 

直槍:日本の一般的な槍。海外の槍とは違って製造に特殊技能が必要であるが刀剣などで切断されにくく海外のと比較して頑丈である。戦国時代後半に普及し、中でも柄の長いものは長柄槍と呼ばれ、穂先の長いものは大身槍と呼ばれる。日本刀と共通の反り以外の鎬・目釘の要素を持っている。

 

ローチン:琉球(沖縄)に伝わる古武術「ティンペー術」にて使用する手槍。海亀の甲羅から作った盾「ティンペー」とセットで用いて使用する。「るろうに剣心」の登場人物・魚沼宇水で有名。

 

:漁に用いられる。タレント・濱口優でお馴染み。

 

神話では、北欧神話にてオーディンが使用した伝説の槍「グングニル(グングニール)」、

キリスト教にてイエス・キリストの脇腹を貫いた槍「ロンギヌスの槍」が有名。

ケルト神話で太陽神ルーが使用した槍「ブリューナク」、

インド神話にて破壊の神シヴァが携えている槍「トリシューラ」など。

 

 

麻雀では、他家がカンを宣言した時にそれが自分の上がり牌であった場合、ロンを宣言できる「槍槓(チャンカン)」というルール及び上がり役が存在する。

「ゼロの使い魔」では、ハルケギニアに召喚されたタイガー戦車を「ガンダールヴの槍」。

 

漫画「BLEACH」では脅威の射程距離を誇る斬魄刀「神鎗」が登場する。鎗となっているが脇差しサイズの日本刀。卍解は「神殺鎗」。

市丸ギンの始解の神鎗(しんそう)では、門の内側から長く伸ばした刀身で一護を攻撃しています。驚くことに、卍解の神殺鎗(かみしにのやり)では、なんと13kmも刀身が伸びるとギンは言います。この時の「13kmや」というセリフが衝撃的だったので、ジャンプ連載時ではネット上で「13kmや」がネタに。さらに、伸縮速度は音速の500倍、一護も驚きを隠せませんでした。しかし、神殺鎗は、実際は13kmも刀身は伸びず、伸縮速度も音速の500倍ほど速くはありません。真の能力は、伸縮する際に一瞬だけ刀身を塵とし、一部だけを塵に変えないで、相手の体内に刃の内側に仕込んだ猛毒を残すのです。

 

Fate」にも『ゲイ・ボルグ』という槍が出てくる。元ネタはケルト神話。

 

「全身に何百の武器を仕込んでも、腹に括った「一本の槍」にゃ敵わねぇこともある・・・」 赤足のゼフ (ONE PIECE)

「俺の槍を磨け」 アルゴニアンの侍女

 

 

BLEACH

50回(平成16年度)小学館漫画賞少年向け部門受賞。20182月時点でコミックスシリーズ累計発行部数は、国内で9000万部、全世界では12,000万部を突破。テレビ東京はテレビ東京の業績に貢献度の高い作品として、『NARUTO -ナルト-』『遊☆戯☆王』と共に『BLEACH』の名前を挙げた。

「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.13

〇頭声と胸声

 

 高い声が出る人や、女性にありがちなのは頭声の方にすべての声を集め、胸声をまったく使っていない状態です。

 逆に、胸声だけでキープして出している場合があります。そうすると、あまり頭部に響かないのです。

 日本人のトレーナーは、頭声を早くから要求しがちです。後者よりは前者をめざしているのです。しかし、結局、頭声、胸声は区別して覚えていくものではなく、歌のなかでの声のひびきのバランスで考えるべきことなのです。

 世界各国をまわると、後者タイプのヴォーカリストが少なくないことに驚かされます。上に響きをもってこなくとも、胸で、かなり高い音まで出しているのです。これには強靭な身体と息の力を必要とします。

 

 高いところで、胸声をキープしていると、身体が強くなってきます。この歌い方は、シャウトもでき、ことばが響きに流れずにしっかりと伝わりますから、迫力ある歌を歌うときには欠かせません。

 しかもトレーニングにとっても最も大切なこと、声を出すことで身体が鍛えられていき、声と身体とを1つにすることができるのです。

実際のトレーニングの場では、一時的に音がこもったり、フラットしがちで、暗い音色となることもあります。しかし、それは胸を開くための準備であり、深いポジションを獲得することがねらいなのです。つまり、時間がかかるので、多くの日本人は音程や発音という目先の問題の解決に走ります。

 一流のヴォーカリストの声の音色は日本人がめざすほど明るくはありません。表情や響きで輝きをつけていることを知っておいてください。最終的に、歌にまとめるときは、胸に押しつけずに解放させることが必要です。

 たとえ、一時、音域も音量もとれなくなり、響きもことばも不明瞭になっても、ただ1つ、声そのものの持つ表現に耳を傾けてみることです。そこに重みが加わり、魂が身体が入り込んでいるなら、最初の段階としてはよいのです。(この見極めは難しく、個人差もあります。感覚が伴わないこと、声を壊す方向にやりがちです。常に「バランスのチェック」をすべきです。)

 さて、一番、困るのは、すべての声域にわたって、一見、声は統一されているものの、気持ちをのせられる声になっていない場合です。日本人のヴォーカリスト志願者のほとんどがこれを無視して声域を獲得し(たつもり)、音響技術で補っています。それではいくら、先に述べた部分的なトレーニング(発声器官、呼吸法、共鳴のトレーニング)をしても、根本的な解決になりません。本人がそのことにまったく気づかず、上達していると信じてやっていることが、問題なのです。

 

[胸声をキープするトレーニング]

なるべく声を変えないでやってみましょう。

 ことばは何でもよいでしょう(「ラ」)

1)ドレミファミファソラ

  ファソラシ ソラシド

2)ドミソ レファラ ミソシ ファラド

3)ドド♯レレ♯(半音ずつ4つ)で1オクターブ上まで

4)同じく半音ずつ5つで1オクターブ上まで

5)ドレミ、ド♯、レ♯ファ(全音で3つの音)で1オクターブ上まで

 

〇音域別のトレーニング

 

低い音は、人によっては比較的、共鳴をつかみやすいといえます。喉に緊張感を与えないなら、初心者のトレーニングに最適です。ポイントは、声が自然と深く出るポジション(私は「声の芯」と呼んでいます)をつかむことです。  

話している声よりも低い音域はほとんど使ってきていません。だから、悪いくせがついていないといえます(そこでの息で声をみつけることです)。  

普段高めの声を使っている人は、最初はやりにくいので、やや低目から始めます。続けていくに従い、しっかりとした声が出るようになります。そのときに、太くて男みたいな声と思わず、本当にしっかりした声を出している魅力的な女性の声をめざしてください。(世界の女性ヴォーカリストや女優の声の質感を何度も聞いて、捉えておくことが不可欠です)。   

最も低いところで自然に出る声を私は「最下音」と呼んでいます。これ以上、低い声を出そうとすると喉で無理に出すことになります。そこは、深い息だけになるのがよいのです。 

 

[中音域でのトレーニング]

低音で始まり、中音域で橋渡しをしてサビの高音に入るというのが多くの歌です。特に声の差がつくのは、中音域です。中音域は、簡単に出せるだけにしっかりと出すのは、なかなか難しいところなのです。中音域でのメリハリ、声の厚み、ヴォリューム。そこで実力は判断できるのです。  特にソラシドあたりで、声をそろえようとするとかなりの実力が必要となります。多くの人は、ここでヴォリューム・ダウンします。

私のヴォイストレーニングは、しっかりとこれらの音をそろえて出せるようにした上で高音域に入るので、ここでは一時的には、あまり響かせないようにしています。  

中音域なのに、安易に頭声に移行すると、すでにそこで明るく薄っぺらい響きとなり、それなりに盛り上がってしまいます。すると、次にくるサビが冴えなくなり、パンチが効きません。  

曲の構成からいうと、中音域は橋渡しのところで、メロディよりもことばの占める要素がまだ大きいところです。つまり、盛り上げるまえの抑えの部分、ことばにたくさんの息吹、感情を送り込んで、メリハリをつけるべきところなのです。いわばパンチの効いた声が柔らかく深いものであれば、どんな歌にも充分に対応できます。この中音域には安定感とヴォリューム感が不可欠です。  

 

[音域移行のトレーニング]

 高音へ移行するトレーニングは、高音をとりにいくためではなく、すでにとれている高音をより使いやすく、感情表現ができるようにするために行なうことです。つまり、高音域を作っていくのではなく、すでに作られた高音域をより自然に使えるようにしていくために行なうのです。    高音の獲得は目的ではなく、結果なのです。人によって違います。

仮に私がマライア・キャリーの高音が欲しいとして、そこでトレーニングをするのは、最初から無理とわかります。しかし人は、自分にないものを欲しがり、あこがれの人、そっくりになりたいのです。私がみて、それで成功した人はいません。自分の資質や可能性を知ることです。もう一つの理由は、すでに10代で楽に出る人がたくさんいるということで、こういう人は100人に1人で、私も高音からトレーニングします。日本の高音域ヴォーカリストの大半は、努力せずにすでに出せていたのです。確実なところをより確実にしていくことによってのみ、声はヴォリュームを増し、そのなかで音域も獲得していきます。  

ですから自信の持てるところの声域で、メリハリをつけるトレーニング、より確実に深く声をつかまえ、身体の力でそれをコントロールすることを繰り返すことです。そのことによって、自然と声が導き出てくるようになり、気づいたら、声域、声量とも拡がっているというものなのです。   

何ごとも、「早くやりたい」「まだできないか」とがんばっているときには目的は達成できず、そんなことを考えることもなくなるほど量をこなしたとき、目的のものは手中に入っているのです。気づいてみれば、すべては気の遠くなるようなトレーニングをやってしまった後だったということです。  

ですから、中音域で、声を動かすトレーニングを徹底させることをお勧めします。  

1)弱くから強くする  

2)強くから弱くする  

3)弱くから強くして弱くする  

4)強くから弱くして強くする  

 

このとき、発声器官での調整は絶対にしないこと、喉を楽にして、負担をかけないことです。  

胸声と頭声のバランスは、ポピュラーの場合、歌のスタイルによってかなり異なってきます。

 まずは、1オクターブ(たとえば、下のドから上のドまで)は、胸声でキープしておくことをしっかりと行います。これをもう23音(レ、ミまで)、胸声のまま伸ばそうとする方向でのトレーニングがあります。ただし、無理をして声をつぶす危険があるようならやめます。  

逆に、23音上から(レかミ)、頭声でとり、そこから下へ降りてくるトレーニングもよいでしょう。特に高い音が出やすい人には、有効です。ヴォリュームをつけ、胸の響きをも感じてください。  

声楽では、バランスを上に持っていきます。頭声での響きを加え、声楽特有の美しい響きの発声とします。  

しかし、ポピュラーでは、このバランスは自由に決めていくべきだと思います。声楽の人からは理解できず、否定されるべき発声で、素晴らしい個性的な歌の世界を築き得たヴォーカリストばかりいるのがポピュラーの世界でしょう。美しい声よりも優先すべきものを捉えて、声はそれを自由に伝えられるように、身体と一体化すべきなのです。ただし、その根本には、口や舌に余計な力を加えたり、喉声にしないなどという共通の条件があります。つまり、声を統一することに関しての基本は同じことなのです。

 

〇高音域発声のチェック

 

  高音域の発声については、次のポイントでチェックしてみてください。そして正しい発声のできる範囲内でトレーニングをすることです。   

 

正しい発声については、次のような特長があります。

□力強さがあり、共鳴する(響く)

□ヴォリューム感があり、低音から高音まで音色が統一である

□しなやかさがあり、ムラがない

□美しさを感じる

□劇的(ドラマチック)である

□透明感がある、遠くから聞こえる

□均質で無理がない

□柔軟である

□軽快であってリズムが感じられる

□何度も、同じことを繰り返せる

 

間違った発声については次のようになります。

□喉を酷使しているように感じられる

□鼻声や不自然なかすれ声になる

□強弱のメリハリにムラがある   

□ヴォリュームが出ない

□キンキン響くか、かすれたり、喉声になる

□重々しくこもっている

□ひずんでいる、無理を感じる

□音を低くすると極端にヴォリュームがダウンする

□長時間、同じことを繰り返せない

□音色にムラがある 

 

〇裏声とファルセット

 

 日本人の女性の場合は、地声を使わないように教えられて、裏声だけで歌っている人も少なくありません。しかし、裏声で人を感動させるためには、なかなかの素質が必要です。私は、地声で可能性を追究することを勧めています(地声を喉声という意味で使っている人もいますが、ここでは、裏声、ファルセットに対する声として使います)。ホイットニー・ヒューストンやセリーヌ・ディオンなど(ベルディングというものです※)。声によほど恵まれていない限り、使い方でみせていく、そこで裏声よりは地声の方が可能性が大きいからです。

 トレーニングで確実に大きく変えられるのは、身体と息です。その線上にのる声は、いくらでも発展できますが、裏声ではすぐに限界がきます。というのも、響きの調整のトレーニングくらいしかできないからです。

 ただし、自分の作詞や作曲の才能を中心にして世界を切り開いていこうという人には、その限りではないと言っておきましょう(私自身は決してよいとは思いませんが、こういう歌い方をめざす人が多いからです)。

 声自体の魅力からいうと、薄っぺらい声で声域も狭く、声量も絶望的です。特に低中音域はエコーなしでは聴くに絶えないレベルを出られないでしょう。

 男性の場合も、小さく浅い声をやわらかく高音にあてて歌うヴォーカリストが、特にニューミュージックやロックの若手に多く見られるようになりました。ヴォーカリストにはいろいろなスタイルがあり、このタイプは主流になりつつあります。それでもプロになった人は、何らかの世界(ヴォーカリストの魅力は声だけではなく、多くの要素があります)が開けたので、よいのでしょうが、これからトレーニングをしていこうとする人は、お勧めできません。高齢になるにつれ、喉の耐久性に難が出やすくなるからです。

 

1オクターブの上下降のトレーニング]

 1オクターブをとるのは音程のトレーニングでなく、声の統一の調整のトレーニングとして行なうとよいでしょう。 

上から1オクターブ下へいくトレーニング  

完全に声をとらえて、そこから胸声のバランスを増やします。 下から1オクターブ上へいくトレーニング  胸声をとらえつつ、予め、上でのイメージを明確にして、一気に高い音に移りましょう。結果として上にバランスが移ります。 

音が下がるときに注意する  特に音が下がっていくときには音高(ピッチ)に注意します。かなり意識しないと、息の支えが抜けてしまいます。  

«「よい声になれるヴォイストレーニング~声の科学」 Vol.11

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