ご案内

私は10数名のヴォイストレーナーとともに、ヴォイストレーナーにも指導しているため、内外のヴォイストレーナーのアドバイザーやヴォイトレをしている人のセカンドオピニオンもたくさんやってきました。ヴォイストレーナー、指導者、専門家以外にも「ヴォイストレーナーの選び方」などに関する質問が多くなりました。以下を参考にしてください。

 

「ヴォイストレーナーの選び方要項」 http://www.bvt.co.jp/new/voicetrainer/

 

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カテゴリー2:ヴォイトレの論点は、こちら に移動になりました。
カテゴリー4:4.福島英レッスン録アーカイブは、こちら に移動になりました。

 

 

閑話休題 Vol.99「香道」

1.源氏物語 香の文化の物語

1)「空薫物こころにくくかをりいで 名香(みようごう)の香など匂ひみちたるに君の御追風(おんおいかぜ)いと殊(こと)なれば うちの人々も心づかいすべかめり」(第五帖「若紫」若紫(藤壺の姪、のちの紫の上))

<空薫物> 御所で香るような馥郁(ふくいく)とした芳香。

<名香> 仏に祈るときに焚く香 奥の間に誰かがいて祈っている。

<君の御追風> 光源氏は 最高の香を身に焚きしめて 風に乗って漂っていった。

 

2)「風はげしゅう吹きふぶきて 御簾の内の匂ひ いとも深き黒方(くろほう)にしみて 名香(みょうごう)の煙もほのかなり 大将の御匂ひさへ薫りあひ めでたく極楽思ひやらるる夜のさまなり」(第十帖「賢(さか)())

<いとも深き黒方><名香の煙>黒方は最高のルームフレグランス、藤壺ならではの香り。

<大将の御匂ひ>若い光源氏、至高の香りが入り乱れるなどあることでない、極楽のような香りだ。

 

3)第三十二帖「梅(うめ)(がえ)」“六条院の薫物(たきもの)合せ”(明石の姫君の11歳 成女式)

光源氏が四人(紫の上、朝顔の君、花散里の君、明石の上)に香づくりを命じた。

「正月(むつき)の晦日(つごもり)なれば、公私(おおやけわたくし)のどやかなるころほひに、薫物(たきもの)合せ給ふ」

判定は、兵部卿宮、彼を源氏は「古今集」を引き合いに持ち上げている(「君ならで誰にか見せん梅の花 色もをも香も知る人ぞ知る」)。

「香染」「医心方」

<空薫物> 沈香をくだいて磨()って粉にしたものに、麝香とか特別の木の樹脂などを調合して練香をつくり、それを焚く。

 

2.香道の稽古 六国五味の伝が初伝、烓合(たきあわせ)が二伝、以上、皆伝まで八段階の免許。    

第二段階に入ると烓()き合()わせ。空薫物を『宇津保物語』『源氏物語』『日本書紀』『文華秀麗集』『菅家文草』『更級日記』『大鏡』『栄華物語』『今昔物語』『明月記』『宇治拾遺物語』

「競馬香(較べ香)」は、京都上賀茂神社の競べ馬に由来する組香。

「腕香」、「頭香」:麝香や竜脳や丁字()、白檀などを調合した練香を修験者が生身の腕や頭の上で焚いた。

 

3.茶道と香 茶道の点前に炭(すみ)点前(てまえ) 初炭点前で主人が客の前に持ちだす炭斗(すみとり) 炭斗のなかの右に香合の台となる炭を一つ置き、香合(香の入物)を置く。炉には練香を焚く。茶席では、客は必ず香名、香元をたずねる。

 

4.組香としての「源氏香」の成立は、だいたい江戸時代の享保年間。

染物屋で用いている「紋帖」を見ると、江戸時代のきまりと思われる“但し書”がついている。「箒(はは)()」の形は「吉、五、六月」、「花散里」は「凶、五月」、「行幸(みゆき)」は「吉、冬春」などと、文様の吉凶と季節が指定されている。吉凶の割合は、桐壷、夢浮橋を含めて2430と、凶が多い。

 

染織や調度品の文様として「源氏香」が用いられると、上流階級では香道の上で、「盤物(ばんもの)」という道具を使って遊ぶ組香が行われる。「源氏舞楽香」は、「紅葉賀(もみじのが)」と「花の宴(えん)」を基にして作られた遊びで、六種の香を用いて

左方(紅葉賀)青海波 秋風楽 光源氏

右方(花の宴)春鶯囀 柳花苑 朧月夜

に分け、碁盤目になった香盤の上に、桜、紅葉、菊、檜()(おうぎ)の立(たて)(もの)(造花のようなもの)を差し立てて、香を交互に焚いて、当てると立物を進めて勝負を競う。青海波、秋風楽、春鶯囀、柳花苑はいずれも雅楽の曲名、十二音階の調子笛を用いるなど、凝りに凝った仕立て。東福門院(後水尾天皇中宮・徳川秀忠の女(むすめ))は、この舞楽香を高度にして、光源氏と朧月夜の人形、八種の楽器、造り花、幔幕(まんまく)などを具(そな)え、楽しまれた。

 

5.連歌と香

「連歌では一巻を巻きあげるつど、執筆がこれを読み上げ、成就したその一巻の流れと到達したものを共有する。香道では聞香を終え、執筆の記録した料紙を上客から廻し読み、一座で創りあげたものを共にする。この記録の料紙こそ、連歌が求めつづけている座の芸術を、香りで象徴しながら個性ある筆致で刻むものだと思われる。

また「花月香」のように、記紙のかわりに香札を使う場合、記録の料紙には連衆の名の他に札名による花や木の名を併記するが、これなども景物を冠名とする連歌の付合のいとなみを感じさせる。

要するに連歌の側からいえば、連歌が表そうとするものを、香道は香りの世界を媒介に象徴的に成り立たせていったものと思われる。」

 

参考文献:「香と日本人」稲坂良弘(角川文庫)/「人はなぜ匂いにこだわるか」村山貞也(KKベストセラーズ)/「香と香道」香道文化研究会編(雄山閣)

「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.24

〇歌のレベルについて

 歌は誰でも歌えます。しかし、ほんの少しさわりの部分を聞くだけで次のような段階での差があるのがわかります。このことを、わかっている人は少ないようです。

レベルA.誰でも歌えるレベル(今の器のなかで)

メロディ、ピッチ、リズムが正確であり、口先でなんとか歌えるのが、一般の人か、ちょっとうまい人です。

レベルB.うまく歌えるレベル(今の器のなかでのコントロール)

イメージと発声とを一致させ、歌らしく歌えるのが、カラオケ上級者です。

レベルC.すごく歌えるレベル(プロの器のなかでのコントロール)

身体、息も含めて、ヴォーカリストとしての統合的な要素をもち、イメージを全身で表現できるようになってはじめて、プロといえます。

 ブレスヴォイストレーニングは、プロの器づくりとそのなかでのコントロールをめざしています(多くのヴォイストレーニングがレベルBを最高としているのは、日本のプロといわれるヴォーカリストのレベルが低いからですが、タレント、アイドルでないからこそ、これからプロになろうという人は、レベルCをめざさないといけないはずです)。

ことばからメロディへのトレーニング

1.朗読をする

2.リズムをとり、リズム通りに朗読する

3.譜面からメロディを感じる(声は出さなくてよい)

4.ヴォカリーズ(母音)で歌う

5.自分のキィでメロディをつけて歌う

〇自分の声は聞けない

 音楽はイメージを重視して、できるだけトータルに捉えることです。自分で出した声を音楽性に照らしあわせて判断するのは、難しいものです。全体の流れやイメージがわからないまま、部分的に加工してばかりいると、うまく聞こえないものです。

 スポーツなどでも、自分のフォームをあとでビデオでみるのはよい勉強になります。しかし、みながらやっても、どうしようもないでしょう。やるときには、思いきってやるしかないのです。イメージした通りに身体は動いてしまうのですから、原因はイメージにあり、修正はそこで行なうべきなのです。

 同じようにピアニストが自分の音を聞きながら、チェックするわけにはいきません(すぐれたピアニストは、イメージで演奏を進めていっているはずです)。ヴォーカリストは、自分の生の声は聞けません。ですから、歌の途中での修正などはできないのです。そういうことから、音に関するイメージづくりと身体の感覚との結合はとても大切なことなのです。

 イメージをしっかりもったら、そこに音、そして声がついていくかどうかをチェックするのです。歌は人前に提示していくのですから、思いっきりのよさ、吹っ切った気持ちでやることも大切です。

 自分の好きなフレーズ(48フレーズ)を自由に思いのままに表現してみましょう。メロディ、ことば、リズムを変えてもよいでしょう。

 原曲よりも、よくなりましたか。

 伝えたいものが表現できたら、その表現の気持ちを残したまま、正確に歌ってみましょう。

(参考)楽器と声との違い

楽器…調律は済んでいます。 筋肉コントロール、つまり弾く技術がいります

声…調律が必要です=発声コントロール 発声技術は、初歩レベル(ことば)では皆、もっています。これをメロディ、リズムの処理ができるようにしていくことが必要です。

〇集中力について

 音楽とともに流れる時間は止まらず、待ってくれません。そこで、すべてを正しく行なおうとすると、何よりも集中力が不可欠となります。

1.立っている

2.姿勢のキープ、視線を集中

3.発声(ゆっくりと) 声に集中

4.イメージ 音(ピッチ、リズム)に集中

 このように、一点へ集中するとリラックスできます。それも目的の一つです。

 それぞれについて、集中力をきたえるトレーニングをやってください(音読30分、続けることなど)。

〇ピッチをイメージして表現するトレーニング

 歌は、テンポの速い曲も少なくありません。口が早くまわることも必要ですが、できたら、早口ことば(これを感情を込めていうのは、結構難しいので)よりも、ピッチをイメージできる速さであげられるようにしていくべきです。口先でテンポをとって速く読むことを競っても、表現が薄まってはどうしようもありません。早い歌詞、リズムもヴォーカリストは、できるだけゆっくりと時間をかけてこなし、ことばのなかに情(情景、心情)を充分にふくませておくことです。結果として速度だけを調節すべきです。速くしたり、遅くしたりすることによって、少しも伝えるものを失ってはいけないのです。

1.楽譜を目で見て、ピッチ、進行、フレーズをゆっくりとイメージする

2.ピアノでゆっくりと弾き、感じます 

感じたままに声にする

3.感じたことを少しずつ速く感じていきます 

そのまま声にする

4.正しいリズムを感じ、正しいテンポに整えフレーズを形成する

 つまり、速いということは、速いことでさらに緊迫した感情が加わらなくてはいけないのです。

 好きな曲のフレーズを速くするトレーニングをしましょう。メトロノームなどを使ってやるとよいでしょう。速さによって、曲のイメージがどのように変化するのかを感じてください。そして、自分の速さを決めて、それを基準に毎日、トレーニングしてください。テンポの感覚も難しいものです(最初は同じテンポなのに速く感じたり、ゆっくり感じたりすることが少なくありません)。慣れていってください。

〇楽譜からトータルイメージで捉える

 野球の選手は、落下しているボールをとるのに数値で計算はしません。これは、バッターのスイング、打ったときの音、風の方向、強さなどのデータから、どういう球道で飛んでくるのかが、瞬時にトータルのイメージとして浮かぶからです。

 ヴォーカリストにとって、このデータの基本となるのが楽譜にあたります。データ通り歌うのではなく、データから多くのものを読みとり、感じ、それを表現していくのです。

 楽譜の読み方については、楽典で最低限は知っておくとよいでしょう。フレーズ中心にトレーニングをしてきましたが、歌一曲を大きなフレーズでいくつかの構成に捉え、それを楽譜で確認してみてください。

〇呼吸上に歌うこと

 息は吐くと入ってきます。しゃべりまくった次の瞬間に、一気に入ってきます。このしぜんな動きの延長上に歌もあります。たいていは、歌はしゃべるよりもハードな動きになります。しかし、身体が鍛えられたら息をそのまま、声にするようにといっています(ただし、深い息でないとできません)。本当は、その間に「発声法」などという媒体が入ってはいけないのです。

 話し声での息や共鳴は、声と息との結びつきや共鳴においては、それなりに合理的なものです。これをヴォイストレーニングのベースにすることができます。口先でしゃべっている人が、全身で語りかけるようになったとき、そこに歌が生まれるのです。

 全身で語りかけてみてください。

1.おかあさん

2.ワーッ

3.ヤァーヤァー

4.オーイ

5.ヤッホー

6.エーイ

7.ファイト!

8.イクゾー!

「最強トレーニング」 Vol.4

〇原稿を読んでみよう

 

 それでは、次の文章を読んでみて、それを録音しましょう。そして、聞いてみましょう。

 

<『読むのでなく伝えるための声』

「うまく伝えることをめざすのであれば、教科書を棒読みするようにではなく、人に伝わるように声で表現できなくてはなりません。

大切なことは伝えることであり、読むことではありません。

文字を棒読みしているだけでは、伝わりません。

かといって効果を計算したり、感情を移入するとわざとらしくなるのが関の山です。

基本の力がないと、何十回読んでも、プロのようには聞こえないのです。」>

 

いかがでしたか。心地よく聞いていられなかったとしたら、何が悪かったのでしょうか。

自分で、思いつくかぎり書き出してみましょう。

 次に三回、繰り返し練習して、四回目に録音してチェックしましょう。だいぶ、よくなるでしょう。

 

今度は、次の基準でチェックしてみましょう。

□声は、プロのように聞こえ、魅力的で個性的な声か

□発音、言葉、アクセント、イントネーションが正しいか

□つっかかったり、いい間違えたり、流れが滞ったりしていないか

□わかりやすくインパクトがあり、感情のこもった表現か

□音声でもれなく内容が伝わっているか

□無駄やミスもなく、最高の表現を出せたか

□聞いたあとの感じがよいか、安定していたか

 

〇聞く人の聞き方を変えること

 

話す人  A 内容        B 伝え方

聞く人  C 理解度(質、知識) D 聞き方(熱意)

 

 話がよいといわれるためには、このADの合計点が高いことが必要です。

ところが、多くの人はA(内容)しか考えていません。

よく見てください。このうち半分は、聞く人の理解度や聞き方の問題です。

内容がいかによくても、それをうまくやらなくては、半分失敗です。聞く人を聞く気にさせるのは、話す人の伝え方によります。

 

C(理解度)、D(聞き方)は、B(伝え方)によってコントロールされます。

4つのうち、3つは話す人の伝え方にかかってくるのです。

聞く人の理解度のなさは、わかりやすくし、熱意のなさは、興味を起こさせることで、はじめて話の内容が伝わるのです。

 だから、内容がなくとも伝えるすべがあったら、聞く人をある程度、満足させられるとさえいえるのです。

 つまり、声をよくするのも大切ですが、声などを使って聞く人の聞き方を変えることは、もっと大切なのです。

 

話す人  A 内容        B 伝え方

聞く人  C 理解度(質、知識) D 聞き方(熱意)

合計    点

 

〇声のマナーのチェック

 

下手な話というのは、内容よりも伝え方、それも基本的なことを踏まえないために、そのように思わせてしまうのです。特に話す姿勢は、そのまま、すぐに声に影響してきます。

たとえば、次のようなことをしていないか、チェックしてみましょう。

□聞く人を見ていない

□下ばかりをみて話す

□原稿から目をあげない

□声が小さい

□発音がよくない

□聞き取りにくい言葉が多い

□話に切れ目がない

□読んでいるように聞こえる

□だらだらしている

□独り言のようだ

□何がいいたいのかわからない

□何度もいい間違える

 

 

〇話と声のチェックポイント

 

話と声について、次のチェックをしましょう。

最初に他の人のをチェックして、次に自分についてチェックするとやりやすいでしょう。

 

(話のよい例)

□好感度・マナー

□態度がよい

□姿勢がよい

□熱意がある

□テンションが高い

□自信がある

□ていねいである

□一所懸命さが伝わる

□誠実そうだ

□慣れている

 

(話の悪い例)

□だらしない

□自信がなさそう

□テンションが低い

□見下している

□平坦、一本調子

□早口

□テンポが遅すぎる

□語尾の切れが悪い

□発音が不明瞭

□不慣れで落ち着きがない

 

(声のよい例)

□声が大きい(適切だ) (声の大小)

□声のメリハリがある (声の強弱)

□声のスピード(テンポ)がよい 

□声の高さ(ピッチ)がよい (声の高低)

□声の感じがよい (声の音色)

□歯切れがよい (アーティキュレーション)

□発音がよい (アクセント)

□間がよい (呼吸、表現)

 

〇よい声とはどういう声でしょうか

 

声の使い方は、身近にいる人から学ぶのが一番、早いものです。話と同じく、その人のよいところから、学んでいくのです。

次のは、声のよしあしを知るためのチェックリストです。

□大きい

□ひびく

□安らぐ

□落ち着ける

□ゆったりしている

□安定感がある

□心地よい

□リズムがある

□楽しい

 

□明るい

□元気が与えられる

□聞きやすい

□ことばがはっきりと聞こえる

□滑舌がよい

□つっかえない

□迫力がある

□色気がある

□精神性が感じられる

 

〇悪い声とはどういう声でしょうか

 

□小さい

□かすれている

□安らがない

□落ち着かない

□せわしない

□不安定

□不快

□リズムが悪い

□ハリがない

□元気がない

 

□暗い

□聞きにくい

□ことばがもごもごしている

□滑舌が悪い

□よくつっかえる

□弱々しい

□事務的に聞こえる

□こもっている

 

あなた自身が、どのような声や話し方、態度に引きつけられ、どのようなものに反発し、おかしいと感じるか、それがそのまま、自分の声を使うときの留意点になります。

よいところのすべてをまねる必要はありません。自分ができるところから習得していきましょう。

なかには、自分と相反する要素もあります。その人にはよくても、自分には合わない声の使い方もあります。それらをうまくとり入れるには、自分のキャラクター、能力、勝負どころを知り、自分の個性をよりよく活かそうとしていくことです。

 

〇声がよいということ

 

声がよいとは、より大きく強く高く(低く)出せるだけでなく、声がしっかりと統一されており、かすれたり割れたりしないということです。しかも、長時間、声を出しても異常をきたさず、体調の悪いときも(風邪などをひいていても)、表現を保つのに充分な声が確保されていることです。

人前で声を使うときには、声の調子を万全に整えておかなくてはいけません。そういった、声の管理もヴォイストレーニングで扱うべきことなのです。

 自分の伝えたいものが思うままに伝わることを助けてくれる声、そのためには、鋭くも柔らかく、練れた声でなくてはならないのです。

声がよいと感じると、聞く人も、おのずと熱心に聞く態度になるものです。

 

〇声べたの人を反面教師にする

 

声のよい人を見て感心をしたら、あるいは、不幸にして、まわりにまったくいないのなら、声のよくない人をじっくりと観察するとよいでしょう。あなたのまわりにもたくさんいるでしょう。

そこであなたの気づくことのなかには、あなた自身が話すときに相手が思うことと重なることもあるはずです。

 

次のような点について考えていきましょう。

1.何がよくないのか(不快なのか)

2.(その人は)どう直せばよいのか

3.自分についてはどうか

4.自分はどう直せばよいのか

 

それから、もう一度、声のよい人をみて、考えてください。

1.その人はどのようにしているか(その人なら、どのようにするか)

2.それはどうしてなのか

3.自分はそれができるか

4.自分にとってもっともよい直し方はどうなのか

 この繰り返しだけでも、声の欠点は、かなり改良されるはずです。

「AIと芸道」 No.406

芸の道、これは、なにも芸能や芸術だけでなく、なんらかの専門性をもつ道を選んだということです。

私も、なにかに触発されて、人生を決めた、それが転機になった人たちと、多く接してきました。

誰かの声や歌を聞いて、それを選んだとき、いわゆる純粋経験を経て、人生は大きく変わります。つまり、その人が、自分自身に、個性に目覚めたわけです。

それは、なによりも身体性に根ざすものです。誰かの声とは、誰かの身体の発した音波動=声なのです。それを自分の身体で受けとめ、習得していくのです。

たとえ、それで大成しようが、人生のよすがになろうが、そこからの歩みは、身体に蓄積されます。

一方、AIは、身体性を伴いません。その情報やその処理は、いくらあっても、そうした個性たるものの価値を損ねるものではありません。

むしろ、さらにその意味を深め、人生を輝かせるものとするでしょう。

閑話休題 Vol.98「盆栽」

お盆に土や砂、石、コケなどを配して、自然の景色をつくり、鑑賞する。中国や日本の伝統芸術。庭園、盆栽、生け花と同様に、自然の美を立体的に写実、表現しようとする立体造形芸術である。樹木単体の容姿から自然の美を想起させる盆栽とは異なり、配置や景色の工夫をこらす。

 

〇歴史

 

盆景は、盆石(ぼんせき)、盆庭(ぼんてい)、盆山(ぼんさん)などと呼ばれ、形として表現。

鎌倉時代1309年制作といわれる春日権現験記絵。

1620年(元和6年)、桂離宮を造営するにあたり、桂宮の指示で庭師に庭の見本、箱庭の始まり。中国からも盆景の技法が伝来。

江戸時代には盆景の本が出版。

1870年ごろ橋本市蔵が盆景の復興。

1890年ごろ和泉智川が化土(けと、泥炭の一種。挿し木を植え付ける)で山岳や奇岩などを造型する方法。盆景は発展。

1916年の昭和天皇立太子礼に、日比谷公園で菊花展と共に出展される。

 

〇手法

 

モチーフとしては、岩上の松や奥山の滝瀑など。

化土を用いた盆景では練ったものを金属製のヘラで岩石に造型。

人や動物、家屋を表現するために、焼き物、木彫を配置。一般的に長期に保存することはできない。

 

「縮小」極小主義 ミニチュアリズム、ジオラマ、箱庭

一寸法師や桃太郎や牛若丸 “小さな巨人”「小人」小人伝説 日本神話にはスクナヒコナ

「ひな」「まめ」「小屋」「小豆」

「細工」「小細工」

ごはん茶碗、文庫本、コンサイス辞典、カラオケルーム、カプセルホテル、ウサギ小屋

トランジスタ、ウォークマン

万葉集 萩は141首 藤 桜 日本では美「うつくし」は、「くはし(細し)

短編小説 掌篇小説 岡田三郎、武野藤介、川端康成、俳句

 

6つの「縮み志向」の型「『縮み』志向の日本人」(学生社1982)で李御寧(イ・オリョン)

[入籠(いれこ)] 「込める」、俳句で「の」による入籠、「東海の小島の磯の白砂に…」。

[扇型] 扇子は落語、大相撲などで見立てる。折り畳み傘、カップヌードル、着物たたむ。

[姉様人形型] こけし、盆栽、模型、フィギュアやミニチュア志向。

「仮名」や「どうもどうも」を使う。

[折詰弁当型]  行器(ほかい)、曲げわっぱ、破籠(わりご)、提げ重、重箱など松花堂弁当 (栄久庵憲司は「幕の内弁当の美学」)

「詰める」のが日本人、「見詰める」「詰めが甘い」「張り詰める」「大詰め」「詰め込み学習」「缶詰」

[能面型] 「動きを止める美意識」「動きを縮めている」

歌舞伎の見得、お茶のお点前、剣道の仕草、相撲の仕切り、弓の準備、書道の呼吸、小笠原流の礼法

[紋章型] 「凝る」凝り性 日本の紋章 「組」「名刺」

 

「引き寄せ」美の一部を引き寄せた。小さくしながら大きなイメージ「いけどり」「寄物陳思」借景、枯山水の石立 石庭

「見立て」 生け花(活花・立花)にも転用。曾呂利新左衛門が6尺の鉢に桜を盛って吉野山に見立てた。

室町期の華道書『仙伝抄』では、生け花のための枝ぶりには、「陰、陽、嶺、滝、市、尾」を感じるようにと指南。

「縮みの歴史は、ハサミの歴史」利休の朝顔一輪、着物の裁縫、折り紙、盆栽、俳句の「切れ字」

「座」の文化、侘び茶、草庵、「囲ひ」(茶室の古い呼称)、躙口(にじりぐち)、床の間の花器、茶掛け、露地、飛び石など「市中の山居」の縮景

一期一会「時を切る」

「数寄」の文化 「寄席」「寄席鍋」

「縮みあがる」「縮こまる」「小さきもの」「盆景感覚」

“編集”取り交ぜ、組み合わせ、数奇のフィルターが必要、過剰で余白のないのはよくない。

「アワセ・カサネ・キソイ・ソロイ」(松岡正剛)

 

 

参考文献:Wikipediaほか

「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.23

〇力だけで声を伸ばすのは、無理がある

 それでは、身体の力を思いっきり使っていたら、声がうまく出るようになるのでしょうか。いえ、そんなことをすると多くの人は、喉をしめ、無理につくった声で出すので、喉を痛めてしまい、却って上達を妨げてしまいます。息だけが強く出て、喉がかすれたり、口のなかでキンキンひびいたりするだけでしょう。

 ホームランは、素振りだけしていたら打てるかというと、これは、また無理でしょう。いかに正しいフォームでも、ピッチャーが投げる球を読み、その球筋をタイミングよく一瞬に叩かない限り、ヒットにすらなりません。

 となると、バッターは球をよく見ることはもとより、ピッチャーの心理やフォームから、瞬時にイメージを描き、それを無意識ともいえるほど素早い反射で行動に移しているわけです。これを呼吸を合わせるといいます。身体の力を最大限効率のよい声として使うためには、そのように反射的に動く鍛えられた身体も呼吸も必要なのです。

 身体からいくら、息を吐いても、それだけでは声になりません。声になるベストのポイントを見つけ、最小限で最大の効果をあげる発声にしていかなくてはなりません。

 このときのイメージこそ、先に述べた音楽的、そして表現としての完成イメージなのです。

 声が強く出せたり、大きくできることも、大切です。しかし、それが歌に使えるためには、このイメージをしっかりと構築することです。

確実に声にするトレーニング

 次のことばを自分の最も出しやすいキィでなるべく強く太く大きく出してみてください。充分に息を保ち、最後までかすれないように、ひとつの表現にまとまって聞こえるようにしてみてください。ことばがバラバラに聞こえたり、一つの流れから、はみ出さないことです。息がコントロールできることが大切です。

1.つめたいことば

2.あなたのあいが

3.ひとりぼっちの旅の果て

4.あしたのクリスマス

5.去年の夏の砂浜に

〇発声らしい歌い方から逃れよ

 ヴォーカリストにはヴォーカリストの身体があります。一般の人はヴォーカリストのように自由に声が出せません。思うままに表現できません。それはさらに、声を使う技術と自分の表現したい音のイメージを一致させる必要があるからです。それができないとやはり、歌えません。ですから、身体をヴォーカリストにしていくとともにその身体がもたらす声に、より一層の関心を払ってください。おのずと表現の現われる声としていくのです。

 スポーツのトレーニングをやり始めたばかりの人と同様、ヴォイストレーニングも、慣れるまではトレーニングも緊張して余計なところばかり力が入り、うまくできないものです。

 声は心理的影響に大きく左右されますから、アマチュアでも自信をもって歌うと、それなりにうまく聞こえます。中途半端に発声に関心がいっているときの方が、歌えません。しかし、一所懸命のあまり、そういう時期のあることは決して悪いことではないのです。ただ、少しでも早く表現ということに関心をもつことによって、イメージと身体で音声をコントロールしていくことを覚えていきましょう。

 ことばからイメージを思い浮かべ、それを声にするトレーニングです。

1.あいのあまい

2.ゆめからさめたら

3.古びた表紙の本

4.ぶどう園のむこうに

5.いつもいた黒いネコ

6.テーブルにひじをついて

7.駅に舞い降りた雪の

〇イメージの形成

 それでは、そのイメージを具体的にどのように描くかということです。そこで、歌の原点に戻ります。

 よい歌を聞き、その歌を歌いたくて、ワクワクしたときの気分を思い出してください。そこで聞いて、心に残った曲のなかで心にひっかかっている音(声)のイメージをモチーフとします。

 聞いたときに思わず口ずさんでしまったという歌、それこそが心に感じて、しぜんと、自分の口を動かしてしまうというイメージの形成の状態です。

 何を緊張してがんばって歌わなくてはいけないのでしょうか。楽しくて始めたはずです。こんなに楽しいことをやっているのに、なぜ、しかめっつらしなくてはいけないのでしょうか。そうなる人は、耐えず、自問してください。そして、笑みがこみあげてくる、嬉しい楽しい、おもしろい、こういう状態になったら曲にアプローチしましょう(これはお客へのサービスということでステージマナーでもあり、さらにその人のステージの魅力でもあります)。歌おうなどと構えず、何かを伝えたくてその思いから口をついて、つい出てくるような出だしで入りましょう。直立不動、全身かちかちで、いったい、どうして歌が出てくるでしょうか。

 バッターもピッチャーも、リラックスと全身の解放が前提です。その上で集中することが、技術を確実に使うために必要な条件です。

 「ことばをいいたい、聞いてもらいたい、メロディを感じたい、感じさせたい、リズムを刻みたい、のって欲しい、美しい、きれい、おもしろい。それを味わって欲しい、そう、私の歌で。」そういうノリを失わないようにしましょう。

 よく聞き、理解し、ためにためて、心から歌に出すことです。歌を熟成させることを踏まえて、一球入魂します。そしたら、決して、喉を傷つけたりはしないはずです。

 あなたが歌っているとき、いつも心のなかで音楽が、美しくパワフルに鳴っているでしょうか。今一度、確かめてください。

 自分が好きな歌のフレーズを10個並べて、心のまかせるままに歌ってみてください。歌ったところから何かを感じとり、さらにその気持ちを入れて、繰り返してみてください。10回ずつ重ねてください。

〇無理厳禁、喉を開いて声を出す

 できることしかできないのですから、無理を重ねることは禁物です。無理に力を入れると、余計な緊張が生じ、その状態でさらに発声に悪いくせがつきます。これは致命傷です。当初の目的の正しい発声どころか、喉を正しく使うこと(喉を開いて声を出すということ)ができないばかりか、逆のことをやることになります。多くの人が、無理なトレーニングをやるから上達しないのです。その声のひびきは、不快なものとなりますから、これも正しく聞きとる耳さえあればわかるはずです。部分的な緊張を抜くためにも、身体が使えることが、身体全体で受けとめることが必要といえるわけです。

 まず、ことばを(この文章でもよいですから)大きな声で読んでみてください。それを録音してて聞いてください。そしたら、外に出て少し早いペースで500メートルほど歩いて戻ってきてください。息が深くなったところで読んでください。どちらがよいですか。案外と不快なひびきは、身体が動いていないときについているものでしょう。

〇正しく聞きとる耳

 ヴォーカリストとしての発声について、困難をきたすのは、何よりも正しい声、美しい声に対する判断が正確にできないことに原因があります。つまり、まず、本当によい声を知る努力が必要です。そしてそれを見つけるために執拗にがんばることです。つまり、声への関心を持続させることが必要なのです。

 たとえば次のような声は、どんなイメージがしますか。

□美しい声

□魅力的な声

□セクシーな声

□ハスキーな声

□心とかすような声

□甘ったるい声

□きびしい声

□硬い声

□鋭い声

□やわらかい声

 これを自分の声で表現してみましょう。俳優さんのように、しっかりと表現できましたか。

〇音へ集中コントロールすること(リズム、ピッチもふまえて)

 ことばが音にのって歌になります。そこにリズム、ピッチがついているのに、リズムやピッチのトレーニングというとそれだけしか集中できない人が多いようです。注意は、すべてにわたっていきとどき、統合されていなくてはなりません。一つに注意するのではなく、八方に注意を払うのです。

 集中していながらリラックスが必要なのです。どんなトレーニングも、できるかぎり、“音楽”ということば通りに、音を楽しむことです。思いをこめたことばを伝えることを忘れないことです。

 ここでは、何の楽譜でもよいですから用意して、「ラ」や「タン」でリズムだけのトレーニング、ピッチだけのトレーニングをやってみて、その声が表現に足るかをチェックしてみてください。リズムー音程をとるだけにつくられた薄っぺらい魅力のない声しか出なければ失格です。

(参考)ここまで述べたことをまとめておきます。

 音声を聞くこと=感覚に捉えること

 

 音声を出すこと=イメージ通りに歌うこと

 

1.技術、身体の不足→強化(と同時に、より緊密なイメージと感覚の結合)

 

2.見本との違いを知る→似させる

 

           →自分流に形成する

 

3.自分の目標とする声の設定→フォームをつくる

 

 (歌や音声の表現上のイメージの設定)

 

「最強トレーニング」 Vol.3

〇伝える必要性を意識しよう

 

声のよしあしには、伝える必要性を話し手がどの程度、意識して話しているかに負うところが大きいものです。たとえ、子供でも、本当に心から訴えたいことは、ことばが足らなくても、声で伝えることができるものです。その声がまわりの人の心を強く動かすこともあることでしょう。

ところが、そんな子どもでも、教室などで話すことを強いられたら、しどろもどろになりがちです。まして、急にスピーチなど、内容も考えていないことを、話す必要を感じないところで話すのは、難しいことです。

私も、自分ではっきりと知らないことを無理に話そうとして、うまくいかなかった経験があります。まして、何のために話すのかがわからずには、なかなかうまく話せません。

つまり、自分のよく知らないことや伝えたくないことは、うまく話せないものなのです。こういうときの声は、不安定で、よくありません。

 

〇声に表われる意志力

 

どのような声がもっともよく使えるかは、いろんな要素がたくさん働いているので、一概にはいえません。しかし、こうしてはいけない、こうしない方がよいということでは、いくつかあります。
 まず、話す意志が声にどう表われているかが問われます。人に伝えたいとか、わかって欲しいという意志が必要です。それがない話は、他の人に働きかけません。どんなによいことを話してみても、よい話だったという、よい印象を残さないのです。

実際に内容を考えて話したのは、あなただったのに、あとから誰かが説明して、はじめて皆が納得し、その人が考えたもののような印象になったという経験はありませんか。
 つまり、話をする以上、自信をもって自分の考えを主張するということが、第一の条件です。自信をもって堂々と声を使うことができたら、話す問題の半分は解決したのも同然です。うまく話せるということは、自分の伝えたいことをいかにしっかりと伝えられるかということなのです。

〇声で伝えることに専念する


 多くの人は、話すときに、伝えた結果、どうなるのかとか、こういうと人にどう思われるかなどとばかり、考えています。その場でまだ考えているということも少なくないようです。

内容をきちんとまとめていないから、自信をもって切り出せない。すると、身体から呼吸を使い、メリハリのきく声で話せなくなります。
 話した結果に対して責任をとる覚悟がないと、声に説得力が表われません。人に声を使うときは、いかにうまく伝えるかに全力を投じることです。歌い手がステージに立つときに、選曲のよしあしを考えてもしかたないでしょう。そこでは、ただ出し切るのみです。
 多くの人は、うまく話せないから自信がないといいます。すると自信がないから、うまく話せないという悪循環になります。

これは、いらないことを考えすぎるからです。声についても同じです。そのまえにしっかり考え、いい切ろうとしないから、うまくいかないのです。
 あなたは、話し手として期待されている役割を演じればよいだけです。多くの場合、すでに内容ももっているでしょう。そうでなければ、まずその準備をしっかりとやらなくてはなりません。

そして、誰でもあたりまえにいえる内容であっても、いかに皆にわかりやすく、うまく伝えるかということを練習するのです。どうせ話すなら、話す自分、声を出す自分を楽しむところまでいきたいものです。

 

〇話すことに専念するな

 

次に、話すことに一所懸命になるのはよいが、伝えることを忘れて話すことに専念していると、あなたの意志に反して、案外と伝わらないものです。いうなれば、自己陶酔したへたなカラオケと同じです。歌は歌えばよいのではなく、聞く人の心に伝えることが必要です。伝える努力が必要です。そこに気持ちがいっていなければ、うまく伝わることはありません。
 社長さんの話というのは、声ベタ、話ベタでも、案外と聞いている人にうまく伝わります。自分の考え、伝えたいことがしっかりとあり、それを伝えようと苦心して人に話をしてきた経験があるからでしょう。その努力がなければ、人は動かないし、会社はおかしくなってしまっていたことでしょう。

伝わるということは、話がうまいということではありません。話すというよりも語りかけるというほうが適切かもしれません。

 

〇話しすぎることに気をつけよう

 

私も、たくさん早く話せば多くのものを伝えられると、のべつまくなしにまくしたてていたときがありました。これは聞く人に労を強いることになります。

聞く人はたくさんのことを聞いて混乱したり、頭を疲れさせたいのではありません。わかりやすく心地よく話を聞いて、頭に負担をかけたくないのです。その場を楽したい、楽しみたいという人も多いのです。

そういうときは、自分の声を気にかけてみましょう。少しゆっくりめに、少していねいに声を出すのです。
 話しすぎて失敗するのは、最悪のパターンの一つです。つまり、聞く人への思いやりがないということで失格です。
 たった一分間でも、聞く人は短い人生の時間を、あなたの話を聞こうとしてくれています。そこでは、聞く人を思いやることからです。聞く人のことを絶えず、考え、自分の話を律することです。

 

〇感謝のことばが、口につくように

 

「ありがとうございます」

 毎日、いつでも、誰にでも使ってほしいことばが「ありがとうございます」です。

落とし物を拾ってもらった際に、「あら、いやだ……」ではなく、すかさず「ありがとうございます」がいえるようになりましょう。

 「ありがとうございます」をたくさん使える人ほど、感謝する気持ちを相手に伝えることができます。

これは、相手の心に働きかける、もっとも大切なことばです。

 

〇自分の声について正しく知ること


 なぜ声を出すことが苦手なのかという答えのほとんどは、声のトレーニングをしていないからといえるでしょう。

ここからは、実践的なトレーニングに入っていきます。

 

 まず、録音、録画できる機器(スマホでよい)を用意してください。

録画の方が、トータルのチェックができますが、ヴォイストレーニングでは、音声だけでチェックする方が効果的です。

次の順に録音しましょう(最初の記録になります)。

 

1.ことばを使う

「こんにちは、元気ですか。」

「みんな、ありがとう。」

 

2.役者になったつもりで話す<3分間>

 

「何か用かい(かしら)。」 

「どこへ行くんだ(行くの)。」

「それじゃあな(ね)」

 

3.自分の好きな詩(歌詞でもよい)を読む

 

4.新聞のコラムを読む

 

 そして、再生して聞いてみてください。 

どのように感じましたか。

 多くの人は、何だか自分の声ではないような、変な声のように感じるようです。しかし、この声こそ、あなたの今もっている生の声(に近い声)なのです。

自分でいつも聞いている自分の声は、内耳を通って聞こえる声、あなただけが自分の声と思っている声です。

もし、機器やマイクの性能のせいだと思うなら、他の人に聞いてください。

他の人の声も、いろいろと録って聞くとよいでしょう。

誰の声か、すぐにわかる、ということは、あなたの声も再生されている声が近いということなのです。

よくも悪くも、この声とつきあっていくのです。

ですから、この声を少しずつ、磨いていきます。

再生した自分の声が、素晴らしいと思えるようになるまで、がんばってください。

 

〇ヴォイス診断(  年 月 日)  [各5点満点]

 

再生した声をもとに、声の診断をしておきましょう。

1.ことばは、はっきりと聞こえるか。      

1・2345

2.息がしぜんに流れ、無理がないか。      

1・2345

3.声に潤いとつやがあるか。          

1・2345

4.若々しく魅力的な声であるか。        

1・2345

5.息苦しさが感じられず、安定しているか。   

1・2345

6.息のもれる音やかすれる音が入っていないか。 

1・2345

7.声が前にひびいているか。          

1・2345

8.音域にも音色にも余裕があるか。       

1・2345

9.小さな声も大きな声もきちんと聞こえるか。  

 12345

10.身体から声が出ていて喉をしめつけていないか。 

1・2345

 

〇声の鏡をもとう

 

いかがでしたか。でも、あまり心配しないでください。最初は誰でも思った以上に声をうまく使えていないものです。

まずは、声に関心をもつこと、そして、日常の生活のなかで、自分がどのような声を出しているのかを気をつけることです。それだけでも、まったく声に関心をもたずに毎日を過ごしている人に比べたら、随分と声がよくなるのです。

元々の声がよくないのではありません。今まで、声を意識してこなかったから、うまく使えないのは、当然のことでしょう。

 役者であれば、自分の表情、身振りが、他の人の眼にどう映っているのかは、鏡をみなくてもわかっています。だからこそ、人前で堂々と役になり切って演じることができるのです。しかし、そうなるまでには、何回も鏡や録画をみて、自分の表情・動作がどうなっているのかを確かめてきたわけです。こういうこともトレーニングするとよいでしょう。

 しかし、まずは、声に全神経を集中してください。

自分の声、他の人の声、声をプロとして使っている人(アナウンサー、声優、ナレーター、落語家など)の声とその使い方をしっかり聞くことです。

よい声をたくさん聞くと自分の声もよくなってきます。これも、ヴォイストレーニングの基本です。

 

 

「極意」 No.405

習い事から、その道の極意を得るには、

ブレークスルーが必要です。

 

わからないままにも、

何かしら、そこに意味のあることを

自分自身で、どこまで感じられるかです。

 

なにしろ、頭で理解できないし、

身体もそう動きません。

 

理解できて、身体でついていけるなら、

頭でも身体でも習得されているということです。

ですから、それは、まだ習得されていないことです。

 

それでも、どちらかが追いつかないなら、

まだ課題としてみえます。

練習を重ね、年月を経ることで、

頭も身体も自分のもっているところまでは

使えるようになることでしょう。

 

頭も身体も、追いつかないものは、

感覚的に、というしかありません。

 

感覚での意味づけは、直感的な問いです。

自分でもっているものを

そのプロセスを

意識から消すから、

ブレークスルーが生じるきっかけとなるのです。

 

人のまねは、もちろんですが、

そうして得てきたつもりの自分をも、

ときに消し去ることが、必要となるのです。

閑話休題 Vol.97「花道」(2)

〇才気―マスコミの活用

 

 若い蒼風は、新しい生け花の発展すべき道をすでに鋭い直感力で見抜いていました。

「新しい」ということについて、蒼風はこう述べています。

「新しいという言い方は、本当はしたくないが、新しいと言わなければならないから言うので、本来、物事はいつも新しいはずだが、少しも新しくならないで、そのまま止まっているものがある。それに対して、止まらずに動き、変わりつつあるものを新しいと言うのは、当たり前である。新しいのが当たり前で、当たり前なら新しいと言わなくてもよいが、古いのが当たり前のように言うから、新しい方は新しいと断るようになるのだ」

 千疋屋の生け花展をきっかけに、NHKの「家庭講座」の依頼で「生け花十講」を放送し始めます。また、草月流機関紙「瓶裏」を早くも創刊、生け花の社会性を求めました。主婦の友社から「新しい生け花の上達法」を出版します。

蒼風ほどマスコミを生け花のために活用し成功した人はいません。のちに日本内外に多くの支持者・門下生を持つまでに発展しえたのは、マスコミの時代の波に蒼風の偉業が乗り切ったことに他ならないのです。

 

〇運―海外進出へ

 

 戦時中、「花をいけるよりも芋を作れ。花を習う人は非国民」と言われましたが、蒼風は、花をいける日は再び来るまいと思いつつ、疎開先で雑木を使って農家の娘に教えていました。終戦後は、進駐軍の夫人の希望で東京に呼ばれ、教え始めました。これが海外進出のきっかけとなったのです。

 

〇想像力―造形いけばなの誕生

 

 東京に戻った蒼風は、焼けただれた鉄骨や枯れ木を使い、一途な造形精神を発揮して展覧会を開き、人々を驚嘆させました。絵画、彫刻、建築デザイン、写真など他のジャンルのアバンギャルディストと交遊し、ますます盛んな創造活動を続けました。生け花のみならず、モビールやレリーフなど新造形への道を開いたのです。やがて草月流は門下生百万という大流派になっていきました。

 

〇蒼風の才能とは

 

 「臨機応変の瞬発力とバランスのよく取れた空間支配の能力とかあって、どんな花をいけても、必ず誰にもわかる明確な見せ場をつくることができ、しかもそれを決して平俗陳腐には陥らせずに新味を出す、本当の芸術家のみに与えられた才能があった」 (大岡信)

 たとえば、当時の生け花は、ピラミッド式三角形がほとんどで、花をいけるのに形の創作を楽しみにする心配りには限りがありました。蒼風は、逆ピラミッドなど自由自在な形を取り入れ、新鮮な美を生み出しました。草月流の花器が無地なものばかりなのは、本当に花の美しさを知っているからです。

 

〇蒼風語録

 

“テーマ”「テーマをもっていけることは、1つの勉強法である。出来上がった生け花に対して、何を感ずるか、どう見るか、何がそこにあるか、いけた自分はもちろんのこと、それを前にした他人がどう受け取るか―そこに感じられたもの、そう思えるものをテーマだといえば、全ての生け花にテーマはある。しかし、テーマ=題を決めて、いける。題を出しておいて、それに向かっていける。そしてその題のために考える。工夫する。つくる。一般的にはこのように題に対して積極的なときだけを、テーマのある生け花という。

テーマでいけるのが勉強になるのは、一方に内面的な追求があるということで、同じ題でも、梅や椿ではなく、愛、夢、平和などという題になると、内面的なものを追求せざるをえなくなるからである」

 

“野にあるように”「利休の言葉に<花を生けるならば“野にあるように”いける>というのがある。これは一旦切り取られた花が、どんなに自然さを失い、調和を破壊しているかを知った上で、ハサミを入れ、枝ぶりを曲げ、葉数を減らして“野にあるように”美しくつくるということである。

 

“信念”「人が何を言おうと正しいと信じてどんどん仕事をしていけば、やがては皆がわかる」

 

勅使河原蒼風「草月五十則」部分

1則 花が美しいからといって、いけばなのどれもが美しいとは限らない

2則 正しいいけばなは、時代や生活と遊離していない

3則 精神に古今なく、作品は変転自在

4則 一輪、一と枝、の強調。大自然を圧縮したような一瓶

5則 花と、語りつついける

22則 上手な人ほど、器前、器後の仕事が入念

23則 花は大切にすること、花は惜しまぬこと

31則 いけばなは絵だという、音楽でも、彫刻でもある

35則 家庭だけが場ではない。個人的な場、公共的な場

36則 花の色だけでなく、器も、台も、壁も、光線も

39則 環境から生まれたように

44則 重複がないかを見る、強調があるかを見る

47則 花を、器を、場所を、探す努力

48則 意外ないけ方がある。意外な題材を忘れている

49則 新、動、均、和、の四原則。線、色、魂、の三拍子

50則 見る目と、造る手と、片寄らぬ精進

 

参考資料:「花ぐらし」勅使河原蒼風(主婦の友社)/「草月流」いけばな全書(小学館 )/「勅使河原蒼風展」(西武美術館)/「勅使河原蒼風の眼」(朝日新聞社)Wikipedia

「ヴォーカルトレーニングの全て」 Vol.22 

〇身体から入る

 所詮、ヴォーカリストは、歌えればよいのです。声を出すのに、重量上げの選手ほどの筋力が必要なわけではありません。しかし声を出すことに関して、もっとパワフルかつ繊細にコントロールできる技術が必要なのです。それは表面だけをまねただけの弱々しい声の出し方からはできません。プロのピアニストの繊細なタッチには、私たちは到底、まねのできない強く確実にヒットさせる指の技術と力があるのです。小指の鍵盤を叩く強さ一つとっても違うのです。

 そうなると、まず、一流のヴォーカリストと比べて、中途半端だと思う声は、使えないからだめだという厳しい判断を自分の声に対して行うことです。一声出して明らかに差がついているなら、いくら一曲を何度も繰り返して歌っても同じレベルのことはできないからです。まずは、一声のシャウトの差を縮めること、そのコツやタイミングをつかむためにはパワーの差を縮めることです。つまり、身体にパワーを貯えていくこと、声に対して身体を使えるようにしていくところから始めることです。

〇身体と声との結びつきに深い息

 声に対して、身体をうまく使うための秘訣は深い息にあります。一流のヴォーカリストは、必ず、身体から深いブレスができる身体をもっています。息が身体の底まで一瞬に入り、出すときに自在にコントロールできます。声はその上にのって出ています。そういう身体づくりを少しでも早くするのが、ヴォーカルのためのヴォイストレーニングの第一歩です。チェックポイントは、次のようなことです。

1.腹式呼吸ができる、お腹の背や脇が動く

2.胸や背骨に声がひびく

3.吐いた息が身体に結びついている

4.声が太く、音色が変わらない

5.胸のまんなかと眉間(これは、最初は意識しなくてもよいです)に声が集まる

〇どういうヴォーカリストを参考にするか

 ヴォーカリストには、いろんなタイプがいます。オリジナリティ、個性だけを売りものにしている人もいますが、声に関しては、次のようなヴォーカリストを一度、お聞きすることをお勧めします(ただ、日本人は曲による出来、不出来が多いので、ここに掲げた曲を参考にしてください)。

日本人

1.さよならをもう一度    尾崎紀世彦

2.霧の摩周湖        布施明

3.愛は限りなく          村上進(カンツォーネ)

4.六月の詩             カルメン・マキ

5.愛のメモリー          松崎しげる

6.影を慕いて            森進一

7.川の流れのように     美空ひばり

8.あんたのバラード     世良正則

9.恋の季節              ピンキーとキラーズ

10.二人でお酒を          梓みちよ

外国人(各国の偉大なるヴォーカリスト)

 

1.シャルル・アズナブール  (シャンソン 男性)

 

2.ミルバ                  (カンツォーネ 女性)

 

3.エディット・ピアフ      (シャンソン 女性)

 

4.ジャニス・ジョプリン    (ロック 女性)

 

5.クラウディオ・ビルラ    (カンツォーネ 男性)

 

6.アマリア・ロドリゲス    (ファド 女性)

 

7.マヘリア・ジャクソン    (ゴスペル 女性)

 

8.メルセデス・ソーサ      (フォルクローレ  女性)

 

9.ビリー・ホリデイ     (ジャズ 女性)

 

10.ルイ・アームストロング       (ジャズ 男性)

 

11.エラ・フィッツジェラルド(ジャズ 女性)

 

12.パティ・ラベル          (ゴスペル 女性)

 

13.エンゲルト・フンパーディンク(ポップス 男性)

 

 

 日本人ヴォーカリストについては、多くの場合、声そのものは世界のレベルに達していません。特に、最近のヴォーカリストは、くせをつけて歌っているため、見本にすると危険でさえあります。トレーニングには正しい見本(基本のある人)をとる方がよいというだけで、ヴォーカリストとしての評価は、まったく別に考えてください。

 

 

〇外国人ヴォーカリストが日本語で歌ったものを聞く

 

 

 次のように外国人ヴォーカリストが日本語で歌った歌を聞くと、その深さや技量、音楽性がよくわかります。

 

1.夜明けの歌、愛の別れ  (クラウディオ・ビルラ)

 

2.ウナセラディ東京     (ミルバ)

 

3.アドロ                (グラシェラ・スサーナ)

 

 さらに、日本のヴォーカリストの歌った歌を外国人ヴォーカリストまたはグループが歌ったもの(カバー)を聞いてみるとよいでしょう。たとえば「上を向いて歩こう」(坂本九)は、「スキヤキ」として全世界でカバーされています。

 

 

〇オリジナリティの発見

 

 

 同じ歌をいろんなヴォーカリストが歌ったものを聞いて、自分の好みを知ってください。

 

1.聞くと気持ちのよい歌

 

2.このように歌いたいと思う歌

 

3.声そのものが好きな人(ヴォーカリスト、その他)

 

 たとえば、スタンダードナンバーのもの、クリスマスソングなど、同じ曲を違うヴォーカリストが歌っているのを全て聞き比べてみましょう。そして、その曲をあなたが歌ったときに、果たして〇番目としてふさわしい歌い方ができているかどうかがわかるはずです。

 

 たとえば、「SILENT NIGHT(聖しこの夜)」をマヘリア・ジャクソン、TAKE6、マライア・キャリー、グラディス・ナイト&ザ・ヒップス、「WHITE CHRISTMAS」をオーティス・レディング、エラ・フィッツジェラルド、グロリア・エステファン、マイケル・ボルトンで聞き比べてみましょう。ピアフの没後30周年として、「愛の讃歌」を多くのヴォーカリストがカバーしたものなども出ています。

 

 

〇声のバランス

 

 

 声は声帯で出るのですが、かなり複雑な筋肉の使い方と共鳴のさせ方で支えられています。同じ「ア」でも、たくさんの出し方がありましたね。ピッチについても同じです。これを自分自身の最高の声、ベストの声にしていくのです。

 

 このときに声を統一していくことと声に表情をつけていくことが、必ずしも一致しないことがあります。しかし、声のコントロールを最初は優先してください。

 

 いくら歌っていても、まったく歌のレッスンになっていない人が少なくありません。発声では、声を統一していき、歌では、その音に要求される音声的イメージの要素を満たさなくてはなりません。これを同時にできるのは、かなりの技術が必要だからです。もちろん、ヴォイストレーニングをしながら、音色のイメージについて深く学んでいくことは忘れてはなりません。

 

 

 次のことばで声をできるだけ長く出してください。

 

1.「アーーーー」

 

2.「エーーーー」

 

3.「イーーーー」

 

4.「オーーーー」

 

5.「ウーーーー」

 

 出したときから、止めるまで、完全にコントロールできたかどうか、チェックしましょう。

 

 

〇できるまでにできないことをやると上達しない

 

 

 発声習得の方法については、口のなかや喉の開け方をどのようにしようと、その日に解決できるものではありません。その日に解決できるなら、すでにできるのです。歌など単純ですから、すぐに歌えるのです。それができないのは基本ができていないからです。それを一日でやろうなどと思うから、間違うのです。そこに気をつけてください。

 

 たとえば、高い声を思いっきり、口蓋の上の方にあてて出すようなトレーニングをやっている人がほとんどです。判断力のない初心者にとって、それはいかにも早く上達しそうなトレーニングであり、いかにもノウハウのように思えます。確かに何度か繰り返すと、そのうち高い音が出るようになる人もいるのです。

 

 しかし、多くの場合、それは、ただ、悪いくせにさらに悪いくせをつけたのにすぎません。その声は、本当の意味では、まったく安定せず、メリハリをつけられず本当に表現するに使うには、ほど遠いのです。いつまでも使いものにならないのです。ピアノでいうと、ひじも指もふしぜんに使って、高い音を弾いたというだけです。こんなことをすれば、正しく時間をかけて、習得すればいずれ出せるようになった声の可能性まで、殺すことになるのです。届いたらそのうち表現できるに足る力強さが伴うわけではありません。むしろ逆だということは、日本の多くのタレントヴォーカリストを聞けばわかることです。

 

 

 低い音から高い音まで、どのくらい同じ音色(太さ)で統一できるかチェックしましょう。

 

 半音ずつ、一番自分の出る最も低い音から上げていきます。次のことばで言い切ってみましょう。言い切れないところは無理しないように。ひびく位置は変えないようにします。

 

1.ハイ

 

2.アオイ

 

3.ラララ

 

4.アー

 

5.ララー

 

 

〇できるまでは基本を繰り返し、待つしかない

 

 

 発声をしっかりと固めないと、一度獲得できたはずの音域が、あるとき、出せないなどということが起きます。これは、未熟だからでなく、最初から間違って獲得した音域だからです。ヴォーカリストにとって、こんなことが起こり得るなら、なんと恐いことでしょうか。もし、ステージだったら。歌はやり直しがききません。そんな不安定な声では、仮に偶然にうまく出ても、いつまでも自信をもてないでしょう。すでにステージに出るまえに負けています。何よりも困ったことはそのため、いつまでも身につかないことです。

 

 多くの人はスクールなどでレッスンを受け、1オクターブ半から2オクターブ出るといっていますが、私のところにくると、半オクターブどころか、1音も表現するに足らない場合がほとんどです。こんな誤解が生じるのは、理由があります。多くの場合、高い音が出ている人は、眉間にひびきがあたっていると感じます。そこで、眉間や鼻の上、頬骨などにひびきをあてるというトレーニングをしています。これは方法と結果を混同しています。それは、耳がよければ、出ている声そのものを厳密に判断すれば、すぐわかるはずです。本当に通用する声(ハイトーン)なのかどうかと問えばよいのです。この種の原因と結果を混同した間違いは、とても多いのです(これについては拙書「ヴォイストレーニングここがポイント」(音楽之友社)に詳しい)。そのため、発声が正しく身につかなくなります。

 

 つまり、ホームランが打てて初めて、それがベストのフォームだといえるわけです。それなのにフォームがしっかりとできてもいないのに打席でバットにボールがあたった、かすったと、一喜一憂しているのと同じくらい愚かなことなのです。

 

 

 高音域の発声をチェックしましょう。

 

 最も高い音で次のことばの読みとフレーズをやってみてください。それぞれ続けて、10回やって、同じようにコントロールできているかをチェックしましょう。

 

1.アエイオウ

 

2.アーエーイーオーウ

 

3.ひのひかりに(タンタンタータタタン)

 

メロディをつけます

 

4.ごらんなつのひの(レミミミファミファ)

 

5.とおくはなれかけた(ドレレレレレレードド)

 

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