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2014年5月 7日 (水)

二重構造の声 V229

本来は、人とうまくやっていくための声と、ステージで求められる声は違います。特に日本のように、丁寧なビジネス声が求められる社会では、接客マナーでのよい声は、ある程度マニュアル化されています。誰にも同じように、浅く軽く表層的な静かな声、あるいは、一方的に強く元気にあふれる声が求められているのです。前者はファストフード、後者は居酒屋などで典型的にみられます。一見、正反対のようであって、実のところ、その人の元来の声、オリジナルの声を全く省みていない点では、私にとっては同じです。  つまり、10点止まりの声なのです。個性のある声は、リーダーや異なる人々の集う社会では、絶対条件です。ですが日本人にはいささか不快なのです。  ここでのオリジナルというのは、誰もやっていない、初めての、というのではありません。その人の元来、本来の、ということです。それをしっかりさせると10の声が20に近づいていきます。それが私のヴォイトレの目的であったのです。  つまり、基礎としての声に応用を兼ね備えた声、その人の潜在能力を、心身を持ってマックスに、発声技術を持ってマックスにすることで、芸となるべく声とするのです。一声でも違いのわかるレベルにしようということだったのです。  それに対し、現在の声の状況といえば、オリジナルの声にオリジナルの表現でないと認められないレベルの高さにないゆえに、うまい人に似た、器用でよい声の使える人が代用されてしまう悪循環に陥っているのです。  一般ビジネス社会ではともかく、業界でさえ、一般的な声、見本(以前のスターや売れた人)と似ている声を求めるという日本の未熟さが、ヴォイトレをカラオケレッスンに堕落させたといえます。どこの世界にアーティストに二番煎じを求める国があるのでしょうか。本人の基礎の上にのった応用としてのオリジナルのフレーズでしか通じないという大前提から外れた国が日本なのです。

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