Q308.自分のオリジナリティを考えながら発声練習をやるときに、その持っていき方がよくわからないのですが、何かそのきっかけになるようなことはありますか。
発声練習のときのオリジナリティは、表現ではなく、体の原理に合った、ということになります。できるできないというのは、似てる似てないというのと同じで、かなり相対的なものです。また、誰でもすべてのことができるわけではありません。
できないことをやるというのは、例えば、音程がとれないから音程練習をやるというのと同じで、課題になります。しかし、プロのフレーズが取れない、その人の表現形式が取れないというのは、何をもってとれないかということが問題になります。それは、一人ひとり違ってくることです。声を他人と同じように出すということは、不可能でしょう。どうしても似てしまいます。似るから、だめなのです。
演歌の場合などは、それをこぶしの動かし方とか、ビブラートのかけ方とか、そういうことから教えられるのかもしれませんが、これも私は感心しません。ポップスの場合は、声の感覚的な置き方みたいなものが大切になってくるので、仮にそれができたとしても、表面的な真似になってしまうのです。
ただ、最初は真似も練習ですから、そこから入ってみるのはよいと思います。誰かの歌をコピーしようと思っても、元歌が必ずしもよい材料とは限りません。例えば、低いところでファルセットがかけられないとか、そういう問題が現実的には起きてくるのです。しかし、それを自分がやる必要がどこまであるのかということです。そのヴォーカリストがやっているから、そういう声が出せるから、歌のスタイルになっているから意味があるのであって、普通は必要ありません。その練習をどこまで重点的にやるかということは難しいことです。
一つは必要性の問題があると思います。誰かにとっては重要なことでも、残りの人たちにとっては、ほとんど意味がないということもありえます。やれるようになるには、すべてをやるのでなく、絞り込むことです。ですから、レッスンで提供した材料から、細かい部分は自分で汲みとって欲しいのです。
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