Q3242.上手な歌手の歌を聴いているとビブラートのような感じで声がゆれているように感じるのですが、どうすればできますか?
A.確かに一流の歌手の声には聞き手の心に入ってくるような微妙な息遣い、声の抑揚、言葉の厚みなどが感じられますね。特にフレーズの最後にスーッと消えていくようなビブラート、また大きく歌い上げた後の余韻のこもったビブラートはオリジナル性があってなかなか簡単には「真似」できません。しかしビブラートがかかっているなあと聞き取った、または感じ取ることができたということは技術的にできるようになる一歩手前まで来ているといえます。ビブラートを使う曲はゆっくりしたテンポ、バラード系に多いですよね。一つ一つのフレーズも長いはずです。ですからまずは声を長くロングトーンで伸ばせるようになること、フレーズの終わりまでピッチがぶら下がらないこと(結構気が付かないうちに下がっている人が多いです。)をしっかりできてから、息を全部使い切る前に心持ち余裕を持たせてディミヌエンドしながら、フレーズを歌い終えるようにする。最初は難しいかもしれませんがトレーナーに聴いてもらいながら感覚をつかんでいきましょう。するとフレーズの最後のほうで声は小さくなってきているのに、息が残っていると思います。この声と息の微妙なバランス、ミックスがその人それぞれの声のゆれ、すなわちビブラートとなって表れてきます。
イタリアのバロック時代の歌い方では「メッサ・ディ・ヴォーチェ」(Messa di voce)といってフレーズの始まりと終わりには必ずクレッシェンドとデクレッシェンドを使って歌うようになっていましたし、また作品そのものもそのように書かれていました。
その後演奏楽器が改良され音量が増えたり、様々なリズムが出てきたりして自然なビブラートを使う曲の割合は減ってきましたが、最近の「アダージョ音楽」や「癒し系」ブームのように再びゆっくりした歌唱法が取り上げられるようになっていきました。練習のときもまずはゆっくりと丁寧に歌いこむように心がけてください。(♭Φ)
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