Q3909.なぜ発声の本はあくまで参考程度にしかならないのでしょう
A.たとえばパッサッジョ・アクートにしても、本でわかるのはせいぜいパッサッジョの場所だけです。しかし、本質はパッサーレのしかたにあると思います。全世界の発声教育者が、あと一歩進んで、ここまで見識を深めれば歌の発声の世界は変わると思います。しかし、その一歩はとてもとても遠い一歩でもあると感じます。パッサーレの仕方は、結局、教師が演奏経験、舞台経験を重ね、世界的な歌手との共演の中で徐々に気づいていくしかないのが事実だからです。わたし自身、多くの歌手にアンケートをとって、パッサーレの仕方は複数あることに気づいたということもあります。絶対の方法論がない、ということは、わたしに教える自信を打ち砕くと同時に、わたしには何か言えることが出来たかもしれない、と思ったのでした。余談ですがそれがわたしが教えてみようと思ったきっかけともいえると思います。
これまでの歴史の中で、どのようにして良い歌手が育っていくのかと問われたならば、聴衆の前での緊張感の中に身をおいて聴衆とともに歌手の声も育っていくものです。それが、発声は理屈ではないということをもっともあらわしている事実ではないかと思います。
(♭∀)
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