Q.なぜ、声が大きいことが必要なのですか。☆
Q.なぜ、声が大きいことが必要なのですか。☆
A.それは逆で、必要に応じて声は大きく使われてきたということです。例えば、危険を知らせる。動物と同じく、自分の仲間の生命の危機に対して、早く大勢に伝えるのに、声は便利なものでした。人間は共同でさまざまな仕事をします。第一次産業のように体を使うものにも、大きな声は必要だったのです。
Q.今でも声はトレーニングが必要ですか。☆
A.日常の仕事では声を大きく出す機会はどんどん減っています。コミュニケーションツールとしてメールが主になったこともあります。しかし、挨拶やお詫び、励ましや慰めなど、所作、表情に、適切な声が伴うことが、大切なこともあります。いや、もっとも大切
な機会にこそ、声は欠かせないものといえます。それこそ、さらにヴォイトレの必要は増していると思われます。また、活気など、周りに与える声の力も影響は大きいものです。自分が出すことでの気持ちの発散や充実などにもっと焦点が当てられてもよいと思います。
Q.昔は、日本でももっと声を使っていたのですか。☆
A.今よりは家庭も学校も職場も、声には大きな価値と必要性がありました。挨拶、号令、点呼、高歌、社歌などよく使っていました。返事なども大きな声が求められていたと思います。また、外で遊ぶ子供たちも大きな声を出していました。
Q.パソコンなどの声は、人間の声に変わることができますか。☆☆
A.1990年代、多くの棋士が「パソコンにプロが負ける日はこない」と言うなかで、羽生善治氏だけが「2015年に」と答えたそうです。そして、2014年、5人のプロと5つのソフトの対決は、4勝1敗、パソコンの圧勝でした。
初音ミクの登場で、ボーカロイドはヴォーカルのなかにくい込みました。昔のコンピュータ音声は、人間に聞こえず、人間の声の合成音でした。しかし、技術革新は早いのです。私は、声優、ナレーションの仕事のほとんどでも10年をまたずにパソコンソフトに代わられると、ここにくる志願者に5年前から言っています。人間が人間の声を求める以上、人間の声は不滅といえども、代替は効くし、日本の現状ではアニメ、2Dの世界を求める人も多いのです。歌も舞台も作品ゆえ、それを観る人の脳の受け止め方で変わっていくのです。つまり、人間の声の代わりどころか、それ以上の影響力をもっていくこともあるということです。
Q.人の声は、人の心に訴える影響力を失っていくのですか。☆
A.人に訴えるものは、育ちや生活の環境に深く結びついているものと、本能的に遺伝として入っているものとがあるように思います。歌や舞台は、日常ではなく、作品です。作品は、人生のピークのダイジェストのようなものですから、より強くも人の心に働くものですが、時代を経て弱まることもあります。声を扱っている者としては、そんなことにならないように努めるつもりですが、世の中は必ずしも一辺倒ではありません。そこで生活する人によって変わっていくでしょう。
Q.なぜ、マニュアル声や録音された声が使われるようになったのでしょう。☆
A.マニュアル声は、店員の決まりきった言い方、録音された声は、今の焼き芋屋さんの再生音声のようなものといってもよいでしょうか。これは、コスト削減、労力削減とともに標準化、つまり、誰でも平均レベルの応対がすぐにできるようにしようという効率化です.特に日本人らしい発想と、日本人ならではの技術の産物のように思えます。
声やことばには個人差があり、それが出ることで、好き嫌いも出ます。人の違いによって説得力も違うし、その人のやる気や体調でも左右されます。それを当然のものとして許容する文化と日本のように誰でも同じサービスを求める文化の違い…と私は日本人ゆえ、日本人に厳しく述べます。読むのも日本人ですから。
Q.今の人たちの声は、日本人の性格と関連しますか。☆
A.マニュアル声であっても、そういう一定のサービスを誰にも望むのは、すでに個性を無視して、相手が個別に違う存在であることをよしとしないのです。マイナスをなくす方に厳しいのが、日本のマニュアルです。
焼き芋のおじさんが個人の声で売ると、みんなうまくいくわけではありません。訓練したプロの人以外は、おいしそうに聞こえず、疲れた声で、発音も不明瞭かもしれません。本人もやりたくないように思います。選挙の候補者のように個声に乏しい日本では騒音にもなりかねません。プロがいなくなったからと、コンビニやファーストフォード店に行っても、サービスの大差はないでしょう。なるようになっているのです。
Q.なぜ、日本のサービス業では、その人らしい声でなくマニュアル声でトレーニングするのですか。☆
A.魅力も説得力も、親しくしようという間では、大きな武器です。しかし、そうではない間柄では、人はそれを避けます。そのためのビジネスマニュアルであり、大人の対応でもあるのです。とはいえ、他国からみると、過保護すぎるようなものでしょうが。
Q.いろんな声が求められる仕事では、どうヴォイトレすればよいのですか。☆
A.ヴォイトレの立場として、何でも身につけておくのを勧めています。しかし、それは同時に、なんでもいつでも使うものでないのです。むしろ、やたら使わなくてすむためにヴォイトレで、あらゆる声とその使用について学ぶということなのです。
Q.オペラの感情表現というのが、私には伝わりません。日本人だからでしょうか。☆
A.すべてのオペラの表現がすばらしいものでしたら、たぶん、全世界のすべての人が毎日、聞いているでしょう。どんなに誰かが感動するものでも、他の人が感動するとは限りません。長く接していくとわかるものもあるし、わかっていく人もいます。そうならない人もいます。価値観やその優先順位は、人によって違います。
しかし、ヴォイトレからいうと、オペラの声には学ぶところ大です。好き嫌い抜きに、トレーニングでしか到達できないレベルのものがあるのなら、トレーニングをしていこうという人は接してみることをお勧めします。(♯)
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