Q.詞を読むトレーニングを教えてください。
Q.詞を読むトレーニングを教えてください。
A.「もし世界に声がなければ」 (by Ei)
もし世界に声がなければ 人は豊かにならないだろう 争いはやまないだろう
人は救われないだろう
もし世界に声がなければ 人は夢を語れないだろう 自分の思いを伝えられないだろう 人は優しくなれないだろう
もし世界に声がなければ 愛は 育まれないだろう あなたとは いられないだろう
力よりも お金よりも大切なのは 人の声 あなたの声
「最期のうた」 【30年先か3日先か、いつか、きっとのうた】 (by Ei)
ぼくの のど仏を 誰かが ハシで はさんで みる日が いつか 必ず くる だろう
その時 ぼくの のど仏は さいごの 音 を 発して くずれ る だろう
それは、きっと、何の 輝きも 深み もない 音だ ろう
(それを ぼく だけ は やはり 聞くこと が できない のだ)
Q.「歌ってしまわないこと」とは、どういうことですか。
A.より伝える歌い方を習得しようと来られるプロの人とのレッスンで、私がよく言うのは、「歌わないでください」ということです。歌っているのがみえると、伝わらないのです。ここで「歌う」とは、音の高さにあてた発声に、ことばをつけているようなものを指します。これでは、いかにうまく「歌い」こなしていても、歌を歌で創っているだけで、動かしていないのです。つまり、メロディも言葉も聞こえないほどに、歌という形が見えないほどに、想いが、声が言葉に表われて動いていないと、人は真底、感動しないのです。今の日本のミュージカルの中には、音程と発音しか聞こえてこない不しぜんなものが相当あります。ヴォイストレーニングや声楽も表現を全くイメージしない人には、形通りに歌うことばかりにレッスンがなり、もったいないものです。
Q.フレージングの組み立て方とは。
A.私はかつて、カンツォーネを中心に、外国の歌をフレーズごとにコピーする練習を行わせていました。CDで1つのフレーズごと(4~8小節)、何度も戻しては再生し、徹底的にコピーします。1度目におおよその流れを聴き、2度目に合わせてみて、自分が持っているものとは異なる感覚(メロディ、リズム、声色など)をチェックし、3度目には自分で最もうまく歌えるように、フレーズを作り変えるのです。もちろん歌詞も楽譜も見なくてかまいません。単に発声が音楽となるプロセスを優先します。
このフレーズ・コピーを行うのは、最終的には他人との表現の違いを見つけ、自分のレベルやオリジナリティを発見するためです。自分が知らない言語を使うことで、音だけをトータルに聴く力が付くようにもなります。特にイタリア語は、日本人がコピーしやすく、英語よりのどに引っかかりにくいのでお勧めです。それに慣れたら、ポルトガル語、スペイン語、フランス語などの歌にもトライしてみてください。歌唱力向上にとても効果的です。
Q.オリジナルフレーズをつくるには。
A.コピーすら、名曲や名唱にかなわないということなかれ、フレーズでの勝負では、声量や声域などの差はそれほどでないのです。むしろプロは、1曲すべてをまとめるために、部分的にはかなり切り捨てています。そのため、お粗末な表現にさえなっていることさえあります。また、プロの作品の失敗の箇所からは、多くを学べます。
自分の呼吸や声をコントロールできていて、それで自分の寸法にあっている表現が出たら、はじめてプロもまねができないオリジナルなものとなるのです。一流のプロが他の一流プロをまねてもその人にかないません。そのように、独自性は、すべてのものから組み合わさっているのです。このあたりのことを知ればカラオケや歌のうまい人が表現にいたらず、うまいがゆえに感動させられないで、つまらない歌になるのもわかるでしょう。先人のコピーを目的としている人の多くなった声楽や邦楽に一流の人材が出なくなったゆえんです。部分的完成からアプローチすることです。
Q.オリジナルフレーズのトレーニングとは。
A.1.音楽とのセッション感
メリハリとは、どのくらいの立ち上がりか、加速度、ドライブ感、どこまで伴奏のラインに合わせ、どこまで離れるかのかけ合いがセンスなのです。音楽から自由になるために、楽器の演奏力に対抗する声のパワーインパクトがいるので、それをトレーニングでつけるのです。歌詞に安易に逃げないこと、歌は演奏+ことば(歌詞)なのです。
2.インプロ(即興)でのフレーズコピー
a 3回聞いて、1回コピーする b 1回聞いて、3回コピーする
すぐできないが、何とかアプローチがみつかるレベルギリギリで、学び続けることが大切です。何度も聞きすぎると、創造性が発揮されません。多くて7割、できる人なら3~5割くらい、入ったところでインプロでやらせた方がよいのです。
3.テンポとキィを決め、試行する
a 音の高さ b 音域の広さ c 声量 d リズム e 音程(メロディ) f 音色
これらを踏まえて、その長さ(テンポ)のフレーズだけをベストにみせられるように、テンポとキィの設定をします。どちらも何通りも変えて、もっとも自分の表現を活かせるセッティングをみつけます。
Q.フレーズコピーの目的とはどういうことですか。
A.「外国人による日本語の歌」や、「日本人による外国曲の歌(外国語・日本語)」を比較するのもお勧めです。生まれてから染み付いている日本人の感覚を一時切ることで、感覚、発声、歌唱をシンプルにできます。歌は適当な外国語をつけて歌ってから、それを日本語に戻して歌って違いをみるのもよい方法です。
そこで構成をつかみ、展開をつかむのです。
・少ないヒントで無理につなげ、成立を見る
・イマジネーションを豊かにする
・すぐれたパターンを量として入れていく
・感覚と実際のズレの把握修正
・察する力を学ぶ
いくら間違えてもよいのです。最初はできていないだけで間違いなどはないのです。コピーを100パーセントできたとしたら、それこそが間違いです。仮に50パーセントずつ、作品のもつものと自分の創作したものが混ざって成立すれば、レベルアップしていけているとみてよいのです。それが直す方向です。
他の人を真似て近づけるのではなく、一流の優れた作品に引っぱられるようにしていきます。つまり、自らに引き寄せるのではないのです。自分を出せば音楽がひっこみ、音楽を出せば自分がひっこむという矛盾を出します。そこから次元を上げ止揚することで新たに創りあげて、自分のものを確立することです。それが私のいうデッサンなのです。
Q.コピー、(カバー)の練習とは。
A.いろんなコピーの方法があります。
1コーラス(一番)をコピーする
A 外国人の日本語歌唱を聴いてコピーする
B 日本語で聞いて外国語で読む、次に歌う(日本語の歌の外国人バージョン)
C 同じ歌を同じ人が、日本語と外国語両方で歌っている曲を聞いてコピーする
D 同じ歌を違う人が歌っている曲を聞いてからコピーする
E 原語の歌に、原訳詞をストレートに入れてことばを適当にアレンジする
F スキャット部分のコピーをする
G コーラス部分のコピーをする
H 同じ曲で10人ほどのアーティストの歌っているものを比べて聴き、1フレーズずつ10人のコピーをしたあと、自分の歌い方をつくる
I 3~8人の仲間でコピーをして、レポートを比べあうのもよい勉強法です。
Q.コピー、(カバー)の課題とは。
A.コピーするフレーズを5秒、10秒、15秒と長くしていきます。30秒くらいまでは伸ばしたいものです。(およそ1コーラスの半分ちかく)短いのは完全コピーできるようになっても、長いと自分の弱いところがでます。メロディ、リズム、ことばのどれか、もしくは複数がずれていきます。そういうところは、自分の頭に入っているパターンで補充するのです。この補充が元の作品を超えてこそ、真のオリジナリティ、プロレベルといえます。
・伴奏がひきやすいのが、流れがよい
・欠点を長所にしたところが個性
Q.外国の曲でコーラスを比べるには。
A.(外国語の難しいところは、耳に聞こえる通りにしたり、カタカナにしたり、日本語をつけたりしてもかまいません。聴音を重点的にするなら、耳コピーして歌ったあと、外国語歌詞でチェックします)
a.1番は外国語、2番は日本語で歌う。 (2番は日本語の1番を歌う)
b.1番は日本語、2番は外国語で歌う。 (2番は外国語の1番を歌う)
日本ではbの歌い方が流行していました。歌詞の意味を客に紹介してから、外国語でより音楽的に伝えたのです。
aはその逆で行うケースです。
同じ外国人歌手の同じ歌詞(1番)を聞いて
a.そのまま原語でコピーする。
b.次に日本語で歌う。(あるいは、aは、聴くだけで歌うのはカットする)
最後は、歌詞を自分なりに微調整して、メロディにのせて歌います。
学び方としては、意味のわからない外国語だからこそ、楽音として聞こえます。それゆえに、その音楽性を損なわない分、いろいろとつかめるのです。1回に10~15秒、2回目はその2倍ずつコピーして、3回目に一人で全曲歌います。これは、構成や展開をつかむのにとても有効な方法です。
完全に丸ごと覚えるまで聞いてからくり返すよりも、よい意味で大雑把に曲がつかめ、全体の構成をさっとつかみ、そのコピーから自分の中に入っているもの、クセや入っていないもの、不慣れなものなどがわかります。
一流シンガーの苦手な歌やライブで失敗しかけたものなどにも多くを学べます。CDでは完璧ゆえにわからないところも、不完全なものや失敗作はレベルが落ちる分、私たちにもよしあしがわかりやすいのです。
Q.フレーズを再構築するとは。
A.本当に学ぶためのプロセスは、
1.一流歌手の歌からオリジナリティを抜いて
2.楽譜に近いかオリジナルの曲にし(骨組みを捉える)
3.そこに自分のオリジナリティを加えるべきなのです。
(フレーズコピーについては、コール&レスポンスを参照に)
大した準備なしにいきなりコピーするほど、本人のオリジナリティあるいは本人に入っているものが出ます。しかも人前で、急にきっかけを与えて考える間もないと、率直にその人のよしあしがでます。この本人に入っているものと、そこから出てくるオリジナリティ、さらに価値は大きく違うわけですが、結果として成り立てばよいのです。(♭)
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