Q.日本人の発声指導をどう思いますか。
A.正直なところ、私は、日本人の声楽家の発声の指導法にへきえきしていました。バランスを重視して共鳴の焦点を絞り込むだけのもので、ドラマ性がなかったからです。音楽的感性が乏しいこともありましたが、この分野が未熟ゆえ、すごいものかおもしろいものかにしか反応できなかった私は、退屈な歌唱に、いえ、そのスタンスにさえ反発を覚えたのです。今でも私は、オペラとオペラもどき、声楽と声楽もどき、ミュージカルとミュージカルもどき、歌と歌もどきは全く違うと思っています。それは本場のオペラやミュージカルを聞いたら、誰でもわかることであって欲しいのですが。ちなみに、オペラ→ナポリターナ→カンツォーネという流れは、私が不勉強ゆえに取った方法でした。そのおかげで、あとに日本語歌唱へのヒント(岸洋子から、村上進、深緑夏代の日本語処理など)に至ることができました。(♭)