ご案内

私は10数名のヴォイストレーナーとともに、ヴォイストレーナーにも指導しているため、内外のヴォイストレーナーのアドバイザーやヴォイトレをしている人のセカンドオピニオンもたくさんやってきました。ヴォイストレーナー、指導者、専門家以外にも「ヴォイストレーナーの選び方」などに関する質問が多くなりました。以下を参考にしてください。

「ヴォイストレーナーの選び方要項」 http://www.bvt.co.jp/new/voicetrainer/

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「1.ヴォイストレーナーの選び方」

「2.ヴォイトレの論点」

第28号 「ヴォイストレーナーの仕事と資格」

〇ヴォイトレの資格

 

私の元にはときおり、こういうトレーニングも資格をつくったらよいのではという話がきます。また、当研究所の看板や推薦を地方などでもあげたいという方もいます。今のところTV出演とともに私がお断りしていることが、この二つのことです。

資格というのは、何かをやるための必要条件です。何かが明確でないとつくれません。多くの民間資格は、それを管轄するビジネスのためにあるようで、権威もなく、商売にもならないものが多いようです。医者などには資格がなくては恐いでしょう。絶対に必要というものもあります。しかし、ヴォイストレーナーは、そんなことで分けられようもありません。

 

〇音楽療法について

 

音楽療法は、今ではポピュラーになりました。資格というお墨付きに頼られなければやっていけないところで、資格認定が普及におおいに貢献しているのも確かでしょう。思えば、当研究所の顧問であった、芸大名誉教授の桜林先生(当初、日本ヴォイス研究所)には、学生時代からお世話になりました。日本の音楽療法の礎でした。

ヴォイストレーニングは医学と切り離せないからです。今のヴォイストレーニングはどうでしょう。とても私にはまとめようはありません。つまり、まとめようもないということは、分けようもないということです。

 

〇ヴォイトレの統一はできない

 

今、ヴォイストレーナーを名乗る人には、大きく分けて、医者(耳鼻咽喉科)、声楽家、役者、ここのところ、ポップスヴォーカルの指導者に多くなってきました。そのため、ヴォイストレーナーということばは、何となく歌手指導、ヴォイストレーナーは、役者や声楽家指導に主に使われていました。

たとえば、役者と、声楽家のヴォイストレーナーのやり方は、明らかに矛盾します。内容も違うし、優先度も違う、目的が違うからです。役者と歌手は、やることが違うのですから、トレーニングが違うのは、あたりまえです。 私のブレスヴォイストレーニングは、共に使えることで行なっています。

 

○ヴォイストレーナーとしての私の仕事

 

私のトレーナーとしての仕事を平均的な一ヵ月でご紹介しましょう。

まず、私の主宰する研究所でのレッスン、

1.週24回(他のトレーナー10数名とともにやっています)

2.月に3回のレクチャー

3.専門学校などのトレーナー研修

4.日本語教師の養成学校、声優養成学校など、他校の仕事

5.劇団のワークショップ、お笑い芸人、落語家や弟子の指導

6.音楽プロダクションのプロ養成、ミュージカル劇団のプロのレッスン、ヒップホップ、ラテン、なんでもあり

7.大学やカルチャーセンターの特別講義

8.音大受験生のレッスン

9.ヴォーカリストへのアドバイス

10.オーディションの指導、デモテープ作り

11.プロダクション契約

 

それとは別に、

1.研究所内のトレーナーの育成(報告の処理、研究生のレッスンの状況を把握)

(私のところは採用時点で、どこか私よりも優秀なプロにしています。)

2. 研究所内研究生のレポート、ステージアドバイス

3.研究所内のレッスンのリライト

4.会報、ブログ、メルマガジンのチェック(このあたりは、スタッフに任せています)

5.科学、医学などの研究、共同研究、研究生や日本人の声の分析など。海外への声のサンプリング、学校見学や現地の関係者に会います。

6.研究論文と本の執筆、教材づくり

7.企業研修やブレーン、顧問契約

8.マスコミなどの取材を受けます。

9DVDCD、教材、専門書、専門論文の収集と整理(海外本の翻訳、解釈)

10.声のデータベースづくり

 

〇日本ヴォイス研究所

 

私の場合は、もともと大手プロダクションにプロの養成を頼まれたところからスタートしているので、しかも音大にお世話になりつつ、音大出ではないので、異色かもしれません。日本ではヴォイストレーナーの草分けの大木先生と、日本音響技術専門学校に日本ヴォイス研究所をつくりました。芸大名誉教授の桜林先生が顧問で、私の弱点の医学的アプローチと、当時まだ、あまり知られていなかった音楽療法を中心にご教示いただきました。

専門学校への出講、プロダクションのヴォーカル育成中心にやっていましたが、思うところあり、専属契約を打ち切り、アマチュアの養成所としてヴォイス塾をたち上げました。15年やったところで、一部を除きクローズし、ふたたびプロの育成、トレーナーのアドバイス中心に動いているところです。

 

〇ポップスでのプロ志願者

 

ポップスでプロをめざす人は、トレーナーになるのでないのですから、少なくてもトレーナーを超える力を、そのトレーナーよりも少しでも早く身につけることに、教えるということの成果が問われます。

自分の経験だけが中心の人や、理論的に詳しい人もいますが、間違った解釈、仮説に偏り、検証に欠けていることも少なくありません。海外に学びにいった経験だけで、やっている人もいます。

日本のポピュラーにおいては、歌い手は役者などよりも、日常の声がよくないし、鍛えられていない(素人声)のことも多いのです。それではプロもくるここでのトレーナーは務まりません。10年以上、基礎訓練をやってきた人や、現役のプロをも指導できる力が必要なのです。

 

〇トレーナーは、研究員★

 

ここは研究所なので、トレーナーも研究員です。多くのプロや一般の生徒の経験を積ませ、音大での指導を超えた経験を積んでいます。ここのトレーナーは、ここで実際にそういう人を教えてきた経験が豊富にあります。

ここでは、複数でプロから一般の人までみており、わからないことや違うことは他のトレーナーで補完やフォローができます。

分担して担当するので、年間に多くの人に接することになり、どこよりも経験を早く積むことができます。しかも、プロも含めて熱心な人や、かなり分野の違う専門家もいらっしゃるので、学ぶことに事欠きません。

 

〇トレーナーの実力の育成

 

マンツーマンでも、セカンドオピニオン、サードオピニオンをもてるため、一人のトレーナーが気づかぬことや、そこで偏ってしまうことを是正することも早く正しくできます。加えて、トレーナーの過去からのトレーニングや他のトレーナーのトレーニングも、知ることができます。ここの会報やホームページは専門の書物よりも、あなたにとって具体的かつ実践的なヒントとなるでしょう。

ずっとこういうトレーナーとともに、私は研究を進めています。声の生理学、音響学なども学者などと共同研究しています。

第27号 「歌やCDやレッスンからの学び方」

〇声と歌でなく伝える

 

ヴォーカリストは体ひとつですべてを表現する声の演奏者です。トレーニングから目的を定めるなら、ヴォーカリストとしての体(声、感覚、歌)ができていくことが、第一歩です。さらに歌は芸ですので、客を魅了する力がいります。しかし、その答えはあなたの中にあって、その器の大きさを決めるのもあなた自身です。

ヴォーカリストが表現するということは、声を殺して歌を生かすこと、さらに歌を殺して心を伝えることなのです。発声法でなく声の力、歌唱技術でなく歌の力、ステージの演出でなく、あなたの心と音楽が、人に伝わる力となるようにしてください。

 

〇同曲異唱で成り立ちを学ぶ

 

大切なのは、音楽的な基本、ここでは楽理よりは、歌の中の音楽として成立する共通の要素を入れることと、あなたの声を体の原理に基づいたオリジナルなものに戻し、使えるようにしていくことです。そのためには、一流の音楽・歌を徹底して聴くことです。

同じ歌を異なるヴォーカリストで聞くこと、外国人の歌と、その日本語訳詞の日本人の歌を聞くこと、それらを比べることは、とてもよい勉強になります。(スタンダード、オールディズ、ジャズ、ゴスペル、カンツォーネ、ラテン、シャンソンなど。)

 

〇一流に学ぶ

 

まずは、一流のヴォーカリストの学び方を作品のプロセスから追体験し、しかも彼らの基準においてチェックしていくことができるようになることです。彼らが何から学んだかを追うと、やがて全ての分野をカバーしていくことになります。

フレージングのコピーは、トレーニングメニュとしても使えます。できるだけ広い分野から、一流といわれたヴォーカリストの作品を集めましょう。彼らの伝記、自叙伝などを読むのも刺激になります。

 

〇アンテナの立て方

 

実際に歌からどう学ぶのかとは、それこそ、才能というものです。同じ曲から一つも学べない人も、百以上学べる人もいます。アンテナが一つしかない人と、100以上ある人がいます。私は、レッスンはこういうことの重要性を伝え、そのアプローチを試みさせるのが全てだと思っています。つまり、アンテナ一本の人に、10本、20本のアンテナの立て方を伝えるということです。

 

〇デッサンフレージングを学ぶ

 

歌の世界では、自分の声を使って進行・展開や構成を音の線で表わしていきます。これを私は、絵画に例えて、これをデッサンといっています。いわば線を引く=フレージングのことです。そこに色=音色を加えます。

カンツォーネ、オールディズ、ラテンなどは、声で音のデッサンをどうしているかがわかりやすいため、発声・リズムグループも含めた、基本の教材として使っています。

唱歌、童謡は、呼吸と発声フレージング、日本語の勉強によいです。

演歌、歌謡曲は、日本人のデッサン情感表現のデッサンの研究によいでしょう。

声をそのまま大きく使って歌に展開していく段階では、あまりテクニックや効果のための装飾を入れず、ストレートに歌っているものの方が、材料にしやすいのです。私は音響効果が悪いため、生の声のわかりやすい19501970年あたりの作品をお勧めしています。

 

○独習の難しさとレッスン

 

独習は難しいというのは、より厳しい判断基準をもって行なうには、ということです。判断基準そのもののレベルアップこそが、決め手です。独習には、あなたにプロの耳が必要です。判断ができなくなれば、師につくことです。

トレーニングというのは、基本的には自分でやるものです。それをチェックしたり、新しいアプローチやヒントを授かったりするために習いにいくのです。

そこで、より深いこと、本物のこと、ある種の真理のようなものに触れ、自分の毎日行っていることの意義や効果を再確認し、そして、さらに修練を積んでいくわけです。

私は、そのようなことを自分で盗める(自主的に学べる)場でなくては、あえて学びにいく必要もないと思います。つまり、絶対に一人でやったり他のところでできないことのためだけに、レッスンを使うべきだと思っています。

 

〇レッスンの使い方

 

そこにいることで、何かトレーニングをやっているつもりになるような、安心感しか与えないところでは、楽しい、落ち着く、親しみがわく。その結果、当の目的とそれているのにさえ、気づかなくなっていきます。

何事も、学んだから必ずしもよくなるのではないということを忘れないでください。長く学ぶと、何事も学んでいない人よりもすぐれますが、世の中でどのように通用しているかと常に問わないと、必ずおごりや慢心が入ってきます。

それも含めて、本人の力次第なのです。自分でできることはすべて自分でやり、自分でできないことだけのために、トレーナーの才能をあなたが最大限に引き出して、使うことです。

参考書も一長一短があります。ことばや内容をうのみにしないことです。世の中には、そういう考え方や、そのように考えている人がいるという程度に考えてもよいでしょう。本を読み、スクールを転々としてはいつも悩んでいる人がいます。どこにも答えはありません。

 

〇何でも活かす

 

すでにあるものを習得するのでなく、あなたが創りあげるのです。正しい方法、間違った方法とか、よい先生、悪い先生とかではなく、世の中すべてから、あなたが生かせるものをよい方に生かしてものにしていくことです。私が世の中にはその逆のことをやっている人ばかりなので、そうすれば必ず、やっていけるようになるのです。

何もないより、少しでも本や教材が出ていることは、刺激にも勉強にもなります。拙書も参考にしていただければ幸いです。

 

○飲食物のよしあし

 

食べものに関しては諸説ありますが、大して気にすることはないでしょう。辛すぎるものや刺激の強いものなどはよくないという人もいます。声を出す直前でなければ、あまり関係ないと思います。声帯に直接、飲食物はふれないのに、おかしなことをいう人が専門家にも多いようです。高価なものほど、あやしいですが、信じて効果がでている人には、何も言いません。

―個人の体験は参考になっても、すべての人に当てはまらないことという顕著な例の一つです。

 

〇声楽家と教えている理由

 

声楽家にお手伝いをお願いしている理由は、J-POPSが声域を広く、しかもハイトーンが中心になってきたこと、ミュージカル志願者やミュージカルのプロの方などが増えて、早期に高音の強化を必要とされたため、そういうことを求める人には、向いているからです。

声の基礎づくりでは、声楽家は、呼吸や発声に何年ものプロセスを経て、体づくり、声づくりをしています。そのため、歌唱や演技と切り離して、声をみているのです。これは大切なことです。役者や声優や芸人などのトレーナーの多くは、声の演出(表情やしぐさ)に早くいくため、3年、5年というプロセスで、呼吸や声そのものの成長をみていません。

 

〇ポピュラーのヴォイトレの限界

 

ここに通われる役者、声優の方は、そういう人が教えているところでは、声の問題が解決しなかったからいらっしゃったのです。そのために初心者にも増して、日本人を一時、離れる感覚、体づくりを必要とするからです。

一方、ポピュラーの現役ヴォーカルなどのトレーナーでは、その人の好き嫌いや感覚に、そのトレーナーがプロとしてすぐれているほど左右されやすいのです。そのため、違うタイプは育ちにくく、似たタイプは何年たってもそのトレーナーの半分くらいの実力で終わってしまいます。ポップスのトレーナーは、一人で教えている人が多く、もともと、のどのよい人、声のよい人、器用に歌える人が多く、声を育てる経験をあまりつんでいないことが普通だからです。

Vol.67

○声の条件がよくなるには

 

 最近の若い人は、あまり大声を出さずに育ってきたせいか、声を出すこと一つをとってもなかなか、大変なようです。出せてもコントロールできません。

 本来は、声づくりは、無理せず、基本的なトレーニングで、少しずつ確実に身につけていくのが理想的です。時間がかかっても、トレーニングすれば声は必ずよくなるからです。慌てずじっくりと時間をかけて、声を自分のものにしていきましょう。

 声がよくなるとは、より大きく強く高く(低く)出せること、さらに、しっかりと統一されて、かすれたり割れたりしないということです。しかも、長時間、声を出しても異常をきたさないこと、心身の状態が悪いときも(風邪などをひいていても)最低限、必要な声の表現力が確保されることです。

 朝、起きてすぐに、しっかりとした声が使えるところまでになるには、相当のキャリアが必要です。しかし、そこまででなくとも自分の声を知ることで、声を使うときに、声の調子を万全に整えることができるようになればよいのです。

 声に必要な条件とは、自分の伝えたいものが思うままに伝わるような声であることです。繊細に丁寧にコントロールできる声のことです。

 

○ベターの声を探す

 

 ヴォイストレーニングのプロセスでの基本的な考え方は、自分のなかの最もよい声をよりよくしていくということです。もし、今までにのどに負担をかけず、体から声が出たことがあったら、その状態を自分でキープすることができるようになることからです。

 本当に声が出たというときの感覚は、案外とわかるものです。しかし、それをいつでも再現することは難しいのです。意識するからです。その声を、いつでも導き出せるようにトレーニングを要するのです。

 

 自分の最も調子よく声が出たときのことを思い出してみましょう。

 (経験していない人は、イメージするだけでもよいです。理想を満たす他の人になり切ってもよいでしょう。)

 それは、どういう状態で、どうして出たのでしょうか。

 

〇運動したあとの声

 

 よく、スポーツをしたあとなどに、体の底から心地よく声が出たという経験をしたという人がいます。これは、しぜんな発声の理にかなっているのです。

 まず、体が運動のあとで、柔らかくこなれた状態となっています。汗もかき、体内の循環機能もよくなっています。よけいな力や雑念が抜けています。さらに、息や声を適度に使い、声帯も使いやすい状態になっています。息はいつもより深く、無理なく全身からの動きで出せています。

 こういうときは、声はしぜんに出やすいのです。声を出そうとしなくとも、声が出てしまうような心身の状態になっているからです。息がしぜんと声になると、それが邪魔されずに外にひびいていきます。体と声が一体になって、無意識のうちに、声を導いているのです。

 逆に声が出にくいときは、心身の動かないときです。寒いとき、起床したばかりのとき、過度に疲れたとき、体調の悪いときなどです。こう考えると、スポーツをするような条件が、ほぼ声を出すときにも当てはまることがわかります。声は体と緊密に結びついているからです。

 

○声の出やすい状態をつくる

 

 トレーニングのときの基本姿勢について、順序立てて述べます。

 まず、胸をやや上に向けて、少しもちあげるようにします。すると、腰のまわりに少し緊張を感じるはずです。そこの筋肉(背筋、側筋)が、声を自在に扱うために大切です。これを使えるように息のトレーニングで鍛えていきましょう。

 次に、息を吐いてみます。のどがかわくような吐き方でなく、お腹の底からゆっくりと絞り出すようにします。吐き切ったら、少し止め、そして、ゆるめます。すると、しぜんと息が入ってきます。これを、体の動きとして意識してください。口で息を吸っているのでなく、お腹が呼び込んで体に入ってくるように、です。(実際のトレーニングでは、吐き切るところまではやりません。)

 体、特にお腹が固まるようであれば、軽くジャンプしたり、揺らしたりしてほぐしてください。首を回したり、肩を動かしたりして、緊張を解きましょう。肩と首の間、胸とわき、肩との間の筋肉は、特によくもみほぐしておいてください。「首やのどはない」と思うことです。体の力が息になり、そして胸の中心に口があって、そこから息が出るように感じてください。

 慣れないうちは、腰も足もつっぱってきます。適当に動かして、力が入らないようにしてください。

 

 上体を前屈させるとやりやすくなります。お腹の前の方が押されて、背筋や側筋が使いやすくなります。息を何回か吐いてみてください。

 よく腹式呼吸を、腹筋トレで鍛えてお腹の筋肉を動かしている人がいます。これは腹直筋を鍛えますが、内臓器官を圧迫するのでよくありません。横隔膜は肺の下にお椀をふせたような形でついています。前腹を鍛えるのでなく、使いにくい背側や側面を使えるようにしましょう。腹式呼吸が身についていくと、やがて腰のまわりに空気が入るかのようにふくらむのです。

 

○腹式呼吸

 

 声を使うときに必ず注意されるのは、腹式呼吸のことです。

 腹式呼吸は、寝ころがって息をすれば、誰でも自覚できます。しかし、それを声に応用して、声を出したときに腹式呼吸でコントロールするのは、難しいものです。

 常に腹式呼吸と胸式呼吸は、呼吸時に共存しています。胸式呼吸から腹式呼吸に切り替えるのではなく、声を腹式呼吸でコントロールしているかどうかを言っているのです。

 腹式呼吸で、お腹から息が出ればよいのではなく、声になって出なくてはいけないのです。そのためには、腹式呼吸のトレーニングの前に、息を声にしぜんと変えること(声立て)が必要です。

 息がしぜんに声にかわるためには、呼吸をコントロールできるリラックスした状態の体が必要です。そういう体づくり、息づくりをめざして息のトレーニングをするようにしてください。

 

 息を吐くときには、あごがあがらないようにしましょう。日本人の大半は、あごが前に出すぎています。また、体の背筋の線に対して、首も頭部もまっすぐになるように気をつけてください。あごをひくことで、のどを圧迫しては何にもなりません。二重あごになるのは避けましょう。

 足はやや開き、重心を下げ、楽な姿勢をとりましょう。運動部などが「ファイト、オー!」とやる要領です。ただし、頭が前に落ちたり後ろにも反ったりしないように気をつけます。

 こういう姿勢は、あまり慣れていないので、最初は維持するだけでも、かなり疲れるかもしれません。少しずつ慣れてください。街を歩くときも、食事をするときも、さっそうと胸を張ってあごをひいて、格好よくしてください。

 

[息を吐くトレーニング]

1.ゆっくりと息を出します。出し切ったら、23秒止め、しぜんと息が入ってくるのを待ちます。(10回)

このときに、硬口蓋(上歯とのどちんこの間の硬いところ)の上、鼻や眼の奥に息をあてるように、意識しましょう。

慣れてきたら、背中のまん中に息をあてるように吸い入れてみるとよいでしょう

2.息を(ハッハッハッハッ)と犬が走り終えたときのように速く吐きつづける(1分間)

3.時計をみながら、5秒、なるべく速く吐き、5秒休む(1分間)

4.均等に意識して息を長く吐き出す(10回)

5.少ない息から、少しずつ吐く量を大きくしていく(10回)

6.脱力して、はねながら「ハアー」と息を出す

7.上半身を前倒させたところから、ゆっくりと上にあげながら息を吸い、「ハアー」といって、また倒す

8.上半身を中心に大きく体を動かしリラックスします

 

○深いため息から声にする

 

 息が声になることのわかりやすい例は、ため息でしょう。ため息(ハアー)をそのまま声にしていくのです。これはアプローチとしても入りやすいといえます。

 息も声も少しずつ「太く強く大きくする」というイメージをもってやってください。ただし、のどに負担をかけないことです。息で強くアタックをするのは、避けてください。

 

 深い息というのは、吐くだけでも、けっこうな体力がいります。声も息も、体で完全にコントロールしていくのです。それは、すぐれた俳優やヴォーカリストのもつ息づかいだけに耳を傾けてみるとわかるでしょう。

 声を大きく出していないのに、客席の隅々までしっかりと伝わる声、それは、深い息に支えられているからです。この深い息をコントロールするとき、お腹の側筋や背筋のところを中心に、全身に支え(最初は負担)がくるのです。負担がくるからこそ、そこが鍛えられ、強くなっていきます。そして、効率よく声になるから、他のところを脱力して、より通る芯のある声となるのです。

 声も息も、一本の針金のように、細くともしっかりと芯があり、動きの線のみえるものです。だからこそ、言葉を自在にコントロールでき、遠くまではっきりと聞こえるのです。マイクにも効率よく入るのです。

 最初は、深く長いため息をお腹一杯の空気を使って何回も吐いてみましょう。充分に体が動いてきたら、少しずつ実声にしていくとよいでしょう。

 

<注意>息のトレーニングは、自分の体力、体調にあわせてやることです。慣れぬうちは、額や後頭部などが痛くなったり、気分が悪くなること、めまいなどもあります。こういうときは、すぐ休んでください。

 立ってやるときは、やりすぎて倒れたりすると危険なので、まわりに注意します。具合が悪くなったら、すわるなり、ひざをつくなり、早めに対応することです。

 強い息吐きは、乱暴なので勧めませんが、よいトレーナーの元で行うと効果的なこともあります。

 

[ため息のトレーニング]

1.(ハアーーーー)と長く息を吐く

2.「(ハアーーーー)アー」後半を「ア」で実声とする

3.「ハアーーーーー」と声を伸ばす

43回、ため息で(ハアー)といって、4回目を実声「アー」とする

5.楽に声になるところ、一番、声の出やすいところで、声を出し、息で少しずつ、大きくしていき、そのあと小さくする

 

○息とことばから声にする

 

 声のトレーニングのなかで伝わることを知るには、日頃、使っていることばの実感から学んでいくことが早いでしょう。短いことばをなるべく体から(お腹の底から)声をつかんで、ことばにします。簡単なことばで、しっかりと発してみることです。

 最初は、口形などはあまり気にする必要はありません。正確な発音よりも、体からの発息と発声を重視します。それとともに、ことばを少しでも深く捉えるようにしていきます。

 のどの調子が悪いときなどは、生じ声を出すよりも、息だけを吐いている方がよいこともあります。声帯そのものを疲れさせる のでなく、声をうまくコントロールできるように体を鍛えておくことが、トレーニングの目的だからです。

 特に、大きな声を出したことのない人は、息によるトレーニングをしっかり行うことをお勧めします。これは、時間も場所も問わずやれますので、毎日行ってください。

※ただし、息によって、のどや口内がカラカラに乾くようになるのはよくありません。これは、無駄に荒い息を使いすぎるからです。

 

○息読みのトレーニング

 

 息でことばを読んでみます。これを「息読みのトレーニング」と呼んでいます。息読みのトレーニングは声帯を使わないので、のどを痛めません。初心者が、声を出そうとすると必ず、そこに無理な力が加わります。息でなら安全だからよいのです。ただし、人によっては、その方がのどにかかる人もいます。ささやき声は、人によって喉に負担になります。その場合はやめましょう。

 

[息読みで読むトレーニング]

1.ことばを息で読んでみる

2.息で読んでメリハリをつける

3.息で読んだあと、声で読む

4.息を3回「ハッハッハッ」と吐いて、1回「ハイ」と大声でいいます(20回)

5.息で「(アオイ)」といって、声で「アオイ」といいます(20回)

 

○共鳴(ひびき)のトレーニング

 

 声帯で生じた喉頭原音は、声道で、口、鼻などを通して声としてなって出ます。それが統一されると、ひびきになります。それを調整したのが母音です。

 まずは、体の方、胸に充分にひびかせ、のどをリラックスさせる発声を生じさせることを覚えることです。そして、しぜんと充分にひびいてくるまで待ちましょう。

 

 基本姿勢として、前屈した状態で声を出してみましょう。日常的に使っている声を少し大きく出してみてください。のどのあたりがひびくかないようにチェックしましょう。

 普通は、高くするほど頭の方にひびきますが、それを、低くして胸の中心にひびきを集めてみましょう。ことばとしては、「ハイ」、「ハオ」、「ラオ」、「アオイ」などがよいでしょう。

 体のいろんなところへ手を当ててみると、声がひびくのがわかります。胸から肋骨、背骨、尾てい骨と、下の方までひびいているようにします。胴体にひびくイメージをもってください。このときも、あごを出さず、首や肩、舌などの力は抜くことです。そのまままっすぐに立って同じようにやってみてください。

 イメージですが、声の芯、声の底をつかみ、少しずつ大きくしてみてください。のどに負担がくるようならやめます。次に長くしてみましょう。さらにピッチ(音高)を高低に変えてみてください。

 声をしっかりとキャッチするというのは、とても難しいことです。そこで体を入れるとともに、余計な力を抜き、リリースするのです。

 

[声のひびきを確かめるトレーニング]

1.ハイ、ガイ、ライ、ララ、マー、アー

2.ガーゲーギーゴーグー

3.ガーヤーダー

4.ガゲギグゲゴガゴー

 

「学ぶ力をつけていく」 

研究所では、以前なら、とりあげなかったアーティストをとり込んでいくようになっていきました。時代も変わり歌の役割も、そして、ここにいらっしゃる人も多様になってきたということです。

本当のアーティストは、CDやたまにみたライブ、TV、ラジオなどではうかがいしれない底力をもっているものです。日々のプロセス(トレーニング)は知る人ぞ知るものです。

それゆえに論じにくいものです。選りすぐるにも、我が出ざるをえません。そこで複数の価値観、多様性を身につけていく必要もあるのです。

 

長く同じ人と同じところにいると、しだいに甘くもなり、よいところだけ、あるいは悪いところだけをみるようになってしまうわけです。気づかずに固定観念から先入観になり、クローズしてしまうものなのです。

そうならないために、こういった情報があるのですが、活かしていますか。

たくさんのものに、あるいは深いものに深く接していますか。保守的にならず、新しい風をいれていますか。

 

たくさん学んでいた人も、あるところから学べずにか学ばずにか、変わらなくなるものです。

何からでも学べる人は学べます。すぐれていく人、学ぶ力をつけていく人にとっては、何事もそこにあればそれだけで意味があるからです。 意味が生じてくるように、その人が得ていくからです。

でも、多くの人はまわりの人に認められ、通用するようになったことで学べなくなってしまうのです。自分の外にあるもので定めてしまうからです。もったいないことです。自分以上の内なるものとの対話を大切にしましょう。その上で、意味をつけ価値としていくのは、あなたなのです。

第26号 「ヴォイトレと音楽の練習」

○音楽的にする

 

歌唱で表現は、音の流れの中で決まってくるもの(曲)に対し、自分が何かをみつけ、そこでどう伝えたいかということ(心)でつくっていくものです。

歌が心身と一つになるために、声を自由自在に使いこなして歌として描くのです。ヴォイストレーニングとは、その自由度を声の力で拡げる得るためのものと思っています。

私は聴くときに、3分間すべてを貫く方向性に対し、いくつかの音の大きな動きとその関係をみます。それはリズム・グルーヴで支えられた上で、微妙にその人独自の呼吸でフェイクし、心地よい揺らぎを持つとともに、要所(ピークや語尾を中心)に、心に残るニュアンスをおいていくものでなくてはなりません。

 

〇どう歌うべきなのか

 

レッスンにおいては、「どう歌えばよいのですか」という問いは、成り立ちません。それを自分の歌において、問うことに対して、サジェストするのがレッスンです。

一瞬でも一フレーズでも、人の心に働きかけるものが出たところから、すべてがスタートするのです。あなたの歌が創造物(アート)であることを目指すのであれば・・・ですが。

詞を歌うのではなく、詞やメロディに表れた思いを伝えるのです。ことばだけでなく、メロディやリズムや音色、呼吸で、あなたが再構築するのです。ステージでは即興で、よりよく選び変えるくらいの気持ちでやることです。

 

○イメージング

 

歌とか声というのも、歌や声に何をのせて伝えるかということです。作詞でも作曲でも同じでしょう。だからといって作詞作曲の勉強をするのではなく、ヴォーカリストが、声の中に、心の音とか、ことばが歌い出したら、そうなるということです。世界の音楽まで含めて体に宿したら、そのときにふっと自分から出てくるメロディがそうなるのです。まず100曲でもつくれということです。

 

〇楽器と歌

 

ピアノでもヴァイオリンでも、一番根本の基本のところは変わらないのです。でも楽器の場合は、決められた土俵のうえでやりますから、そこに幼いときから長く触れている人の方が有利です。毎日10時間近くの練習は、楽器を自分の神経につなげるためです。でもヴォーカルの場合は違います。例外が許されるのです。いや、例外しか許されないのかもしれません☆。

 

○練習のメニュについて

 

基本的には、何事も自分が主体的に取り組み、自分で決めていくのがよいと思います。その練習内容を組み替えたり、よりよくするための基準を知るために、レッスンなどを使っていくということです。

多くの人が練習というのは、正しいやり方があるとか、いくつか決まったやり方であると思っているのですが、そんなことはないのです。その人の中で、歌のレベルに応じて練習の方法が開発されてこなくては本当には大して役立たないのです。

とはいえ、明らかに一人よがりのまったく間違った方向や無意味な“トレーニング”もないわけではありません。こういう場合は、第三者のアドバイスが必要です。

 

〇練習能力を高める

 

歌がすぐれ、表現力をもっているということは、それを支えるだけの自分の練習方法をもち、対応ができているということなのです。その能力を自分でつけていくことです。

ヴォイストレーニングのメニュも歌のテクニックも、それを参考に自分のものを作るためにあります。他人のものは本当には使えません。叩き台として使っていくことです。そのメニュのつくり方を学ぶのです。私は、ヴォイストレーニングの方法論イコールその人の歌そのものだと思っています。そうでないヴォイストレーニングなど、いずれは不要だからです。

 

○毎日できるトレーニングとは

 

若い人には、あまり他人の考えで左右されないでほしいと思います。表現を支える基盤とは、あなた自身の生き方、生きてきたことのパワーの総合力というようなところがあるのです。

特に歌は、二十歳でも、うまい人はうまいし、五十年、習っていても、へたな人はへたなのです。だからこそ実力派志向でいくなら、しっかりとしたトレーニングが求められるのです。呼吸や声のためによい習慣づけをすることが大切です。

私は、どこかで、トレーニングに徹底して集中できる二~四年間をとることを勧めています。それに前後して十年です。そうでないと、本当の意味で、感覚はともかく体は変わらないからです。

<>づくりの期間に五千時間、音楽を入れるということで、五千時間の、合計一万時間。

でも、日本のヴォーカルに関しては、それだけの時間は関係ないかもしれません。それまでに毎日行なうのは、ブレス(体)のトレーニングと、耳(感覚-音楽)のトレーニングです。

 

○声を出す時間に注意する

 

トレーニングはともかく、それ以外で、喉を無駄に疲れさせないことです。

1.トレーニングの時間を短くする。

2.一日のトレーニングを分ける。

3.一つのトレーニングが終わったらその分、休みを入れる。

トレーニングは、翌日、喉に疲れが残らない状態までがよいと判断してください。

第25号 「メリハリをつける」

○歌での感情表現は、ブレスで構成する

 

歌の音楽的構成での見せ方についてです。ここでは無駄な感情移入や雑な表現は整理しなくてはなりません。ドラマの起承転結のように、多くの歌は、4つに分けていくとわかりやすいでしょう。(4ブロック、4フレーズ×4)ピークに対しても、歌い手の感情を入れるのではなく、聴く方の感情に訴えるように展開し構成するのです。心をもっていきながらも、音楽の規則性(リピート、コード進行、グルーヴ)を最大限、利用します。最終的に、一曲を一本につなぎます。

といっても、1コーラス、あるいはAメロ、Bメロ、サビと、ブロックごとを一本に通すことができたら、かなりのレベルです。

テーマを表現し切るクライマックスは、その作品を決定していくピークにあたります。このピークに対し、どのようにフレーズを組み立てていくのかを考えることが、歌の構成、展開上ではとても大切です。

 

感情より、魂、心を

 

歌が感情表現を必要とするとは限りません。歌を音楽的に捉えるなら、バイオリニストやピアニスト以上の感情は、投入すべきでないと思います。声はただでさえ、感情的なものだからです。しかし、発声技術や音楽性に乏しいヴォーカリストでも感情の伝わる声や感情移入でもたせることができるのは確かです。私としては、感情というより、魂(ソウル)や心(ハート)、せめて気持ちと呼びたいのです。感情ということばは誤解しかねません。

 

○シャウトして歌うには

 

日常生活でできていないものは、日常生活で得ていくのがよいというのを知った上で、効率的に早く得る、より多くを得るためにトレーニングがあるのです。

外国人ヴォーカリストがシャウトするときに使っている声は、とても深く、喉に負担のない発声をしています。子音中心の言語ということも、高音には有利です。

それに対して、私たちの叫ぶ声は、喉にかかります。体や息が充分に使えないまま、無理に浅い声で出そうとしているためです。日本では役者のトレーニングで役者の声の条件を得ていく方が早いように思います。

 

日本人のシャウト

 

日本人のヴォーカルのシャウトは、上にあてて抜いたものか、生のまま、大声でがなったものが多く、前者はインパクト、音色・個性に欠けたクセ声か弱い響きの声、後者は生声、喉声で喉をつぶして、再現できなくなりがちです。まだミュージカルにみられる、クラシックの唱法をポピュラーにもっていったシャウトの方が、ましです。ただし、これは母音共鳴のシャウトなので、リスクも負担も大きいです。

あこがれから入ったまま、形だけをこなし、実のところにベースを置いていないことが、今の日本の歌の説得力のなさに見えてなりません。自分の声でのデッサンをしていくことです。

 

○一本調子を解決する

 

その曲を音楽たらしめているものがわかるまで、解釈しましょう。メロディ、ことばがひとつに溶けて、リズムの動きで流れてくるまで聞き込むのです。そことあなたの感覚をさらに融合するのです。次にどこで盛り上げて、どこで語りかけるかなどといった展開、構成を、徹底的に考えておくことです。強弱やテンポなども、あらかじめ決めて歌っては自分に合うように修正していきましょう。

これも、自分の声の音色、そして歌の音楽としての奏法を自ら見つけていく必要があります。自分の音と奏法を見つけるのが、アーティストなのです。

ヴォイストレーニングで、今まで意識していなかった普段の声もよくなることがすばらしいことだと思います。トレーニングとその成果には、タイムギャップがあるので、効を急がないことです。

 

○メリハリをつけるには

 

呼吸と声での表現が一つになるまでしっかりとつかみましょう。その表現力を決して損ねず、パワーアップして歌に持ち込みましょう。自然にメロディを処理していくこと、日本のミュージカルのように音程を歌うのはさけたいものです。

 

次の各要素に注意して、曲を聞いたり歌ったりしましょう。

1.テンポ、リズム、グルーヴ

2.発声、ことば

3.表情、表現、動作(フリ)

4.フレーズ(スピードの変化、音の強弱変化、メリハリ)

5.音色、ニュアンス

6.フレーズ間の動き、イメージ

 

〇絶対音感のメリット

 

私は幼いときに、ピアノを習っていたためと思いますが、絶対音感があります。弾いている音の高さが音名(固定のドレミ)で聞こえてくるので、原調(そのままの高さ)の楽譜が書けます。人の歌っている歌に、音を付けることができます。自分が歌うときに、導く音(ピアノなどのコード)がなくても歌い出せます。これらのことは少し便利なことであっても、大して必要なことではありません。仕事場には大体、楽器があるのですから。

便利なのは、カラオケスタジオや体育館やセミナー会場でアカペラでのチェックをするときくらいでしょう。これも、小さなキーボード一つあれば解決します。

 

〇絶対音感のデメリット

 

絶対音感のデメリットもあります。音の高さとは、その基音となる「ラ」(440Hz)435-444Hzあたりで、演奏者が決めているくらいあいまいであり、演奏上の一つの音での絶対的な高さというのはないということです。相対音感があれば、充分なのです。絶対音感があると、却って合わないと微妙に不快感が出ることもあります。また電子ピアノなどで、トランスポーションという機能で半音の移調した音を出すときに、混乱する人もいます。絶対音感があっても気にならない人、スケールとして弾ける人もいます。

 

〇絶対音感不要論

 

絶対音感教育を指導しているところもあります。最上葉月さんの書物「絶対音感」が大ヒットしたように、日本人はこういう基準に頼りたがる人が多いです。ビートたけしさんなどでさえ、「絶対音感がないから、すぐれたミュージシャンになれない」というような誤解をして、それに基づく発言をする文化人、芸術家が日本人に多いのです。絶対音感神話みたいなものをつくりあげています。

世界中に絶対音感のない一流のミュージシャンや作曲家、歌手はたくさんいます。

小さい頃に、音楽教育で身につく一つの能力にすぎず、それをつける努力の必要もないし、また絶対音感をもっているからといって、何ら誇るべき価値はありません。バイオリニストで論客でもある玉木宏樹氏などと同じく、私は先の著書の論には、否定的な立場です。

第24号 「リズムと音感」

○グルーヴ感をつける

 

確実に強拍に踏み込んでから、アフタービートにのって放すグルーヴの動きを捉えておきます。(音楽、曲、リピート、リズム、グルーヴ、音色中心の動きなどを意識します。)

1音の音のタッチに音色が出て、次に2つ目の音との関係で音楽の演奏が始まります。タッチとは、その人の表現のやり方といえます。これを一曲で描いていくのです。

楽譜を歌うのでなく、そこから、その歌の本質を取り出し、自らの呼吸で流れをつくり、音楽たらしめていく。その一端だけ経験し、体と感覚に、自らの声の動き、呼吸とともに入れていくのです。

 

感覚の切り替え

 

フレーズの中では、出だしから次の音へのつなぎは、そのあとの方向性を決める大きなポイントです。もちろん、そのフレーズのまえの息(ブレス)もこれに深く関わってきます。

海外では、音(息)の強さ、音色とリズム・グルーヴで打楽器的に声をたたみかけて(言語感覚そのままのリズム、子音中心)結果として、メロディや高低を処理します。この感覚の切り替えこそが、ポイントです。

 

いつも感じて動くこと

 

普段からノリのよい音楽を聴き、体でリズムに慣れるように心がけることです。たくさんのリズムパターンを体に叩き込んでおきましょう。ジャズ、フラメンコ、ラテン音楽をお勧めします。

3拍子の感覚を身につけるには、馬に乗ったときのタンタータン、ダンスのズン・チャッ・チャッのリズムが基本です。

ダンスミュージックを聴いて、体を実際に動かしてみましょう。

楽器演奏をたくさん聞くとよいでしょう。ヴォーカル教材より、楽器の教材がよいです。

 

○テンポをキープする

 

いくら複雑なメロディがついても、一定のテンポとリズムパターンを乱してはなりません。とはいえ、そこで感情を込め、部分的にメロディやリズムをフェイクしてもよいのです。そのズレこそが、個性であり、歌唱の本髄なのです。しかし、テンポの感覚を失って戻れないと、元も子もありません。

ですから、最初のテンポを曲の最後まで保つこと、つまり、一定のテンポ感を保つことを身につけましょう。ドラムやベース、リズムボックス、メトロノームで学ぶのもよいでしょう。

自分の歌を、リズムで読んでください。楽譜をみて、メトロノームにあわせ、音符を打楽器の楽譜と思って、叩いてください。足は、小節の頭を打つとよいでしょう。これを何度もやって、体に覚えさせてから歌いましょう。

 

○音程を正す前に

 

音程をはずす、リズムののりが悪いなどは、それをどう直すかでなく、そんなことが起こっていることがもっと大きな問題なのです。

本来、問題に上がってこないために、一流のアーティストがしてもいないトレーニングを、そこに設定することの意味のなさを考えて欲しいのです。それだけ音楽の世界に親しんでいない、よく聞いていない、ていねいに音を扱っていないことの表れです。クイズのように、正誤問題であたった、はずれたというのは、楽器の初心者ならともかく、芸事には、余分なことです。

積極的に声を出し、歌に慣れましょう。自分にあった歌で音域や音程の高低幅が少なく簡単なものにしましょう。簡単な音階の発声トレーニングをするとよいでしょう。発声がよくなれば自然と音程も狂わなくなることが多いものです。まず量、そして質にしていくのです。

 

音楽の流れで覚える

 

音程をトレーニングするなら、その課題ができるのでなく、そのうち無意識に歌の中でおかしな流れにならないように、結果が出てくるようにするためです。

つまり、より心地よく快感に相手に伝えようとし、その声の起こしていることを繊細に把握していく能力がつけば、正されていくと考えてください。音楽そのものを聞き、感じ、体や息を動かすことから学ぶことです。

 

○読譜力、初見力について

 

楽譜は、音の高さ(ピッチ)と音の長さを表わします。瞬時に出ては消えていく時間軸の音楽を空間に目でわかるようにしたものです。そこに示された、論理、秩序、法則性(作曲家と音楽のルール)が、その音楽の形です。解釈や比較、他の人への伝達に便利です。ヴォイストレーニングをするなら、マスターしましょう。

第23号 「トレーニングの質を高める」

○体調の悪いときのトレーニング

 

疲れているときには、喉に負担をかけるハードなトレーニングはよくありません。喉の状態をよくするためにヴォイストレーニングをするのに留めます。時には喉を充分に休ませることが大切です。体と息のトレーニングを中心にしましょう。

こういうときは、トレーニングそのものよりも、それによって息、呼吸、体をよい状態にすることがプラスになると思いましょう。トレーニングは、明日のためにするのです。

 

○発声練習はいい声で

 

発声練習は、よい声にして、うまく歌えるようにすることでやるのですが、使い方を間違ってはいけません。そもそも発声練習は楽しいですか。

楽しくないとよくないとはいいませんが、テンションが落ちたり、他のことを考えて集中できないようなら、やっても悪い結果にしかなりません。

私は、歌やせりふのフレーズで声をみることが多いです。それは次のように考えるからです。

1.プロでも、発声練習には不慣れで、歌やせりふでの方が声もうまく使えていることが多い。

2.歌やせりふに、発声練習は不可欠ではない。発声練習をしないのに、プロになっているのがその証拠です。

3.発声練習が、歌よりも難しいように使われているなら、根本に戻り、シンプルにする必要がある。

 

フレーズでのトレーニング

 

たとえば、高いところを歌うのに「とわのこころに」というのを、「とわ」に比べて「こころ」がうまく声が出せていないときに、母音で「おおお」としたり「とわのとわのに」にしてみます。「こころ」というひっかかり(本人のネック)をやさしいメニュに置き換えて、少しずつ解決していくのです。

出せないことまでやって、悪いくせをつけるくらいなら、心地よく歌っている方がよほどよいのです。歌での調整でできるところは、短いフレーズのくり返し練習です。少しずつ音や長さ、動かし方を変えて行なえばよいのです。

歌よりもずっと難しい声域声量で発声練習をするのは、おかしなことです。自分のものがまとまってしまい、その器を破るときに限ります。

「歌いたいのであって、発声をしたいのではない」というのが、正常の感覚です。歌で発声練習をやり、うまくいかないところだけ重点的に補強トレーニングをするとよいのです。

 

○ことばを大切にする

 

音楽で伝えるのに、本来ことばは必要ありません。ことばがなくても、ピアノやトランペットは音で伝えることはできます。そういう言い方をしたらそうなるということですが、多くの歌手は、ことばを大切に伝えています。歌は、声と言葉があるから楽器に勝るところもあります。

発声で母音で歌うより、ことばをつけさせます。その実感(音色やニュアンス)の方が発声に優先すると思うからです。ただし、音楽上の成り立ち(表現力)をみるには、外国語にしたり、もっとも発声に難のないことばを選び、つながりをみます。

歌を自分のものにするには、自分のものを、その歌に叩き入れて動かすようにしていってください。流れの中で正されるように(楽譜に合わせるのでなく)心地よく、のりのよい線をイメージして声で奏でるのです。

 

○英語は発音より発声から

 

日本人の英語の発音は総じてよくなりました。しかし、発声の息とリズム(強弱)がよくないのです。口先で英語を器用に発音しているだけです。英語らしい雰囲気で聴かせているだけといってもよいでしょう。声は前に飛ばないし、強い息にのっていない。歌も声の芯や深い息がないので、私は、その一声で話したり、歌っているのが日本人とわかります。

英語は、強い息を発し、舌、歯、唇で生じさせる子音を中心とする言語です。日本語にないパワー、勢いといったものがそこからつきます。それが自然な深い声や音色につながるのです。その根本的な部分まで、耳と声で捉えている人はどれだけいるのでしょうか。

音楽面のみならず、自然な発声と呼吸を身につけた体があってはじめて、外国人のヴォーカリストと対等に渡り合える実力につながるのです。ですから、体からの深い息をなるべく深い声にするトレーニングを続けることです。

あまりに広汎に使われ、なまりも許されている英語では、日本語なまりであっても充分だと思います。その他の国のことばは、現地の人に聞かせるなら、それを母国語としている人と同じレベルの発音に使いこなすくらいに、使い込んでいかなくてはいけません。

Vol.66

○主張、説得するときの声

 

 姿勢や態度は、声にストレートに影響してきます。猫背でうつむいては、声も弱々しく自信なさげにみえます。ときには、狡猾に聞こえることさえあるので避けましょう。

 胸を張った姿勢は、威厳をもち、自信のある態度にみえます。張りのよい堂々とした声が出やすいでしょう。その話し方をこころがけているうちに、相手は信頼を感じます。説得力をもった声のトーンで述べてこそ、あなたの主張が通りやすくなるのです。ただし、日本では、あまり胸を張り堂々としすぎると、偉そうにみえるので、ほどほどに抑えましょう。

 

○面接の時に自己アピールする声

 

 あなたが試験官なら、どう考えますか。服装や話す内容は別として、どういう声を好ましいと思うでしょう。誠意、熱意の伝わる声を好むと思いませんか。

 どんなにはりきって自分をよくみせようとしても、声は案外と、その人の性格や能力、姿勢、経験を実直に語りかけるものです。口べたでも、素直に語る人には好感がもてます。そこで何の能力が求められるかということにもよりますが。

 態度、顔つき、話し方は、面接では第一印象として大きく評価に影響します。

 自己アピールは、その人の個性の表出ですから、すべての人に通じるマニュアルは、本当はありません。

 自分自身のもっとも自然な声を、そのまま、あるいは、やる気の伝わるように使うことです。どんな声が好まれるかは、職によって違うこともあります。しかし、性格同様、すべての人に同じように求められることはないと思われます。

 声は個性の一つです。話し方も十代の半ばをすぎると、その人らしさが出てきます。面談であれば、相手の望む話し方に近づけた方がよいでしょう。面接官にも好き嫌いがあるからです。相手の口調や呼吸をみましょう。

 あまりにつくり上げた声や演技した声は、うさんくさくなるので避けましょう。セルフイメージを明確にして、自分の声をベースに臨機応変に振る舞えるようになってください。

 

○スピーチでの声

 

 スピーチの声を選ぶとしたら、マイクに通りやすい声となります。印象に残るには、他のスピーチする人とできるだけ異なる内容、異なる声がよいのですが、これは、あらかじめ準備したり、そこで使い分けられるものではありません。話の内容、テンポやリズムがあまりに同じでは、聞く方が飽きてきます。

 最大の問題は、あがりからくる緊張です。あがってしまうと声が上がって、うわずったり、言い間違えたりします。聞く方は大して気にしていないものですが、話すあなたには、一つ間違えても大きなミスをしたように思えてしまうものです。あなたのスピーチをそのまま商品として売るわけではありません。完全無欠のスピーチは、目的からはずしましょう。どんなときも相手にわかりやすく語ろうと思ってください。

 原稿やメモを使うとき、目線は、できるだけ聞く人に向けることです。下を向いていると、コミュニケーションがとれません。原稿やメモに目を落とすのは最小限の回数にとどめましょう。

 スピーチもまた芸と同じです。覚えたものをくり返すのでなく、その場に応じて即興で、よりうまく伝わるような声の使い方をしましょう。他の人とできるだけ違う声、違うテンポ、大きなメリハリをつけられたら、上々でしょう。

 

○異性にアピールするときの声

 

 声に容姿ほどに異性を引きつける力があるのかどうかは、かなりの程度まで相手によります。その人を好きになると、その声も好きになるということが多いようです。好きな人には、しゃべり方も似てきます。

 何となく嫌いな声というのがある人もいます。生理的に受けつけない声もあるでしょう。それがどのくらい声の問題かはわかりませんが、その声に似た声で嫌な思いをした人の場合など、過去や育ちも関わってきます。しかし、そういうケースを除くと、話し方やことばの使い方のほうが大きいように思います。

 声は男女で大きく異なるものの一つです。第二次成長期でのもっとも目立つ差の一つです。それはそのまま性差、異性としての魅力に直結しているといえます。

 男性は、やや低く太くすると、頼りがいのある優しい感じになり、女性はやや鼻にかけた甘えた声にすると、男性にアピールするというようなことも言われます。しかし、一人ひとり、好みというのも違うのです。

 自分の出しやすい声を中心としましょう。あまりに発音などに正確で明瞭な声や、落ち着きのないカン高い声では、モテないことが多いとは思いますが…。

 

○司会者を頼まれたときの声

 

 声は元気に高めに明るくしましょう。しかし、メインのゲストよりも目立つのは、よくありません。司会は、補助という位置づけを忘れないことです。でしゃばって一人よがりのものにならないようにしましょう。結婚式などでは、祝福している感じが欲しいところです。忌みことばは、避けましょう。声も丁寧に、ゆっくりと、出席者みんなが楽しめるように気を配りましょう。

 マイクを使わないときも、声やことばには気をつけましょう。ほどよく厳そかに、格式をわきまえます。

 二次会の司会などは、参加者やあなたの立場によっては、やわらかさ、気さくさをストレートに出してもよいこともあるでしょう。

 

○客商売の声

 

 声の使い方は、商売によりけりです。高級商品のときは、礼儀や雰囲気が重んじられます。そこでは格式の感じられる、信用のおけるような、落ち着いた低く深めの声が大切でしょう。

 一方、安いものや即売のようなところでは、勢い、明るさや人情味など、表に出た個性や熱意が問われます。この人から買いたいと思わせる声です。なかには、声などをあまり交えない方が売りやすいものもあります。

 商売は、それがどこの強みで成立しているかで変わってきます。ものがよい、安い、サービスがよい、売り方がよい、立地がよい、など。サービスや商品、自分のキャラクター、相手の客の性格、これらの要素のなかで、さまざまなケースがあるのです。

 そういうなかで、声がもっとも関係するのは、応対するときです。特に電話から対面応対においての声の使い方は、顔がみえないだけに、とても重要です。声だけで信用信頼が生まれたり壊れたりするのです。

 

○セールスの声

 

セールスは、声において、これまで述べたことを総合して使う仕事です。以前は声が高く、元気のよい声を使うのが、日本のセールスマンでした。人は、商品、サービスとともに、セールスマンを信頼したいのです。そこで元気な声、明るい声を求めているのは確かです。

 しかし、最近では、それだけでは安っぽく、うさんくさいように聞こえなくもありません。商品やサービスによっても、店の格や売りものによっても、使うべき声は違うでしょう。なぜなら、それぞれの客が期待するものが違うからです。

 人間の社会は、さまざまな人で成り立っています。指輪一つをとっても、露店でイミテーションのものを買う人と、ブランド店で高級なものを買う人には、売り場の人の声も違うでしょう。

 ですから、より細かく声のTPOを知ることが大切になってきます。何よりと現場で売れているセールスマンの声に学びましょう。

 

 セールスマンには、最終的に契約に持ち込むためのさまざまなクロージング技法があります。それを声の使い方からも学んでみてください。クロージングには、最終的な判断を委ねたら、声をはさまない、つまり無言で間をとるというのもあります。あいづちの打ち方やイエス、バット(yes but)方式など、マニュアルとなっている例も少なくありません。ベテランとなると、そのマニュアルが消えたところで、変幻自在に声も使いこなしているわけです。ともかく話し上手よりも聞き上手の方が、おしなべて売れる勝率が高いようです。これも呼吸の問題です。

 

○イベント、コンパニオンの声

 

 これは、明るく爽やかで高い声が求められています。アイドルなどと同じ効果を狙うことが多いからです。日本ではテレビでも、このカン高く、かわいく幼くみせた声があふれています。

 とても上品な声とはいえないのに、ますます幅をきかせているようです。何であれ、元気を声にあふれさせることが第一ではあるのでしょう。知的な声より痴的な声を好むのは、日本人のオタクとしての感性なのでしょうか。

 

 

第22号 「声を矯正するには」

○固くてツヤがない声をやわらかくする

 

声量のある人は、マイクの距離と、音響のヴォリュームで調節し、声の質を確認してみてください。マイクが遠いと、固く聞こえます。

 

声帯を合わせ、声の響きをコントロールする訓練として、ハミングは、よく用いられるようです。長時間続けても、喉を痛める危険が少ないので、調子の悪いときの調整にもよく使います。小さく、鼻のつけ根に響きがくるようにしてみてください。なめらかに、一音一音をつなげていくこと、口は最初は閉じて、次に少し開いて行なうとよいでしょう。ハミングは人によっては難しいので、できない人は無理にやらなくてもよいでしょう。ナ行、マ行の音を使いましょう。

 

<声を柔らかくする>次の音で練習しましょう。

・ンガンゲンギンゴング

・マメミモメモマモ

・ンマンメンミンモンム

ハミングのトレーニング

 

○低い声を出せるようにする

 

低い声というのは、高い声に比べて、その人の声帯から体型など、個人的な資質が、より関係してきます。ヴァイオリンでは、チェロの低く太い音は出せませんが、人間の場合、簡単に言い切れません。

低い声が出したくても、それほど必要がなかったり、人に不快を与えるのであれば、使わないことです。聞いている人にとっては、大して関係ないからです。

他の声域でやる方が伝えられるならば、そちらを選ぶべきと私は考えます。そういうことも総合的に判断しなくてはいけません。音響効果も使えます。あなたの生まれもっての楽器としての限界もあります。高い声にシフトして歌いすぎていると、低い声は出にくくなります。

大体の場合、高音域ばかりで練習していると、低音域で出にくくなり、低音域ばかりでは高音域は出にくくなります。それを知った上で高音域で無理して、声の状態を悪くする人が多いので、一時期、低音域でトレーニングするのはよい方法です。

 

鼻声を直す

 

鼻にかかりことばがはっきりしない。声を若々しく、鼻に響きすぎる声を落ち着いた声にしたい。すぐに鼻にかかってしまうなどの場合、鼻に抜けないように、一時、胸中心に意識してみてください。

 

○体からの声を出す

 

個々の音(発音)にとらわれず、体から一つのことばを一まとまりとして捉えて、発声をトレーニングすることです。役者のように、体からことばを一つにして言い切るのが基本ということを忘れないでください。

早口ことばのような滑舌練習も、それをふまえた上でなければ効果はありません。深く響きのある声を出すことの方に重点を置いてトレーニングを行ってください。

私は、発声の理にかなった発音を、発音そのものの正確さより優先しています。発音がいい加減であってよいのではなく、今の課題を片付けて、あとで一本化するのです。

トレーニングは部分的な問題を集中して解決するのですから、全体のバランスがくずれるものです。元に戻し調整しなくてはなりません。

 

○ことばが聞こえにくい声を直す

 

明瞭な発音には、唇、あご、舌、喉(声帯)などが、スムーズに連動していなければなりません。発音より発声、発声より音の流れを優先することです。

その中でギリギリ、ことばをのせていくか、最初からことばで言い切って、それを音の流れでつないでいきましょう。

口を開けすぎ、動かしすぎて、唇やあごの運動にエネルギーを多く使うと、ことばにするときに喉、舌の運動にエネルギーや気持ちがまわりません。

歌においては、すべてのことばをはっきりと発音しようとしすぎると、口がパクパク、音程をとってメロディにつなぐだけで精一杯となります。そのため、ことばの持ち味や音色、イントネーション、リズム(グルーヴ)を生かせなくなることが多いようです。本来、音は点でなく線でとり、動かすのです。

日本語を音楽に使えるようにしていくには、イタリア語あたりの発声から始めるのもよいと思います。私は原則として、発声を発音に優先する立場をとっています。

 

キンキン声、金切り声を直す

 

自分の声を一方的に高めだと思い込んで喉をしめて出していることがほとんどの原因です。

息も浅く胸式に近い呼吸です。あごが上がっていませんか。まずは、ことばをしっかりと深く話すことから始めましょう。

低い声の「ハイ」で胸の響きを感じましょう。

 

喉声、かすれ声を直す

 

かすれている声、息もれする声は、高音に届きにくく、共鳴に欠けます。鼻に抜けて、かぜ気味の声のような人もいます。これは、息がうまく声にならないため、無理に喉に力を入れて押し出すからです。息を浅く短く吐き、声を出すのに不自然につくっているのです。裏声にも切り替えにくく、つまってきます。発音は不明瞭で、柔軟性に欠けます。

トレーニングの初期にもよく見られることです。急にたくさんの声を長時間、使いすぎるからです。響きの焦点が合わず、声が広がってしまいます。声立てが雑で、ぶつけて力で出す人に多くみられます。あごや喉が固く、よくない状態での発声です。

 

小さく細い声を直す

 

蚊の泣くような、小さく細い声は、外見的には、あごや首、体格などが弱々しい人、または、内向的な性格からきていることも多いようです。これまで大きな声をあまり使わなかったのでしょう。その状態では、マイクの使い方でカバーするしかありませんが、根本的に変えたいものです。体力、集中力づくり、体の柔軟から始めましょう。スポーツやダンスなどに励みましょう。なるべく前方に声を放ってやることを意識しましょう。声を出す機会を多くとってください。

 

○低く太い声を直す

 

特に太い声でしっかりと響いている人は、有能です。一流のヴォーカリストは、高い声だけではなく、太い魅力的な音色をもちます。しっかりとその声を前に出すようにしてください。

声が低いとか声域がないから歌えないということはありません。どのフレーズでも伝わらないから歌えないということです。高い声の声域も目指してください。

 

〇レッスンに集中する

 

レッスン時間が、カウンセリングやレッスン生が話したり、トレーナーが語ったりすることだけになっていませんか。ことばのやりとりが少ないレッスンが求められるべきです。

私の所では、質問はメールで済ませ、レッスンの疑問は、メニュで答えるようにしています。それでも疑問が残るときは、何回聞いてもよいし、私か他のトレーナーにも聞くことがあります。

トレーナーの言語能力がないこともあるし、当然わからないこともあるでしょう。何でも質問してくる人に対して、あまりことばで説明しないほうがよいと考えるのです。

答えないのも、一つの答えです。答えてわかるようなことは答えなくともわかるし、それがわからない人には答えてもわからない世界があるのです。

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