〇さまざまな音をつくる子音(2)サ行(ザ行)
□サ行の発音
EX.「すみません」 「失礼しました」 「お先に失礼します」
〇サ行音……サ[sa] シ[∫i] ス[su] セ[se] ソ[so]
舌の先を上歯茎の裏に近づけると、舌先の下の部分は、下歯の裏に密着し、上歯茎の裏と舌先の上面との間にわずかなすき間ができます。そこに息を吐くと、狭いところを押し出す息で摩擦音が生じます。これが[s]の音です。
サスセソは、[s]の音に母音アウエオが結びついたものです。
<シとサスセソの違い>
「刺す」「死す」の発音を比較して、呼気の通るすき間の位置を比べてみてください。
サは舌先が上歯茎の裏に近づくのに対して、シは舌の上面の前のほうが、上顎の前方の硬口蓋に近づき、舌先の下がサと違い、下歯の裏から離れた状態で発されます。このような音を[∫i]であらわします。「静かに、シー! 」というとき、あるいは「シャシシュシェショ」の「シ」です。先生を「シェンシェイ」となまるのは、この混同です。「スエスエ」、「スエンスエン」、「センセイ」とくり返して直しましょう。
(近頃、このシの代わりにスィ[si]にする人が多くなっています。シ[∫i]を無声音で伸ばすと、シーといつまでも摩擦音ですが、[si]を伸ばすと、母音のイになります。
sの音が[∫]の発音にならないように
サスセソの音は、舌の位置に注意してください。[s]は上歯茎の裏に近づいて発音しますが、[∫]は舌先が上歯先の裏に近づきます。
「さあ~」と舌が出すぎたり、息の通り道が狭くならないと、切れの悪い音になります。逆に、息の音が強すぎるなら、上唇を歯に少しかぶせましょう。
〇ザ行音……ザ[dza] ジ[dӡi] ズ[dzu] ゼ[dze] ゾ[dzo]
サと違い、舌先がまず上歯茎の裏に接するのがわかります。
その接触でふさいだ気道を押し破って、呼気が出るときに破裂音がつくられます。
続いて、そのときできたすき間から呼気が流れるときに生じる摩擦音が加わって、[dz]の音をつくります。このように破裂音と摩擦音の組み合わさった音を破擦音といいます。
ザ行音の中で、ジはシの場合と同じく口蓋化した音で、[z]の音をつくる位置より舌が硬口蓋に近いところで発音されます。(地域によっては、ジ[dӡi]とヂ[di]、ズ[dzu]とヅ[du]を区別して使っているところもありますが、共通語では区別しません)
(サ)さっさと財布を探さなきゃ/さすがの寒さに目覚めた
(シ)椎茸と塩を仕入れる/死の獅子舞ショー
(ス)すべてを捨てて救う/炭火を入れるのが済む
(セ)聖母は戦争を責める/背伸びする制服の生徒
(ソ)外の掃除が騒々しい/空にそびえる壮大な阿蘇
〇さまざまな音をつくる子音(2) タ行(ダ行)/ナ行
□タ行の発音
EX.「どうぞこちらに」 「どうかお待ちください」 「ちょうだいいたします」 「お疲れさまでした」
〇タ行音・・・・・・タ[ta] チ[t∫i] ツ[tsu] テ[te] ト[to]
「タ」「テ」「ト」は、上の歯か歯茎あたりで、舌先を離して生ずる破裂音[t]に、「ア」「エ」「オ」がついたものです。
「チ」は、口蓋化した音で、舌が上歯茎より、もう少し奥の硬口蓋に接して、破裂音[t]を発し、そのすき間で生ずる摩擦音[∫]が、組み合わさった破擦音です。
「ツ」は[t]が[s]に動く破擦音です。「アツイ」をゆっくりと発音してみるとわかります(トゥ[tu]ではない)。
<チ[t∫i]、ティ[ti]、ツィ[tsi]の違い>
[t∫i]をささやくように無声音で「チー」と伸ばして発音してみると、最初の「チ」の音のあとに「シ」のような摩擦音が「シー」と続きます。「アチー!」の「チ」。「チーチーパッパ」の「チ」の音です。「チ」は「ティ」ではありません。
「ティ」[ti]、「ツィ」[tsi]を伸ばすと、「イー」となります。この二つは、外来語(ティーポット、ツイードなど)以外では使いません。つまり、「チ」は、「チャ」「チ」「チュ」「チェ」「チョ」、「ツ」は「ツァ」「ツィ」「ツ」「ツェ」「ツォ」の音です。
〇ダ行音……ダ[da] ヂ[dӡi] ヅ[dzu] デ[de] ド[do]
「ダ」「デ」「ド」は、タ行が無声音、ダ行音は有声の破裂音です。
「ヂ」と「ヅ」は、音の上で「ジ」と「ズ」と同じです。「ヂャ」「ヂュ」「ヂョ」も、「ジャ」「ジュ」「ジョ」と同じで、限られたとき以外は使いません。
このようにザ行音と共通のところが多いため、「ダ」「デ」「ド」と、「ザ」「ゼ」「ゾ」を混同しないよう、注意しましょう。「さざ波」が「サダナミ」、「撫でる」が「ナゼル」、「喉」が「ノゾ」になる人は、ここで直しましょう。「地図」が「ツゥヅゥ」や「ツィヅィ」となる人も、要注意です。
<タがいいにくい>
「竹たてかけた」がいえない人は、舌の移動の練習をしましょう。
・タケタテタケタケ
(この竹垣に竹立てかけたのは竹立てかけたかったから、竹立てかけたのだ)
(タ)楽しい旅をしたい/正しい畳の叩き方
(チ)塵はきちんと持ち帰れ/父が痴漢に注意した
(ツ)つまらない付き合いを続ける/つるつるのツノ
(テ)丁寧に手を洗う/転校生の手書きの手紙
(ト)灯台のともしびが届く/遠い都市の時計が止まるとき
□ナ行の発音
EX.「おさしつかえなければ」 「お会いになりますか」
〇ナ行音……ナ[na] ニ[ɲi] ヌ[nu] ネ[ne] ノ[no]
舌の接するところは、タ行と同じです。タ行音は破裂音、ナ行音は、舌を歯茎につけたまま、息を鼻へ抜く鼻音になります。
「ナ」は、そのまま、声を出さないと、ただ鼻から息が静かにもれます。そこで、鼻に手をあて声を出して「ナ」を発音すると、声が鼻に響いて振動するのがわかるでしょう。
・ナヌネノとニの発音の違い
ニは、ナヌネノと調音点が違い口蓋化します。
(ナ)なし崩しに成し遂げることはない/海原の七不思議
(ニ)二人三脚で荷造りして逃げた/兄さんを二度と憎まない
(ヌ)ぬるぬるぬめる/塗り薬が塗れぬよ
(ネ)来年を念じながら眠る/寝たら願いが叶うね
(ノ)ノックののち覗く/納期でノイローゼの農民
〇さまざまな音をつくる子音(3) ハ行(バ行、パ行)
□ハ行の発音
EX.「はじめまして」 「大変お世話になりました」
〇ハ行音……ハ[ha] ヒ[çi] フ[ɸu] ヘ[he] ホ[ho]
[h]の音は、「ハー」と息を吹くときの喉音です。喉の奥を、「ア」「エ」「オ」より狭くして出す摩擦音です。「ハ」「ヘ」「ホ」は、この[h]音と母音「ア」「エ」「オ」でつくられます。[h]は喉頭からの深い声、喉音です。
「ヒ」[çi]は「シ」の発音に近い口構えで、「シ」より舌の中ほどをもっと盛り上げて発する弱い摩擦音です。「ヒ」は舌と口蓋でつくられる音です。
<「ヒ」と「シ」を区別する>
「ヒ」と「シ」は調音点が近いため混同しやすく、日比谷と渋谷、質店などは、よく聞き間違えます(地域によって「ヒ」と「シ」を逆に発音するところもあります)。
1.ヒシシヒヒシヒシ
2.シヒヒシシヒシヒ
「フ」[ɸu]は、「フーフー」と、吹くときに出る両唇を用いた摩擦音です(英語などの[f]のように、下唇を上歯で噛んだ状態で出しません)。
日本語の「フ」と[f]の違い、「ハ」「ヘ」「ホ」の[h]音と[ɸ]音の違いも確かめましょう。
「ヒ」は、「ヒャ」「ヒ」「ヒュ」「ヒェ」「ヒョ」、「フ」は「ファ」「フィ」「フ」「フェ」「フォ」の仲間です。
<「ヒ」と「フィ」を区別する>
この「ヒ」を両唇をまるめ「フィ」のように発音しないように。
1.ヒフィフィヒフィヒフィヒ
2.フィヒヒフィヒフィヒフィ
〇バ行音……バ[ba] ビ[bi] ブ[bu] ベ[be] ボ[bo]
[b]は、唇を閉じ軟口蓋をあげて鼻へ抜かず、唇で出す弱い破裂音です。語頭では強く感じても、語中での[b]は唇がわずかに接するかどうかくらいで、ほとんど摩擦音に近くなります。
「ウー」と発音しながら、だんだん両唇を近づけてみると出る音が、「ブ」の音です。
〇パ行音……パ[pa] ピ[pi] プ[pu] ペ[pe] ポ[po]
[p]は無声破裂音です。外来語や擬声語(パタパタ、ピカピカなど)や、促音(ん)と使います。
〈「プ」と「フ」を区別する〉
共に唇で発音します。「プ」は唇がいったん完全に閉じ、瞬時に息が流れ出て、「フ」は少し開いたまま息を流し続けます。
〈「パ」と「バ」を区別する〉
「バ」は最初から音になります。「パ」は最初は音にならず、「ア」のときに、音になります。
喉仏に指を当てると、「バ」は、すぐ振動し、「パ」は遅れて振動します。つまり、「バ」は声を伴う子音(有声子音)で「パ」は声を伴わない子音(無声子音)です。
1.バパパババパバパ
2.パババパパバパバ
(ハ)羽根をはがされた羽アリ/華やかではかない花火
(ヒ)昼間はひとりで暇だ/光る瞳にひかれる
(フ)工夫した豆腐のフライ/不意に触れ合う二人の皮膚
(ヘ)辟易するヘリウムの変化量/ヘラヘラ笑う蛇
(ホ)本当のほたるが欲しい/星の本を翻訳した