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2013年1月

「ポジティブな諦観を」 NO.257

自分の人生に起きたことを「誰かのせいでこうなった」とか、「私はだま
された」といってばかりいる人がいます。うまくいかないのは人生ではあた
りまえのことです。
それは嫌なことだから、「それを避けるために誰かに“お願い”したら、
うまくいかないことや嫌なことはなくなるはずだ」と、こう考えるわけです。
(この“お願い”にはいろんなやり方があります。)それが、肯定されるかの
ような今の時代には、言いにくいのですが、これこそが、どんどんうまくい
かなくなる原因です。
 
誰にも、うまくいかないことや嫌なことは起きるし、それを引き受けなく
ては、“まともに”生きてはいけないものなのです。そこは、潔く諦めましょう。
どんなによい状態であったとしても、すべては変わっていくものだからです。
変わるのが嫌でも、そのことによって、うまくいかなくなっても、世の中、
そのようなものなのです。
 
それを運命というのなら一種の宗教観になるかもしれません。
でも、こういううまくいかないことも嫌なことも、自分にとって、同時に
うまくいっていることで役立っていて好きになれることもあると思えるよう
に努めてみましょう。ほんの少しからでも、そこに可能性と希望を見い出し、
それに向かって生きようとしていくこと、それがプロになる、大人になる
ということのように私は思います。

○ほどよい響きの声にする NO.258

○ほどよい響きの声にする

 声が響くのは、声道という、声帯から出口を鼻、口にすると、その間のところです。もちろん、頭や胸や全身、あるいはあなたのいる部屋にも、声は共鳴して音色を変じるのですが、ここでは身体のなかであなたの音色をつくるところを扱います。ものまねでわかるように、響かせ方や、響くところを変えるだけでも、けっこう音色は変わります。この細やかな音色づくりについては、次章で行います。

 よい声とは、どんな声でしょうか。その目安をいくつか掲げておきます。
□全身を無理なく使って伸びやかである
□透明感や艶がある(くせがない)
□柔軟性と鋭さが伴っている(固く鈍くない)
□軽みと深みがある(柔軟性がある)
□音色が多彩に感じられる(変化が感じられる)
□ことばや発音になめらかさが感じられる(ギクシャクしていない)
□深い呼吸を充分に伴っている(浅い呼吸でない)
□統一性と安定がある

<発声のメカニズム>
A 呼吸(呼気)―エネルギー源(息を吐く) [肺・横隔膜] B 発声【原音化】―声立て(声帯振動)息を声にする[咽頭・喉頭・声帯] C 共鳴【声化】―声の原音を響く声にする[口腔・鼻腔・咽頭] 母音など有声音を響かす。 D 構音【言語化】―息や声を言葉にする[口腔・唇・舌] ことば=発音して、子音を生じさせる。(無声音、有声音)
声を出しているときに、口の中や唇のかたちや舌の位置が変わると、響きも変わります。 (以上、【原音化】、【声化】、【言語化】は、私の用法です。)

A.呼吸(呼気)―エネルギー源(息を吐く) [肺・横隔膜]
 人間の体という楽器をオーボエにたとえてみると、声帯は、そのリードにあたり、声の元を生じさせています。リードを振わせ音を生じさせるのが、肺から出る息(呼気)です。
 声帯そのものは動かせないので、呼気をコントロールすることによって、周辺の筋肉も含めた声のコントロールを習得していくわけです。そこで、確実に声をコントロールするのに、腹式呼吸のトレーニングが必要となります。息は肺を取り囲む筋肉の働きによって横隔膜を経てコントロールされています。

B.発声【原音化】―声立て(声帯振動)息を声にする[咽頭・喉頭・声帯]
 肺から吐き出された空気は、直径2cmぐらいの気管を通って上昇してきます。咽頭は、食道、気道を分けるところにあります。気道の調節は、唾を飲むと上下に動く喉頭でやります。この喉頭に、V字の尖った方を前にする象牙色の唇のようなものがあります。これが声帯です。声帯は、気管の中央まで張り出し、左右のがくっつき、呼気がせき止められます。一秒に何百回~何千回もの開閉で、
声を生じます。その気流で生じる響きのない鈍い音を、喉頭原音といいます。

C.共鳴【声化】―声の原音を響く声にする[口腔・鼻腔・咽頭] 母音など有声音を響かす
 声は、声帯の振動から空気のうねりで生じます。これは口笛のように、口唇そのものの音でなく、空気音なのです。いわば声帯という、二枚の扉の狭い隙間で生じる音のことです。
 その声を大きくしたり、音色をつくりだすのは、楽器の管(空洞)にあたります。(声はのどを中心に口や鼻までの声道で、共鳴します。体の共鳴腔は、口腔、咽頭、鼻腔などです。口内の響きを舌で変えて母音をつくります。)

D.構音【言語化】―息や声を言葉にする[口腔・唇・舌] ことば=発音して、子音を生じさせる。(無声音、有声音)
 響いている声や息を、舌、歯、唇、歯茎などで、妨げて音をつくります(これを構音・調音ともいいます)。そこで発されたのが子音です。声のは有声音(Bなど)、息のは無声音(Pなど)といいます。

 声の出るしくみは、よくギターなどの弦楽器に例えられていますが、声帯での声の発生は、弦で音を生じさせているのとは、違います。ギターは、弦の長さや太さ、張り方でも変化しますが、声は声帯の質量のほかに、声道の大きさ(長さ、太さ)や声門のしめ方、呼気圧まで、複雑に関係してくるのです。
 発声は、声帯の振動(というより、声帯の開閉の方が正しいのですが、柔らかいゲル状の組織(声帯の二枚のひだ)が、強い空気の流れに引き寄せられるところで、接したり、離れたりする[フーリエの原理])ところに、空気のうねりで生じる空気音です。いわば二枚の扉の狭い隙間で生じる風のヒューという音のようなもので、扉のガタガタ音という振動音ではありません。
 このような知識は、どんどん解明されてきているところで、最近、よく聞かれるのですが、まだ全容がわかっていないのが、発声ですから、ここでは打楽器のように力任せに打ってはいけない、つまり、無理やり声を出せばよいものではないということだけ、知っておいてください。

 声の扱いは、声帯の二枚のひだ(カーテン)の接点が、この微妙な状態にキープされていてはじめて、可能なのだということです。現実には疲労して、まわりの筋肉が一部麻痺したり、声帯がはれたりして、うまく開扉振動しないときに声にすることもあります。ドスの効いた声、押し殺した声、叫び声、泣き声など。しかし、トレーニングにおいては、もっともよい状態ののどで行わなくては成果があがりにくいということです。

 例えば、息の使い方というのは、発音として考えるよりも、発声の中でトレーニングしたほうが早く解決します。声を出す楽器は体であり、ヴォイストレーニングは、その使い方を覚えることにもなります。
 人間が言語を扱うには、まず息をエネルギー源としてのどの声帯で音にして、響かし、その上で加工(構音もしくは調音)する必要があります。つまり、1.呼気エネルギー 2.原音化 3.共鳴 があって、4.発音 があるわけです。ヴォイストレーニングで扱うのは、本来はこの1~3の問題です。
 どこの民族であっても、必ずもっているものが言語です。のどという器官から出る音を複雑に加工して、各言語の発音体系をつくってきたのです。
 最初はきっと「アー」とか「オー」とかいいながら、そこに意味を伴わせてきたのです。そして、区別して母音を生じさせました。             命名に使うようになり、名づけていくものが増えるにつれ、区別するために、さまざまな子音を生み出し、いろんな組み合わせで伝えようとしてきたのです。

※共鳴は焦点を感じる
 名人は、気合いで相手を倒すことができるといいます。そのときは、声が気とともに、相手に強く働きかけるのです。このように、声を使うときは対象を明確にイメージすることです。(「気」の名人は無言でもできるようですが)
 「声を集める」という表現で、声楽などは頭のてっぺん、眉間、頬、あるいは視線の先に集中させます。一点に集中することで、のどもリラックスします。
 音声は音波ですが、見えません。イメージとして浅く、広く拡散するのでなく、相手に向けて集中します。声を出すときは、必ず相手の方向と距離を意識するとよいでしょう。ちなみに、声でグラスを割る実例がTVで放映されていました。

●胸での響きを感じる(胸部共鳴)トレーニング
 声の響きというと、頭の方に響かせるものと思われます。それは、合唱団やソプラノ歌手の出しているような声のイメージですね。そういう響きでは、ことばとしては浅く、キンキンとなって聞き苦しいものです。もっと低いところで、のどを開いて、深い声を出すことを身につけていくと、声は大きく変わってきます。
 体の深いところから、呼吸の流れにのせて出した声は、とてもよく伝わるものです。

 大きめに声を出して、どこが響くかチェックしましょう。のどがビリビリというのは、やりすぎです。上から下へのどを押すようにしてはいけません。
 胸の中心に響きを集めてみましょう。ことばとしては、「ハイ」「ナイ」「ネイ」「ハオ」「ラオ」などの中から選んでみてください。(もっとやりやすい音があれば、それを使ってください)
 体のいろんなところに手を当ててみましょう。それぞれのところに、あなたの声の響きを感じてください。のどに負担をかけず、下の方まで響いているほうがよいです。胴体全体に、均等に響くイメージをもちましょう。もちろん、あごを出さず、首や肩、舌などの力は抜くことです。

※小さくても通る声をめざす
 私は、語るように歌う、歌にあこがれたことがあります。しかし、十代の頃は、小さな声にすると、高くも低くもできず、言語も不明瞭になりました。「年をとって枯れないと無理か」とさえ思うほどでしたが、やがて、語るだけで一流の作品となるのは、声も表現もプロとしての体でコントロールしているからとわかってきました。役者が小さな声、低い声でせりふを言っても、客席の後ろまで届く。それは大きな声や高い声を出すよりも、高度に支えられたコントロールなのです。

●胸に響かせるトレーニング(落ち着いた太くどっしりとした声のイメージ)
1.「ハイ」「ガイ」「ライ」
2.「おはよう」「こんにちは」
3.「さようなら」「ありがとう」
4.「ファイトー」「エイエイオー」
5.「ヤッホー」「オッケイ」

※共鳴するということ
 声にとっての楽器は、自分の体全体です。
 どんな楽器でも音源と共鳴する部分があって、美しい音色となります。
 ピアノはピアノ線をハンマーで打ちます。その振動がピアノ線から駒に伝わって共鳴板を鳴らします。ギターやバイオリンは弦をこすり、その音が胴に伝わって、音色となるわけです。
 声の原音をつくるところは、声帯です。エネルギー源が息で、共鳴するところは体です。実際は、のどから口、鼻の間(口腔、咽腔といった声道)、胸、顔面、頭部に共鳴します。最も大きいのは、胸の共鳴ですから、まずは、そこを充分に生かすべきでしょう。
 ボリュームのないうすっぺらい声というのは、体の大きさ、胸の厚さなどの違いも一因としてありますが、多くの場合、共鳴を充分に生かしていないのです。特に日本語は浅く、共鳴しにくいため、胸に充分、響くことを意識して、ゆっくりと大きな声で出してみてください。

●口内での共鳴ポイントを知る
 声を出すときに、軟口蓋に声の焦点を意識して出してみましょう。軟口蓋とは、上の歯のちょうど裏側の硬いところ(硬口蓋)と、のどちんこの間です。口をあけて息を口のなかに吸い込むときに、スーッと冷たく感じるところです。
 声を出すときにあくびしたように出してみましょう(あくびした状態でやりにくい人は、その直前の形で)。このときは喉の奥が広く開いています。横隔膜も下腹部の位置へ下がりやすくなります。深みのある丸い声(柔らかい声)にしてください。これは、のど声(生声)をはずすやり方の一つです。
 日本語の「ア」は、浅いところでできることばであるため、けっこう発声トレーニングに使いにくいものです。
 「ア」を深い声にすることよりも、「イ」でやる方がうまくいくこともあります。もちろん「イ」のときは、しっかりとのどをあけ、力を入れないで出さなくてはなりません。
 頭の響きと胸の響きをうまくバランスをとって、前に出すようにしてください。

※浅い声や硬い声になっていないかのチェック
□響かないまま、息の勢いで力任せに出てくるようにしない
□部分的に力が入らない(舌根、あご、肩、胸)
□息が充分に声にミックスされている
□声帯をならしすぎていない

●ハミングから共鳴へのトレーニング
 ハミングで鳴るところをそのまま、声の響きでとっていきます。胸の方の共鳴が自然と眉間の方で響く感じになるのがよいでしょう。
 胸の響きでハミングの響きを捉えられるようになったら、頭部の方に鳴らしていきましょう。難しい人(高い声の方が出やすい人など)は、頭部から始めてもかまいません。

●ハミングのトレーニング
 1.ンーンーンーンー  2.ムームームームー

●ハミングから共鳴のトレーニング
 1.ンーア  2.ンーエ  3.ンーイ  4.ンーオ  5.ンーウ

※鼻濁音を使うトレーニング
 体が響かず、あるいは響いてもその音を集め切れないと、口先の声になります。すると、うまくことばを使えないものです。
鼻声の方が、日本人には、やりやすいので、アナウンスやナレーションなどでは、鼻濁音(んが・・・)を中心に、マスターしていきます。
鼻濁音とは、「おんがく」といったときに、「が」が、「がっこう」の「が」と異なり、鼻にかかる音になることです。
●鼻濁音のトレーニング
 1.ガンガ(カ )  2.ゲンゲ  3.ギンギ  4.ゴンゴ  5.グング

●声の響きをよくするトレーニング
1.んアーんエーんイーんオーんウー
2.んガーんグーんギーんゴーんグー
3.ナーネーニーノーヌー
4.マーメーミーモームー
5.んーアーん、んーエーん、んーイーん、んーオーん、んーウーん

●いろいろな音で共鳴を感じるトレーニング
 1~4でやってみましょう。
1.ムームームー
2.フムーフムーフムー
3.ヰ・ヰ・ヰ(「ウ」の口の形で「イ」を発音する)
4.ヌーヌーヌー

●共鳴ポイントのトレーニング
 1~4でやってみましょう。
 1.「ナァ」  2.「マァ」  3.「ンナ」  4.「ンマ」

●共鳴を感じてみるトレーニング
 次の箇所に手をあてて、どのくらい声が響いているか確かめてみましょう。どれも響かなくてはいけないのではありません。個人差もあるので、一つの目安にして捉えてください。
□1.胸の上部
□2.胸の中部
□3.ろっ骨の下の方(助骨)
□4.肩(けんこうこつ)
□5.首のうしろ
□6.ろっ骨の横のあたり
□7.尾てい骨の上の方
□8.額
□9.鼻のつけ根(みけん)/ほお骨
□10.後頭部

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