○相手に聞きやすい声量を意識する NO.259
○相手に聞きやすい声量を意識する
どんなによいことを言っていても、聞こえなければ伝わりません。ですから、どこでも、最低、相手に聞こえるだけの声量が必要です。
最近の若い人は、あまり声を出さずに育ってきたためか、大きな声を出すことも、なかなか大変なようです。
かといって、応援団ばりの大声トレーニングでは、のどをこわす場合が多いので、無理は禁物です。無理なく、じっくりと時間をかけて、声をトレーニングして大きく出せるようにしていきましょう。基本的なトレーニングを繰り返し、少しずつ鍛えていけば、誰でも声は大きくなるものです。他人の声と比べるのも勉強ですが、その大小で優劣を考えないでください。いかに確実にコントロールできる声かが大切です。通る声をめざしましょう。それは、マイクを通しても聞こえやすい声になるからです。
1.自分の声がどこまで届いているかを意識しましょう。
2.他人の声がどのくらい聞こえているかをチェックしましょう。
3.TVやAVで自分の一番聞きやすいヴォリュームにします。
自分の声の大きさを1~5段階に変えて、録音して、どれが一番近いのかを知りましょう。
●声量トレーニング
声量を大きくしていきましょう。
「ア」(もしくは、あなたの出しやすい母音で)で、最初に出した声を少しずつ大きくしていきます。次に、小さくしていきます。
1.50、60、70、80、90・・・ (数字は感覚的な目安)
2.50、40、30、20、10・・・
日本人は相手の声が聞きにくくてもあまり注意しません。少々聞こえなくても、結果に大差はないと思っているからです。[引用:返事]
私は子供の頃、映画を見に連れていってもらって「どうだった?」と父親に聞かれて、ことばが思い浮ばず、ためらったすえ、「べつに」と答えて、ひどく怒られた覚えがあります。そのときは、「こんなことでなぜ」と思ったのですが、つかの間の休日にわざわざ送り迎えし、喜んでいる声を聞きたかった父には、やるせなかったのでしょう。映画のよしあしよりも、発した問いに正面に向き合って答えなかった私の声に表われた態度に、許しがたいものを感じたのでしょう。私の声の出し方が、その声で伝わったものが、父を不快にさせたのです。
でも、もし怒られなかったら私はそのことに気づかなかったでしょう。このとき、他の人なら、きっと何もいわずに、傲慢な、不躾な、無気力な、いい加減な人間だと私を判断したかもしれません。そして、黙って遠ざかっていたでしょう。正直いって、私には何が起こったかわかりませんでした。逆らったわけでも、悪いことを言ったわけでもなく、別に思い浮ぶことがなかったから思わずそう口についただけだったのです。しかし、一度、口から出た声は、私の思いや意志を離れて働き出します。つまり、父が聞いたように聞こえるのです。わかりますか。私の思いや考えが伝えられなかった。その声を父は別の意味にとったのです。そして、現実は、その私の声、相手に聞こえた声で動いてしまったのです。
もし、作文にして、「別に……」と書いたら、父はあきれたり、頭がよくないなぁとか、筆無精、苦手なのかなと思って怒ることはなかったでしょう。つまり、ことばの内容である「別に」ということばでなく、その声に込められたニュアンスが、相手の心に働いたのです。
つまり、私はそのとき、声で損した、痛い目にあったのです。
もし、私が、おどけてでも「別にね、映画は期待はずれ、大したことなかったけど、スッキリしたよ」とでも言ったら、がっかりさせたとしても、それで済んだように思います。
外国人は音声コミュニケーションを重視するので、聞こえないことには厳しいです。私が日本語教師のトレーニングを委託されているのは、この理由からです。
●声量の聞き分けトレーニング
誰かに「聞こえません」といわれると、あなたは声を大きくしますね。でも、そういうとき、どのくらいのメモリーをあなたは刻んで調節していますか。音圧はデシベルで表すので、騒音計で測れます。しかし、必ずしも声量が大きいのと、聞こえやすくなるのとは違うのです。[※引用 声量の目安表]
伝えるのに、伝わるだけの声量は必要です。しかし、それは相手の耳の鼓膜に届くだけで、本当に伝わる声は3000~4000Hzの高さです。お年寄りは、大きくて高くなるより、低くしないと聞こえません。これも耳のつくりによるのです。[お年寄りの耳]
発信―受信のもっとも成り立ちやすいところで、もっとも効果的な、伝えるー伝わるが成立するのです。
そのトレーニングは、実際に他人でチェックしてもらうのがよいです。
大きな部屋で、どこまで遠くまで聞こえるかを、実験しましょう。しかし、人が多いとか、冬で厚い服を着て騒いでいると、声は相手のところには届きにくくなります。これも声のやっかいな問題の一つです。
※どこまでも大きな声が出るわけではありません。もっともよい解決策は、聞き手を静かにさせることです。私は、非常時以外は、大きな声は出さざるを得ないとき、すでに負けだと教えています。怒鳴った声で伝わったところで、相手の心には伝わりません。
※最近、女性のリーダー格の方が、男性の部下を取り仕切るのに大きな声を出したいと、私のところにいらしています。トレーニングをして出せるようにしておくことはとてもよいことです。先に述べたように、女性であっても、発声を大きく出せるのは、生きていくための武器防具です。
しかし、非常時以外にいつも、ビジネスの場で使っているようでは、上司失格です。上司に必要なのは、耳にうるさい大きな声でなく、内容の伝わる声、相手の心に伝わる声です。
トレーニングをすると、単に大きい-小さいの両極でなく、10%刻みくらいに声量も相手に聞こえるように、声も調整できるようになります。メリハリがつく話し方ができるようになります。ヴォイトレとは、まさに繊細に声を使えるようになるために行うものなのです。
●声の焦点を絞る
1.自分の声を相手に向けて出してみます。
2.相手を1人、2人、3人、5人、6人、8人と、増やしていきましょう。
3.相手の並び方をいろいろと変え、方向も変えてみましょう。
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