Vol.16
○声の5つのチューニング
あなたが意識しようとしまいと、会話の中では”声”がとても重要な役割を担っています。声には高低、強弱、明暗(トーン)といった発声の要素と、アクセント、イントネーション、ブレス(息つぎ)などの発音の要素がありますが、これらを使い分けて、言葉に声の演出を加えることで、より円滑なコミュニケーションをはかることができるのです。
1.高-低
2.大-小(強-弱)
3.長-短
4.速-遅
5.声質(音色)-鼻声(つまった声、ハスキー声、かすれた声)
○自分の中での声の感じを変える方法
次のようなことを意識して声の調子を変えてみましょう。
0.姿勢で変える
1.呼吸-長短 声量 長い-短い
2.声帯-高低(周波数・声域) 声が高い-低い
3.共鳴(母音)-大小(声量) 声が大きい-小さい
4.発音(子音)-滑舌音 発音がはっきり-あいまい
5.表現-速遅(強弱)、声のトーン
話し方もそこで使う声も本来、無数にあるものです。声の使い方は後で、文例と一緒に覚えていきましょう。
まずは、とっさにある声を出せる状態をイメージして出してみてはどうでしょう?
芸能人やアナウンサーは発声や発音の訓練を積んだ声のプロです。自分の声を録音して、彼らの音声と聞き比べてみると上達が早まります。
(巻末にある「声map」を参照ください)
アーティスト論特別 Vol.35 [by Ei]
~どう聴き、どう捉えるかを参考にしてください。
現代歌唱編
私は眠りすぎている。河の底にとうとうと。たまに気泡を吐いてみるのだが、大きな流れに瞬時にかき消される泡にすぎない。
○日本人の歌唱について*
「これからの歌」にいくつか加えておきます。由紀さおりさんの最年長オリコン10位(2012.アルバム部門)は、マーケティングでの仕掛けはあるものの、日本の昭和歌唱のレベルの高さを示すものといってもよいでしょう。昭和40年代(1965~75年)に到達した高みは、日本の歌唱史からみるとピークというよりは、最後の砦だったといえるでしょう。
団塊の世代による洋楽一辺倒は、それまでのクラシック、ジャズ、ラテンブームに輪をかけて、日常に細々と続いていた邦楽の流れを断ち、日本の生活を一新したといえます。折りしも、プレスリーからビートルズに、ヨーロッパからアメリカにポップスの流れは、大きく変わり、シャンソン、カンツォーネを経て、ロカビリー、グループサウンズ、ロックンロールへとつながるのです。若い人のために加えておくのなら、平尾昌晃、沢田研二、堺正章さんなど、今も業界の一線にいるタレント、作詞作曲家の全盛期です。(当時の状況は、すでにフォーリーブスを経て、歌謡曲、演歌全盛、ソロ、アイドルの時代に育った私には語る資格もないので、割合します)
お茶の間で家族皆でみるブラウン管のテレビが、白黒からカラーへ移って、そういう人たちが「全日本歌謡選手権」や「スター誕生」などの歌手発掘、育成を成功させ(ピンクレディでピークを迎えた時代)、紅白に出たら、一生食べていけるといわれていた時代、レコード大賞もまた、野球の日本シリーズ、相撲、プロレスとともに、誰もが知る大イベントでした。ラジオは深夜放送だけでなく身近なもので、レコードは何とかすれば買えるものでした。そこにカセットテープが、そしてビデオ(VHS)が普及していきました。
○音楽の耳について
音への嗜好幼少のことより脳に入ってきたものに大きく影響されます。遺伝的なものもあるとはいわれていましたが、親が音楽に接しているところに育っているのなら、影響を受けざるをえません。一方で本人の素質、資質、性格などでも取り込み方が違ってくるのは当然で、同じ家で育った兄弟でも必ずしも似るとは限りません。
1903年カルーソが録音して、ベストセラーとなって、その存在を世界中に知らしめたレコードは、改良を重ねられ、日本でも普及しました。ラジオ放送は、1912年NHKが開始、歌と音楽は生活に欠かせないものとなりました。歌はラジオ、レコードを通じて、全国に広まったわけです。(有線放送の存在も大きかったです)ラジオの時代までは、ルックスではなく、声がよい歌手や役者でないと認められようもなかったわけです。
初期の頃は生出演ですから歌手も役者も大変でした。録音ができないとので、聞く方も大変です。ランキングの発表などを待ってエアチェックする、あるいはヒットして何十回も一日に流れるものを直に聞くしかないわけです。
もちろん、音楽喫茶(クラシック、ジャズ)や演奏会もそういう機会となったことでしょう。(最初は浪曲や民謡も多かったのです)待ちに待ったものが、次にいつ聞けるのかわからないのですから耳も鍛えられます。心にも残ります。(第一次大戦での「リリー・マルレーン」など)
そこでは第一に声、第二に節回しです。メロディや詞も大切なものでしたが、すでに知られている歌や、海外から輸入したばかりのものでは、歌手の声が問われたといえます。その傾向は海外でも共通しています。歌手とは、第一に美声の持ち主でした。また、声の大きいこと、響くことが、今からみると、劣悪な音響技術(録音、伝送とも)のなかでは必要な条件でした。
○音響メディアと歌声の変容
イタリアでは、ドメニコ・モドゥーニョ以前、日本では平尾昌晃さん以前?(あるいは光GENJI、スマップ以前?田原俊彦以前?よくわからないのですが)藤山一郎や春日八郎などは、ラジオやレコードで好まれる美声でした。近江俊郎なども含め、かなり鼻声の強いものでした。
悪声の歌手は、さすがにオペラではいないのですが、マイクを使える個性的な歌手が求められるポップスでは、役者と同じくたくさんいます。オペラ界からみると、ポップス歌手イコール悪声というものでした。特にロックや、ブルース、カントリー、へヴィメタなどには、彼らが聞くに耐えない声というのが多いのです。そこで、次のように分けてみてもよいでしょう。
1、 生声(マイクなし、声量、共鳴必要)
2、 音(マイク、音響技術での加工)
日本のケースでは、私の自論ですが、声楽、合唱、ミュージカルといったキレイ声とポップス、ロックのキレイといえない声とが極端に二分されています。しかし20世紀のこの対立、相違は21世紀でのオーディオ対ビジュアル、アナログ対デジタルのギャップからみたら小さなものなのかもしれません。
20C前半 20C後半 21C
レコード→ CD → iPad
ラジオ → テレビ → YouTubu
アナログ → デジタル
小説、詩→ 音楽 → ゲーム
まんが → アニメ
インタラクティブ(双方向)
○同時代性をなくしたヒット曲
私の幼少期では歌声で知ってから、ずっとあとに本人のステージの演奏スタイルや顔を知ることは珍しくありませんでした。
今や、ものまねから入って本人の歌唱は一度も聞いていない歌手の方が多いとさえいえる時代です。昭和の曲への回帰は、シルバーや団塊世代にしか購買力がないということ(CD,DVDについては特に)だけではありません。その質があらためて評価され、スタンダード化、クラシック古典化しているのです。
今やストックができ、自由に、ほぼ無料で引き出せるために、時代性もなくなってきたということもあります。
20世紀前半ではストックなどできなかったので、ヒット曲は著しい同時代性をもっています。
私は、ビートルズとかは、友人のレコードや、何年か前の曲をかけるラジオで知っていきました。それでも行楽地や商店街では、日本中同じ歌謡曲、演歌が流れていました。
○デジタル音楽とヴィジュアル化と日本
21世紀に成人した世代は、私たちの何倍もたくさんの、史上最大レベルでゲーム音楽(デジタル)が脳に入っています。
私はまだ稚拙だったデジタル音を不快に思った世代です。(それでもシンセサイザーなど団塊の世代から日本の技術力はテクノでの世界レベルのミュージシャンを、何にも先がけて生み出しました。グラミー賞レベルで富田勲(いさお)さんや喜多郎さん、さらにYMO)
今の若者の音楽との接点は、iPodを代表とする簡易なデジタルネット機器です。(高級オーディオにこだわった団塊の世代と対照的です)動画での入手もYouTubuやUstreamで簡単になり、彼らには音だけでなく、パフォーマンスが大きな要素となります。(これはマイケル・ジャクソン、マドンナのプロモーションビデオ、シナトラ、ライザ・ミネリなどのミュージカル映画など、音とステージの融合以降、急速に進展していきました)
日本人においては、以前より歌手のステージに、舞台はつきものでした。演歌歌手などは、代々コマ劇場で時代劇仕立ての立ち回りを時には座長として演じできたのです。美空ひばり、石原裕次郎、小林旭、加山雄三は、映画スターであったのです。その当時のシングルカット曲数や映画出演数は驚くべきものです。つまり、歌手がスターであったし、映画が全盛であった時代なのです。
脳からの音自体の変化に加えて、ビジュアル志向はもともと日本では強かったのですが、これにもいくつかの特色があります。
1、 振付がダンサブル
2、 照明、舞台装置
3、 衣装、アクセサリー
小林幸子、沢田研二、郷ひろみ、美川憲一さんの紅白での競演は衣装(+装置)でみせるものでした。
集団化、もしくは団体化、ジャニーズ、EXILE、モーニング娘、AKB48.日本人はソロの歌唱力よりも、大勢が次々とあらわられる“祭り”に興奮する民族なのでしょうか。
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