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2013年10月

Vol.20

○声には気持ちがにじみ出る

 

 誰でも自分の声を聞いて欲しいと思っています。声=VOICEとは、単に音としての声ではありません。そこに意味がある音声として、伝わるかが問われています。言いたいこと、そして、伝えたい気持ちが必ず込められているのです。

 世論の声、巷の声、声なき民の声などといわれます。声はたとえ、音声抜きでも伝わります。声には精神性が表われるといいますが、このときは、精神となっているのです。

 声の意味は、気持ちそのものなのです。ですから、声を気持ちと置き換えてみるとよいでしょう。

 「お元気でしたかあ」「この度は、ご愁傷様でした」などでも、伝わり度合いは、人によってまったく違いますね。

 

「声をかける」→「気持ちをかける」

「声を出す」→「気持ちを出す」
「声が出せない」→「気持ちが出ない」

「声を伝えて」→「気持ちを伝えて」

〇ことばのまえに声

 

 話を聞くだけで、相手が楽になるのは、声を出して、伝えて、共感してもらう、気持ちを分かってもらえるからです。

 どんなにこの気持ちというものの欠けた、ことばだけのやりとりが多い世の中になったことでしょう。

 カラオケで歌ってすっきりするのは、声を出して、心身ともにたまった気持ち(ストレス)を他人の前に吐き出すからです。それは、祭りのかけ声と一緒です。

 疲れたら、背伸びをしましょう。そこで「アーア」と大きな声を出すと、さらにすっきりします。

 

○スルーされる声

 

 「言ったはずだよね」などと、何度注意しても、相手が聞いていないようなときは、相手のことを嘆くよりも、あなた自身が変わること、使う声や声の使い方を変えることです。フラットな声、地味な声、不機嫌、不快な感情や気持ちをのせた声などは、相手にスルーされることが多いということを知ってください。その声を正面で受け止めると、いたずらに疲労で消耗するから、聞く人も保身のスルーをするのです。話のすれ違いは、気持ちを声にのせていないからです。

 

○ことばだけで答えないこと

 

 話しかけられたとき、先読みして、相手の話したかったことを言ってしまったら、相手はつまらなく思うでしょう。また、自分の話したいことに一方的に切り替えてしまっても、同じでしょう。ことばにことばで応じようとすると、先に進めども、何も残っていかないのです。

 話題だけが行き来するのは、時間つぶしや人によっては教養になるかもしれません。しかし、二人の間をより緊密に結びつけることにはなりません。

 話しかけられたら、まず相手の眼、表情をみて、全身でその声のトーンに耳を傾けましょう。そして、本心、つまり気持ち、相手はことば、意味、内容、題材(話題)を使って、自分をどうしようと自分にどうして欲しいと思っているのかを、その声から聞き取るのです。

 

〇アイスブレークから

 

 たとえば、本当は空いては

 ・ただ時間をつぶしたい

 と思っているのかもしれません。
・あなたのことを知りたい

 ・親しくなりたい

 ・情報を得たい

 と思っているのかもしれません。その目的によって、声も話も違ってきます。

 

 他人行儀で始まるのは、初対面では当たり前です。でもそこから、初回でも、何回かあとでも、声が働きかけあう、つまり気持ちの通じ合う関係になれるのかどうかが、大切なことです。

 ビジネスで飲食をともにして、ともに時間を過ごす、ゴルフや旅に連れ添うのも、心のアイスブレークなのです。それはまずは、最初の挨拶、社交辞令的なことばのやりとりでのことばでなく、声で決まります。声でこそ、気持ちでの触れ合いが伝わるのです。

○イメージをはっきりさせる

 

●同調の声のトレーニング(相手のトーン、スピードに合わせます。

 ・うなづく 「はあー」「へえー」

 ・喜び、うれしさを込める

 ・ネガティブ、暗い声、こもった声

●声を切り替えるトレーニング(救い出し)

 ・気持ちからイメージ、そして、エピソード

 

○話し上手よりうなづき上手

 

 話し上手より、話し下手、うなづき上手がもてる理由もわかるでしょう。こういう人は、相手の気持ちが出てくるのを待てるのです。つまり、ビジネス的な声が、その人自身の声に変わる、スーツを脱いで、カジュアルな服でリラックスできるのを、手伝ってあげられるのです。

 自分のしぜんな状態、くつろいだ話やふだんの声でこそ、本音が出せるのです。お酒もそのための潤滑油ですが、声があれば、アルコールはいりません。

 

〇何を話すのか

 

 話のタネ、話題もTVや新聞で集める必要はありません。相手の中にあるのです。それを声で聞いて、取り出してあげるのです。すべての話は、占い師、カウンセラーのつもりで臨みましょう。決して理屈で、説得上手な牧師であってはならないのです。話し上手とは、胡散臭いことばですね。「あの人は話だけだから」「あの人は話がうまいから」は、決してほめことばではありません。

 

○人の声は案外と聞いていない

 

 人の声を聞く力は、かなりの差があると私は思っています。総じて、おしゃべり好きな女性の方が上手です。共感で築く人間関係を幼いころから意識してきたからかもしれません。男性がそういう女性を求めることもあるでしょう。となると、婚活難時代、女性に縁のない男性は、そういう女性の要求に対応できていない人が多いのではありませんか。
 まずは、ゆっくりとリラックスして、相手の声をじっくり聞いてみましょう。ことばでなく、話でなく、声を聞いて気持ちを読み取りましょう。

 

○声は音に導かれて出てくる

 

 ヴォイトレのレッスンは、ピアノを使います。ピアノという楽器が音楽の動き、音声の波動で、その人の声を柔軟に、高低、大小と引き出してくれるからです。もちろん、場合によってはピアノよりも、トレーナーの声の方がよいことは言うまでもありません。

 会話においては、その役割は、人の声での交換であり、交感です。シーンとしたところより、ワイワイガヤガヤしているところの方が話しやすいし、声が出やすいのです。それは、すでに空気中に音の波動がみなぎっているからです。人のエネルギー、人の気持ちのカオスが導くといってもよいかもしれません。相手やその表情であなたの声に、よくも悪くも出るのです。会話の苦手な人は、静かなところでなく、騒がしいところに相手を連れていくことです。

 

○もっともふさわしい声で応じよう

 

 一つずつ、相手の一声に、自分の一声と、きちんと反応してあげることこそが、気持ちを汲んでいるというメッセージなのです。もちろん、耳を傾けて黙って聞くのも必要ですが、そういうときには、視線などがはずれていると不快に思われます。

●反応を伝える声のトレーニング  「うん」「ううん」「ええ」「いいえ」
●反応が伝わる声のトレーニング  「うーん」「ええー」
うなづくだけでなく、相づちを打ちましょう。

 

○しぐさや表情で決められる

 

 エピソードや感じたことの話題は、その人の人間性、性格、行動を捉えるヒントになります。

 日常会話では、テーマを知識や情報よりも、その人の人柄について焦点を当てましょう。具体的事例、失敗談、くせ、習慣などがよいのは、その人の生活や性格の輪郭を描き出すからです。

 映画やマンガ、ドラマでは、キャラが描けるかが勝負なので、そういう事例やエピソードが最初に、自己紹介のようにどう描くかが肝です。相手を知らずして、感情移入できないし、感動もできないからです。となると、趣味、こだわりなども、少々マニアックな方がいいともいえますね。

 

○性格は声に表れる

 

 アクティブな人・・・ 行動的 しゃべり上手 社交的

 ネガティブな人・・・ めんどくさがり 慎重 口が硬い

 おとなしい人・・・ 口べた 精神的 モラリスト

 といっても、人にはこういったいろんな面が内在しています。状況や相手によって、いろいろと出てくるのです。人は不思議なことに、完璧な人と同じか、それ以上にだめな人にも惹かれるものです。金もないから、友達もできるのです。

 ここでは一見、短所などの方が他人は好感をもって受けてくれます。弱点、できないこと、いたらないことはPRできます。

 

〇語尾や復唱のヴォイトレ

 

語尾まで聞こえないと仕事で失格です。

●語尾をきちんと下げるトレーニング 「~です」「でした」

●語尾をあげて聞き直すトレーニング 「~ですか」「でしたか」

●復唱のトレーニング
1.そのままオウム返し
2.ことばを置き換える

3.省略する

4.ダイジェストする まとめる

 

 復唱はもっとも簡単で、受けのよい方法です。相手との言ったことを繰り返すことで、相手を認めていることを示します。共感を表すように使いましょう。

「専門家はいない」

 声という、ほとんどの人間活動のすべてを扱う分野において専門家はいません。それぞれにおいて、どこかが深い人や広く浅い人がいるのです。まだ新しい分野なので浅く狭い人は多いのですが、深く広い人はほとんどいません。

 そこが、楽器やスポーツという用途が特に限定されたものとは大きく異なります。役者も歌手も普通の人を演じるものだからです。普通の人にも役者や歌手がいるということです。

 一方で、ここはアーティストと関わるところでもあります。アーティストとは、すべての表現にすぐれているわけではありません。     

他人に替えられない高い価値をどこかに持っているのです。しかも、それは必ずしもすべての人に対してというのではありません。

 ということは、私の好き嫌いで判断してはならないのです。私がどんなものであっても私のように(よくても悪くても)なるように教えてはいけないのです。できるのは、本人が自らで育つように時間と材料をセットすることです。

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