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2013年12月

Vol.22 

○声は間で決まる

 

 声は、場の雰囲気にしたがって出ます。ゆっくり話している人にはゆっくり、急いでいる人には早くと、同調を強いるものです。だから、声そのものを変えるよりも、場を変える方が早いのです。そのチャンスは、間にあります。

 “朝まで生テレビ”などの討論番組では、わずかな間に、次に話す番のとりあいが、繰り広げられます。TV番組では、ひな壇芸人などと呼ばれ、複数のゲストが発言を待っているようになりました。間でのホスト(MC)の発言の振り分け力が、番組の成否を分けてしまうようになってきました。しかし、これは一対一でも、一対多でも、同じことなのです。

 

●間をつかむトレーニング

 話しすぎなきゃいけない圧力をとり、沈黙のできる相手になりましょう。せかさないことです。

 気持ちを通じさせるのに対して、ことばはいらないのです。恋人たちの間には、ことばは邪魔ですね。電話でさえ、沈黙できるのが親しい関係です。

1.「いかがですか」「はい」(0秒の間)

2.「いかがですか」「はい」(1秒の間)

3.「いかがですか」「はい」(3秒の間)

4.「いかがですか」「はい」(5秒の間)

 

○間の感覚

 

 間の感覚というのを知っておきましょう。ビジネスでは、応答の間がしばしば勝負の決め手となります。セールスマニュアルには、クロージングをかけてからの間を、声で出してはいけない時として述べています。

 ちなみに、九州ラーメン一風堂のオーナーは、挨拶は2.8秒と言っていました。その絶妙な返答の間のトレーニングを、ここに入れておきます。

 「ちわー」「いらっしゃいませ」この間を(1秒)(2秒)(3秒)(2.8秒)に替えてみてください。

 

○コールで

 

 いかがでしたか。業態や状況によっても違いますね。

 ちなみに、よくいわれる電話の3回鳴るまでコールも入れておきますね。1回のコールがほぼ何秒かを計っておくのです。

1.「ピー」「はい、○○です」

2.「ピー、ピー」「はい、○○です」

3.「ピー、ピー、ピー」「はい、○○です」

 3では、やはり長く感じませんか。「お待たせしました」を入れる方がよいですね。

 

○余韻と間

 

 声は音波として、空気中を、空間を広がります。そこは声量、トーンとして考えるべきといえます。切り終えたあとの余韻まで、大切なのです。余韻とは、残響音のことですが、これは耳だけでなく、心に残る、つまり伝わるものです。

 一方で、声は音として、時間軸の中で、次々に送り出されます。バネの伝導のように、圧力変化(空気圧)を起こしています。つまり、文字と違い、時間とともにあるということです。

 声は言った端から消えるのです。相手に伝えたつもりでも、伝わっていないのは、右の耳から入って左の耳に入るがごとく、抜けていくからです。

 

 話の中では、声は途切れてもかまわないのです。間があるということは、そこでは呼吸があるのです。これを止めてはなりません。いや、止まったら死にますから、大丈夫です。この呼吸を読むことが、ここのレッスンの課題です。

 

○メモとスピーチ

 

 文字は、メモでわかるように音声の内容を固定します。音楽における楽譜と同じです。書くことで情報量は著しく少なくなりますが、時間や空間を超えられます。近年、音声の録音、映像の録画が手軽にできるようになりましたが、私たちの方はまだそこまで対応できていません。

 スピーチで原稿内容を詳細にチェックする人はいても、ヴォイスレコーダーで自分の読みのチェックをする人はほとんどいません。この方がずっと大切なのですが。アピールや来客を楽しませるよりも、儀礼的にこなす習慣が日本人には身についているのです。

 

●声を出さないところでの息読みトレーニング

 ため息 1.浅い  2.ふつう  3.深い

 疲れたため息、投げやりなため息を出してみましょう。

 

○息とことばから声にする

 

 声のトレーニングのなかで伝わることを知るには、日頃、使っていることばの実感から学んでいくことが早いでしょう。短いことばをなるべく体から(お腹の底から)声をつかんで、ことばにします。簡単なことばで、しっかりと発してみることです。

 最初は、正確な発音をあまり気にする必要はありません。体からの発声を重視します。それとともに、日本語を少しでも深く捉えるようにしていきます。

 まずは、息でことばを読んでみます。これを「息よみのトレーニング」と呼んでいます。息読みのトレーニングは声帯を使わないので、のどを痛めません。初心者が、声を出そうとすると必ず、そこに無理な力が加わります。息でやると安全だからよいのです。

 

○息読みで読むトレーニング

 

1.次の文章(ことばのトレーニング)を息で読んでみる

 (例文) 「これは、深い息を出せるようになり、しかもそれが声と結びつくためのトレーニングです。無理して急に強く行なうと、のどによくありません。」

2.文章を息で読んでメリハリをつける

3.文章を息で読んだあと、声で読む

4.息を3回「ハッハッハッ」と吐いて、1回「ハイ」と大声でいいます(20回)

5.息で「(アオイ)」といって、声で「アオイ」といいます(20回)

 

○ため息の効用

 

 上司へのため息攻撃の練習ではありません。ため息というネガティブな経験もまた、ポジティブなスキルを知るために大切なのです。少なくとも、「ヒュー、ヒュー」とはやし立てる息のトレーニングよりは有効です。

 なぜため息が出るかというと、そうして、私たちは、自らのホメオスタシスをキープしているからです。あくびと同じく、心身が必要としているのです。それを、ここではこれみよがしにやりましょう。「フゥー」 と、だいぶすっきりしませんか。

 

●外国語の基本となる「S」の10秒トレーニング

 「S」で10秒間伸ばしてみましょう。これを教えていただいたのは、「英語耳ボイトレ」の共著者、松澤先生です。

 

●途切れをなくさずに言うトレーニング

 3秒はあけないルールを述べました。1秒で「ハイ、わかりました」といえるのですから、3秒では、続けて3回くらい言えます。

  クッション+理由+表明(ことば)+依頼 の形とします。

「お手数ですが、今後のためにも、その○○をご返送くださいませんか」

謝罪も同じです。

「この度は、○○の件で、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。どうかご容赦くださいませ。」

 

○声の表情づけ

 

 声がきれいでも、マニュアルを棒読みしているように、気持ち、感情が入っていないように感じられることもあります。ハキハキと口だけ、大きく動かすだけでは、なんだかつくった声のように魅力がなく聞こえてしまいます。

 誰も声がきれいだから、とは感動しないのです。その人自身の魅力がそこに出て初めて、親しみと感動が生まれるのです。

 そこで、次のようなことをやってみましょう。

 1.声の発声原理をつかむ(オリジナルの声)

 2.その声を動かし、表情も含め方向づける(フレージング)

 3.ことばで表現する(組み立てる)

 

 「あ~あ」という声を出してみましょう。 どんな感じになりましたか? どんな感情を入れましたか?

 次に、自分が最初に出したパターンと異なる他の感情表現をやってみてください。できたら他の人に聞いてみるとよいでしょう。振りをつけて、大げさにやってみるとよいでしょう。

 イマジネーションとそれを表現する声の技術が、大切です。声で伝えたい思いが少しも損なわれないようにしていくことです。

 

○気持ちを声に出すトレーニング

 

 次のことばでやってみましょう。

 「どうか、よろしくお願いします」

 言うときに、気持ちをしっかりと入れてみてください。

 何度かくり返して、心を表現できたと思ったら、録音して聞いてみましょう。

 

 ことばで「どうか」「よろしく」「お願いします」を、それぞれ読んでみましょう。

 次に、それを少しずつ大きくしていきます。大きな声でしっかりと言いましょう。そのうちに、ことばの流れに声の線が出てきます。それをつなげて、一つのフレーズにのせていきます。

 

○感嘆詞を使って声を伸ばすトレーニング

 

 「あぁ!」「おぅ!」と、大きな声で言ってみてください。そこに感情が現れるようにです。

 あなたはどのように感じましたか。次のような気持ちを入れて、いろいろと変えてやってみましょう。

1.退屈なように

2.投げやりに

3.驚いたように

4.感動したように

5.怒りを含んで

6.非難するように

7.あきれかえったように

「声の多様へのスタンスのとり方」

 声の場合、一人ひとりの人の体も喉も違いますから、「一つの理論や見解、判断や手法が絶対」というような考え方は、危険でさえあります。

 思うに、声の多様なこと、それぞれの人間の違いに対して寛容であることで、アーティストたる道が開けるのでしょう。

ただし、それをもって「共感」というと、今や何にでも使われてしまうようで、このことばが深いところで使われるなら「批判」よりもずっとよいことですが。

 「共感するな」、「批判するな」ということを述べているのでありません。私はいつもトレーナー、生徒、一般の方すべてを念頭に、「問い」をぶつけるつもりで述べています。

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