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Vol.29 

○くせのない自然な声を出す

 

 いろんな声を私のところでは求められます。声優や役者でなくとも、日常やビジネスでも私たちは無意識のうちにも、声を使い分けて生活をしているわけです。その人本来の声、しぜんな声、本物の声というのが、トレーニングでの基本の声です。これもその人の個性もあるし、使用目的によっても違います。

 たとえば、今の私は、よい声よりは、タフな声が求められています。自分で話をするとき以外にも、他人の指導までしていますので、これまでに1日8~12時間の中でかなり声を使ってきました。役者や歌手よりも、声を使ってきた量は多いと思います。

 あなたも、今もっとも出しやすい声、それがしぜんな声に近いことが多いのですが、もしかすると、もっとよい声、タフな声、魅力的な声があるかもしれません。

 

○イメージづくりをする

 

 声の判断は、とても複雑です。しかも、使い方やトレーニングでけっこう大きく変わります。いや、心身の状態だけでもかなり変わるのです。ですから、ここではあなたのもっともしぜんな声の答えは出しません。いろんなトレーニングを行っていく中で、今一番使いやすい声や将来、目的とする声のイメージを少しずつ明確にしていってください。他の人の声、TPOに応じて変わる声と、さらに一流の人の声についても、あなたの声の世界、音声の世界が豊かになってくると、これまでみえなかったもの、聞いてこなかったものがみえてきます。

 

○しぜんな声

 

 トレーニングをして、変えようとしているうちに少しずつ変わってきて、伝えようとしているうちに、少しずつ伝わる部分が大きくなっていきます。いつかしら、大きな声やよい声というのでなく、しぜんな声として、声自体は目立たないのに、あなたの気持ちが伝わるようになっていくでしょう。そのときの声がくせのないしぜんな声だと私は思うのです。

 

□基本のあいさつトレーニング

1.「ただいま」

2.「こんにちは」

3.「さようなら」

4.「どうもありがとう」

5.「すみません」

 

□チェックポイント

A.姿勢、体 呼吸、フレーズ

 体を動かしてリラックスしましょう。

B.顔の表情

 顔の表情をやわらかくします。

C.発声、高低、強弱、トーン

 もっとも使いやすい声でよいです。

D.発音

 あまり気にしないでください。

E.声の表現法

 さいごまで、なごやかな気持ちをキープします。

 

○日本人にとっての、自然な声のイメージとは?

 

 日本語の音声には、いろんな弱点があると言えます。自然というと、力を抜きすぎ、弱くなりすぎることもあります。

 というのも、日本人の場合、どうしても、強く声をぶつけあい主張し合うような風潮がなかったため、声に強く吐く息や大きなメリハリなどが必要とされなかったのです。自分たちの主張を通そうと、激しく訴えるような、強力な音声力をもつ国の人々とは違います。ですから、ことばのトーニングのときは、かなり気は強くもち、声は少していねいに、という感じを心がけましょう。

 この音声そのものへの認識力の弱さと、その効果的な使用法への無頓着さは、「あ、うん」の間で心が通じ合うという、日本の文化、風土の影響のせいもあります。それを自覚して、しっかりとトレーニングすれば、日本の中で優れることはさして難しいことではありません。

 

○声のくせとは、何か

 

 声のくせは、その人の声の特徴であり、個性です。声を聞いて、あなただとわかるのは、声にあなた独自の音色が表われているからです。しかし、それがあまりに発声のよい状態からそれていると、のどの障害に結びつくことがあります。持って生まれた声を充分に生かしきっていないのを、くせというのです。

 若さがない老け声や言っていることが聞きづらいというのも、一つのくせです。声がうまく共鳴していないからです。多くの場合、生まれつきということではありません。

 ガサついている声、マイクに入りにくい声は、必要以上に大きな声を出している人によくみられます。のどに力が入っていたり、口内が詰まったりしているのが主な原因です。

 普段はよい声でも、いざというときに、極端に不自然な発声に切り替わって、のどをしめつけている人もいます。

 小さな声しか出さない人も、うまく響かないと、硬く頼りなく聞こえます。

 

○くせと個性

 

 くせというのは、個性とよく混同されますが、くせのない自然な声というのは、この場合、声として何もひっかかりのないということです。声の場合は、声の大きさ、話すスピード、方言など、いろいろと他人と区別できるものがあります。特に主なのは、音色です。ピアノとバイオリンとトランペットは間違えませんね。その違いが、音色です。

 くせというのは、そういう楽器を初めて扱ったときに出る、ノイズのようなものと思えばよいでしょう。うまく本来の機能を扱えていないために生じるイヤな感じです。

 声には、呼吸や発声だけでなく、意志や意図も入ってくるので、やっかいです。発声に関しては、できるだけ、明るく、気分よく、笑顔で話しましょう。そしたら、少々くせが残っていても、魅力的な個声となって聞こえるのですから。

 

○声のくせをとるには

 

 発声について、無自覚のうちに間違ったイメージや思い込みがある場合、他人の声やその使い方の影響による場合、自分に合っていない声を出そうとすると、無理が生じます。これには、発声上の問題だけでなく、発音の問題もあります。

 大きな声を出しすぎている人は、トーンダウンしてみましょう。低音でゆっくりと出してください。リラックスして、強い息を使わずに声を出します。かすれたり、のどにひっかかるのはよくありません。

 体や息のトレーニングで、少しでもお腹から息が流れるようにしていきましょう。のどから上ではなく、お腹全体に意識をもって出すことです。

 

○「自然な声」にするには

 

 「自然な声」というものがあるのではありません。「自然な声を出す」とは、あなたの声を、ごく自然に出しているように聞こえる声にしていくということです。メイクアップはするが、飾りすぎない声(無理に演じているようでない声)にするということです。伝わることを、声で邪魔しないといった方がよいでしょうか。

 人それぞれに違う魅力的な声があります。そういう感覚で、自分の自然な声をみつけていきましょう。

 一般的には心身がリラックスしているときに出した声は、話し声でも歌声でも、自然な声として聞こえます。楽しいことがあって、思わず笑みを浮かべているときの声が理想です。

 反対に不自然な姿勢や緊張した状態で発声をすると、どこかに力が入り、声も不自然になるものです。心身のどちらかでも硬ければ、声まで硬い感じになってしまいます。

 声は、その人の姿勢や意志、感情にも大きく左右されます。

 後ろめたいとき、うそをついているときなどは、物腰だけでなく、声も不自然になるでしょう。つまり体調から精神的なものまで、全てが声に現れてしまうのです。

 

□自然な声にするトレーニング

・息と声をミックスさせていきます。

 体から深い息を出したあと吸気して、そこにうまく声を合わせるようなつもりで声を出してください。

 1.「ハーアー」  2.「ハーエー」  3.「ハーオー」  4.「ハーウー」

・声で伸ばすトレーニング  2030秒伸ばしてみましょう。

1.「アーー」  2.「ハアー」 3.「フゥー」 4.「へエー」 

・自然な声で読むトレーニング  情景を思い浮かべて、ゆっくりと読んでください。

 1.「今日は気持ちのよい朝ですね。」

 2.「すっかり晴れましたね。」

 3.「どうも雲行きがよろしくないようですね。」

 

□応用例文トレーニング 

1.「ただ今戻りました」

2.「お先に失礼します」

3.「お疲れさまでした」

4.「失礼いたします」

5.「恐れ入ります」

6.「お先にいただきます」

7.「ご馳走さまでした」

8.「ちょうだいいたします」

9.「そろそろおいとまいたしますので」

 

□天気と時候の切り出しで声をしぜんにするトレーニング

1.あいにくのお天気で・・

2.はっきりしないお天気ですね/はっきりしないお天気が続きますね。

3.ひと雨来そうですね/晴れてきそうですね

4.・・・の季節になりました

5.いつまでも暑いですね

6.ずいぶん蒸しますね

7.(大分)、過ごしやすくなりましたね/(朝晩は)過ごしやすくなりましたね/しのぎやすくなりましたね。

8.あっという間の一年ですね

9.(いよいよ)、おし迫ってきましたね

10.よいお年をお迎えください

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3-1.声の話」カテゴリの記事

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