「歌手は残れるのか」 NO.284
私は、お笑い芸人の声力のすぐれている例をもって、歌そのものの力の弱体化、それゆえにファンが離れ、社会的影響力を失ったことを述べてきました。
私は、役者もお笑い芸人も、歌手と同じくアーティストとして同一に扱っていたのですが、特に、歌い手の、声も含めた魅力の低下を残念に思っています。これまでは歌の中での流行の変容でしたのに、日本では歌が消える、いや歌手が消えようとしていることに危機感をもっています。それは、もっとも魅力的な声の一つ、声の芸が消えることにつながるからです。
50年ほど前の状況を萩本欽一氏が述べていましたので参考までに、転載します。
「テレビの世界ではコメディアンの地位はまだ低くて、歌手の方がずっと格が上。ゲストの歌手さんたちは見上げるような存在だった。番組中、ゲストに打ち合わせにない質問をすると、あとでマネジャーに「よけいなこと聞くんじゃねよ」とすごい剣幕で怒られる。よほどの大物でないかぎり、歌手が面白いことをしゃべったりするカルチャーはそのころの芸能界にはなかった。僕は歌手さんと一緒に控室にいるのに気後れがして、化粧道具を持って廊下でメークしていた」(「私の履歴書」日本経済新聞2014.12.22)
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