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Vol.43 

○聴く力をつけるイヤートレーニング

 

 多くの人が、いろんな声を使っています。そのなかでも、よい声や悪い声と思われる場合があります。それは、どのように違うのでしょうか。また、あなたのなかで、うまく効果的に使える声と、そうでない声とはどう違うのでしょうか。

 これには、たくさんの人の声を聞くことが大きなヒントになります。

 先述したように、アナウンサー、役者、声優、タレントさんなど、声についてプロとして仕事をしている人の声と、その表現を聞いて、少しずつ理解していくとよいでしょう。芝居や映画では、まず一人の声だけを聞いてください。そして、場面ごとにその声の使い方の違いを学ぶとよいでしょう。

 体から自然と楽に出ているように思える声をたくさん聞くことです。そういうなかで、多種多様の声の魅力を感じとっていきましょう。

 ときには、似させて出してみてください。でも、自分にとって無理な声は聞くだけで、まねする必要はありません。最初は、自分にとって出しやすい声を優先してください。

 

○プロの人の声を聞こう (あなたのよいと思う声を持つ人の名前を[ ]に入れてみてください)

□アナウンサー [                ]

□ナレーター [                ]

□タレント、お笑い芸人 [             ]

□ナレーター、DJ [               ]

□声優 [                ]

□俳優 [                ]

□歌手(オペラ、ジャズ、ゴスペル、ポピュラーなど) [               ]

EX:松平、加賀美、蟹江啓之アナウンサー

 

○いろいろな声を聞こう (いろんな声についてあなたが感じたことを書いてください)

□外国人の声 [                ]

□世代の違う人の声 [               ]

□異性の声 [                 ]

 

○独特の(くせのある)声を聞こう (独特のくせのある声を聞いて感じたことを書いてください)

□物売りの声 [                ]

□感情をあらわにしている人の声[       ]

 

○声について、自分の抱いているイメージを書き出してみましょう。

1.最も声のよいと思う人[             ]

2.声が悪いと思う人 [              ]

3.声が変わっていると思う人(どのように)[     ]

 

○耳の磨き方

 

 どのように音を聞くかは、犬を日本人はワンワン、向こうはVowVowというだけで、違うことがわかります。私たちが7色と捕らえる虹の色を、3色や5色や6色という国もあるのです。(アメリカは6色だそうです)

 

○多言語に学ぶ

 

 私のレッスンでは、英語に先駆けて、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガルの曲のフレーズコピーをメインで行なっていました。オペラ歌手のように、イタリア歌曲から入るのもよいでしょう。

 オペラ鑑賞は、声の醍醐味が味わえます。そこでは誰もがハイトーンやヴォリューム一杯の声を聞きたがりますが、むしろ、言葉に近いところ、弱いところをしっかり聞くことです。そこで、深い呼吸、声立て(役者でいう声にするところ)、理想的な共鳴のことがわかりやすいでしょう。

 最近、プロの役者や声優に日本語のまえにイタリア語で読むトレーニングもやっていますが、これもけっこう効果的です。日本語でいつもやっていて、行き詰まったほうが、けっこう早く直ります。歌い手も、外国語でやるほうが発声としては出しやすいのは確かです。

 

 英語ならフォークでもロックでも、言語のリズムがそのまま歌のリズムになっているので、日本語よりもずっと歌ってのりやすいはずです。ボサノヴァ、サンバ、ワルツなど、ワールドミュージックのいろんなリズムパターンの歌も聞くとよいでしょう。

 ちなみに、英語以外の外国語でヒアリングやコピーをしたあとに英語でやると、2倍くらい、簡単になった感じがします。フランスからイギリスへTGVで入ったときの気分です。

 もちろん邦楽もおもしろいです。詩吟、声明、雅楽、謡、長唄・・

 

○耳を鍛える

 

 歌手になるのに、音大に行ったり、作詞作曲も楽器も、譜面も英語もマスターしなくてはいけないかというと、そんなことはありません。日本の歌の女王というと、(故)美空ひばりさんですが、彼女は譜面を読めず、英語も話せませんでした。しかし、ネイティブと同じといわれるくらいの当時としては驚くべきレベルで、ジャズやポピュラーソングを原語で歌っていました。つまり、耳がよかったのです。耳に入る向こうのプロの歌声からイメージして、自らの発声器官を使って歌い上げていたのです。

 

 語学も歌も、必ずしも年月と実力が比例するわけではありません。むしろ個人差が大きく、それは耳でどのように聞くのかという力によって、大きく影響します。その音声の世界を捉えるセンサーを、私は「アンテナ」といっています。

 たとえば、ものまねが上手い人は、アンテナの感度がよいのです。でも、その名人が1回聴いてまねられることを、あなたは100回聴いてまねられたらよいのです。この「アンテナ」を磨くためには、同じ音声を何百回と聞いて、深く読み込んでいくのです。

 

 ヴォイトレというと、すぐ声のことにばかり目がいきますが、まずは耳の方が大切なのです。

 たとえば、年配の方で「コーヒーとティーはどちらにしますか」と聞くと、「テー」と返される方がいました。その人の頭には、「ティ」は「テー」で認識するので、「テー」といってしまうのです。これは「テイ」「テエ」と違いを強調していうと、日本人は「イ」「エ」を区別できるので、すぐに「テイ」から「ティ」になります。このように、発声、発音の真の問題は、耳での捉え方に起因するのです。

 

○息を聞くこと

 

 思えば、私が歌のレッスンで、最初に提唱したのは、息を聞くということでした。よく聞いていると、多くの人は、歌を聞いても、高いところ、大きく張ったところばかり、真似したがっているのです。

 しかし、出だしの一言は、高くも声量が大きいわけでもありません。そこで同じレベルでできないのに、なぜ、3分間、2オクターブで同じことができるのでしょうか。つまり、出だしでの差を感覚や声の使い方、さらに声そのものの地力の差(声色、音色)で判断できていないことが、最大の問題だと思ったのです。

 

 そこで洋楽でも、特に息の聞こえやすい歌をセレクトして、何十回と聞かせてきました。そこで使われている息がわかるにつれて、深い声や声の芯、芯のある共鳴などもわかってきます。

 特にポップス、ロックなどが参考になりました。オペラでは母音共鳴が多いため、最高音で聞くよりも、ピアニッシモの低い声のところ、エンディングの方が、わかりやすいはずです。自分でも出せる高さの1音で本当にできないのが、声の基礎であるロングトーン、共鳴、そして呼気でのコントロールです。そこから、フレーズの中にあるもの、スピード、ひびき方が聞こえてくるようになってきます。

 

 このプロセスをじっくりと体験していくことで、体や息の支え、声の抵抗感など、将来伸びるベースとなるものも実感できます。

 トレーニングですから、今できることではなく、今のことから先が実感できること、自分の変わる可能性が信じられることが大切なのです。

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