Vol.47
○母音の発声トレーニング
胸の深いところで「I、E、A、O、U」と言ってみます。このときも、ひびきや明瞭な発音よりも、確実にしっかりとした声として出すことを心がけてください。
○母音の発音[改訂版]
(母音の発音 母音、ア(a)イ(i)ウ(u)エ(e)オ(o)は、舌の位置で、発音が変わります。
舌先は原則として、下の前面の歯茎につけておきます。 母音は、舌の位置で、発音が変わります。
[ア]自然な口の構えで、顎を開けます。大きく開けすぎるのも、よくありません。上下の唇の間に、指二本が縦になんとか入るぐらいで、アの最大の口の開きです。舌はあごと一緒に下げます。唇は丸めません。共鳴は、口を開けすぎると浅くなります。
[エ]アからあごを閉じてイより少し開くくらいです。舌の位置をアのときより前にもち上げます。唇は、両端をやや左右に引く感じです。頭や首の後ろ、肩の間にも響く奥行きがあります。アから後ろを回って、てっぺんのイに行く途中の音です。
[イ]エからあごを閉じて微笑したくらい、ほとんど開かない状態にします。上下の歯が触れないくらいです。舌は、上の歯茎の上、硬口蓋へ向けて、摩擦音が起こる手前まで高く上げます。糸切り歯の歯茎に触れるくらいです。唇は、平たくわずかに開け、横に引きますが引きすぎないこと。両方の歯が少し見えます。
[ウ]あごの開きは、母音の中で最も小さくなります。舌先を奥のほうへ引っ込め、舌のつけ根に近い部分を少々緊張させてもり上げる感じです。唇はイより両端を左右から中央へ引き寄せ、唇と頬は少し緊張します。ただし、日本語の「ウ」は、丸めるのではなく、外見上は平らな感じで、唇は丸くなりません。
[オ]ウの場合より、あごを開き、上下の唇の間に、人指し指一本がたてに入るぐらいの大きさにします。舌はウのときよりやや奥へ引き込み、アの場合より奥舌がうしろへ持ち上げられます。唇は五つの母音の中で、一番丸くします。唇の端は、やや緊張します。共鳴は、顔から胸にかけて響きやすく、まとめやすい音です。
エとアの区別がよくないときは、アの口の開きを大きくし、舌先をあげすぎないこと。
アとオの区別がよくないときは、口の開きを大きくして、舌の奥をあげすぎないこと。
日本語のイとウは、ア、エより、発音するときに口の中が狭くなるため、浅く平べったくなりがちです。
こういうときは、苦手な音を練習するよりも、うまく出せる音に苦手な音をとり込んでいくようにしてください。
そのために、次の母音をうまくつなげるトレーニングをやってみてください。
「お寿司」を「おすぅすぅ」と言うズーズー弁は、イが前舌でなく中舌になっているのです。
イとエの区別がはっきりしないときは、エはアとイの中間音です。それがはっきり区別されていないのでしょう。次の言葉を言い分けてください。
(1)恋する声はつらい
(2)江戸の井戸は深い
「つらい」が「ツレエ」となるのも、アがエになっているのです。イとエは、なまりやすいので要注意です。
☆医師がのどをみるときに、「アーン」と開けると、「ア」舌が下がり、みやすいのです。
「ヤッホー」という音は、「ヤア」の「ア」で、遠くにも聞こえやすいのです。
□母音のひびきを確かめるトレーニング
「アー」と声に出し、のどが振動するのを確かめてください。(「イ」「エ」「ア」「オ」「ウ」もやりましょう)
□母音をうまくつなげるトレーニング
1.イ→エ→ア→オ→ウ の順で声を出します。
アの母音を出して、口の中のかたちを変えず、順にイ→エ→ア→オ→ウをつなげます。音の高さは、自分の出しやすい音でよいでしょう。 顎を手でさわって、どの母音でも顎が動かないようにします。母音から母音への移り目をゆっくりとほんの少し口形を変えていくようにします。
2.イーィエーェアーァオーォウー
3.ウーゥオーォアーァエーェイー
□母音の発音トレーニング
話すときに、いつもリラックスできるために、口慣らしのための発声、発音のトレーニングを紹介します。それぞれに、同じ音が3つ以上、入っています。これをくり返して、自信をつけてください。
これを参考に、自分の課題をつくってみるとよいでしょう。最初はやりやすいものをしっかりとマスターして、徐々に苦手な音をなくしましょう。
□母音のトレーニング ♯〈イエアオウのトレーニング〉
(イ)いつもいきいきしてますね/今以上のイマジネーションを/イライラしないでね
(エ)駅で笑顔で会釈/偉い人が選んだ絵/エネルギュッシュな営業に栄転
(ア)明るい朝の挨拶/明日は雨があがりそうですね/あした、あさって、しあさって
(オ)おいしいお菓子をおすそ分け/おいでをお待ちしております/お金を落として落ち込む
(ウ)嬉しい売れ行きは嘘/ウカウカしていると運が逃げる/歌を歌ってウサ晴らし
☆母音の無声化・母音の脱落
本来、有声音である母音が無声化するときがあります。このとき母音は発されないのですが、口の構えとしては残ります(このルールについては省きます)。
(3)着物(き)を打ち切り(ち)、科学者(く)の薬(く)、座敷(し)に深く(ふ)入る
母音は脱落することもあります。
(4)自宅(く)の逆コース(く)に、検察庁(う)がある
☆長母音と連母音
「おかあさん」「お姉さん」などは、実際にはオカーサン、オネーサンと発音されます。このように母音が連続する場合、長く引っ張るのを、長母音といいます。また「青い」のように、母音が続くのを連母音といいます。(これは外国語の二重母音とは違います)
○二重母音のトレーニング
二つの異なる短母音の連続したものを二重母音といいます。
日本語では、高低差(高低アクセント)はあっても、同じ強さで二音節として考えるので、母音二つとなります。
それに対し英語は、最初の母音を強く長く大きく、二番目(第二母音、副音)は弱く、小さく発します。glide(わたり音)と言われるように、主従の関係となります。これで1音節です。しかも、副音には[-i][-u]が多く、[E]のときもあります。
たとえば、eiを日本人は「エー」としてしまいやすいのですが、デート、クラスメートでなく、デイト、クラスメイトとなります。
最初は強く、次に弱くというのは、日本語でもよくみられます。
日本語 よい→いー、おまえ→おめー英 語 I(アイ→ア)、my(マイ→マ)、how(ハウ→ハー)、where(ウェア→ウェ)
○音楽的日本語にする母音のトレーニング
歌やせりふに使いやすい「イ」や「ウ」は、日本語の一般の発声より、深いところにあります。
I (イ) cheese チイーズの「イ」 E (エ) ever エヴァの「エ」 A (ア) garden ガアデンの「ア」
O (オ) for フォアの「オ」 U (ウ) fool フウルの「ウ」 ・(ユ) ウの形でイ(英語にはない)
ER (アー) her ハアーの「ア」 (ア) hat ハアットの「ア」
東北弁、ロシア語に、中舌、母音(イとウの間)
口の開きが狭いと、舌は口蓋へ近づきます。
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