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2017年7月

「トレーナーを複数にするメリット」

○トレーナーの長所が弱点となる

 

 一人のトレーナーに、評価と指導を任せた場合の問題をまとめます。

 トレーナーですから、何かについてはすぐれているのです。しかし、何かにすぐれているからそのことを教えられるということとは、必ずしも一致しません。その問題が一つあります。

 すぐれていなかったことをすぐれていくようにした人はともかく、最初からすぐれていた人は、教えられません。いや、最初からすぐれている人には、よいアドバイザーになります。しかし、それは声でなく、心身のコントロールについてです。現役時代に活躍した有名なトレーナーの多くは、このタイプです。

 他の芸事では、習って上達するので最初からすぐれることはありませんが、発声、歌は、幼い頃からのしぜんな習得での個人差が大きく、自分なりのトレーニングでかなりのレベルにいく人がいるのです。しかも、トレーニングという意識なく、しぜんに上達しているタイプが、日本のプロには多いのです。

 

〇プロセスでの条件

 

 次に、自分のすぐれていることについて教えられるとします。この場合、見逃してしまうのは、すぐれているということを具体的に評価できるようにすることです。そこに至るステップを客観的につけることができ、しかも、評価することができることです。ここは、トレーナー自らの体験での主観的なステップづけにならざるをえません。

 ですから、発声や歌の本は、ほとんど初心者用しかないのです。つまり、人より下手なのが人並みになるというノウハウ止まりなのです。チェックで気づきは与えても、せいぜい状態を改良するだけ、条件を満たすように鍛錬するプロセスがないから当然なのです。でも、初心者は、その気づきで万能感を得て、トレーナーを全信頼してしまうのです。

 

○通じるということ

 

 他人を教えるのに、自分を元に他人の習得プロセスのステップをつけるのは、かなりの難問でしょう。それが誰にも、とは言いませんが、新たな人や違うタイプの人にも通じるのかという点で大きな疑問です。

 通じるというのはどういうことなのでしょうか、最初から確証があっても、どのくらいの試行錯誤でどのくらい修正が加わり、どのくらいの許容範囲で結果、効果が表れるのか、さらに、効果とは何なのかということまで、どのくらいつかんでいるといえるのでしょうか。

 その項目を100くらいあげてみて、比較するとよいでしょう。

 

100の能力

 

 その人に必要な能力が100ほどあるとして、トレーナーが、その100のすべてにすぐれていることは、それほどありません。仮に、すべてが教える相手よりはすぐれているとしても、もっとそれに優れ、教えるにもふさわしい人は、他にもいるということです。

一人で教えるのは、それを混乱しないようにプロデュースしているともいえます。いえ、プロデュースしていなくてはならないのですが、これが至難なのです。

 

○見逃すリスク

 

 トレーナーであるからには、どれかを優先しているわけです。トレーナーになるにも、どこかがすぐれているからトレーナーとなっているのです。その売りは、何かということです。

そのときに優先していない項目がみえているのかというと、その存在すら気づいていないのが普通です。100のうち、90を落としていることも少なくありません。

 そのトレーナーが、何かですぐれている、そのことが特別であり、周りに認められ、価値があるほど、そのことを求める人の占める割合が増え、特化していくわけです。その結果、その他に見落とす項目は、増えるのです。

 

○区別する

 

 本人がプロとして活躍できるのに必要なことと、身につけるとよいこととは、必ずしも一致しません。まして、すぐにとか同時には、一致しようがありません。

 トレーナーがすぐれていること、評価されていることと、学びたい人が必要なことを区別することです。さらに欲をいえば、他の誰かから学べることを区別しておくことです。

 たとえば、ヴォーカリストに必修の100の項目があるのなら、今や、作詞作曲、演奏、パフォーマンス、ルックス、ファッションなどがメインで、声は10分の1くらい、もしくは、大して必要ないケースさえあります。

しかし、他の分野は、他に才能のある人に依頼できます。だからこそ、10分の1の声、そのヴォイトレが重要なのです。

 

○教えない

 

 プロのヴォーカリストの多くは教えようとしません。本人が、元よりの素質、素養によって、人生を歩むうちに、トータルとして気づかないで得られているものあり、それは、人に教えられないと知っているからでしょう。

 教えるとしたら、同じレベルのプロに自分の得意なことに限ってアドバイスするか、初心者がそこそこうまくなる程度のところについてチェックするかです。

 それは最初からそのヴォーカリストのレベルを超えないと約束されているようなものです。アスリートで、専門のコーチでなく、選手が選手に教えるときの限界と似ています。自分が学んだトレーナー(先生)から学んだものは、学んだトレーナー(先生)を追い越せない、と思っておくとよいでしょう。

 また、本人がプロゆえに、他のヴォーカリストを客観的に評価できないことがあります。評価はできても教えられないこともあります。

 プロでも、プロになってヴォイトレで学んだものは、必ずしもプロでない人がプロになるためのノウハウにはならないのです。

 重ねて述べますが、チェックすることと育成プロセスを与えることは違うのです。☆

 

○世界一ふさわしい手本に学ぶ

 

 となると、手本として学ぶ人の選定は、けっこう大変なことです。学んだ先生が世界一のレベルなら、世界一は無理でも、日本一になれるというように考えるのがよいというものでしょうか。

 優秀すぎるトレーナーにつくと、アーティストでなくトレーナーになってしまうということがよくあります。蛇足ですが、食べられないからと、トレーナーをやりつつ、アーティストを目指すのは、かなり注意するべきことです。

 世界一に学ぶのでなく、それを学んで自分の手本として世界一ふさわしいアーティストや作品を知ることです。それを大いに参考にして学んでください。

 

○先生の先生に学ぶ

 

 それと、手本として学びたい人よりも、その人が手本にした人を、手本にすることです。

 たとえば、先生に習うとは、結果として100人のうちの一人、うまくいった一人の人に学ぼうとするのです。

 先生の先生という大先生をお手本にしても、大先生になれるどころか、99人は、100分の1として結果を出した先生のようにさえなれない、まして、先生に学んだら100分の1100分の1、先生を超え、大先生のレベルになれる可能性は、1万分の1くらいです。では、大先生は…となると、究極には、先生を、人間を超えたものに学ばなくてはならないということなのです。

 ですから、レベルを目一杯上げ、必要性を上げるように言うのです。

 

○他のトレーナーに学ぶ★

 

 他のトレーナーと一緒に指導に関わっていて、もっともありがたいのは、自分のみえていないところ、優先しなかったところに気づくことです。教えることでの偏向を恐れ、すべてを曖昧にまとめて、中途半端に進めてしまう愚も防げます。

 他の多数のトレーナーと評価することは、自ずとレッスンでの役割分担となります。これが、トレーナーそれぞれの長所をもっとも引き出せるのです。他の1人か2人のトレーナーと自分を比べるだけでも勉強になります。まして、4名以上なら、比べていくとそれで10倍学べるでしょう。まあ、ヴォイトレで6人、8人、10人となると多すぎて混乱してしまいかねないようです。

 

○タイプとメニュ数

 

 どのトレーナーにも長所短所があります。短期的な効果を上げるトレーナーも、長期的に効果を上げるトレーナーもいます。また、一人のトレーナーのなかにも、いろんな方針やメニュが混在しています。

 私などは自分のなかに、100タイプ、そして、それぞれ100メニュ以上あり、その上に、研究所の他の10人以上のトレーナーのメニュで、各100×10人=1000メニュ、さらに、私のと彼らのを組み合わせると1千万メニュは、軽く超えるでしょう。ですから、メニュでなくメニュ化する方法を教えているのです。

 

○トレーナーの学び方に学ぶ

 

 本当は、トレーナーになって、どれだけ学べるのか、その学び方や学べる大きさが、トレーナーから学ぶ人にもっとも必要なことです。現役やプロになるまでの自己流や、学んだ経験だけのノウハウをくり返すトレーナーと、時代や生徒に学び続けるトレーナーとの決定的な違いがそこに出ます。

 時代も世代も変わるのに、トレーナーもが与えることも同じではなりません。かといって、目先の流行に合わせた教え方だけでは、もっとよくないわけです。

 そこを役割分担すると、呼吸を教えるのにもっとも長けているトレーナーが、音程、ピッチを直すのに労力を割かれてしまうようなことも防げます。今すぐに役立たない深い基礎を、一方のトレーナーがゆっくりと教えることもできます。そうなると、そのトータルマネージメントが何よりも重要ということです。

 

○選択する

 

 どのトレーナーにつくか、誰を選ぶかというのは、最大の難関のようです。

 第一に、トレーニングの成果を考えるのなら、相性や人間関係で選ぶのでなく、そのトレーナーのキャパシティや方針を自分の対象として考えなくてはいけないのです。

しかし、多くの人は、人間関係での相性で選んでしまいます。同じ技量というなら、それもよいのですが、同じ技量のトレーナーがいるでしょうか。いたとしても、それを誰がどう判断できるのでしょうか。

 

〇問題を出す

  大半は、自分にすぐ合う人、教え方がわかりやすい。

この場合、とっつきやすいということでトレーナーを選びがちです。それは自分と似たタイプになりがちです。それゆえ、わかりやすくやりやすい分、大きな変革をもたらす可能性は狭まるのです。トレーナーそっくりになっていくのです。

 オペラ歌手になりたい人が、日本のトレーナーにつくだけでなく留学するのは、そのためでしょう。しかし、そこで自分の先生と違うと、どうすべきかわかりません。先生の習った先生につくと、その分スムースですが、問題が出てこないのは、よいことといえません。

 

○選択の失敗

 

 トレーナー選びに失敗する人は、必要なものがわからず、一人のトレーナーに委ねる、あるいは、技量でないところ、サービスと精神や打ちとけやすさで厳選するなど、つまり、好みのうるさい人です。

 トレーナーとのミスマッチは、本人には一番見えません。マッチしたはずのトレーナーとレッスンは和やかに進んでいるのに実力がつかない例は、とても多いのです。多くは、自分の思い込みや人間性のような、身につけていく内容と直接の関係がない、自分だけの評価で一方的に決めてしまう、どちらかというとサービスの部分でマッチしたと思ってしまうのです。

 

〇トレーナーのスタンスを知る

 

消費者志向が高まっているため、多くのレッスンが楽に楽しく、すぐに誰でもうまくなる、ということに集中してしまっているのです。

 それをうまく逃れたとしても、そのトレーナーのスタンス、あなたに対するスタンスのことですが、どの面(方針、メニュ)を与えてもらうのか、引き出すことができるのかということです。

 それには、トレーナーの位置づけを知ることです。トレーナー自身は、そこがわかりません。自分の歌の評価をするようなことと同じで、トレーナーとしての自分を評価するには入り込みすぎているからです。

 

○スタンスの決定★

 

 私が、希望者に面談して、いろいろお話してから、研究所でのレッスンを引き受けるのは、そのスタンスを決めていく、いや、いずれ本人が決められるようにすることが大切だからです。

そのためには、あなたのスタンスを決めることが第一です。大体はすぐには決まりません。少しずつ決めていくというプロセスをとることになります。そこで急ぐと、トレーニングも大して効果をもたらさないものになりかねないからです。

 

○マンツーマンレッスンのデメリット★

 

 あなたとトレーナーの二者間でクローズするのは、よくありません。あなたとトレーナーの二者間の関係を第三者がみて、初めて、客観的なチェックができるのです。でも、多くの人は、マンツーマンでクローズするのを好みます。トレーナーだけでなく、生徒さんもそれを好む人が多いので、なかなかオープンにできません。

 最初は違っていても、長く行ううちに、その人の気に入るトレーナーにもベスト1、2、3と序列ができます。そこで、ベスト1しか選ばないのが大半の人です。その方がわかりやすく、やりやすく、とっつきやすい、つまり、自分の感覚で、楽だからです。それは楽であることを優先しているのに過ぎないのです。

 

〇他のトレーナーに通じるか

 

 本当にすぐれているなら、すぐれていっているなら、他のトレーナーとも、楽に得られるところが出てくるものです。教えられ上手になっていくからです。なのに、逆に他のトレーナーとやりにくくなっていく、これは自由ではなく、力が付いたのでもなく、限定されていっている、声にくせがつかなくとも、やり方にくせがついていくということです。声そのものはともかく、方法に固定、くせが出てきているのです。一時的なのはやむをえないとして、それが進んでいくなら重症です。

 つまりは、一人のトレーナーのやり方に特化して、そのトレーナーだけには評価される分、他には通用しなくなるのです。そのトレーナーの評価に満足してしまうからです。そして、価値観が固まっていくのです。自分でなく、そのトレーナーの判断しかできなくなります。

 

○トレーナーを見本としない★

 

そのトレーナーをその分野、ジャンル、アーティストなどに置き換えると、学ぶときは、そうなってしまう理がわかるはずです。一つの歌、一人のアーティストがきっかけになるのはよいのですが、いつまでもそれだけからしか学ばなければ、ファンにこそなれ、確立した個としての自分のものは出てこないというのと同じなのです。

 仕事は応用ですから、こういう人は、そのままでは、深めるほど現実の社会では、使えない、使いにくいのです。

 

○一人のトレーナーのメリットの裏

 

 一人のトレーナーと徹底することでわかりやすいとしたら、それは、短期に早く、形になることです。トレーナーのくせでうまくこなせるようになるのです。このくせは、芸風とか演出のようなものですから、その形を借りてうまくみせられるようになるのです。

 しかし、アマチュアから抜けるには早くとも、それゆえ、プロのなかでは通じません。よく、知名度があったりルックスがよい人に、プロデューサーやトレーナーが入れ込んで、早く仕上げたときにみられる形です。早く出たために、その後、何ら自ら学べず、だめになっていった例をたくさんみてきました。

 唯一、音楽の中でも、歌だけは「向こうのものみたいでかっこよい」で通用してしまうようなものになってしまっているから、なおさら勘違いしやすいのです。

 一人のトレーナーからは、いかに秀でていても、そのメリットとデメリットを両方受けているのです。少しのメリット、多くのデメリットとみた方がよいです。そのメリットを捨てないと次のレベルにいけない、よほど注意しないと、この国ではそんな人ばかりになってしまうのです。

 

1.トップレベルをみて、その上を目指すこと

2.一般化するのでなく、個別化(見本)して自分のところ、自分に合うところまでもってくること

 まず、トレーナーをトップレベルとしないことです。

 子弟関係にあり、師の仕事を継承するのなら、そのジャンルらしく深める、そういう時期が必要だとは思います。固まるときがあっても仕方ないでしょう。しかし、そうでないなら、トップレベルを一人でなく、学ぶアーティストを複数名とすることです。同様に、トレーナーも複数名をお勧めしています。

 

「古人の跡を求めず、古人の求めしところを求めよ」(「許六離別の詞」松尾芭蕉)

No.311

○腹式呼吸の身につけ方

 

大きさを優先します。

わかりにくければ、それを長さでみるとよいでしょう。

1234123412341234

141小節の計 4小節を書く小節ごとにブレスを入れて伸ばします。

最初は、1141秒ずつ伸ばし「4秒でブレス」を×4小節

22秒ずつ「8秒でブレス」×4小節

3、「12秒でブレス」×4小節

4、「16秒でブレス」×4小節

すると、多分、2から3で後半がもたなくなるでしょう。ちなみに、1が♪=60ということです。わざと大きくとか長くして、体を使わざるをえなくします。これは、野球のバッターやテニスなどでの素振りです。あるいは、コーチが子供に腰を動かして打たせることで、全身の動きを学ばせるのです。

 

○ことばの変化(フレーズの実習)

 

はるの

あうお―母音にする

はふほ―ハ行にする

らるろ―ラ行

なぬの―ナ行

まめも―マ行

それぞれの違いをおさえつつ、3つの音を1つの流れでもっていき、統一することです。

どれがよいのかの前に、どう違うのかとか、どう伝わっているのかを把握します。

正しい、間違いで決めつけるのでなく、どれもできる上で、もっともよいものは後で選べばよいのです。一つの正しいものに絞るよりも、まずは、多様な変化を感じ、それが、なぜ生じているのかを自らのなかの変化、違いと結び付けて把握するのです。

 

○レッスンメモ

 

発声とフレーズ

ポップス、ロックと声楽

楽器音の情感

ことばの感情

Key、テンポの設定

ui

nma a

n ga a

 

呼吸の大きさ

吸うことのリピート

1.声域 高低 調整 正誤 カバー

2.発声

3.声量 大小 強化 深さ 程度

4.声質

12.より34

5.深呼吸長く 5101525

 

01 ベストへ

12 ベターへ

イメージと伴う体

焦点とマスケラ 共鳴

支え

 

1.共鳴

2.発声

3.息 呼吸

4.体 支え

脱力感覚

響きが勝らないように

 

1.優先する(メリット)

2.優先しない スルーする(デメリット)

共鳴して喉にかからない(ビブラート)

大きくして喉にかかる(生声)

1コーラス分の息吐きトレ

縦、上下、距離をとる

揃える、集める、力抜く

集中する

地―裏声

3面鏡

ama a

a o i

iko u

n m Ha

1.共鳴 発声 呼吸

2.ことば メロディ リズム

3.気持ち 舞台

ゆっくりとテンポアップ

 

1.低―高

2.大―長

3.音色―共鳴

楽器―演奏

体力―反射

拡大 ばらつく 量

統一 一本化 質

基本1オクターブ

 

ゆとりとスピード

ペースとベース

決めつけ迷わない

バランス支えられない

バランス足らない

固い しなやかに

スタンス 立ち方

盛り上げ方 ピーク

解放 開いた感じ

演出 実感

器 創造と処理

加速 速度 ふかす

のせる

Vol.52

○よい声、悪い声とは何か☆

 

 「あなたの一番よい声はどれですか?」

 といっても、すぐにはわかりませんよね。

 「一番よい声を出してください」

 それで、出せますか。

 でも、「あなたが一番好きな声の人は誰ですか」とか

 「あの人の声で一番好きな声はどれですか」

 というと、少しわかりやすくなりませんか。

 「それは、どんな声でしょう」

 

 次に、身近な人を思い浮かべてください。

「家族の○○」

「隣のおばちゃん」

「会社のAさん」

「上司の○○」

「部下の○○」

「親友の○○」

 それは「どういう声」でしょうか。そして、そのなかのもっともよい声は、どういうときの声ですか。

 多分、機嫌のよいとき、笑顔のときの声でしょう。

 「笑っているとき」「驚いたとき」「目覚めたとき」「眠そうなとき」など。

 

 まだ、はっきりしない人は、逆に「嫌な声」で考えてみましょう。これも、どんなときの声かでイメージすると、わかりやすいですね。

 「怒っているとき」「叱っているとき」「ヒステリーのとき」「わめいているとき」「喧嘩しているとき」「泣いているとき」などでしょうか。

 さらに、一番嫌いな人の嫌いなときの声を考えてみましょう。

 

 その一声を聞くと、殺してやりたくなるときがあるような相手がいましたら理想的です。

 どんな声でしょうか?(サンプリングしたら聞かせてください。)

 「怒りまくっているとき」「ムスッとしているとき」「ため口のとき」「皮肉っぽいとき」「嫉妬、妬み、悪口のとき」など。

 

 こうしてみると、同じ人でもけっこういろんな声があるのがわかりますね。いや、いろいろと声が変化するということでしょう。

 それとともに、一人ひとりが違う声ですから、たくさんの声が世の中にあるのでしょう。

 

 案外と、声の印象、イメージから、あなたも判断しているものです。そして、あなたが○○と思うなら、きっと相手もあなたのことをそう思っているでしょう。

 

 最後に、あなた自身の声に耳を傾けてみましょう。あなたの好きな、あなたの声はどれですか。

 あなたの一番好かれている声は、きっとあなたが笑顔のときの声、笑っているときの声となるでしょう。

 仕事と切り離して考えてくださいね。

 

○自分の笑い声、好きですか

 

 自分の笑い声は、めちゃくちゃ恥ずかしいというか、聞きたくないですよね。

 私なんか裸よりも恥ずかしいかもしれません。すべてはぎとられて身もふたもないように聞こえませんか。

 「アハハ……」とか、「イヒヒ……」とか、「ウフフ……」とか、「オホホ」、「エヘヘ……」、「エヘッ」なんて、ゾッとしますね。

 もし私の笑い声は天下一品、なんていう人がいたら、まさに「私、脱いでもすごいんです」を地でいく人ですね。

 

 でもまあ、俳優や声優は、それで勝負しますから、とことん研究しています。つまり、顔としぐさと声で演じることを売っているから商売です。

 といっても、多くの仕事も、その延長上にあるのです。

 俳優には、どんな役柄も演じ、本物らしくみせられる変身能力がいるのです。

 あなたの仕事で本職で、俳優に負けていたら大変です。たとえば、寿司屋の板前が、俳優に負けていたら……失業です。

 ちなみに、私の専門は、そういうプロに声のアドバイスをすることです。

 

 一般の声のワークショップには、大声や笑い声から入るのがたくさんあります。そうして心を素っ裸にすると、緊張もとれます。温泉気分ですね。そこには背広で行かないでしょう。まず、ネクタイと上着をとっぱらいましょう。ちなみに私が一目みてトレーニングになってない現場は、トレーナーも生徒も厚着をしているところです。

 

 さて、話を戻して、あなたが好き嫌いで挙げた人を考えてみましょう。

 好きだけど声の感じが悪い、声が嫌いという人は、あまりいないでしょう。

 私の知る限り、多くの人に愛される人というのは、だいたい話はうまいかへたか知らないけど、声の感じがいいですね。

 そしたら、世の中は声の感じのよい人と悪い人で分かれているのでしょうか。それも違うのですね。

 なぜなら、あなたにとって声の感じのいい人を嫌いな人がいたら、その人は、その声の感じをよく思っていないということでしょう。でも待ってください。そこには大きなトリックがあります。

 

○相手や状況しだいで、声は変わる

 

 あなたは、相手によって、声の感じを変えませんか。どうしてでしょう。

 嫌われないために、声の感じをずっとよくしていたら、いいじゃないの、と思うのでしょう。

 

 「それでは疲れる」、そうですね、笑顔と同じで、ちょっといい感じを保ち続けるには、なかなかのプロ根性がいるのです。

 でも、その方がいい。そのことは、わかっているはずです。

 なのに、ノーマルな人は、もしあなたがそうなら、あなたは自分が好きな人には、いい感じの声を使い、そうでない人には、その声を使わないのです。

 なぜでしょう。それは、声はあなたのメッセージを伝えるからです。

 

 特に、あなたが女性なら、親しくなりたくない人に、感じのよい声は、あまり使わないでしょう。それを使って気をもたれたり、まとわりつかれるかもしれませんからね。強引なセールスマンには、何でも買わされてしまうかもしれません。

 だから、人は声をしぜんと使い分け、そこに相手にメッセージを伝えるように使ってきたのです。

 

 そこから人類の悲劇、ことばの欠点、誤解が始まるわけです。

 サルなら赤くなったら尻を向けたらよいのですが、ことばは、簡単に変えることができてしまう。

 

 声を変えることは自分の意志でもできるけど、自分の気持ちや感情でもやってしまうのですね。できるというより、やってしまうのです。声は知らずに変わっているのです。何よりも、あなた自身が知らずに、です。これは危険なことでありませんか。

「教わったことを捨てる」 No.311

 

教えられたことでは、教えた人を超えることはできません。教えられたことを元に、常に自分でその先を考えていくようにしましょう。

 

教わって身についたと思うのなら、一度、忘れることです。身についたことは忘れてこそ、使えるものなのです。

 

教える人を目指して、ずっとまねするようになって、その人やその芸に似させることが目的になると、その人の足元にも及ばないで終わってしまうのです。気をつけましょう。

 

 

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