Vol.52
○よい声、悪い声とは何か☆
「あなたの一番よい声はどれですか?」
といっても、すぐにはわかりませんよね。
「一番よい声を出してください」
それで、出せますか。
でも、「あなたが一番好きな声の人は誰ですか」とか
「あの人の声で一番好きな声はどれですか」
というと、少しわかりやすくなりませんか。
「それは、どんな声でしょう」
次に、身近な人を思い浮かべてください。
「家族の○○」
「隣のおばちゃん」
「会社のAさん」
「上司の○○」
「部下の○○」
「親友の○○」
それは「どういう声」でしょうか。そして、そのなかのもっともよい声は、どういうときの声ですか。
多分、機嫌のよいとき、笑顔のときの声でしょう。
「笑っているとき」「驚いたとき」「目覚めたとき」「眠そうなとき」など。
まだ、はっきりしない人は、逆に「嫌な声」で考えてみましょう。これも、どんなときの声かでイメージすると、わかりやすいですね。
「怒っているとき」「叱っているとき」「ヒステリーのとき」「わめいているとき」「喧嘩しているとき」「泣いているとき」などでしょうか。
さらに、一番嫌いな人の嫌いなときの声を考えてみましょう。
その一声を聞くと、殺してやりたくなるときがあるような相手がいましたら理想的です。
どんな声でしょうか?(サンプリングしたら聞かせてください。)
「怒りまくっているとき」「ムスッとしているとき」「ため口のとき」「皮肉っぽいとき」「嫉妬、妬み、悪口のとき」など。
こうしてみると、同じ人でもけっこういろんな声があるのがわかりますね。いや、いろいろと声が変化するということでしょう。
それとともに、一人ひとりが違う声ですから、たくさんの声が世の中にあるのでしょう。
案外と、声の印象、イメージから、あなたも判断しているものです。そして、あなたが○○と思うなら、きっと相手もあなたのことをそう思っているでしょう。
最後に、あなた自身の声に耳を傾けてみましょう。あなたの好きな、あなたの声はどれですか。
あなたの一番好かれている声は、きっとあなたが笑顔のときの声、笑っているときの声となるでしょう。
仕事と切り離して考えてくださいね。
○自分の笑い声、好きですか
自分の笑い声は、めちゃくちゃ恥ずかしいというか、聞きたくないですよね。
私なんか裸よりも恥ずかしいかもしれません。すべてはぎとられて身もふたもないように聞こえませんか。
「アハハ……」とか、「イヒヒ……」とか、「ウフフ……」とか、「オホホ」、「エヘヘ……」、「エヘッ」なんて、ゾッとしますね。
もし私の笑い声は天下一品、なんていう人がいたら、まさに「私、脱いでもすごいんです」を地でいく人ですね。
でもまあ、俳優や声優は、それで勝負しますから、とことん研究しています。つまり、顔としぐさと声で演じることを売っているから商売です。
といっても、多くの仕事も、その延長上にあるのです。
俳優には、どんな役柄も演じ、本物らしくみせられる変身能力がいるのです。
あなたの仕事で本職で、俳優に負けていたら大変です。たとえば、寿司屋の板前が、俳優に負けていたら……失業です。
ちなみに、私の専門は、そういうプロに声のアドバイスをすることです。
一般の声のワークショップには、大声や笑い声から入るのがたくさんあります。そうして心を素っ裸にすると、緊張もとれます。温泉気分ですね。そこには背広で行かないでしょう。まず、ネクタイと上着をとっぱらいましょう。ちなみに私が一目みてトレーニングになってない現場は、トレーナーも生徒も厚着をしているところです。
さて、話を戻して、あなたが好き嫌いで挙げた人を考えてみましょう。
好きだけど声の感じが悪い、声が嫌いという人は、あまりいないでしょう。
私の知る限り、多くの人に愛される人というのは、だいたい話はうまいかへたか知らないけど、声の感じがいいですね。
そしたら、世の中は声の感じのよい人と悪い人で分かれているのでしょうか。それも違うのですね。
なぜなら、あなたにとって声の感じのいい人を嫌いな人がいたら、その人は、その声の感じをよく思っていないということでしょう。でも待ってください。そこには大きなトリックがあります。
○相手や状況しだいで、声は変わる
あなたは、相手によって、声の感じを変えませんか。どうしてでしょう。
嫌われないために、声の感じをずっとよくしていたら、いいじゃないの、と思うのでしょう。
「それでは疲れる」、そうですね、笑顔と同じで、ちょっといい感じを保ち続けるには、なかなかのプロ根性がいるのです。
でも、その方がいい。そのことは、わかっているはずです。
なのに、ノーマルな人は、もしあなたがそうなら、あなたは自分が好きな人には、いい感じの声を使い、そうでない人には、その声を使わないのです。
なぜでしょう。それは、声はあなたのメッセージを伝えるからです。
特に、あなたが女性なら、親しくなりたくない人に、感じのよい声は、あまり使わないでしょう。それを使って気をもたれたり、まとわりつかれるかもしれませんからね。強引なセールスマンには、何でも買わされてしまうかもしれません。
だから、人は声をしぜんと使い分け、そこに相手にメッセージを伝えるように使ってきたのです。
そこから人類の悲劇、ことばの欠点、誤解が始まるわけです。
サルなら赤くなったら尻を向けたらよいのですが、ことばは、簡単に変えることができてしまう。
声を変えることは自分の意志でもできるけど、自分の気持ちや感情でもやってしまうのですね。できるというより、やってしまうのです。声は知らずに変わっているのです。何よりも、あなた自身が知らずに、です。これは危険なことでありませんか。
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