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Vol.53

○できる人は、声の切替力がある

 

 とても悪いことが起きたあと、仕事の電話があったら……。普通は、明るい声にはなりません。

 しかし、プロの営業マンやベテランの受付嬢なら、ていねいに明るく受け応えるでしょうね。瞬時に切り替えられるのです。

 声の<切替力>のある人が、仕事のできる人です。その切り替え力のプロが、先に述べた、役者や声優なのです。

 でも、ノーマルな人は、尾をひくのです。自分では、そういうつもりはないけど、素直で、悲しみから抜けられない心のやさしい人ほど、そうなるのです。表情はがんばっても、声を切り替えられないからです。

 

○声は、みえない情報を相手に与える

 

 悪いことがあったあとは、誰でも暗い声になります。もごもごした、低い、テンションのない声になります。

 しかし、その状況を知らずに、あなたの声を初めて聞いた人は、次のように思うのです。

 「具合悪いのかな」

 「やる気ないな」

 「こっちのこと、よく思っていないな」

 「この人、仕事がうまくいっていないのか」

 声がそういうメッセージを送ってしまうのです。

 

 初めて声を交わした人は、あなたのことをわかっていませんから、そのときの声がそのまま、あなたという人の能力を伝えます。

 「仕事のできない人だな」「つまらない人生、生きている人かしら」

 好き勝手に、悪い方にあなたのイメージはもっていかれます。

 そして現実は、本当のあなたと関係なく、その声の感じを受けて、進んでいくのです。だから恐いわけです。

 

○声でわかること

 

 あなたの声を聞いて、人は、次のようなことを瞬時に察します。

 あなたの体調、気力、意志、やる気、気持ち、気分など

 能力、実績、自信、意志の強さ、こちらへの気持ち、状況などを勝手につくりあげられてしまうのです。

 

 あなたがうまくコミュニケーションのとれない人のなかには、この声の情報に振り回されている人もいます。そこで私も、初対面の方には、無難に笑顔とやや明るい声で対応するようにしているのですが…。

 

 たった一つの声という情報をヒントで、どんどんと相手の思い込みが進んでいく。そこであなたも余計に緊張したり、委縮したりします。

 

 でも、それでよいのです。それが、センサーの正常に働いている状態です。見知らぬ人や偉い人に、自分の胸の内をすぐに明かすような方がおかしなことです。

 すぐ握手するのは、日本では、票の欲しい人か、どこかに悪巧みのある人が多いでしょう。ときに人間的にとてもできた人もいますが。外国に長く住んだ人は、別ですが。

 

 初めて会っても話しやすい人は、ノーマルな状態が比較的、これに近い人でしょう。いつも待ちで、きちんと準備して臨んでいる人です。もちろん仕事ではそれが理想でも、そんな悠長なことは言っていられないことが多いですが。

 

○声を使いやすいとき、使いにくいとき

 

 ここで、あなたが声を考えるために、もう少し声の作業をしてみましょう。

 あなたがその人の前で声の出しやすい人、出しにくい人を三人、ピックアップしてみてください。それぞれ、分野別に一人ずつで構いません。声を出しやすい、がわかりにくければ、声をかけやすいでもよいでしょう。

  1.仕事

  2.プライベート

  3.その他

 

 次に、声を出しやすいと思ったのはなぜか、を書き出してみましょう。

 もし、その人に対して、時によるのであれば、「―のとき」という条件も入れてください。

  ・私に好意的だから

  ・長くつきあっているから

  ・いつも悩みを分かちあっているから

 など。

 

 さらに、あなたが声の出しにくい相手についても、理由をつけてみましょう。

  ・いつも、いぱっている

  ・目を合わせてくれない

  ・気が合わない

  ・私を嫌っている

  ・喧嘩をしたまま

  など。

 

 声の使い方では、声だけでなく、状況を考えることが重要です。状況と声には、密接な関係があるからです。

 

 誰でも、一方的には話せます。しかし、相手があなたの言ったことを受け止め、あなたの話した目的が達成できなくては意味がないのです。つまり、相手がどう聞くかが、かなりのポイントを占めます。そこでの声の重要性ということになります。

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