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Vol.59

○大げさにする

 

 トレーニングでは、先に形から入るものです。まずは、大きく伝えることから入ります。つまり、できるだけ大げさにやるのです。

 役者は号泣、大笑いのトレーニングをするのです。最初はしらじらしいようでも、少しずつ、そこに実体としての感覚が生じてきます。

 「悲しいから泣くのでない、泣くから悲しいのだ」というのも逆手にとった手法です。演技も、最初は、声も動きも少しずつ小さく、伝わるものを大きくしていくのです。

 

 たとえば、声に関係するものとして表情、目元、口元を動かすことをトレーニングで補強しましょう。

 それが動くようになっても、声が伝わらなくてはどうにもなりません。でも、表情や体の動きが変わると、声はかなりよくなります。

 

 

○大声のお勧め

 

 むやみやたらと大きいだけの大声は、のどに負担となるだけでなく乱暴でもあるため、トレーニングとしては否定されるべき側面もあります。聞いている人にも、うるさいです。

 しかし、それによって、早く声に全身を使う感覚と、声と体が結びやすくなるのです。トレーニングとしての成果も、みえやすくなります。より大きな可能性を開くためには、ときには必要なことです。本当の基礎というのは、大きく使えてこそ、小さく表現できるからです。(ただし、人によっては時期尚早、あるいは、どうしても合わない場合もあります。)

 

〇小さな声でみる

 

 今の私には、小さな声、弱い声を出すのでも、全身につながります。声と体が結びついているからです。

 小さく弱い声は単に小さく、弱いだけではありません。通る声となります。表現力をもつためには、それを完全にコントロールする体は欠かせません。

 アナウンサーも役者もベテランになると、小さな声で大きく伝わるようになります。でも、初心者のうちは、大きな声で伝えようとする気持ちで、大きな動きを伴わせてでもよいから、まずは伝えることです。

 

○声を出せるときには、大きく出そう

 

 「でっかい声を出してみよう」、さて、どこでー?困りますね。

 ちょい悪親父のエレキブームはサイレンサー付の楽器が支えていますが、声はどうしましょう。

 部屋を防音ルームや防音加工するのが望ましいのですが、それは、けっこう高くつきます。

 ふとんや枕で口を押さえるという、宇多田ヒカルさんばりのトレーニングをやりますか。でも、「誰かに聞かれているかも」と、こわごわと声を出すのは、心身どちらにもよくなく、あまり勧めたくありません。

 でかい声を出すには、理性がじゃまするものです。それを取り払うのが第一の試練です。

 

○大きな声が出せるところ

 

 早朝の河原など、いかがでしょう。車の中でもよいでしょう。音が打ち消すなら鉄道のガード下、ガラガラ車輌でトンネル通過時、工事現場。狭い日本ですが。うるさいところでの練習は、耳が疲れるのと丁寧にチェックできないので、声の体力トレーニング以外は向いていません。

 私は、山の中の湖で大声出して、そのエコーの返りを聞いたときに、トレーニングの甲斐を感じました。

 サッカーや野球のファンに混じっての応援など、現実的に大声を出せるところで出すのもよいでしょう。他の人と一緒にやると出やすいです。声援というのは、声での応援です。声で力を選手たちに与えるのです。

 カラオケボックスも使えると思います。両々隣に聞こえたって気にしなくてよいと思えば、トレーニングも楽です。マイクは使わずにやりましょう。

 あとはジェットコースターで両手を挙げてとか。フリーフォール、絶叫マシンっていうくらいです。体育会や応援団に入門するとか……。あまりめんどうだと続きませんが……。

 それにしても、今の日本、声出すのも大変ですね。

 

○異分野に学ぶ

 

 日本全国、いろんなマッサージや整体、癒しが流行っています。でも、声を出して発散すると健康によい、それでほとんどの人は充分のはずです。

 エアロビクスのDVDの外国人インストラクターのように、目一杯、表情と声をつけて行いましょう。健康器具の通販番組をみましょう。外国人の声はとてもよいですね。英会話など、外国語の会話教室に行くのも、よいでしょう。

 

〇うるさくなる

 

しばらくは、皆にうっとうしがられる声の大きな人になりましょう。昔、皆さんのまわりに、小学校とかでいませんでしたか。合唱コンクールで大声すぎて、「あなたは楽器やりなさい」といわれたような子。

 日本のエアロビクスインストラクターには、声を痛めている人が少なくありません。やたらと急に大声を続けて出しすぎたからです。無理に大声を出さなくてもかまいません。(のどの状態によっては、避けたほうがよいことも多いのです。)

 ともかく、声を出せるあらゆる機会に、トレーニングを便乗させてみてください。

 

○声の感じは気分で変わる

 

 気分によって声は変わります。そして、声によっても気分が変わるものです。

 生きていくのに心身によいものを聞くと嬉しく声がよくなり、悪いものを聞くと声もよくなくなります、それは、逃げたり、戦うのに備えなくてはいけない本能からでしょう。

 いい声を聞くと、明るくなります。免疫系がよく働くようになるからです。笑うことやクラシック音楽と免疫の関係は、立証されてきています。声もまた、同じでしょう。

 

○よい声をみつける

 

 あなたの一番よい声を捜してみましょう。61Hで見つけてみましょう。

 Where

 When

 What

 Why

 Who

 Whom

 How

 

 次に一番悪い声だったときを探します。ここ23年くらいで出来事を思い出してみてください。みごとに、出来事での、心情と声とは、リンクしているはずです。

 

○声の成長アルバム [声日記]をつけよう

 

 声は口から出して消えて残らないものです。意識化するには、文章で記録することです。声で直接伝えられたらよいことも、私はこうして書いています。

 毎日、あなたの声について、気づいたことを日記に記入してください。子供の成長アルバムと同じように、あなたの声の変化を録音して残していってください。

 

○読むときの声は難しい

 

私は、花王のCM(アジアンビューティ大学)に出たことがあります。台本を渡されましたが、アドリブでやりました。自分のことばでいつもしゃべってきたので、リズムや呼吸の違う他人の脚本を演じるのは苦手です。アナウンスや朗読のようなことは、その分野のベテランにはかなわないものです。

ですから、ということでもないですが、一般の人が文章を読んで、録音、再生しても、しぜんに聞こえないのは当たり前です。

 第一に、読むのと話すのは別の技術です。第二に、マニュアルを暗誦しただけでは、マニュアル声で、内容は伝わっても心は伝わりません。内容さえ伝わりにくいものです。

 それでも一度、頭に入れておくと自分のものになりやすくなります。相手のニーズに応じて変じて使えてこそ、一人前なのです。

 

〇自分の声は変?

 

 録音してみると、「自分の声だけ変」という人がいますが、そうではありません。

 あなたが読んだ文章を入れて変な声に聞こえても、気にしなくてもよいです。文章を読み慣れていないからです。目で活字を追っているうちは、しぜんには読めません。他人の文章を、その場ですぐ自分のものにできたらプロだからです。どうせなら暗記するほど読んでから録ってみることです。

 いつも話している声は、それよりはずっとましですからご安心を。会話は文章とは違うからです。あなたが親しい人と話している声は、もっと魅力的なはずです。

 他人に聞こえている自分の声は、骨振動でひびかないから自分で思っているより少し高いです。それが、自分の声が変と感じる原因の一つです。

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