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創刊号「ヴォイトレと研究所」

○ヴォイトレのレクチャーにいらっしゃる人々

 

 最近、私のレクチャーには、歌手、俳優志願の人、ベテランの役者、お笑い芸人、プロデューサー、インストラクター、ときどき、ビジネスリーダー、指導者、演出家、映画監督の方などがいらっしゃいます。

一般の人で、人前で話す人、声に関心のある人も増えています。高齢者から、中高校生まで、声に悩んでいる人も増えました。ここにも、最近は何人ものトレーナーが学びにいらっしゃっています。 

そういう人を念頭において、ヴォイストレーニングに関心のある人、全般のために述べていこうと思います。また研究所へ寄せられる多くの質問のうち、トレーナーとトレーニングに関係することを主に取り上げていきます。

 

○ヴォイトレの混乱

 

 いらっしゃる人のなかで、「ヴォイストレーニングがよくわからない」「わからなくなった」といわれることが少なくありません。多くの本やセミナーがあるのに関わらず、逆にそのことが混迷を深めているように思われます。

事実、ワークショップやヴォイストレーナーの研修や、劇団などに話をしにいくと、そこでは多くの人が自らの声についてもですが、他人に声を教えることについて、悩んでいるのです。

どうも声のトレーニングについて、何か根本的に勘違いしているのでは、もしくは声そのものや声に求められるものが変わり、客の好む声も声の役割も変わってきたのではないかということからの疑問も少なくないようです。

 

○体験からの指導での問題

 

 ヴォイストレーニングはカルチャーセンターでも人気講座の一つとなり、ヴォイストレーナーやヴォイスティーチャーを肩書きにする人も増えました。それはうれしいことなのですが、現場で混乱をきたすようになっているのは、なぜでしょうか。もちろん、多くの場では、事なく行われて、効果や実感を得て満足している人が、7割以上と思います。それは、それでよいとして、ここはそうではないケースで相談にいらしたところについて述べています。

 第一には、短期にあいまいな目的を遂げようと急ぐことです。それに対応するかのように安易に自分の体験だけをもとにしたヴォイトレや人のマニュアルが多くなりました。とんでもない誤解や誤用まで引き起こしています。

一言でいうなら、トレーナーが自分一人で指導をやっているために、あまりにも客観的な検証に欠けているのではないかということです。自分を元に考えるのは当然ですが、あまりにも相手の一人ひとりの個人差に無理解のまま、自分と相性のあった人にのみ、あてはまるやり方でやっているためと思います。

それは、私の本を指導に使っていただいていることにおいても懸念していることです。この分野で出版してきた私も、少なからず責任を感じています。是非、直接質問をしにいらしてください。

 

○本やマニュアルの使い方

 

本やブログは、相手(読者)を知らずして、トレーニングを述べることです。そこで、ことばでの限界を知って対処し、誰でも何でもできるようには、私は書いてこなかったつもりです。それでも現実には、誤解、誤用を、まぬがれません。そのため私は510年ごとに改訂版、あるいは新版にて表現を改め続けてきました。    

さらに、こうしてブログなどでも最新に更新しつづけています。新旧両方を比べて読んでいただくと、よい勉強になると思います。

 

○課題を明らかにする

 

 新しい時代に、いろんなトレーニングメニュが公にされるのも、よいことです。何事であれ、いろんな材料はあった方がよいと思うからです。そして、現場での経験を基に、どんどんと本当の力をつけていただきたいと思っています。私自身も安心して、本来の研究や活動を深められるようになるとしたらありがたいことです。

 とにかくも長年にわたり、多くのことを、多くの人と試みてきた私の経験や見解を述べることは、必要とする人にはお役に立つと思います。

 これまで受講を望む人の層が思いの外、広がっていったため、いつも新たに未経験の相手に試行錯誤でやってきました。そのため、いつまでも、課題は尽きないのですが、その課題も明らかにします。

この分野に欠けているのは、声という幅広く深い分野に対して、多くの専門家との協力体制に他ならないと思うのです。

 

○ヴォイトレする人は、ヴォイストレーナー

 

 私は、ヴォイストレーニングをする人は、自らが自分のヴォイストレーナーであるべきと思っています。ですから、私がヴォイストレーナーとして、私のヴォイストレーニングを語るのではありません。

 私にとっては、ヴォイストレーニングとは何ぞやと、ヴォイストレーナーとは何ぞやということは、そう簡単に述べられないものです。

 この分野を私が代表できるものではありません。私自身も一人よがりを防ぐため、医者と音声学者など多くの専門家にアドバイスなどの協力をお願いしています。

 自分についてもっともよく知る自分こそが自分の最良のトレーナーです。一方で自分の声について、完全には知ることのできない自分を補うために参考としてください。

 

○ヴォイトレの体系化としての出版

 

 私は、これまでたくさんのヴォイストレーニングに関する本を出してきました。

今から二十年前に、ギターやピアノの本の棚があるのに、声に関する本はほとんどなかったのです。あっても声楽の本がほとんどで、あとはスピーチ、話し方の本、吃音矯正の本、のどの病気の本などでした。

当時は、発声練習やヴォイストレーニングといわれていました。

 そこで私は、ヴォーカルやヴォイストレーニングという棚ができるところまでは、入り口をつくろうと思いました。幸い、多くの方の賛同を得てヒットを重ね、その後、いろんな出版社がこぞって出すようになりました。

他のトレーナーが職として自立しやすくなったくらいの礎にはなったつもりです。

私の一連の本によって、多くのトレーナーの受講者も増えたとの嬉しい知らせもいただいています。また、私のところのトレーナーなども、ほとんどが10代の頃、私の本の愛読者であったとのことで、並々ならぬ責任を感じています。

 

○量から質への指導とトレーナーとの連携

 

 私は、ヴォイストレーニングの本をもっとも多く書き、世界中を飛びまわり、声やトレーニング法をサンプリングする一方で、日本で最も多くのレッスン生を抱えたヴォイストレーニング専門の研究所を主宰しています。

そこではポップスから声楽家まで、複数のトレーナーを一人の生徒につける方法で、2年から長い人で10年以上みてきました。在籍人数、平均300400名で20年以上ですから、本当に多くの人の声と接してきたわけです。

 

研究誌としての会報(月に1冊、本1冊分)は300冊以上、講演会は150回以上、レッスンは何千回? そこで答えてきた質問は、何千か何万か数えきれません。

そこから、現場での実践のプロセスをふまえ、できるかぎり本質を落とさず、ヴォイストレーニングに対して、何冊もの本をまとめてきました。

 

 一方で、これまでずっと、各専門家と声を科学、医学、身体の面から声というものにアプローチしてきました。現在は他のトレーナーやスタッフとともに、一人に複数トレーナーをつける個人レッスン体制を確立しています。

日本でのトップレベルの演劇、放送、ミュージカル、お笑い、歌手、俳優、声優、芸能歴30年以上のベテランや、ミリオンセラー歌手まで、初心者からいくつかの学校のヴォイストレーナーの指導まで行なっています。一般の方やビジネスマンやVIPのためのヴォイスティーチャーもしています。

 

○ヴォイストレーナーの仕事、私の実例

 

 私はようやく多くをトレーナーやスタッフに任せられるようになりました。そこで、自分でしかできない仕事を中心になってきています。私自身のやってきたことを自問してみました。よくトレーナーの仕事の内訳を聞かれます。その答えにもなっていると思います。

 

1.声のレクチャーで質疑に応答

2.トレーナーの質問に答える

3.ホームページ、ブログ内容への質問に答える(参考:「発声と音声表現のQ&Aブログ」)

4.ヴォイストレーニングのメルマガを発行(7誌を配信、現在1誌、まぐまぐで購読可能)

5.専門学校や大学、カルチャー教室、劇団ワークショップでの講座

6.ヴォイストレーニング専門の研究所を運営。そこでトレーナー陣と多くの人を引き受ける

7.研究所と他のスクールでのトレーナーの選考、管理、レッスン受講生のレポートとトレーナーの報告書のチェック

8.国内外の専門書収集。研究所に声のライブラリーをつくる

9.医者、科学者、言語学者などの専門家、研究生と国内外の声の分析

10.芸人から声優、役者のデビュー前から、プロのベテラン歌手まで指導

11.多くのヴォイストレーナー、指導者の悩みに答える

12.ヴォーカルや役者の養成所を設立協力、トレーナーの講習

13.トレーナーになる人の、それ以前とそれ以後をみる

14.プロとなる人の、それ以前とそれ以後をみる

15.通信教育制作と指導

16.教材制作と指導

17.マスコミ取材(参考:ホームページ「マスコミ掲載記事」)

18.会報やマニュアルの発行

19.トレーナー、プロデューサー(海外含む)にトレーナーに指導を受けたり、プロデュースする

20.さまざまな提言を業界や企業、教育機関などにする

 

○私の音声教育との関わり

 

 私が声とその周辺のことに人生の多くを費やしていることがわかると思います。会報を300号以上、出し続けているので、それを読むと歩みがわかってもらえると思います。(年鑑も刊行予定)

 

 私がこのようなものを書くときには、同じことを何十回、聞かれたくないからということも少なくありません。しかし、それだけ多くの人が同じ問いを発しているのだから、早く伝えたいと思うのです。

 

 もう一つは、今の時代において、ヴォイストレーニングがどういう意味をもつか、というところからヴォイストレーニングを考えてみたいということです。ヴォイストレーニングをしたい人や、ヴォイストレーニングをしている人、特に最近多くなったヴォイストレーナーも念頭において、述べています。

 私も、多くの先達の、方法、考え方も参考にしています。これについては、いずれ、機を改めてまとめたいと思っています。

 

〇自戒をこめて

 

 国際的に、あるいは日本では高いレベルのプロと長年にわたってやってきた私の経験が、ヴォイストレーニングをやっている人やこれからのヴォイストレーナーにも、参考になれば嬉しく思います。

学校の先生向け教育雑誌の連載で、幅広く声の教育に携わる方々と対談できたことも、大きなプラスに

なりました。

これらが結果として、多くの人材を育てられる一助となりましたら、望外の喜びです。

いつもながら、皆さんの忌憚のないご意見、ご批判をお待ちしております。

 

 私自身のやってきたトレーニング、そしてまたトレーナーたちと試行中のレッスンスタイルの変遷を明らかにしていきます。三十年以上、十数名の有能なトレーナーを有しておきながら、未だグラミー賞やアカデミー賞の受賞者すら、出せていない私の痛恨の歩みです。是非、これを叩き台にバージョンアップしてお役立てください。

 

○内容について

 

 内容の中心は、ヴォイストレーニングのチェックや、レッスン指導での注意点です。目的やレベルの違いによるレッスン、トレーニングのそれぞれの是非を述べていきます。

これまでのヴォイストレーニングの功罪にまで踏み込んでみます。ヴォイストレーナーとともに、ヴォイストレーニングを受けたい人、受けている人の注意することや盲点についても触れます。

 

 大きくは、4つの内容を入れていくつもりです。

1.ヴォイストレーニングには何が本当に必要か。

2.ヴォイストレーニングの本質とは、何か。

3.ヴォイストレーニングの目的は何か。

4.ヴォイストレーナーをどう選び、どう使うのか。

 

○ブレスヴォイストレーニング研究の背景

 

 初期の私の本には、私自身は「ヴォイストレーナーでない」と明記していました。

私自身が、声楽家や役者、欧米のヴォイストレーナーと行なってきたメニュを中心にしつつ、しだいにポップス向けに変容してきた方法を、ブレスヴォイストレーニングとして、理論立てて打ち立てたのは、三十年以上、前のことです。

その頃は、ヴォイストレーニングという定義もなく、漠然としていました。そのため、そのことばを経験の未熟な私がストレートに使うのは、ためらわれたのです。

 

 知っておいていただきたいのは、いかなる方法も、その時代の必要とともにあるということです。(その頃は、頭声ばかりが発声レッスンの主流でした)

それに対し、私は言語音声力の強化にベースを置いたのです。

つまり、歌唱発声のそのまえのところです。ですから、役者や声優や一般の人も早くからいらしていたのです。

 

○前提以前の問題

 

 世界的な名オペラ歌手などが発声法などを明らかにしているのに対し、そんな身分でない私には、発声といっても私なりに捉えたものでしか、ありえないとの思いがありました。

もともと生まれ持っている楽器に恵まれている人の多い歌手やトレーナーが、そうではない多くの人を教えていました。ヴォイトレにいらっしゃるのは、発声に困っている人、つまり持っている楽器や状態にも問題があることも少なくないのに、声の使い方だけ指導している人ばかりだったのです。

 

 前提が崩れていては、いかにすぐれた方法でも、役に立たないのです。

私はプロを多くみてから、一般の人と接したので、また今もプロともやっているので、とてもよくその差がわかります。正直にいうと、楽器のよしあしや状態のまえに条件が整っていないということです。

 

○方法の命名の理由

 

 声楽を別にして、一般の人向けや、ポピュラーや役者に対するヴォイトレでは十人十色に全く違うやり方で行なわれています。

これは昔から大して変わりません。そのなかで、私自身が責任をもてるのは、私のやり方にすぎないから、あえてブレスヴォイストレーニングという別名をつけたのです。

 それでも私の願いは、スポーツのように、この方法もある程度一般化されることです。

今のところ、多くのトレーニングマニュアルは、そのトレーナーの名をとって、○○流としか、なっていないように思います。

 私が自分の方法に、自分の名をつけなかったのは、私自身が創案しても、その後、よりすぐれた人が加工、改良して、完成度を高めてもらいたかったからです。すると、いつかはきっとよりすぐれた人が行なっている

トレーニングと同じところに行きつくと信じています。事実、そういう方向になってきたと思うのです。

 

○レッスン形態の変遷と可能性の追求

 

 トレーニングの目的に対して個々に異なる楽器(体や声帯)、感受性、創造性をもって生まれた一人ひとりの人間をいかにうまくセッティングするかということを忘れられてはなりません。そして、そのためにも目的そのものの絞り込みをしていく必要があります。つまり、できることとできないこと、可能性と制限をみていくということです。

 最初、私は、プロの個人レッスンだけでしたが、しだいにより深く声と表現を追求したくなり、一般の方のグループレッスン(全日制養成所―ライブハウス式スタジオ)にしました。(15年ほど)そして、またプロの個人レッスン中心(研究所では、一般の方も個人レッスンに)と、移しました。

 

○私と研究所のヴォイストレーニング

 

 それでは、ここで私と研究所のトレーナーが分担して行っているレッスンの内容を一部お伝えしましょう。

(歌い手の場合)

1. 発声と共鳴のこと(発声ポジション)

2. 表現、歌としてのアドバイス

  自分の作詞作曲の歌

  ヒット曲

  課題曲(カンツォーネ、イタリア歌曲、日本歌曲)

3. デッサン、フレージング

  1)課題曲のフレーズ

  2)音楽を入れ込む(月に1520曲)

  3)フレーズを選ぶ

  4)メロディ、ことばを耳でコピー(外国語も耳で聞いたままとる)(人によっては楽譜を渡す)

  5)テンポ、キー、フレーズでの切りとり、セッティングする

  6)自分のオリジナルデッサンを2本(8本)くらい選び、実践する

  7)評価する

  構成、展開をノートを考えて、整理し、編集する

  レッスン当日に備えます

  メールで、Q&A、レポート提出をします

声楽、発声、ヴォイストレーニング一般、歌唱は、トレーナーが主に担当し、時間を充分に長くとっています。

その他、必要なことは本人との相談の上、最適な材料を与えるようにしています。

 

○レッスンでの実証

 

 私のレッスンは、いつも変化と進化してきました。かつての放任主義的指導の頃の人が一番力をつけたとも思いますが、それでは残れない人の多い現在では、やり方も年々変えています。

共通のこと、人と違うこと、などを私自身、実の経験で何十人もの人を10年以上みることができ、判断できるようになったのは、大きな力となりました。そこで得てきたこと、今も得ていることを受講されている方に差しさわりのない範囲で、公開しています。それによって学べる人も少なくないと思うからです。

 どこにも、絶対的な方法はありえません。だからこそ、自らの目的と自らの資質を知りつくすことが、何よりも大切だと思います。時代を学ぶことも大切です。日本人にとって、大きな弱点である言語音声力をつけることを忘れてはなりません。

 

○ヴォイストレーニングのあり方

 

 一流のアーティストで、ヴォイストレーニングだけでそうなれたなどという人は、いません。

役者は養成所で体験したりしますが、現場で必要に迫られて、声もその使い方がよくなることも多いのです。

 

 今、巷の多くのヴォイストレーニングをみると、調整やケアが主です。のどを守る力になっていても、力をつけるためにはなっていません。そこには声の出る体というのを想定して、体を鍛えてプロの楽器に変えるという発想がないのです。

 

 アーティストは、過酷なスケジュールに耐え、安定した実力でのライブができるように、将来的なことに備えて、ヴォイストレーニングをする必要があります。

ヴォーカルに必要とされる基準と、日本人のヴォーカルへの評価(というより、評価なき対応という)のレベルの低さにあります。役者についても同様、音声表現力において世界の壁はまだまだ破れていないのです。

日本では、デビュー時より格段によくなった人はごく少数です。郷ひろみさんなどは、海外のヴォイトレに行っていました。(海外に著名なトレーナーはいますが、すでに一流の力をもった有名人を扱うので、その力をゼロからつけたとはいいがたいです。そういうプロに信用される力と人柄、プロデュース力など、何の力かはそれぞれです。)

 

○ヴォイストレーニングの錯覚

 

 イチロー選手が、「俺のように打てば4割打てるよ」と子供に教えても無理でしょう。本当に自分が努力して得たことを安易に他人はすぐできるようになるような勘違いを善意であったとしてもさせてしまうのは、よくありません。スポーツのように結果がはっきりしないだけに、始末が悪いともいえるのです。

 

 たとえば、一流のプロのレベルでは、スランプになっても、心身をリラックスして、元の状態に戻せば、通用するわけです。でもそれは、そこまで何年もかかって、体と感覚(筋肉も勘もイメージ)を全部作ってきたからです。

そういう条件が伴っていなければ誰もできません。

 

 その条件(主として感覚と心身のコントロール)のない人が、トレーニングをやれば、すぐにうまくなり、プロの世界で通用するというのは大きな間違いです。

しかし、ヴォイストレーニングのレッスンでは、そういう錯覚があたりまえのように行なわれているようにも思われるのです。

 

〇状態づくりと条件づくりは違う

 

 先生が歌ったり、声を出したり、自分のコンサートによんだりというような時間が中心になっても、その人と共に過ごすことで力がついているような気になる人も多くなりました。ゴスペルや合唱ブームにのって歌を始めた人などが、レクチャーにもよくいらっしゃいます。しかし、そこで先生のやっていることは、その先生個人の実力で実績なのです。そこにいても、ほとんどの場合、不思議なほど声の力がつくこととは関係ありません。

要は、そういう人についているのに、トレーニングが本当の意味で全くなされていないのです。

プロとしての一声、一フレーズ、そして個人の作品のできがどうかという肝心のことが深まっていないのです。場数をふんでリラックスして声が出せるようになること、音程リズムと発音でよくなることと、声が出るように鍛えて条件を変えることは、全く違うのです。

 

○ヴォイストレーニングの定義

 

 「ヴォイストレーニングとは何か」・・・

この質問には定義をしなくては答えられないのです。

そして、定義によってだけでなく、相手によって変わるものなのです。

 

多くの人には、

1.呼吸のトレーニング

2.アエイオウという母音での共鳴練習(ヴォーカリーズ、レガートの発声練習)

3.高低の音階練習(スケール練習、ドレミレドの発声練習)

といった発声練習(声楽)のイメージが強いと思います。

 

 しかし、役者や声優、アナウンサー出身のトレーナーなら、異なってきます。

のどの障害に対する音声医のヴォイストレーニングもあります。

「ヴォイストレーニングとは何か」という問いには、あなたにとって必要なことを知って、自分で定義をしてください。ヴォイストレーニングは何のためにするのかを、決めるのは、あなたです。

 

○ヴォイストレーニングの目的を考える

 

 一般的には声量や高音発声、広い声域づくり、声区のスムーズな切り方(最近はミックスヴォイスという人もいます)を目的にしているトレーニングが多いようです。ちなみに私は、それは目的でなく、副次的に得られるものと思っています。ヴォイストレーニングは「いかにイメージに対して、繊細にていねいに声を扱うかを習得するためのすべて」と考えています。

結果として、声の自由度、柔軟性を得る、声の表現への可能性を広げるためにするものと思っています。

 

 「トレーニングは、常にそれが何のためにやるのかを考えること」です。それを何に使うのかは、それぞれの人の自由です。

ストレス解消、ボケ防止などに使うのも大変に結構です。

「効果が出るのか」に「はい」と答えるのは簡単です。しかし、やってみなくては、何事もわかりません。

これは、まさに「英語を勉強すると外国人と話せるようになりますか」というのと同じような質問です。

その目的も含めて、あなたの状態をみて、対処していくのが、私とここのトレーナーです。

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