Vol.63
○声で姿勢がわかる
電話で、相手が受話器を持ってどういう姿勢でいるかは、声から何となくわかります。その人の姿勢や表情と声とは、ストレートに結びつくからです。本当に謝っているなら、声は、頭を下げている姿勢から出ます。ふんぞり返って出す声では、そういう気持ちは伝わりません。声から、その人の姿勢(形も中身も)が察せられます。声の働きかけが違ってくるのです。
○よい想い出のなかの声を思い浮かべよう
だいぶ昔になりましたが、ラジオ(花王のアジアンビューティ大学)で、私は4人の出演者を1分でその声を変えました。使ったのは『フー、フゥー、フォー』(レーザーラモンの「フォー」の三段活用、弱→強)と、『「ハイハイ」、「ハイハイハイ」』(「あるある探検隊~」)の声のコピーでした。
聞いて元気の出る声は、お腹から出る声で、自分で使うともっと元気が出るものです。そんなときは、呼吸のトレーニングからしてみてください。
もっともうまく出たときに録音した声を再生してみましょう。そういう声を思い出すきっかけとなります。
○呼吸から声に
決めことばや捨てぜりふの効果は、声が消え、静まりかえったときにわかります。声こそは、まさに声の残した余韻で伝わるのです。
そういえば、声で効果のある熟睡対策があります。Sheep1、sheep2、sheep3、と羊を英語で数えるのです。
これはクールダウンのための声です。あなたは安らかな眠りにつけます。声に親しんでから、眠りにつきましょう。ゆっくりと音読をして、床に入りましょう。
脳で声はつながっていると思ってはいかがでしょうか。私は声で左右の脳に振動を与え、両脳のシェークを試みています。
○声の第一印象
見かけというビジュアルの表面的なところでの第一印象は、演出することができます。もって生まれた顔も、体も、好きなようにメイキャップしたり、おしゃれで変えることができるのです。ファッション、ブランド品でも演出できます。
イベントや演芸会では着ぐるみ=ゆるキャラが目立ってきました。
しかし、大きさや色、形といった目立ち度だけでは、行き着くところまで行くと、皆、没個性になりかねません。プロはそれに頼らずに芸を演じているのです。
「人は見かけが九割」という本が大ヒットしました。確かにそうでしょう。視覚こそが、瞬時にもっとも多くの情報を取り込みます。ことビジネスに関しては、ビジネスにふさわしい第一印象、見かけで充分に対処できます。
それに対し、声の第一印象、これは外見の印象のあとに、加わってくるものです。伏線として、潜在的に入り込むので、第二印象ともいえなくはありません。人を観るのに長けた人なら、声一つでピーンとくるものですが、本人にはわかっていません。ビジネスでも、関係が深まるにつれ、夫婦や家族と同じで、ことば→声→心となるのです。声の印象は、演出できる人が少ないから大きなチャンスなのです。
○声の合う人を捜す
気の合う人がいるくらいですから、声も自分と相性の合う人、似た人が、この世の中にいます。探してみましょう。あなたが声をまねしやすい人は似ているはずです。自分でわからなければ、周りの人に聞くとよいでしょう。そして次に、声の相性の合う人です。違う声でも何となくうまく噛み合う人を見つけてみてください。
○まねしすぎないこと
相手の望む声に合わせる、あなたのあこがれの声に合わせる、どちらも試すとよいでしょう。声の使い方の応用練習になります。しかし、度が過ぎると、精神的にもキツイでしょう。ムリすると、のどを壊しかねません。
○声の悪循環
好かれたい声と、嫌われたくない声を知るのはよい勉強ですが、自分の体に合っていない声で、ムリに出し続けるのはやめましょう。声は、心身の調子の悪いときに出にくくなります。そのときに、休まずに無理すると、どんどん悪くなったり悪い状態が続くことになりかねないのです。声には、疲れが雪だるま式にたまると覚えておいてください。
○一声を心に残す
早くから、たった一つのフレーズで、声を相手の心に残すことに気をとめるということです。相手の耳に届けるつもりで語るのです。声の説得力は、声の調子の一貫性とその微妙な展開から生じます。私は、それが声の芯と共鳴だと思っています。そこで、あなたのキャラクターと声のイメージを一致させます。
トレーニングで姿勢(フォーム)が落ち着いてくると、体が安定して声が定まりやすくなります。声の焦点や方向性を意識することで、声が働きやすくなります。
○緊張してもよい
緊張していても、あがってしまってもかまいません。それがまずいのは、声に表れて、声から相手に伝わるからです。どんなに緊張しても、表面に出なければわからないのです。
緊張すると、
・声が高くする
・声が短く速くなる
・しどろもどろ、発音不明瞭になる
そのために、より伝わるということもあります。私は、緊張している人に誠意を感じることが多いでます。
うまくいかない原因は、心拍数があがり呼吸が不安定になるからです。発声効率(呼気消費量)や声立て(息→声の変換効率)が乱れてくるのです。ヴォイトレでは、呼吸の腹式でのコントロールを身につけ、それに対処することになります。
○あがりの防止
なぜ人前で話すとあがるのでしょうか。
自意識過剰になってあがることもあります。
失敗を、心配することからあがることもあります。
仮に失敗しても、他の人は大して気にしていないものです。そういう失敗は、多くの人にも覚えがあるからです。人は、失敗に対して優しいものです。
第一に、多くの人は、何をみても聞いてもすぐに忘れてしまうものです。へたにとりつくろったりすると、あまり見苦しいことはやめて欲しいと思われるだけです。印象に残らぬスピーチよりは、失敗しても印象に残るほうがよいとさえいえます。
人前に出たら「煮るなり焼くなり好きにしてくれ」と開き直ることも大切です。人の注目を集められるこの時を楽しみましょう。あがることも含めて、自分の体や心臓、脈、血をいとおしみましょう。
○緊張は声で伝わる
あがると、心臓がドキドキして不必要な仕草が目立つものです。ことばは早口になり,声は震え、顔が赤くなる、これは呼吸から直すことです。ヴォイストレーニングが役立つところです。
○嘘は声でわかる
嘘がバレていないと思っているのは本人だけです。
相手が見ているのと、自分が見られていると思っていることとは違うのです。
視力1.5の人と、0.2の人は、見えているものが違います。声も同じです。
そういうことがわかるようになることが大切です。
目と違って、多くの人がよくわかっていないからこそ、アドバンテージがあるのです。
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