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第18号 「一人でできるヴォイストレーニング」

○フォームとしての姿勢づくり

 

よい姿勢とは、無理のない自然でリラックスをした姿勢です。しかし、プロの声はプロの体から出る以上、それを支えるものが必要です。結果として、次のようになっていることを確認してください。これを同時に、すぐにはやれません。発声と姿勢との両立は、感覚や体が伴わないと無理なのです。共に身につくには、時間がかかるものです。最近は、胸が開かない人が多いのも問題です。

演劇、ミュージカルやオペラでは、いろんな姿勢で声を使います。フォームができてきたら、何でも対応できます。基本が身につくということは、状況が変わってもそれに対応できる応用力がつくということです。

歌は声の応用、ステージは、歌の応用です。弾き語りでも、ギターと歌は、最初は別々に練習するでしょう。同時にやるのでなく、それぞれの目的を定めて、個別に対処するのがトレーニングです。この問題は、基本と応用との違い、習得するためにするトレーニングとそれを自由に応用するとの違いです。

 

○状態をよくする

 

できるだけ休みを途中に入れ、心身ともに柔軟にすることです。私は、ヴォイストレーニングとは、声を出すことでなく、声の出る状態を取り戻し、その条件を確実につくることであると思います。トレーニングの終わったあとに、声がよく出るようになるくらいが好ましいのです。

喉が痛くなったり、声が出にくくなるトレーニングは困りものです。必ずしも独習が悪いとはいえませんが、おすすめできません。

私の述べる、状態とは、今の体・感覚の中のベターな声の出せるもの、条件(づくり)とは、将来の鍛えられた体、磨かれた感覚で、ベストの声の出せるものです。

 

○体を柔軟にする

 

発声というのは、体全体で行う運動と捉えましょう。歌は、音楽のなかでも、スポーツや舞踊といった肉体をつかう芸術と類似しています。そこで体をつかう分野での考え方がうまくあてはまることが多いのです。そのうち、歌や声と呼吸、体との関係がつかめてくるでしょう。呼吸や発声のトレーニングは、それ自体が目的でなく、むしろ深い息で深い声を確実に扱えるように、結びつきを強化、調整することが目的なのです。

 

○体を鍛えることとスポーツ経験

 

声を出すことや歌うことも体を使うことなので共通する点はあります。体力や集中力、柔軟な体、勝負強さ、あがらない、リラックスができる、リズム感、基本の繰り返しの大切さを知っている、状況に応じた瞬間的な判断ができる、などです。ひとつのことを自分の身につける過程を訓練として体験してきたというなら、それも、有利な条件です。

性格的に明るく、人前に出たがり屋で、体を動かせる点で、スポーツ出身のタレント、ヴォーカリストは少なくありません。楽器はできなくともよいとはいえ、できた方が勉強になります。音楽性、芸術性に関しては、なんともいえません。視野が狭く、レール上を走ろうとする一途さが裏目に出る人もいます。

 

○腹式呼吸の習得は急がないこと

 

簡単にいうと、胸の周りに吸気を入れて、肩や胸が盛り上がると、よくありません。胸式呼吸といわれます。

手をウエストの両わきへあてるのは、チェックのためですから、いつもはやらない方がよいです。そのとき、肩、胸が上がったり、力が入ったりしてはいけません。そうなる人は、胸を心もち、あげておきましょう。お腹の周り全体が外側へふくらむのが感じられますか。

最初はわかりにくいので、上体を前方へ倒したり、座ったり、寝ころんだりして、息と体(お腹)との関係をつかむとよいでしょう。実際の呼吸は、腹式と胸式が組み合わされており、どちらかに切り替えるものではありません。

腹式呼吸だけでは声は出ません。腹式呼吸は出ている声を扱うための方法にすぎません。しかも、腹式呼吸は、誰でもすでに身についているのです。私たちはふだん、あるいは眠っているときに、無意識のうちに腹式呼吸を行っています。ですから、発声に伴って、腹式呼吸が無意識的にできるようになる必要があるということです。意識的にトレーニングするのです。

つまり、腹式呼吸は、それ自体がマスターとか、完成という段階があるのではなく、使うことへ対応できる程度問題なのです。役者や歌手でも必要度はそれぞれに違うのです。付言すると、あがってしまうなどというのも、この腹式呼吸でかなり改善されます。

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