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第21号 「しぜんな声と喉の鍛錬」

○歌は発声で歌うものではない

 

作品としては声にすることばかりを考える必要はないのです。息をマイクが拾っていたらそれでよいからです。声が少しでも息になったら、発音や響きが悪いと、レッスンではそういう見方もしますが、実際はそういうことではないのです。なめらかな発声だけでないところに味も出ます。

 

○自然な声を身につける

 

自分のなかでの判断よりも、他人にどう聞こえるかで判断することです。ただし、しっかりした訓練ができていないと、せりふや歌うなかで、この自然な声を保つのは容易ではありません。

クセがあることがよくない理由は、再現性、応用性、柔軟性に乏しいことです。その人の理想とされるオリジナルの声ではないからです。

人に伝わるのに自然な声というなら、伝えたいときの思いを伴い、それを妨げない声(ベターな声)といえます。

 

〇ヴォーカリーズのレガート

 

アの母音から、口の中のかたちを変えないつもりで、順に「ア→エ→イ→オ→ウ」と、つなげて声を出します。出しやすい高さの音でやりましょう。

顎を手で(親指で強く)押さえ、どの音でも顎が動かないようにすることです。音が移るときに、スムーズに口も響きも変えないように行ないます。「アーァエーェイーィオーォウー」の感じでやりましょう。フレージングで述べたことを参考にしてください。弱点があると、声はよい方でなく、悪い方にそろいやすいので、注意してください。

 

○ハスキーな声にはしない

 

つぶした声の方が感情が伝わりやすいし、声もコントロールしやすいという人もいますが、決して勧められません。つぶした声は、声質が悪く、声量・声域も狭くなり、不自然で細かなコントロールができにくいものです。しかも、長く休めると、もとの細い声に戻ります。つまり、何ら身についているとはいえないのです。

プロには、ハスキーな声の歌手、役者もたくさんいます。私は、声がよくても悪くても鍛えられていて再現性がきけばよいと判断しています。

しかし、ヴォイストレーニングで、そういう鍛え方をするのは稀です。基本を習得し、あとでどこまで応用できるかで試すことです。その応用で許されるレベルに入っていたら、そういう声もありといえます。

声は声そのもので勝負するわけではないのですが、持って生まれたものを充分に生かすことです。自分のやりたいこと、好きなこと、できることは、高いレベルでは、違うということを、知ってください。

 

○喉の使い方

 

喉がすぐに痛むのは、耐性がないか、よい発声ができていないということになります。再現性は上達の前提です。声帯(喉)ではなく、お腹(横隔膜のあるところ)から声を出す感覚で発声することです。

ひずんだ声でこそ、伝わるものもあります。でも、喉の痛さゆえ伝わる気がするというのでは甘えにすぎません。痛みや異常は、発声への警告なのです。

声の使い方がよいとは、楽器(体)の機能の生かし方から問われるべきでしょう。喉という楽器もその原理にそって、使わなくては声もよくなっていかないと考えるべきでしょう。喉を無理に鳴らそうとしている人をよくみかけます。しかし、声量は息と、共鳴のさせ方で変わってくるもので、喉をいかに強く鳴らすことができるかではないのです。

 

〇喉を鍛える

 

喉を鍛えると、ハードなやり方で得られる人もいますが、無理な人もいます。ケースバイケースです。喉が弱くても、自分の喉と声としての使い方をしっかりと知っていれば、大丈夫です。他人と自分とは違うのですから、自分に合った方法をとることです。ただ、トレーニングで結果的に喉は鍛えられていくのは、確かです。

1.喉の強さ

2.喉の使い方

3.喉の限界と危険の避け方がわかる

この3つがタフな喉をつくるのではないでしょうか。

 

○細くて弱々しい声を強くする

 

弱点が強みに変わることもあります。

もともと声の小さい人は、無理に大きくするよりも大切なことがあります。細くてもよく通り、張りのある声であれば、充分に通用します。もちろん、あまり声を出してこなかった人は、目一杯チャレンジしてみてください。

いくら太い声で声量があっても、無理して出しているうちは使えません。

大きな声の人は、ますます大きくしようと、雑なままやり続けます。それでは、使いようによっては、表現を損ねます。やるだけやってみて、大きく変わることも、あまり変わらないこともあるので、やってから考えてもよいでしょう。それも自分の声の個性を知ることになります。

 

外国人トレーナーの日本人への基準

 

日本人でも器用なヴォーカルやトレーナーなどは、海外のトレーナーに比較的、安易にそのまま認められるといわれます。(ほとんど友好的観点からです。向こうの大物アーティストが日本だけでCMに出すように、日本人など大して考えてもいないともいえます。何よりも、のど(声帯ほか)やその使い方に恵まれていない人が、学べるものにはならないことが、問題なのです。

 

声については、すぐれた人がすぐれた人(のどについては)に教えられるように、そうでない人に教えられないのです。それが、もっとも大きな問題なのに、無視されています。日本のトレーナーは、そこを自覚すべきでしょう。

プロの人が、トレーナーのもとにいかない理由をよく聞かれます。自分よりも下手な人を自分並みにも育てられていないからです。トレーナーに、本人のレベル以上に何人を育てたかの実績を答えられる人は、どのくらいいるでしょうか。

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