第22号 「声を矯正するには」
○固くてツヤがない声をやわらかくする
声量のある人は、マイクの距離と、音響のヴォリュームで調節し、声の質を確認してみてください。マイクが遠いと、固く聞こえます。
声帯を合わせ、声の響きをコントロールする訓練として、ハミングは、よく用いられるようです。長時間続けても、喉を痛める危険が少ないので、調子の悪いときの調整にもよく使います。小さく、鼻のつけ根に響きがくるようにしてみてください。なめらかに、一音一音をつなげていくこと、口は最初は閉じて、次に少し開いて行なうとよいでしょう。ハミングは人によっては難しいので、できない人は無理にやらなくてもよいでしょう。ナ行、マ行の音を使いましょう。
<声を柔らかくする>次の音で練習しましょう。
・ンガンゲンギンゴング
・マメミモメモマモ
・ンマンメンミンモンム
ハミングのトレーニング
○低い声を出せるようにする
低い声というのは、高い声に比べて、その人の声帯から体型など、個人的な資質が、より関係してきます。ヴァイオリンでは、チェロの低く太い音は出せませんが、人間の場合、簡単に言い切れません。
低い声が出したくても、それほど必要がなかったり、人に不快を与えるのであれば、使わないことです。聞いている人にとっては、大して関係ないからです。
他の声域でやる方が伝えられるならば、そちらを選ぶべきと私は考えます。そういうことも総合的に判断しなくてはいけません。音響効果も使えます。あなたの生まれもっての楽器としての限界もあります。高い声にシフトして歌いすぎていると、低い声は出にくくなります。
大体の場合、高音域ばかりで練習していると、低音域で出にくくなり、低音域ばかりでは高音域は出にくくなります。それを知った上で高音域で無理して、声の状態を悪くする人が多いので、一時期、低音域でトレーニングするのはよい方法です。
○鼻声を直す
鼻にかかりことばがはっきりしない。声を若々しく、鼻に響きすぎる声を落ち着いた声にしたい。すぐに鼻にかかってしまうなどの場合、鼻に抜けないように、一時、胸中心に意識してみてください。
○体からの声を出す
個々の音(発音)にとらわれず、体から一つのことばを一まとまりとして捉えて、発声をトレーニングすることです。役者のように、体からことばを一つにして言い切るのが基本ということを忘れないでください。
早口ことばのような滑舌練習も、それをふまえた上でなければ効果はありません。深く響きのある声を出すことの方に重点を置いてトレーニングを行ってください。
私は、発声の理にかなった発音を、発音そのものの正確さより優先しています。発音がいい加減であってよいのではなく、今の課題を片付けて、あとで一本化するのです。
トレーニングは部分的な問題を集中して解決するのですから、全体のバランスがくずれるものです。元に戻し調整しなくてはなりません。
○ことばが聞こえにくい声を直す
明瞭な発音には、唇、あご、舌、喉(声帯)などが、スムーズに連動していなければなりません。発音より発声、発声より音の流れを優先することです。
その中でギリギリ、ことばをのせていくか、最初からことばで言い切って、それを音の流れでつないでいきましょう。
口を開けすぎ、動かしすぎて、唇やあごの運動にエネルギーを多く使うと、ことばにするときに喉、舌の運動にエネルギーや気持ちがまわりません。
歌においては、すべてのことばをはっきりと発音しようとしすぎると、口がパクパク、音程をとってメロディにつなぐだけで精一杯となります。そのため、ことばの持ち味や音色、イントネーション、リズム(グルーヴ)を生かせなくなることが多いようです。本来、音は点でなく線でとり、動かすのです。
日本語を音楽に使えるようにしていくには、イタリア語あたりの発声から始めるのもよいと思います。私は原則として、発声を発音に優先する立場をとっています。
○キンキン声、金切り声を直す
自分の声を一方的に高めだと思い込んで喉をしめて出していることがほとんどの原因です。
息も浅く胸式に近い呼吸です。あごが上がっていませんか。まずは、ことばをしっかりと深く話すことから始めましょう。
低い声の「ハイ」で胸の響きを感じましょう。
○喉声、かすれ声を直す
かすれている声、息もれする声は、高音に届きにくく、共鳴に欠けます。鼻に抜けて、かぜ気味の声のような人もいます。これは、息がうまく声にならないため、無理に喉に力を入れて押し出すからです。息を浅く短く吐き、声を出すのに不自然につくっているのです。裏声にも切り替えにくく、つまってきます。発音は不明瞭で、柔軟性に欠けます。
トレーニングの初期にもよく見られることです。急にたくさんの声を長時間、使いすぎるからです。響きの焦点が合わず、声が広がってしまいます。声立てが雑で、ぶつけて力で出す人に多くみられます。あごや喉が固く、よくない状態での発声です。
○小さく細い声を直す
蚊の泣くような、小さく細い声は、外見的には、あごや首、体格などが弱々しい人、または、内向的な性格からきていることも多いようです。これまで大きな声をあまり使わなかったのでしょう。その状態では、マイクの使い方でカバーするしかありませんが、根本的に変えたいものです。体力、集中力づくり、体の柔軟から始めましょう。スポーツやダンスなどに励みましょう。なるべく前方に声を放ってやることを意識しましょう。声を出す機会を多くとってください。
○低く太い声を直す
特に太い声でしっかりと響いている人は、有能です。一流のヴォーカリストは、高い声だけではなく、太い魅力的な音色をもちます。しっかりとその声を前に出すようにしてください。
声が低いとか声域がないから歌えないということはありません。どのフレーズでも伝わらないから歌えないということです。高い声の声域も目指してください。
〇レッスンに集中する
レッスン時間が、カウンセリングやレッスン生が話したり、トレーナーが語ったりすることだけになっていませんか。ことばのやりとりが少ないレッスンが求められるべきです。
私の所では、質問はメールで済ませ、レッスンの疑問は、メニュで答えるようにしています。それでも疑問が残るときは、何回聞いてもよいし、私か他のトレーナーにも聞くことがあります。
トレーナーの言語能力がないこともあるし、当然わからないこともあるでしょう。何でも質問してくる人に対して、あまりことばで説明しないほうがよいと考えるのです。
答えないのも、一つの答えです。答えてわかるようなことは答えなくともわかるし、それがわからない人には答えてもわからない世界があるのです。
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