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第23号 「トレーニングの質を高める」

○体調の悪いときのトレーニング

 

疲れているときには、喉に負担をかけるハードなトレーニングはよくありません。喉の状態をよくするためにヴォイストレーニングをするのに留めます。時には喉を充分に休ませることが大切です。体と息のトレーニングを中心にしましょう。

こういうときは、トレーニングそのものよりも、それによって息、呼吸、体をよい状態にすることがプラスになると思いましょう。トレーニングは、明日のためにするのです。

 

○発声練習はいい声で

 

発声練習は、よい声にして、うまく歌えるようにすることでやるのですが、使い方を間違ってはいけません。そもそも発声練習は楽しいですか。

楽しくないとよくないとはいいませんが、テンションが落ちたり、他のことを考えて集中できないようなら、やっても悪い結果にしかなりません。

私は、歌やせりふのフレーズで声をみることが多いです。それは次のように考えるからです。

1.プロでも、発声練習には不慣れで、歌やせりふでの方が声もうまく使えていることが多い。

2.歌やせりふに、発声練習は不可欠ではない。発声練習をしないのに、プロになっているのがその証拠です。

3.発声練習が、歌よりも難しいように使われているなら、根本に戻り、シンプルにする必要がある。

 

フレーズでのトレーニング

 

たとえば、高いところを歌うのに「とわのこころに」というのを、「とわ」に比べて「こころ」がうまく声が出せていないときに、母音で「おおお」としたり「とわのとわのに」にしてみます。「こころ」というひっかかり(本人のネック)をやさしいメニュに置き換えて、少しずつ解決していくのです。

出せないことまでやって、悪いくせをつけるくらいなら、心地よく歌っている方がよほどよいのです。歌での調整でできるところは、短いフレーズのくり返し練習です。少しずつ音や長さ、動かし方を変えて行なえばよいのです。

歌よりもずっと難しい声域声量で発声練習をするのは、おかしなことです。自分のものがまとまってしまい、その器を破るときに限ります。

「歌いたいのであって、発声をしたいのではない」というのが、正常の感覚です。歌で発声練習をやり、うまくいかないところだけ重点的に補強トレーニングをするとよいのです。

 

○ことばを大切にする

 

音楽で伝えるのに、本来ことばは必要ありません。ことばがなくても、ピアノやトランペットは音で伝えることはできます。そういう言い方をしたらそうなるということですが、多くの歌手は、ことばを大切に伝えています。歌は、声と言葉があるから楽器に勝るところもあります。

発声で母音で歌うより、ことばをつけさせます。その実感(音色やニュアンス)の方が発声に優先すると思うからです。ただし、音楽上の成り立ち(表現力)をみるには、外国語にしたり、もっとも発声に難のないことばを選び、つながりをみます。

歌を自分のものにするには、自分のものを、その歌に叩き入れて動かすようにしていってください。流れの中で正されるように(楽譜に合わせるのでなく)心地よく、のりのよい線をイメージして声で奏でるのです。

 

○英語は発音より発声から

 

日本人の英語の発音は総じてよくなりました。しかし、発声の息とリズム(強弱)がよくないのです。口先で英語を器用に発音しているだけです。英語らしい雰囲気で聴かせているだけといってもよいでしょう。声は前に飛ばないし、強い息にのっていない。歌も声の芯や深い息がないので、私は、その一声で話したり、歌っているのが日本人とわかります。

英語は、強い息を発し、舌、歯、唇で生じさせる子音を中心とする言語です。日本語にないパワー、勢いといったものがそこからつきます。それが自然な深い声や音色につながるのです。その根本的な部分まで、耳と声で捉えている人はどれだけいるのでしょうか。

音楽面のみならず、自然な発声と呼吸を身につけた体があってはじめて、外国人のヴォーカリストと対等に渡り合える実力につながるのです。ですから、体からの深い息をなるべく深い声にするトレーニングを続けることです。

あまりに広汎に使われ、なまりも許されている英語では、日本語なまりであっても充分だと思います。その他の国のことばは、現地の人に聞かせるなら、それを母国語としている人と同じレベルの発音に使いこなすくらいに、使い込んでいかなくてはいけません。

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