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第28号 「ヴォイストレーナーの仕事と資格」

〇ヴォイトレの資格

 

私の元にはときおり、こういうトレーニングも資格をつくったらよいのではという話がきます。また、当研究所の看板や推薦を地方などでもあげたいという方もいます。今のところTV出演とともに私がお断りしていることが、この二つのことです。

資格というのは、何かをやるための必要条件です。何かが明確でないとつくれません。多くの民間資格は、それを管轄するビジネスのためにあるようで、権威もなく、商売にもならないものが多いようです。医者などには資格がなくては恐いでしょう。絶対に必要というものもあります。しかし、ヴォイストレーナーは、そんなことで分けられようもありません。

 

〇音楽療法について

 

音楽療法は、今ではポピュラーになりました。資格というお墨付きに頼られなければやっていけないところで、資格認定が普及におおいに貢献しているのも確かでしょう。思えば、当研究所の顧問であった、芸大名誉教授の桜林先生(当初、日本ヴォイス研究所)には、学生時代からお世話になりました。日本の音楽療法の礎でした。

ヴォイストレーニングは医学と切り離せないからです。今のヴォイストレーニングはどうでしょう。とても私にはまとめようはありません。つまり、まとめようもないということは、分けようもないということです。

 

〇ヴォイトレの統一はできない

 

今、ヴォイストレーナーを名乗る人には、大きく分けて、医者(耳鼻咽喉科)、声楽家、役者、ここのところ、ポップスヴォーカルの指導者に多くなってきました。そのため、ヴォイストレーナーということばは、何となく歌手指導、ヴォイストレーナーは、役者や声楽家指導に主に使われていました。

たとえば、役者と、声楽家のヴォイストレーナーのやり方は、明らかに矛盾します。内容も違うし、優先度も違う、目的が違うからです。役者と歌手は、やることが違うのですから、トレーニングが違うのは、あたりまえです。 私のブレスヴォイストレーニングは、共に使えることで行なっています。

 

○ヴォイストレーナーとしての私の仕事

 

私のトレーナーとしての仕事を平均的な一ヵ月でご紹介しましょう。

まず、私の主宰する研究所でのレッスン、

1.週24回(他のトレーナー10数名とともにやっています)

2.月に3回のレクチャー

3.専門学校などのトレーナー研修

4.日本語教師の養成学校、声優養成学校など、他校の仕事

5.劇団のワークショップ、お笑い芸人、落語家や弟子の指導

6.音楽プロダクションのプロ養成、ミュージカル劇団のプロのレッスン、ヒップホップ、ラテン、なんでもあり

7.大学やカルチャーセンターの特別講義

8.音大受験生のレッスン

9.ヴォーカリストへのアドバイス

10.オーディションの指導、デモテープ作り

11.プロダクション契約

 

それとは別に、

1.研究所内のトレーナーの育成(報告の処理、研究生のレッスンの状況を把握)

(私のところは採用時点で、どこか私よりも優秀なプロにしています。)

2. 研究所内研究生のレポート、ステージアドバイス

3.研究所内のレッスンのリライト

4.会報、ブログ、メルマガジンのチェック(このあたりは、スタッフに任せています)

5.科学、医学などの研究、共同研究、研究生や日本人の声の分析など。海外への声のサンプリング、学校見学や現地の関係者に会います。

6.研究論文と本の執筆、教材づくり

7.企業研修やブレーン、顧問契約

8.マスコミなどの取材を受けます。

9DVDCD、教材、専門書、専門論文の収集と整理(海外本の翻訳、解釈)

10.声のデータベースづくり

 

〇日本ヴォイス研究所

 

私の場合は、もともと大手プロダクションにプロの養成を頼まれたところからスタートしているので、しかも音大にお世話になりつつ、音大出ではないので、異色かもしれません。日本ではヴォイストレーナーの草分けの大木先生と、日本音響技術専門学校に日本ヴォイス研究所をつくりました。芸大名誉教授の桜林先生が顧問で、私の弱点の医学的アプローチと、当時まだ、あまり知られていなかった音楽療法を中心にご教示いただきました。

専門学校への出講、プロダクションのヴォーカル育成中心にやっていましたが、思うところあり、専属契約を打ち切り、アマチュアの養成所としてヴォイス塾をたち上げました。15年やったところで、一部を除きクローズし、ふたたびプロの育成、トレーナーのアドバイス中心に動いているところです。

 

〇ポップスでのプロ志願者

 

ポップスでプロをめざす人は、トレーナーになるのでないのですから、少なくてもトレーナーを超える力を、そのトレーナーよりも少しでも早く身につけることに、教えるということの成果が問われます。

自分の経験だけが中心の人や、理論的に詳しい人もいますが、間違った解釈、仮説に偏り、検証に欠けていることも少なくありません。海外に学びにいった経験だけで、やっている人もいます。

日本のポピュラーにおいては、歌い手は役者などよりも、日常の声がよくないし、鍛えられていない(素人声)のことも多いのです。それではプロもくるここでのトレーナーは務まりません。10年以上、基礎訓練をやってきた人や、現役のプロをも指導できる力が必要なのです。

 

〇トレーナーは、研究員★

 

ここは研究所なので、トレーナーも研究員です。多くのプロや一般の生徒の経験を積ませ、音大での指導を超えた経験を積んでいます。ここのトレーナーは、ここで実際にそういう人を教えてきた経験が豊富にあります。

ここでは、複数でプロから一般の人までみており、わからないことや違うことは他のトレーナーで補完やフォローができます。

分担して担当するので、年間に多くの人に接することになり、どこよりも経験を早く積むことができます。しかも、プロも含めて熱心な人や、かなり分野の違う専門家もいらっしゃるので、学ぶことに事欠きません。

 

〇トレーナーの実力の育成

 

マンツーマンでも、セカンドオピニオン、サードオピニオンをもてるため、一人のトレーナーが気づかぬことや、そこで偏ってしまうことを是正することも早く正しくできます。加えて、トレーナーの過去からのトレーニングや他のトレーナーのトレーニングも、知ることができます。ここの会報やホームページは専門の書物よりも、あなたにとって具体的かつ実践的なヒントとなるでしょう。

ずっとこういうトレーナーとともに、私は研究を進めています。声の生理学、音響学なども学者などと共同研究しています。

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