第29号 「トレーナーと仕事」
○一般的なヴォイストレーナーの仕事(専門)
ヴォイトレも日本中にたくさんのスクールや講座ができました。私は、いくつかの発足を手伝い、顧問もしてきました。あまりに安易で、やや平易するところもありましたが、お役に立てたらと思い残していると、日本の学校や教育というのを考えるよい機会となりました。
私の場合、ヴォイストレーニングを中心に生きているのではないし、自らもヴォイストレーナーと思っていないのですが、まわりにその役割を期待されて演じさせられているのが、現実です。
決して、多くのヴォイストレーナーの代表でも、彼らより優秀で、ここに述べているのではありません。むしろ、そうでないからこそ、このように早くから、多くの分野の方々の力を借りてやれてきたのだと思っています。(トレーナーは一人だけでやっている人が多いので、多くのトレーナーと学べていることは大変に有意義です。)
〇トレーナーに値する
私が現在、名実ともに、ヴォイストレーナーの名に値すると思うのは、日本ではほんの一握りの声楽家しかいません。ただ彼らは、良心的すぎて、ここに記すような本音は言えないから、私が述べるのです。
ヴォイストレーナーの多くは、ヴォーカル活動を副業でやっています。
私は、多くのトレーナーを雇ってきましたから、トレーナーよりもトレーナーのことを述べるにはふさわしいとご理解いただければと存じます。
誰がどういう立場で語るか、このことは何よりも、重要なことなのです。
〇トレーナーの出身
これまで、出会ってきたトレーナーについての出身や活動をみましょう。
1.音大を出ている(声楽家)
2.ポピュラーのスクール出身
3.ポピュラー歌手としての実績をもつ
4.作曲家である
5.役者である
6.演出家である
7. プレイヤーである
8.プロデューサーである
9.海外のトレーナーについた
10.外国人のトレーナーである
○トレーナーについて判断すること
私がトレーナーの採用や研修を通して知ったことを、レッスンの受け手のためのメリット・デメリットから述べてみたいと思います。こういう人が教えると、どこがすぐれ、どこが足らないかということです。
その人が誰と接してきたのか、今、接しているのか、どれだけ効果を出しているかを知りましょう。
トレーナーは、本人が声がよいとか歌がうまく歌えるのではなく、人を育ててなんぼです。そこをわかっていない人がたくさんいます。
〇あこがれの人につく
ヴォーカリストや役者としてすぐれていることと、トレーナーとは違います。もし、すぐれているなら、その人の作品がどうなのか、どのくらい売れたのかをしっかりとみてください。そして、あこがれ第一と考えるなら、自分の進みたい分野の第一人者に直接、つきましょう。トレーナーとしてよいかどうかは別として、多くを得られるチャンスには違いありません。
しかし、ヴォーカリストとして成功し、活動のできている人は、普通、自分の創作活動に忙しく、また、のどの管理などに人一倍気を使うため、とても生徒を引き受ける余裕はないものです。
〇トレーナーの声で判断する
ヴォーカリスト、役者としての実力の判断と、トレーナーとしての評価は別です。歌唱力、演技力は表現だからです。
相手が初心者だから通じるくらいの大声や高音を出しても、自慢になりません。その声から何が伝わってくるかということ、そこまでの人生で、何をその声でやってきたかということの方が大切です。
スクールなら、発表会があれば、行ってみるとよいでしょう。生徒の実力もわかります。
その上で、初心者向き、趣味向き、プロ向き、いろんなレベルに対応しているトレーナーがみつかるでしょう。
トレーナーの言っていることは、そのままうのみにしないことです。「プロにする」「デビューさせる」「CDを出させる」「誰よりも上達する」こういうところは避けた方が無難です。タレント性やルックスで勝負しているヴォーカルを出していても、それは、ヴォイストレーナーが育てたとはいえません。
〇声を育てているのか
この分野は、実力世界で素質第一です。しかし、タイミングも時代も大きく関わる分野において、絶対ということはありません。まして、生来の差や育った環境に、大きく左右される声において、確約は無理でしょう。
仮に10年に2、3人しかとらず、皆を大ヒットさせたヴォーカリストに育てたという人がいたら、別ですが、日本のヴォイストレーナーでは知りません。海外でもヒットした人をみている例は多いのですが、一から育てた人というような人は、あまりいないものです。他の分野と違って、それはトレーナーの才能とは異にします。☆
〇マニアックなトレーナー
歌ではそれなりにうまいと思うトレーナーも、私はたくさんみてきました。
1.元よりすぐれていた人
2.人を育てていない人
3.プロとやっていない人
こういう人は、素人受けをするのですが、あまり人は育ちません。自らのコネクションさえないので、先はみえません。なかには、やたらと声にマニアックに偏向しています。トレーナーというよりも、我流の研究者、他人の声ではなく、自分の声が趣味の人ともいえます。自分のステージの客として生徒を扱う人も少なくありません。
一人のトレーナーだけにつくと弊害もいろいろとあります。
1.世の中で勝負したことのない人
2.ステージ経験のない人
3.歌ったことのない人
特に一つのトレーニング方法にはまっていきます。そこから抜けられなくなりやすいので、気をつけましょう。
〇トレーナーとの関係性
自分のトレーナーとうまくやれている人はきません。ということは、トレーナーか本人とトレーナーとの関係に問題があるのです。
声について、もっとレベルアップしたいということで来られることも多いようです。ヴォイストレーニングの問題としても、どの目的で、何を優先してやるかということは、難しいことです。
いろんなところで受け、地元でやっているのとも、比べています。高いレベルを目指す人や、教える体制がないところなら、1ヶ月に2回くらいでもここを選んだ方がいいこともあります。
〇最高目的のためのチーム
試してみないとわからないこともあります。実際に、ここでもどのトレーナーに見てもらえばいいのか、曜日や時間帯で決まってしまうこともあります。
どんな体制を組めばいいのかというのを基に考えます。私の場合は、ここの最高目的に対して、自分だけではとても足らないので、研究所をつくりました。
最初は、プロのプロダクションとやっていたのです。有名な人とずいぶんやりましたが、そこだけでは本当に育たないとみて、このように組織化して、一般の人から始めたのです。
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