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第30号 「トレーナーの条件とは」

〇信じるに足りる声

 

この国には、トレーナーとして大した人材というのは、まだあまりいないかもしれません。私も十代のときに、全国の先生を探し回りました。その結果、クラシックの大家と海外のトレーナーに頼るしかなかったのです。

今もそう変わりないと思います。より複雑になってきたのと、やっている人の人数が増えただけです。

一生、信じるに足りる声、それを導くトレーナーとは、そう簡単にめぐりあえません。第一に、あまり教わろうと思わない方がよいでしょう。その人自身でなく、その人の育てた人の声をみてください。

 

〇トレーナーの声

 

だいたい20歳前後のときというのは、何もわからないままやれるというのが、可能性です。今の日本人の場合は、芸事の形の基本や経験がありませんから続けるのも難しいようです。

日本教育の中では、他の国に比べて、音声表現に対する耳、発声器官のコントロール能力がありません。そこから始めるべきなのに、多くの場合、素通りです。ですから、うわべは上達しても、不毛です。声の根本の条件はほとんど変わりません。

第一に多くの場合、音を聞き分ける耳を持っていません。トレーナーの声を聞いてください。その声に惹かれますか。その声がよければ、ましな方です。大半は、その声も普通の人と変わらないのではないでしょうか。

日本人の音声に対しての意識がいかに低いかということがわかります。欧米のすぐれたトレーナーの声を機会があれば聞いてもらいたいと思っています。トレーナーの声には、惚れ惚れするものです。

 

○一つの方法を盲信しないこと

 

こういう世界は独学がベースです。どんな先生についても、24時間一緒にいるのではありません。信じる分、効果は出ます。だから、相手を信じ切った方がよいともいえます。選んだら信じることです。それは、選んだ自分自身を信じられるかということなのです。

私は、一方的に信じてくる人は、どちらかというと敬遠します。信じるということは、効果を出すための条件ですが、責任を相手に任せているだけの依存症に陥らせることも多いからです☆。

創造や表現が目的ですから、これはよくありません。

 

〇トレーナーを次々と変える人

 

なかには、次々にトレーナーを変えている人もいます。

安易に信じる人ほど、安易に裏切るのは、どの社会でも同じです。よい先生をみつけたといって辞めては、また23年たてば、戻ってくる人もいます。ここにもたくさんの方が、他のスクールやトレーナーの元から来ました。

大体、自分自身で選んだところを辞めるのに、愚痴を言ってくるような人は、また同じことをくり返すだけなのです。他のトレーナーの肩をもつ気はありませんが、そういうトレーナーを選んだ人のなかには、「勘がよい」とか、「びっしりと鍛えられてきた」と思わせる人はほとんどいません。せっかくトレーナーについたのに、不平不満ばかりで肝心のトレーニングがたるんだのではないでしょうか。日本では安心させるのがいいトレーナーみたいに思われているから尚さらですが。

 

〇将来からみる

 

私は、その人をみるときには前歴や性格でなく、将来の舞台の可能性、テンション、才能と作品でみます。その人が社会人としてどうであっても、まずはステージでの作品が素晴らしければよいとも思っています。

創造力や発声は信じられるというところでみています。若くしてその才能や素質があれば、そこを伸ばせばよいと思います。

それを一緒にしてしまうから、トレーニングもおかしくなってしまいます。「よい人だから」「まじめだから」「一所懸命やっているから」、そんなことだけでやれてしまうほど、甘い世界ではないのです。

 

〇過去の体制★

 

ヴォイストレーニングの講座というのを、私もかなりのスクールやプロダクションを手伝ってから立ち上げました。ヴォイストレーナーやヴォーカルスクールはたくさんでてきました。ただ、そういうところでは大体12ヶ月で辞める人が大半です。

ここは、設立当初は敷居が高く、ほぼ全日制、毎日来て56時間以上、レッスンが受けられました。多分、今その体制をとっても、対応できる人はかなり少ないでしょう。世の中が変って、今一生懸命なのは、お笑いの方や声優、役者さんです。ここにくる人も、徐々に移ってきています。

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