« No.328 | トップページ | 第38号 「海外とワークショップと観客について」 »

第37号 「スクールのトレーナー」

○楽器プレイヤー出身のトレーナー

 

 

 

ピアニストやバイオリニストなら、技術の向上がそのまま目的の達成になるでしょう。プロになるのに、音が自由に出せること、演奏技術がすぐれていることが必要条件です。それだけで充分ではありません。自分の演奏ができなくてはいけないのです。

 

プレイヤーの場合、こうしてプロレベルに近づいていくということは、明白です。だから、プレイヤーなら誰でも、楽器を技術として教えられるということにもなります。また、楽器は個体差はありますが、材料と加工技術で合格品は決まります。ですから、完成品である楽器があれば

 

1.教えること

 

2.教えるレベルとプロセス

 

3.身につけるべき技術

 

これらが決まっていると、プロになれるかどうかは約束できなくとも、教えることで相手が上達することを保証できます。きちんと評価される土俵があるからです。それゆえ、プレイヤーとして、そこからプロになるにはとても厳しくなります。それを厳しいととるか、楽しいととるかはその人しだいです。

 

これに比べると、歌や声では、とてもあいまいです。楽器が、もって生まれた声帯であるから、完成などないし、個性差が出てきます。

 

 

 

〇音楽スクールとヴォイトレ

 

 

 

次のような出身のトレーナーがいますが、ここでは詳細は省きます。(参考『声優・俳優トレーニング入門』)

 

・声優出身のトレーナー 発音、セリフ中心

 

・舞台俳優出身のトレーナー せりふ、表現中心、身体しぐさとの一致

 

・アナウンサー、ナレーター出身のトレーナー 発音、アクセント、イントネーション中心

 

・音声医のトレーナー、言語聴覚士 正常な発声と発音の矯正とケア

 

 

 

○スクールについて

 

 

 

音楽スクールは、多くの場合、ギターやピアノを中心に開設されてきました。ピアノやギターは、楽器を手にもった日がスタートであり、受講生は明確にレベルの差に応じて分けられます。マニュアルや教本もあるので、一から十までそれに添って教わることができます。プロである演奏者=指導者の技術を真似ていけば、ほぼ間違いなくある程度までは上達できるのです。

 

それに対し、ヴォーカルというパートは、まず、楽器である体が、ほとんどヴォーカリストとして必要とされるだけの声を出すことに対応できていません。まして、ヴォーカリストのレベルをどのように判断して捉えるかは、難しいことです。ややもすると、基本がまったくなくても器用に歌い慣れているだけの人を上級にすることも少なくありません。

 

そこで、誰がどのように教えるかというトレーナー選びの問題は、困難を極めています。多くのスクールは、音大卒業生やプロのヴォーカリストを招いています。そのときにヴォーカルの特殊性からくる問題には、気づかないままです。

 

あるスクールでは、「○○というヴォーカルはよいけど○○はだめ」などと、歌手の評価と混同をしていました。トレーナーの評価基準が、そのトレーナーの好きな音楽、歌、歌手に左右されてしまいがちなのです。やってきたものの方が教えやすい。というより、やったものしか教えられないからです。おのずと、歌謡教室になるのです。(私は常に半分は新しいものに材料をとります)。業界のプロデューサーの関わるところ、代表者がプロデューサーのスクールにも多いパターンです。

 

 

 

○ヴォイストレーニング教室について

 

 

 

今、ヴォイストレーニングの教室がたくさんあります。プロデビューを掲げているところもあります。「デビューさせます」という売り文句で採るのは、おかしなことです。デビューできる人には、プロデュースする側が、お金を出してデビューさせるものです。オーディションも同じでしょう。

 

とはいえ、利用できるのであれば、何でも利用すればよいのです。無料体験レッスンや見学もやっているので、行ってみるとよいでしょう。音楽スクールビジネス業界というものがわかるでしょう。

 

そこにいる先生も、その仕事で生活しているなら、プロといえるのです。生徒のレベルによって、先生の才能がうまく使えていないことも少なくありません。どこでもあなたしだいで、大いに得られるものもあるのです。あなたに能力があれば、どこでも吸収できるものはたくさんあります。安くて近くて多くの時間が受けられるのがよいというケースもあります。

 

 

 

○外国人のトレーナーについて

 

 

 

欧米には優れたトレーナーがいます。しかし日本人がそれについていけるかということになると、別です。コミュニケーション重点がおかれ、きちんとしたレッスンが成り立っていないのが、ほとんどの現状です。私も、これまで何人かのすぐれた外国人にトレーニングを受け、海外の、日本人の通っている学校も見てきました。研究所でもトレーナーとして何人かの外国人も使ってきました。

 

確かに個人として能力はあります。声もよいし、歌もうまいし、教える能力もあります。

 

しかし、自立していない日本人には彼らを使い切るために、多くの問題がそれ以前にあるのです。何かうまく歌える人といたら、うまくなりそうという雰囲気に甘んじてしまうことが多いのです。すでにプロの人や十代の人には、一つの経験としてよいかもしれません。

 

日本教育では、他の国に比べて、音声表現に対する耳、発声器官のコントロール能力がついていかないのです。そこを見ずに始めると、多くの場合、うわべは上達したようにみえても、不毛です。彼らのすぐれた才能も本当には生かせません。

 

 

« No.328 | トップページ | 第38号 「海外とワークショップと観客について」 »

1.ヴォイストレーナーの選び方」カテゴリの記事

ブレスヴォイストレーニング研究所ホームページ

ブレスヴォイストレーニング研究所 レッスン受講資料請求

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

発声と音声表現のQ&A

ヴォイトレレッスンの日々

2.ヴォイトレの論点