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第38号 「海外とワークショップと観客について」

 

○海外の音楽スクールについて

 

 

 

日本では、「バークレー中退」などというのが肩書きに使われているそうです。卒業していないのは、肩書きではないのです。海外では入るのは誰でもお金で入れるからです。出るのが難しいのです。「早稲田中退」などというのが、日本で肩書きとなるのは、日本では難しいのは入試で、卒業は簡単だからです。

 

向こうの人はフレンドリーです。音楽に対して自分たちのトレーニングには厳しくても、日本人には本場にきたことで歓待してくれるからです。私たちが、外国人の来日をもてなすのと同じです。本来、差別を受けるくらいではじめて対等といえるのですが。とにかく現地では、ほとんど脱落するか日本人村にいます。

 

声を聞けばわかります。ダンスや楽器ほどの上達の効果やレベルには到底、及びません。

 

日本人の弱点である海外の権威を掲げたい人は、他の分野と同じで、あとを絶ちません。今だ、日本独自の歌を世界に打ち出せずにいる遠因です。私も世界中の海外や現地スクールにはよく行きました。これについては、いつかまとめます。

 

 

 

〇紹介

 

 

 

「すぐに紹介してください」と請われるのは、困りものです。紹介という意味をわからない人を、どうして紹介できるのでしょう。留学では、音楽に限らず、けっこう問題を起こしている人が多いのです。

 

音楽留学の実体は、体験レッスンにすぎないことがほとんどです。どこのスクールでも、日本人には上客としてVIP対応してくれます。それは、ビジネスだからです。

 

 

 

○ワークショップについて

 

 

 

だいたいのワークショップの場合は、“自分で声が出ない状態を作っている”のを解放していくのです。それが、ヴォイストレーニングの名で行われています。トレーナーが、楽しくリラクスしてやろうとセッティングして、みんなでワイワイやるうちに、気持ちが解放されていく。楽しいから声が出る、うまく声が出た実感が得られる。これを目的にしているのです。

 

主として、声楽家か劇団の人が一般向けにやっています。それは、ファンを広め、ガイダンスとしての役割になっています。

 

 

 

〇ワークショップの効用と限界

 

 

 

心身の解放だけで本舞台に通用するはずはないのです。わずかな時間で、参加した人の満足度で問われるから、そこでのサービス、効果体験の実感させなくてはなりません。それが、トレーナーの評価となります。

 

体も気持ちも解放されている方がよいのは、確かです。調整トレーニングがノウハウのようになるのは、一般の人はよい状態を自分一人ではとり出せないからです。

 

しかし、調整トレーニングというのは、調整できた状態になれば通用するという力のある人たちにしか、本当は通用しないのです。そのことをわかっていないところで、プロが一般の人にセッティングしているのが、ほとんどのワークショップです。

 

トレーナーには、自分の歌や発声ではできても、そのプロセスの把握ができず、素人も自分と同じやり方でやればすぐできると思う人も少なくないようです。こればかりは、いろんなタイプの人を長期でみた経験がなくてはわからないことかもしれません。一人でできた人ほど、自分のプロセスの把握ができていない人が多いのです。

 

 

 

○客に合わせることで失うもの

 

 

 

歌というのは、それだけで完結された作品です。レベルが高ければ、それに対してお客さんは感動するし、評価します。エンターテイナーとしての実力は、かつては音声での表現力を中心としました。音声で完結されたものは、一方的に発信されてから後に価値を生ずるものです。

 

プロデューサーは、「インターラクティブだよ、お客さんを盛り上げてこそ、いいステージができる」といいます。一体感も共感も大切ですが、それはステージから動かしていくものです。

 

お客さんによってとなると、そうでないお客にはどうする、ということにもなります。

 

客にあわせたステージになっていくから、日本では、誰もが分野別の肩書きのついた歌手になるのでしょうか。シャンソン歌手とか演歌歌手とか...。よく、「自分の声はどの分野に向いているか」などと聞かれます。

 

 

 

〇声が出なくなる歌手

 

 

 

日本の場合は、お客の感覚の方が最大に優先されているかのようです。歌手は年齢と共に声を使わなくなってきます。20代くらいでハードに歌ってきた人でも、3040代で声が出なくなる、それは使わないからです。ステージの要求としてそうでないもので感動させたり、聞かせるようになってきます。だからこそ、目一杯のヴォイストレーニングをやる必要がどの国よりもあるのです。ヴォイトレの立場としてはややこしいところです。

 

こういう話は、ヴォイストレーニングをするのに、レッスンの位置付けとして、どう考えるかのヒントです。自分がどう接点をつけるか、そのことと合わせて考えてみることです。

 

 

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