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第42号 「トレーナーの経験と能力」

 

○教えられた経験について

 

 

 

トレーナー本人の教えられた経験の有無について述べます。役者やヴォーカリストには、器用で、すぐに現場でプロとなれた人がいます。こういう人は、同じタイプで、仕事にすぐに選ばれた人にアドバイスするにはよいでしょう。しかし、一般の人や初心者を教えるには苦労します。

 

長嶋茂雄さんがリトルリーグのコーチをやるようなものです。プロとして選ばれてきた人には、よき先輩としてアドバイスできるかもしれません。プロ野球のように才能と実績がある人しか入らない世界では、いる人は選ばれた人です。

 

教えられた経験のある人は、最初は自分が教えられたように教えるでしょう。特に日本人はその傾向が強く、そのため形ばかりの伝承になっていることがたくさんあります。

 

そこから自分のやり方を創出したり、相手に合わせた指導をするような人もいます。が、稀です。むしろ、それが行き過ぎて自己流と偏向する人が少なくありません。

 

邦楽のように、自分と師との関係をまったく同じように弟子と自分の関係にもちこめるなら、まだよいでしょう。でもまったく違うタイプや違う目的には、かなり限定した目的でないと、効果が出にくいです。何より、同じ関係をとれなくなっています。

 

声楽出身の人がポップスを教えるときにも、その傾向が強いです。それでいつまでも、先生のレベルに追いつきません。それでも、私はトレーナーには、ポップスより声楽の人を、ピアニストでも、クラシックの人を採ることにしました。客観視する能力、特にトレーナーには、自分の好きなポップス歌手の歌唱に左右されないことが大切です。そして、学んで得ていく力があることです。

 

 

 

○グループレッスンのよさ

 

 

 

グループで教わると、そのなかでの違いやオリジナリティに敏感になります。声楽では、本当の個性差を見出せるのは、かなり高いレベルになってからです。共通のベースを学ぶのが先だからよいことです。

 

そこでいろんな進歩の仕方があるとともに、生徒のレベルや違いによって、違うやり方をとることも学べます。

 

劇団やミュージカルなどでは、おのずと比較するという学び方ができるのが大きなメリットです。特にダブルキャストや演目がスタンダードで同じなら、比べられます。人や作品をみる目を養うには、とてもよい勉強になります。

 

自らが個人レッスンしか受けていない声楽家やトレーナーには、グループレッスンするのは苦手な人が多いようです。

 

トレーナーによっては、個人レッスンでも他の人とのレッスン(たとえば前の人)を見せる方式を採る人もいます。これもレッスンする人、レッスンを見る人の相互にとって有意義なこともあります。

 

 

 

○複数のトレーナーについた経験について

 

 

 

わかりやすさ、求められるレベル、やり方、優先順位、判断の違いなど、トレーナーの比較から得られるものは大きいでしょう。いろいろと学べます。

 

しかし、受け手に柔軟性がないと、「どちらの先生が正しいの」「どのやり方がよいの」「いったい、どれが正しいの」と迷いが深まることになります。初心者のうちは、異なる目的、内容や期間で使い分ける方が無難でしょう。

 

トレーナーを選ぶことがもっとも難しいので、私はそれを専らアドバイスしています。トレーナーの使い方を限定し、決めたら有無をいわず、その範囲内において、迷わずにやることです。自分の目的、自分自身について、判断力の高さが問われていきます。それは、じっくりと力をつけていけばよいのです。

 

 

 

 

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