第48号 「やり方における差異」
○トレーナーの方法への影響力
トレーナーは、まず自分の体験上で得られたもので自分の方法論を確立します。ポップスの場合は、よくもあしくも自分の思い込みの感覚で、仮想して感覚を得ていくことが多くなります。とはいえ、必ず、誰かの影響を受けているので、その元となるアーティストの感覚が、大きな影響を及ぼします。
このときに、誰を選んだかは、本当は大きな問題です。本人も気づかないうちに大きな影響が入っているので、本来は第三者にみてもらうしかないのです。
次に、声は楽器と違って、自分の体(もって生まれた発声器官など)が大きな制限としてあります。アーティストをまねて始めるのは誰でも同じでしょう。そのなかには、まねやすい人もまねにくい人もいます。まねて基礎を学びやすい人も基礎を学びにくい人もいます。それが結果として大きなプラスに出るときも、マイナスとなるときもあります。そのアーティストが好き嫌いではなく、上達のプロセスとして合う人も合わない人もいます。合っている場合も、細かくみると必ずよしあしの両方があります。
○まねがくせにならないために
即効性のあるようなまねが、後でうまく伸びる基礎になる人もいます。即効性のある方法については、それがために限界となることも少なくありません。これらはその人の目的やレベル、その後の変化や成長にもよります。から、純粋に捉えることはほとんど不可能です。
稀にたった一人のアーティストだけ聞いてきたという人もいます。この場合、くせがのりうつっていて本人も気づかないことが多いものです。
音大生のように最初からトレーナーに導きかれた人はよかれあしかれ、そのトレーナーの影響をストレートに受けます。すぐれた一流の作品を聞いていることでその限界を突破できるかが将来を決めます。
○ノウハウの伝達ミス
トレーナーもアーティストと同じように、レッスンでの関係は多岐にわたります。
アーティスト的な影響が歌や作品という応用されたものから無意識的にくるのに対して、トレーナーからの影響はストレートです。どのくらい信じているかもありますが、直接、直されるので影響は大きいでしょう。
教わったことはトレーナーとして教える立場になったときには、独立したノウハウとして、よりダイレクトな影響を与えます。トレーナーにとって自分とは異なる相手を教えるときにも、自分が教えられたように教える、あるいは、自分の同僚や先輩、後輩が教えられたように教えることにおのずとなるわけです。ことばの使い方も孫引きのようになり、受け売りの方法で、トレーナーの意図とは別にトレーニングが行われてしまうこともあります。
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