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第54号 「プロセスのとり方」

○トレーニングでのコントロール

 

 長期的にみなくてはいけないものを早くあるレベルにまで高めるということには、無理が伴わない方がおかしいのです。たとえば、トレーニングを行なうと腹筋やブレスは半年でも相当強くなります。そうでなくては、プロの体にはなっていかないから、そうせざるをえないのです。しかし、それをコントロールする技術は、すぐには伴いません。

 そんなときに、高音でトレーニングをしたら、そのへんで自己流のトレーニングをしている人のやり方に輪をかけたくらい、のどをこわすリスクに直面してしまうことにもなりかねません。

強い武器は、それを手に入れることよりも、その使い方の方が難しいのです。ですから、進めるにあたって、安全を確保しつつ、トレーニングの真意がわかるように理論や説明をつけて、いろいろな例を使って述べているのです。

 ヴォイストレーニングでは、最高のコンディションに整えること、そのとき以外はできないことはやらないことです。もっとも適切なメニュをこなして、柔軟に使えるよう方向づけていくことが大切です。

 

○トレーニングとプロへの道

 

 努力をしなくてはいけないのは、一流になろうが三流に終わろうが同じです。まったくトレーニングをしないで人並み以上になろうなどというのは言外です。ところが、「トレーニングをすれば、プロになれますか。」と言って来る人もいます。ヴォイストレーニングをすれば、ヴォーカリストになれると思っている人も少なくないようです。これはトレーナーの決めることではありません。本当に努力した人しか、一つのことをものにすることはできないでしょう。そういう意識をもったときから、どれだけのことをしなくてはいけないのかがわかってくると思います。

 

○努力のプロセスを明らかにすること

 

 ヴォーカリストに関しては、努力をしているのに方向違いであったり、どれだけのことをしなくてはいけないのかがまったくわからないまま、日々不安に過ごしているのが現状のようです。自信と確信のないところでは、上達することは難しいものです。

 信じることを信じられる以上にやって、ものごとははじめて成就するものだからです。そのためには、日々やっているトレーニングを、信じられることを納得するところまでやり続けることが大切でしょう。

 少なくとも、同じ努力をするのでしたら、効果のあるようにセットすることです。同じ練習をするのでしたら、練習をした結果、身になる方がよいに決まっています。その苦労と努力に対し、課題として明確に方向性を与えるのが、レッスンではないでしょうか。

 

○身になるトレーニングをすること

 

 私自身の経験と指導経験でつくりあげてきたのが、ブレスヴォイストレーニングです。教えながらも、日々いろいろと変化して、いつも最新の形にしています。方法だけでは限界があるので、レッスンの体制までつくり、トレーニングで問えるところまで用意しました。いらっしゃる人とその目的とトレーナーによって、ここでは日々、進化しています。これが絶対に正しいとも、こういう方法や体制しかないともいいません。でも力をつけたいのなら、試してみる価値はあると自負しています。

 

〇アーティストのためのヴォイストレーニング

 

 アーティストとは、制作者で、自分にしかない作品をもつ人です。プロとしては、売りものをもつ人、CDでもライブでもよいでしょう。その元となるのが、歌、そして声です。

 ヴォイストレーニングは、アーティストにとって、声を扱う楽器としての基礎勉強であり、演奏活動を支える基礎トレーニングとなるものです。

 

○アマチュアのためのヴォイストレーニング

 

 プロをめざす人は、プロのなかで認められなければプロとしてはやっていけません。アマチュアとして活動するのは好ましいとしても、レベルとしては目的となりません。誰でもすでにアマチュアではあるからです。質よりも長く続けるというのを優先する人がいますが、それこそ質が必要なのです。

 本当によい作品をつくるなら、実力として基礎の力がなくては難しいのです。とはいえ、プロをめざすかどうかは自由でしょう。研究所ではそれを条件として問うていません。プロと並べるくらい、力をつけることが目的です。そこを見ていない人が、少なくありません。

 私は、歌や声に時間をかけお金を払って習うなら、きちんとものにして、元をとって欲しいと思っています。ヴォイストレーニングで成果をあげ、あなたの声で感動させられるようになって欲しいというのが、私の願いです。

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