○声は語学力を補う
ここでは、学んでも話せない、なかなか通じないといわれる日本人の英語の発音と発声の関係について述べます。
私が思うに、日本人の英語が現地で通じにくいのは、発声にいくつかの大きな欠点があるからです。
第一に、強弱の踏み込みをしないことです。それは、息を吐けないからです。つまり、日本人の英語は、
1.息を吐けない。息を聞けない。
2.子音一音を認識して、発せられない。(母音がつき、カタカナ英語となる)
3.強アクセントをつけられない。
4.強拍に弱拍部の音が巻き込まれない。
5.発声が浅い。
息と声が深く強弱リズムがついていると、大して英語の発音がうまくない人でも、結構、通じるものなのです。 深い声を発することは、欧米の言語の理にかなっているといえるわけです。
○なぜ、声がよくないといけないのか
何でも、よい方がよい、声もよい方がよい。これは、言うまでもありません。
人間は、感情の動物です。その人への好感度によって、いろんなことが左右されます。あなたがどう考えようと、現実には、その表情や声一つで好意をもたれたり嫌われたりします。容姿、性格などと並んで、声も重要な要素の一つであることを、忘れてはいけません。声が嫌いというので、信用されないばかりか、いじめられることもあります。
声がよくないといけないというのではありませんが、うまく生きていくために、つまり仕事や生活をうまく進めていくために、声の力は欠くべからざる基本能力の一つです。
○声と好き嫌い
何となくその人の態度や感じを好きになれない原因のなかで、案外と声のことは大きいのです。その人が嫌なら、その声も嫌になりますが、その声が嫌でその人が嫌になることも、少なくないのです。
このように、声は、信用に関わってきます。もし、あなたが、取り引きしようという相手が早口で何を言っているのかわからなかったり、ぼそぼそと自信のない声でつぶやくような人なら、どうでしょう。心配から不安になり、キャンセルしたくなるでしょう。
いつも、はっきりと自信をもった声で話されたら、よい気分で進められるでしょう。もう一声、それで取引が決まることがよくあるのです。声には、思った以上に、影響力、だめ押しの効果があるのです。
○声がよいって、どういうこと?
それでは声がよいとは、どういうことでしょう。
一概に声がよいといっても、声にはさまざまな要素があります。たとえば生まれついての声、これは、行われるつまり体という楽器によって決まる声質を意味します。人が美しい、きれい、よいと感じる声を生まれながらに持つ人もいます。歌手や声楽家などにはこうした天性の素質も大きく左右するでしょう。
次に、後天的に得られた声、たとえば役者などは、練られた声、鍛えられた声というイメージがあります。それは、トレーニングの賜物です。
さらに、楽器としての性能とは別に、声の使い方というものにも、良し悪しはあります。あなたが風邪をひいたときと、健康なとき、疲れているときと元気なときでも、声は違います。
つまり、声そのものがよいということよりも、その使い方、結果として働きかけがよいことが重要なことです。
○声の使い方
声の使い方なら、簡単に変えることができます。相手が聞いて、「なんとなくよいな」と思う声、それは声そのもののよさよりも、その声を通じて信頼感やあたたかさ、やさしさが伝わるということでしょう。つまり、それは話しかける相手に神経の届いている声といえます。
こうなると状況や相手が求めるものによっても、違ってきます。同じ声や同じ声の使い方でも、相手によっては、感じ方が違ってくるからです。となると、そういうことに対する感性と声の演出力が問われるのです。
○声そのもののよさ
原点に戻って声そのもののよさについて考えてみましょう。
声そのもののよさとは、よく聞こえる、よく通るということ、聞き心地がよい、聞きやすいということでしょう。音声である以上、そこには機能的であること、それは音響としての物理的な特性が含まれます。つまり、音としての性質からみて、うまくひびいていることです。
○通る声の秘密
私の声は、どんなに小さくしても、遠くまで聞こえます。それは、共鳴がよいからです。よく通る声ですから、かなり広いところでも、マイクはいりません。
口内や口先でクセをつけたり不自然にしていない声、邪魔をしていない声、深い息でコントロールしている深い声なのです。そこで、一声でプロの声とわかってもらえます。こういう声は、鍛えることで手に入れられます。
能舞台などでは演者の声は3千人くらいの客にはっきりと伝わります。
しかし、どんな声も、かなり心地よく聞こえるようになるのです。まずは、そこからチャレンジです。
〇自分の声と使い方を知る
「己を知らば、百戦戦うとも危うからず」、声は、口から出て言葉とともに一瞬で消えてしまいます。いつも、私たちが話すときは、人前での生ライブのようなものです。一度、言葉にしてしまった声は取り返せません。やり直しができません。
それだけではありません。そこであなたが意識しようとしまいと、あなたの声から、かもし出された雰囲気や感覚は、話の内容以上に、その話の印象や価値を左右してしまいます。
どんなに内容やその作文力にすぐれていても、それが声でどう伝わるかということによって、効果が全く違ってくるのです。
そこで最初に、自分自身の声とその使い方について、見直してみましょう。