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第58号 「プロフェッショナルについて」

○踏み出る

 

 誰でも、まわりとうまくやっていきたい、悪くいわれたくないと思うのは、あたりまえでしょう。しかし、人に寄っていく人は、そうしている限り、自分の力では何もできません。これは、どこでも人が集まるところに、必ずある光景です。

 そのため、もう一歩踏み出せないその人のよさが、その人がそれまでやれなかった要因です。自分の力を自分で抑えているのです。もとより、それを打ち破ってまで、人を説き伏せたいものがないともいえます。

 場のなかでの歌は、場を破れません。ですから、場を超えて、第三者である他人が集まってくることはありません。この身内の場を突き放し、第三者の客を得る力こそが、プロのプロたるゆえんなのです。

 そこを乗り越えるためには、プロということについて、自らいろいろと学ぶことです。どこでも、そこにいることが目的になってしまってはいけないと思います。自分がいるところが、ライブとなるようにしましょう。

 

○プロと才能

 

 プロとは、自分の才能の発揮するために、自分にない才能のある人と場を得られる人です。人間、一人では何事も大したことはできません。本当に好きなことを好きなようにやるために、プロになる。そのためには仕事として、こなしているプロのレベルを超えなくてはいけません。

 プロをやり続けるには、実績を残していくことが必要です。人に対して働きかけることの対価が、仕事としての収入となります。しかし、実績と対価は必ずしも比例しません。

 サラリーマンでも10年続けたら、ギターも歌もうまくなります。アマチュアゆえにお金に縛られないでしょう。でも、自分の才能をより高いステージで発揮するには、才能のある人との出会いと、本当の意味で才能を育む場が不可欠なのです。

 世の中、お金があっても実力があっても何もできない人もいます。場を得てはじめて、才能は磨かれる。そこで逃げ場がないプロは、有利ともいえるのです。集まった人の数、人の思い以上に、作品をもって返さなければ成り立たないからです。

 

○アマチュアとプロ

 

 アマチュアだからこそ純粋に音楽を愛せるという人も多くなりました。それは、当たってもいるのですが、本気のつもりでも、カラオケを一人で歌っているのにすぎない人もいます。低いレベルのプロをプロといって、さげすさんでいるのにすぎないことが多いように思います。まわりからうまいと言われても、他人を感動させられているのではないでしょう。本当に感動させたら、人は集まってきます。集められます。

 プロの価値は、創造活動にあります。その過酷な自らとの戦いを避け、対価以上の仕事をしないと成立していかないプロという世界を垣間見ているだけでは、つまらないでしょう。

 生活のなかに本当に音楽を取り入れ、音楽とともに暮して、音楽でお金をとっていない“アマチュア”の人々もたくさんいます。生活のなかに取り入れているのがアマチュア、生活をかけているのがプロかもしれません。プロといっても必ずしも生活がかかっているというのではありません。

 

○トレーニングで本当にやるべきこと

 

 研究所のトレーナーのことばです。

1.とことん地味なことをやること。

2.今すぐ必要なことと正反対のことをやること。

3.すぐに効果の現れないことをやること。

 本当にやるべきことは、付け焼き刃でできないこと、時間がたっぷりかかることをやるのです。

たとえばダンサーなら、クラシックバレエや日本舞踊をやることです。タップをやるときにタップの練習をするのはあたりまえのことです。そして、すべて現場のことは現場でやれるようにするのです。それだけでは続けられないので、トレーニングするのです。

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