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2019年6月

第65号 「学びの材料」

○どうしたいのかを決める

 

 「みんなは」「まわりは」「トレーナーは」ということに関して、大半のことは、受け入れておくだけでよいのです。それよりも、「私はー」が肝心です。それを導き出さなくてはなりません。アプローチとして、他の人や他の作品から好ましいものを選んでみましょう。次に、自らの心の中に深く入っているものをとり出すことが好ましいでしょう。

 「私はー」は、自分のものを取り出して、披露して、表現をする、その結果を問い、その責任を自分が負うということなのです。

 

○トレーナーの答え

 

 トレーナーに、「どうすればよいですか」と聞くのはよいでしょう。でもその答えは、一つの意見としてとどめておきましょう。日本人は、自分の思うことの言語化に慣れていません。トレーナーもあまりことばで適確に言えないことが多いのです。自分の活動に実績のある人ほどイメージで受けとめ、実現できたからです。それが、トレーナーとして向いていることに反することもあるのです。

 

○言語化とマニュアル

 

 トレーニングにおいては、プログラムの可視化と言語化はけっこう大切なことです。私はマニュアル不要で、感覚だけと言っています。それは確かですが、そのためにマニュアルがいるのです。ことばを使わないために、ことばがいる、ことばに振り回されないために、ことばがいるのです。マニュアルも同じ、それを捨てるためにいるのです。頭を使って考えることも同じ、考えないために考えるのです。

 

○受容力

 

 自分の判断は大切ですが、トレーニングでは、まずはアドバイスを受け入れることです。そして実行することです。自らが考えるのは、後にしないと、一人よがりになって、伸びなくなります。あらゆるものは、学びの材料です。何でも人が興味を持つものは、見たりやったりしてみましょう。好奇心こそ、向上心の元です。

 

○私の学び方

 

 私はヴォイトレを第一線で行なってきました。そこでは業界内のマニュアルよりも、他の業界のマニュアルを学んで得たことの方が大きかったです。音声は、日本は世界にまだまだ誇れませんが、他の分野においては、日本には世界の第一線級、巨匠や神様といわれるような人もたくさんいます。

 安易に外国人に学ぶというのはよくはありません。

 

○トレーナーのアドバイス

 

 トレーナーにつくのが、よいというのでなく、そこから最大限、吸収して、役立ててください。トレーナーを変えるのも他のトレーナーに学びにいくのも悪いことではありません。自らの軸があれば、そこでの遠慮は不要です。

 あなたのためを思うトレーナーなら、あなたの将来のためになる行動を評価するでしょう。現実には、トレーナーにはやめさせたがらない人もいるし、本人の判断を教育熱から引き止める人もいるでしょう。それも一つのアドバイスです。

 

第64号 「戦略をくむ」

○繰り返しとくみたて

 

 繰り返し戦うための武器は、いろいろとあります。しかし、それらを全てつけて武装したら、負けるでしょう。

 まずは、自由自在に使える一つの武器を、きちんと習得することです。自分には、どんな武器があるのか、どんな武器が向いているのか、これを探るためにいろんな武器を手にとるのはよいのです。しかし、全てを身につけようとして、中途半端になるのはよくないです。

 即興的に、応用していることで気をつけなくてはいけないのは、自らを客観視することです。反省して、どうすればよかったのかを考えることです。それをアテンダンスシート(研究所の「レッスン後の提出レポート」)に書いて出します。目的はこちらにあるのです。

 準備、本番、反省と、3つの勝負があると思います。レッスンでも同じです。

 自分のやろうと思ったこと(イメージ)と、やったことを比べること、そのイメージ自体の上をイメージしていくこと。この繰り返しによって少しずつ、自らを向上させていけるのです。

 

○トレーナーに就くということ

 

 トレーナーが言ったからでなく、自分がどう感じたかがあり、そこからトレーナーのいったことを考えたり、感じていくのです。トレーナーのいったことが今できないのなら、今、やろうとしないでよいのです。それができていく方向へセッティングしていくということです。

 自分で決めつけると、大体は今の自分のあいまい、いい加減な感覚と使い方に甘んずることとなります。

 だから、人に就くのです。集中力、体力、テンションなどをその場で高めることで、一瞬でも深く感じられるように、感じ方を変えられるようにするのです。

 習っていなくてもうまい人は、大して鍛えなくとも、このあたりのレベルまではこなせているのです。その先へいくには、より厳しく、自由にしていくトレーニングがいるのです。

 

○「うまい」の先にいく

 

 しぜんにうまい人の弱点は、他人に合わせるのが器用で、そこで認められ、自分のものに戻らず、素通りしてしまうことです。こういう人は、アーティストの感覚をもち、いかに自らが鈍いかを自覚しない限り、そこからの飛躍は絶望的です。歌のうまい人も大体、ここまででとどまります。教えるのがうまいといわれるトレーナーは、ものまねが器用で、レパートリー多数でとどまります。

 トレーナーやまわりの人の意見をすべて聞いてしまう人は、その克服が課題です。本人が自覚した上で、まさに自分自身で、接点を強くつけていきましょう。そうしないと、その人らしさは表われません。

 そこにいるだけよいという人は、社会ではよい人かもしれませんが、いろんな制限のある舞台では、いらないのです。その人の性格だけでなく、日頃の生き方からも、出てくるのです。

第63号  「求めるもの」

○正解を求めない

 

 トレーナーも、先生も、あまりにも一つの正解に合わせて、他人をみてしまっていませんか。そこでうまくいく人は、そこからスタートもよいでしょう。先天的に器用ですぐにこなせてしまう人は、そういうトレーナーにつくのも一つの方法です。

 しかし、そうでない多くの人は、そういうトレーナーの元へいくと、伸びないどころかもっと悪くなることも多いのです。そして、自分はなぜできないのだろうとばかり思い、悩みます。

トレーナーも自分のレベルが高いと、「なぜいつまでもできないのか」と、わからないのです。自分の指導のせいだとは考えられないのです。

 もっともよい解決策は、他のトレーナーをつけて比べることです。そういうことができるトレーナーを私は、私以外には知りません。

 

〇優先と重要度☆

 

応用することで、完璧にできたことにはならないです。このことがわかっていたら、自らの弱点に気づきます。しかし、それはすぐ解決しないことです。長所、強みが出るまで放っておいてもかまいません。

 なのに、多くのヴォイトレは弱点の克服だけに専念させてしまうのです。

 本人もトレーナーも、それが問題だと思っているからです。わかりやすい問題には違いありませんが、トレーニングでは重要な問題、最優先すべき問題ではありません。

 その先をみていないからです。アートということで考えるなら、トレーナーにつくことで目先の目的に専念して、もっとも大きな可能性を自ら奪ってしまうことだと気づかないのです。

 しかし、そういう判断も本人の実力の一つです。間に合わせで、先にいってしまう人が、多いことに私は驚くのです。トレーナーも含めてのことです。

 

○トレーナーに求めるべきこと

 

 ギャップを正しく知るためにはどうすればよいでしょうか。自らの力が、可能性をもって伸びるために、何を材料にすればよいでしょうか。その選択こそがトレーナーに求められるのです。つまり、ステージや作品から、本質的なものを学ぶ力をつけられるように学ぶことが、基本の力をつけるには、大切なことなのです。

 発声のテクニックや歌唱技法などは、一流の作品から、本人が啓発される力に比べたら、表面的なものに過ぎません。内的な変化は、外から与えるだけで、変わるものではありません。誰かの声、歌、せりふ、発言、マニュアルと、何であれ、ストックして、内側から身についてくるのを待つしかありません。そうして少しずつ、自分の軸が定まってくるのです。

 自分と似た声質のトレーナーやヴォーカリストは、それに近づけていくためにはわかりやすい見本です。早くうまくなっていくには、利用できますが、自分の軸はできていきません。他人の軸である限り、いつもあちこちでブレます。器用すぎる人と若いトレーナーに多い特徴です。

 声に対して、自らがどの地点にいるのかは、わかるものではありません。それを学ぶためには、声楽などを一時、使うのです。それがわかりやすい方法だからです

No.334

<レッスンメモ>

 

ステージ、照明、BGM、立ち位置、動き

視線、呼吸、声、ことば、テンポ、リズム、メリハリ、間

話題、内容、構成展開、テーマ

イメージ、印象、服、ルックス、スタイル、存在感

No.334

<レクチャーメモ「AIと体感」> 

 

AIには、体験(動作)とことばの結びつきがありません。

重力を感じるので「上げる」ということばが生じたのでしょう。

また、たとえば私たちはAIには、「同じ」はわかるが、「似ている」の区別は難しいのです。それは、メタファだからです。

とはいえ、ことばで物事を認識する点は変わりません。

AI化までの流れは、機械化(自動化)、電動化、電子化(情報化)、オンライン化(ネット化)、知能化(AI)です。

1956年「AI」、人工知能ということばは、アメリカ、ニューハンプシャー州 ダートマス会議で使われました。

1968年インテル創業

5世代コンピュータ(日本1982年~1992)

NLP(National Language Processing)

「言語は知能の現れ」

アバターエージェントサービス(ソニー2017)

CGモデル「沢村碧」が読み上げる音声動画作成

CeVIOで「さとうささら」

COCOROBO Voice Maker

「罵倒少女 素子」

「一択彼女 加藤恵」(2017)

AR performers4人組男性アイドルユニット

Siri(アップル)

「コルタナ」(マイクロソフト)「りんな」「シャオアイス」

2014年、映画「トランセンデンス」(ジョニー・デップ)公開。

 

第62号 「本当に大切な問題」

○足らないものより、優れたものに目を向ける

 

 足らないものを補うためにトレーニングをするのは、悪いことではありません。しかし、声、せりふ、歌に関しては、それは補強にすぎません。本当の目的は、自らのオリジナルな可能性の方を伸ばすことです。

・高い声が出ない

・音程が悪いといわれた

・声量がない

 これらは具体的な問題ですが、メインの目的ではありません。メインとする力を伸ばす中で、解決できてくればよいという副次的な目的です。すぐに解決できなくとも、大して問題ではないのです。

 ですから、一時、横において、まずは、しっかりと一つの声が出せるようにトレーニングしましょう。

 本番で力を発揮するには、集中力が足らない、コントロールがいい加減などという方が、もっと大きな問題です。表現力から考えていくのと、そうなります。

 

○真の目的をセッティングする

 

 プロをみてください。そういう方向を目指すなら、彼らは、何の力で成り立っているかをみることです。発声ですか、声域、声量ですか。そうでない人も多いですね。でも、その人でなければもっていない何かがありますね。自分でなければない魅力をつけるのに、他人と同じようになっていこうとするのはおかしなことでしょう。

 自分の可能性を伸ばして、最大の力が出るようにしていくトレーニング、そこからオリジナリティの魅力で、人をひきつけられるようになることこそが真の目的でしょう。これは副次的な目的とは、深さの度合いが違います。

 応用してこそ、基本の足りなさがわかります。そのギャップを埋めるために学ぶのです。ギャップは、副次的な目的と違うところにあることが大半です。副次的とは他人と比べてのこと、メインは、自分自身のことです。どういう問題に関しても、より優れた人に比べたら、劣ってみえるのはあたりまえです。そこでふんばるのです。

 

○しぜん、未熟を維持する

 

 あなたは、世界一、声域のある人、声量のある人、音程のよい人になりたいわけではないでしょう。自分自身のもって生まれたもの、育ちで得られたもの、思考や性格もふまえて、オリジナリティを確立させていきたくはありませんか。高いレベルでは、他人はそれしかあなたに求めません。

 そのためには、しぜんに応用してみることから入るのが一番です。それは、今のあなたそのものですから、未熟なものかもしれません。しかし、あなたが誰かのものまねをするより、まだ評価できないレベルなのです。だからこそ、学んでいけるのです。

 未知の本質的な目的に対して、学んでいくスタンスをとっている人は、あまりに少ないのです。トレーナーも同じで、プロや自分に似させようとする人が大半です。気をつけなくてはならないことです。

 

Vol.75

○発声は声量から

 

 ここで、発声のチェックをしましょう。

 まず声は聞こえなければ用をなさないです。どんなに気配りがあって、心を込めていても、何を言ったのか聞き取れなければ、意味がありません。それには、最低限の声量が必要です。

 確かにTPOによっては、声量をおさえた方がよいこともあります。だからといって声で言葉が全く聞こえなくては、何にもなりません。聞きづらいのも困ります。

声量のコントロールとしてテレビのヴォリュームを数値を見ながら変え、それとほぼ同じ声量の声を出してみましょう。

 

○声量から発音に

 

 伝えるべきときに伝えるべきことがうまく伝わらないのは、声量の問題だけではありません。発音やテンポなどもあります。伝えることを最優先とするなら、相手のことから考えなくてはいけないのです。

1.小さすぎる

2.もぐもぐ、こもって、はっきりしない

3.早すぎて聞きとれない

4.言葉になっていない

 このように、自分では伝えているつもりでも、ボソボソと聞き取れない声で話し、まわりに迷惑をかけている人は少なくありません。こと日本人同士では、聞き返すことに抵抗があり、あいまいにしていることが多いので尚さらです。

 

○共鳴で通る声

 

 次に、通る声について学びます。通る声とは、共鳴のよい声です。声がうまく振動して、空気中を伝わると、遠くにも聞こえます。これが、マイクにも入りやすい声といえます。これを妨げるのは、余計な力、過度の緊張や体や顔のこわばりです。

 そこで、次の手順を踏みます。

 

1.リラックスする……気持ちをやわらかくする

2.テンションをあげる……伝える意志をもつこと

3.クリアに心がける………はっきりと声を前に出す

4.ブレスをしっかりする…………深い呼吸で支える

 こうして自分の声、自分の声をとりまく状況が、少しずつわかってきます。そこから、声そのものの問題に入ります。

 本来のトレーニングでは、共鳴するための芯のあるこえを目指します。

 

○声の明瞭度チェックをしよう

 

 発声、発音に踏み込んで、実践的なチェックやトレーニングをしましょう。

 声での発音の明瞭度をチェックするために、電話の交換手のテストに用いるロガトム表というのを使ってみましょう。録音機器を用意して、各語を四秒ずつかけて、読んでみます。それを書きとって、どれだけ当たっているのかチェックします。

 これは、実際には、特定の人が読んだのを被験者が書きとり、聞くほうの不明瞭度を計るために使われます。しかし、このように発音のチェックにも使ってみるのです。

 

1.ペボ   ビュギ   チベ   マヤ   ビョバ

2.ミャド  ナル    ユサ   ムニャ  トヒ

3.アジョ  リョザ   フゲ   ニュゼ  カソ

4.イチョ  ジュミ   ヨケ   ハロ   メヌ

5.ギョヘ  テモ    オリュ  セツ   キタ

6.ノピ   シュピャ  ゾショ  パビ   ウラ

7.ニョワ  ニチョ   ヒャレ  ポデ   ゴシ

8.ヒュギャ クダ    キョシャ フヒョ  ピョリ

9.ジャネ  エズ    ギュホ  ガリャ  ミュジ

10.チャグ  ビャコ   ブキャ  キュピュ スミョ

 

○母音発声トレーニングと語尾をはっきりさせる

 

「ア」 アーいい天気だ

「イ」 イーッだ イッヤッダッ

「ウ」 ウー マンボッ

「エ」 エーそうだったんですか

「オ」 オー ワンダフル

 

 語尾をしっかりと切りましょう。

 パッと切るにも「っ」がついて演説調になるのはよくありません。あまり伸ばしてしまうのも、よくありません。

 半疑問 クエスチョン形 尻上がりイントネーションは使わないようにする。

 

○なぜ人前で話せないのか

 

 声を出すというのは、決して特別のことではありません。少なくとも、誰かと暮らしたり、何らかの仕事に携わっていたら、一日たりとも声を出さない日、誰とも話さない日はないでしょう。そこで家族や友人、職場の人と話すのに、いちいち緊張したりあがったりする人はいないでしょう。少々、言葉が聞こえにくくても声がうまく出なくても、気にしていないでしょう。

 しかし、初対面の人や目上の人、自分にとって重要な人や有名な人と話すときには、誰でもどぎまぎしたりあがったりするものです。相手のことが気になると、ますますうまくいかなくなります。しかし、相手と親しくなれたら、そういうこともなくなります。なぜでしょうか。

 このことから、声がうまく出ないのは、声や話し方そのものよりも、むしろ自分の立場や雰囲気といった、シチュエーションの問題の方が大きいということがわかります。

 人前で話すパブリックなスピーキングにおいても、フレンドリーで自然な状態がキープできれば、かなり楽に楽しくなるはずです。

 つまり、大半は、話すことの問題、ではなく、違う人と違う場に立って何かすることに対しての経験不足です。慣れていないから、緊張し、うまくいかなくなるのです。

 

○日頃の力が発揮できれば、半分は解決

 

 もう一つは日本語をパブリックに話すということです。それを平常心をもって場に立つということと同時に求められるからです。

 私たち日本人のほとんどは、パブリックなスピーキングのトレーニングをしたことがありません。これが声にとって大変な負担になるのです。

カラオケであれば、全くあがらない人でも、スピーチで話すと言葉がしどろもどろになったり、声がうわずったりすることが少なくありません。意識が過剰となり、とても不自然な状態に陥ってしまうのです。

 そこで、話し方教室でのトレーニングなどでは、話の内容そのものよりも人前に立って慣れる実習を重視しているようです。日頃、リラックスしているときの力を普通に発揮できたら、ほとんどの問題は解決するというわけです。幼いときから使っている言葉なら、自然に話すレベルまでは、すでに誰もが到達しているのですから。

 しかし、人前では友だちに話すように話しても、そのまま通用するものではありません。ここで、問題が起こるのです。私たち日本人は身内意識で、つまり、よく知っている人、同じところで一緒にいる人といった内の側の人としか話してきていないため、見知らぬ人、はじめての人に話す術や使う言葉を、うまく使えないのです。 これは、パブリックスピーキングの経験不足が、根本的な原因なのです。まずは、それを知ることです。

 

○声は生まれつきのものなのか

 

 あなたの今、発している声には、生まれつきのものと生まれたあとのものと、両方の要素が含まれます。

人の顔でさえ、ある程度の年齢になれば責任をもたなくてはいけないといわれます。その人の生きてきた道、考え方や行動や人となりが、顔に出るからです。まして、声は、機能として毎日、使わない日はないのです。しかも、自由に変えられるのですから、もっとあなたの責任は大きいといえましょう。

 声帯という楽器は、生まれたときには、さして差がありません。オギャーというアとオの間の声は、全世界共通で、しかもラ(440Hzくらい)の高さといわれています。これは、オーケストラの合わせる基音(オーボエ)と同じです。

 しかし、生まれてからの環境によって、声は少しずつ変化します。言葉を習得するプロセスで、配線がなされていくからです。そして、第二次性徴期で大きく変わります。その後も声は変化し続け、20代でようやく落ち着きます。そのあとも、年齢や環境によって、まだまだ変わります。

 

○声の使い分け

 

 声は職業によっても変わるくらいですから、トレーニングによって、かなり変えることもできるということです。

 使い方によっては、いろんな声質で声を演じ分けることも可能となります。

 歌手であれば、2オクターブにわたって、声で表現します。もちろん、歌声と全く違う声を出すこともできます。

 どちらにしろ、声は生まれつきのものではないし、変えられないものではありません。

 顔も生まれつきのもののようでも、化粧や髪型、ファッションで大きく変わります。整形をすれば、別人のようにもなります。声も声帯を手術して、変えることができます。すでに治療としては、行なわれています。ただ、それは原則としては喉の病気や特殊な場合ですから省きます。

 声は、声帯そのものを他人にさらすわけではありません。その使い方、出てきた音声で判断されるのです。つまり、トレーニングによって、少しずつよくしていく、そして千変万化に使い分けることが可能となるのです。

 

○自分の声を変えてみる

 

 鏡を見ながらやってみましょう。

1.普通の声

2.笑い声

3.明るい、はきはきした声

4.暗く沈んだ声

 日常生活のなかで、声がどのように変化しているかを意識してみましょう。

 

○話す内容を考えることと話すトレーニングを分ける

 

 声の良し悪しの印象は、単に声そのものや話す内容だけで決まるのではありません。伝える必要性を話し手がどの程度、意識しているかに負うところが大きいのです。たとえ、子供でも、本当に心から話したいこと、訴えたいことは、とてもうまく声にして伝えることができるものです。それが、親や先生だけでなく、多くの人の心を、強く動かすこともあります。

 ところが、そういう子供でも、教室で教師がスピーチを強いたら、しどろもどろになります。「一分間、好きに話してごらん」と言われても、声をスムーズに出すことは難しいでしょう。伝える必要がなく、話す意志が出てこないと、声もうまく定まりようがないのです。

自分ではっきりと捉えていないことを無理に話そうとすると、うまくいきません。これは、文章を書くのでも同じです。知らないことはうまく書けないし、話せません。つまり、知らないことや伝えたくないことはうまく話せるものではありません。ですから、上達のコツは、話の内容を考えることと、話すトレーニング、そして、それを分けることです。

第61号 「頭を切る」

○即興を旨とする

 

 自分の思い込みや計算が、自分の声の使い方や真実をゆがめてしまうことは少なくありません。経験、知識、勉強は大切ですが、それを一時、切ること、新たなものへ価値を見いだすことがもっとも大切です。

常に、次の可能性への瞬間に身をゆだねるのです。

・信じて受け入れ、変えていくための行動をする

・集中して壁にあたるまで続ける

 歌は歌っている中で、声は出している中で、伸ばしていくものです。だからこそ雑念を切り、日常的にいつも、さっと入れるように準備していなくてはならないのです。

 

○トレーニングにおける形と型

 

 始めからマニュアルがあるとよくありません。形に頼ってしまうからです。頭にあることでレッスンの邪魔をしてしまうからです。レッスンに入ったら、考えを切り、集中しましょう。

 形とフォームは、違います。形から入ってフォーム(型)ができてきます。しかし、形もフォームも変じてよいのです。いい状態を感じることで自分自身を知っていきましょう。

 自転車に乗るのに、ペダルやチェーンのしくみを考えても仕方ないでしょう。ギアの使い方を覚えるよりも乗れるようになることです。

 発声を自転車に乗ることに例える人もいます。練習してコツを覚えたら乗れる、一度覚えたら、あとは無意識にできるようになると。しかし、それで例えるなら、私は競輪選手のようなトレーニングの必要性を考えています。体も一目で違えるほどに変わってこそ、プロの声になるのです。

「AIの生み出すもの」 No.334

理性、精神、霊性が、ときに個性を殺してこそ、自ずと作品がオリジナルに現れてくるようにも思えます。どうも本当の表現は、自己主張を嫌い、人知を超えるようです。科学、技術は、そうした自然の内なる力を引き出す手伝いをします。

さて、原発事故でありえたようなことはAIでも起きるでしょう。いかに自動化しても、そこで想定外のことは、起きるでしょう。人間と同じようにと発達したAIなら、もっと思いがけないことを起こすかもしれません。

どうも自己正当化ばかりがまかり通るような社会になりつつあります。自分のうまくいかないのを人のせいにしたり、クレームをつけたり。今は、強者よりも弱者がその立場での正義で、自分のためだけに主張しているように思えることが目立っています。

強者には悪者もいましたが、非難をものともせず責任をとり処理したり、我が身を顧みず後世のために改革した“つわもの”たちもいました。そうした長い眼でみることが徹底して欠けてきていることがとても気にかかります。

AIは、どこから何を学ぶのでしょうか。AIが仕向けていったことに人間がその責任と対処だけを後々せまられるようになりはしないかと心配です。

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