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第61号 「頭を切る」

○即興を旨とする

 

 自分の思い込みや計算が、自分の声の使い方や真実をゆがめてしまうことは少なくありません。経験、知識、勉強は大切ですが、それを一時、切ること、新たなものへ価値を見いだすことがもっとも大切です。

常に、次の可能性への瞬間に身をゆだねるのです。

・信じて受け入れ、変えていくための行動をする

・集中して壁にあたるまで続ける

 歌は歌っている中で、声は出している中で、伸ばしていくものです。だからこそ雑念を切り、日常的にいつも、さっと入れるように準備していなくてはならないのです。

 

○トレーニングにおける形と型

 

 始めからマニュアルがあるとよくありません。形に頼ってしまうからです。頭にあることでレッスンの邪魔をしてしまうからです。レッスンに入ったら、考えを切り、集中しましょう。

 形とフォームは、違います。形から入ってフォーム(型)ができてきます。しかし、形もフォームも変じてよいのです。いい状態を感じることで自分自身を知っていきましょう。

 自転車に乗るのに、ペダルやチェーンのしくみを考えても仕方ないでしょう。ギアの使い方を覚えるよりも乗れるようになることです。

 発声を自転車に乗ることに例える人もいます。練習してコツを覚えたら乗れる、一度覚えたら、あとは無意識にできるようになると。しかし、それで例えるなら、私は競輪選手のようなトレーニングの必要性を考えています。体も一目で違えるほどに変わってこそ、プロの声になるのです。

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