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第68号 「新しき声道」

○今のヴォーカルのヴォイトレ法

 

 ヴォーカルの声はしだいに浅く、小さく生声になり、かつてのように、話す声、地の声でプロとわかるどころか、素人以下になりつつあります。第一の原因は、誰もが無理にハイトーンへ音域を伸ばしてきたからです。そういう要求に、すぐに対応してしまうトレーナーが増えました。そういうヴォイトレ法が主流となりました。

 今は、トレーナーがリスクを避け、のどに安全な方向にだけ導きます。それゆえ何ら声として鍛えられないのです。声のトレーニングなど、形だけで眼中にないトレーナーが多くなったのは、残念なことです。そのトレーナーの声か、その人を教えた人、その人に教わった人の声を聞くとわかります。

 

○なぜ声優、役者に使えるのか

 

 ブレスヴォイストレーニングは、役者や声優の荒っぽい大声づくりで、声を損ねて悩んでいる卵たち(やプロ)に、特に使われています。歌手では本格志向の人が中心でしょう。お笑い芸人が多くなったのは、歌手よりも地として強く、太く、インパクトのある声が求められるようになってきたためでしょう。

 

○リスク回避のための音楽的感覚の必要

 

 私は当初、声そのものを鍛えるためにブレスヴォイストレーニングを提唱していたのです。ところが、歌手なのにあまりに音楽的感覚の不足から、声を損ねる人をみました。そこで、音楽フレージング感覚を吸収できる方法をメニュに入れたのです。

さらに、声楽家と組むようにしたのも、安全安心配慮のためだったのかもしれません。大きく効くものは、誤用に暴走しがちだからです。

トレーナーには、次のような観点を与えています。

1.自らの声やその成長プロセスをすべて理想としないこと

2.違うのどやタイプに対しての方法の限界を知ること、他の方法にも可能性を探ること

3.どんな方法であれ、できることを深めさせていくこと、判断力をつけさせること

 

○基礎のトレーニングとは

 

 表現のためのヴォイストレーニングだったのですが、ヴォイストレーニングそのものを目的とする人が多くなってきました。本当にそれでよいのかと思うこともありますが、一方で、それほどすばらしいこともないと考えることもあります。声は何かを表現するツール、歌やせりふの基礎としてきました。しかし声そのものを目的として簡潔させるのもありでしょう。私は声道として掲げることにしました。

 

6つの違い

 

 基礎トレーニングとして使うのなら、さまざまな目的、レベル、プロセスを踏まえて、考えていかなくてはなりません。私のところにいらっしゃる方でも、いろんな違いがあります。少なくとも1~5について考える必要があります。

1.体、のどの違い、民族の違い

2.育ち、成長の違い、時代の違い

3.言語、発声の違い、母語、リズムの違い

4.日常レベルの声の違い

5.歌唱での声の使い方、優先度の違い

6.音響(リバーヴ、マイク、会場、レコーディング)環境の違い

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