第67号 「発声の最大の問題」
○レッスンの日数
どのくらいのレッスンが必要なのかと聞かれることがよくあります。人と目的、レベルによるので即答できないのですが、「一般的に」考えてみて、最初は週2回、月8回くらいが、身体運動を伴うものに関しては最低限でしょう。できたら2日に一度というのが理想でしょう。身につけるということなら、最初の2年間は、とても大切です。
○出せているから難しい発声
発声というのは、日常化しているがために、スポーツや楽器の練習などと簡単に比較できないのです。トランペット以上に、ひと声を出すのが難しい。出すということでは、すでに出せているために、トランペットよりも難しいのです。トランペットはまともに音が出てから、自分の音を導くのに大変ですが、声はいろんな加工があまりに自由なために、判断が難しいのです。
○発声の始点と終点☆
声における最大の問題は、今のスタンス(立ち位置)を知ることや目的(自分にとっての理想の声)をイメージすることです。そして、始点と終点が共にとてもあいまいなことにあります。
そこに第三者のトレーナーが、その両方を定めきれない、というのは、トレーナーによって違うばかりか、最初から必ずしも正しくつかめるものではないからです(特に終点に関しては)。トレーナーが一方的に教えられるものではなく、共に理解し研究していくべきものです。最初から本人がわかっていることがめったにないからです。
○一声十年
声の弱い人が人並みを越えて、それなりの声と思われるようになるには、十年以上はかかるでしょう。陶芸のろくろ一つでも、その道で人並みになるには十年、プロスポーツ選手でも、10代からおよそ十年かかります。ものごとが成立するには、十年間、およそ一万時間が最低限の目安でしょう。
陶芸で、2、3日で一人で湯飲みがつくれるようになったというレベルと、プロといわれる二十年、三十年のレベルとは、簡単に比較や言及できないのです。ちなみに一万時間とは、毎日3時間で十年です。
○ブレスヴォイストレーニング法の確立
私自身は声については、元が最低の部類でしたから、私の十年があれば、4、5年で才能のある人は、最低レベルには到達できると考えたのです。そこで提唱したのがブレスヴォイストレーニング法でした。
十年以上、試してきた結果として、私自身だけでなくとも、意図的にトレーニングという負荷を課し、声を変えることが可能ということがわかりました。7割にはスムーズにいったのですが、あとの3割は(特に声帯が小さくて、高く、細い声が特徴の人)、声楽併用が有効であったという感触でした。それでそのように改革しました。
○ブレスヴォイストレーニング法の誤用
ブレスヴォイストレーニングに対しては、2、3年くらい、しかも私の指導下でなく、それまがいの方法でやったけど効果がないとか、のどを痛めたなどという人もいます。このような複雑かつ、個人的に状況も条件も差が大きい問題を、単純に正誤の二極だけで考える理屈がわかりません。私の方法は、私独自のものというより、人間の言語音声習得のプロセスを後追いしています。そのようなことがあるなら、急ぎすぎか、無理強いをしたためでしょう。方法よりも判断がよくなかったということです。
○改訂し、改善改良しつづける
私は、初期のテキストからたえず、表現に対して、声は10分の1だから、常に音への感覚を磨きつつ、トレーニングしなくてはいけない旨を繰り返し述べてきました。どの本にも、声やのどを痛めることには最大の警告を発してきました。私ほど、こういう注意をしてきたトレーナーはいないでしょう。私自身、ポリープも結節もできたことはないし、のどを痛めたこともありません。本については、研究所内外の実践から注意事項を追加して、誤解のないように改訂しつづけています。
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