「歌と歌詞とことばとせりふと音声力」 No.336
レッスンに価値をつけるなら、気分で聞いているだけでは務まりません。ことばで言い表せない世界を学ぶにも、ことばは重要です。ただし具体的にしていくほど、マニュアル化されるのが難点です。音楽に関しては、文法や構造をもった言語です。そこをふまえて、私は伝えるようにしています。
「歌詞を大切に」というのとは、異なります。それよりは、せりふをうまく読むと音楽的になるというようなものです。ことばを語ると歌になるのなら、語るように歌ったことばは、歌詞になります。
欧米の音楽は、言語の強弱アクセントと音楽のリズムが一致しているので、矛盾しません。日本の場合、まだ、そこを解決できたわけではありません。しかし、演歌や歌謡曲では、歌手の声の力でかなり消化できていたと思います。当時の歌詞は、言語と音の区別を明確にはできないところにおいていました。感嘆詞やオノマトペの韻などは、ボーダーレスでしょう。しかし、日本人はスキャットよりは、ことばを好んだのです。 音やリズムよりは、意味や節に耳がいったのです。
日本人らしくなるのがレベルを下げていくのは、いつも舶来品をすぐ国産に切り替えようとしてきた日本人のいっときのプロセスです。ほどなくして海外産を凌駕してきたのです。そうした日本人の底力を信じたいところです。音声力の復活を、と。
よい演奏は、よい語りであり、語りのノウハウにも共通します。日本の歌は、ストーリー本位ゆえに言語に近いです。ですから、歌い手以外の人にも、発声以上に学べるところが大きいでしょう。
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