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第76号 「声をこわさないことと統合力」

○トレーニングで声を壊すリスク

 

 日常でも過度にのどを使う、ホコリの多いところで声を出すと、のどを痛めます。カラオケで歌いすぎたり、飲酒で騒ぎすぎても同じです。どんなトレーニングでも、やりようによっては、いやトレーニングをしなくても、のどの状態を損ねる危険はあります。声を壊すといってもいろんなケースがあります。

 ヴォイストレーニングもやりすぎると、のどによくありません。どんなトレーニングでも、時間の長さ、休息の少なさ、健康心身状態などによっては、のどを悪くするのです。体調によっては、トレーニングをさけた方がよいときもあります。その上で、どんなに続けても、のどの状態が悪くならないようになれるのが、ヴォイトレの基礎クリアーといえましょう。

 のどそのものがよくない、のどの状態がよくない、こういう場合、トレーニングができるかどうかを適確に見極めなくてはなりません。そういう力もヴォイトレでつけていくのです。

 

○のどの個人差

 

 私共のところにも俳優、芸人や声優の養成所やスクール、他のトレーナーの個人レッスン、自主トレーニングなどで声を痛めている人がいらっしゃいます。そういうときは、何事も無理は禁物、休めることが第一です。喉の状態を踏まえて慎重に対処します。個人差もあり、体調やのどの調子にもよります。ともかくよくないときは、発声は少なめに、のどを休めることが急務です。ときに音声医を紹介することもあります。

 同じように(同じ年月、同じところ、同じ方法で)トレーニングした人でも、一方はとても上達し、一方はのどを壊すということもあります。のどには大きな個人差があるのです。自分の限界を知り、やりすぎないことと、途中に充分な休憩を入れることが大切です。

 本を読んでトレーニングすることで声を壊す人の多くは、続けて長くやりすぎています。次にトレーニング方法(イメージも含め)の誤解によることが多いです。最速で最大の効果を求めようとして、大声に高い声で無理するからです。

 

○声の管理の注意とアドバイス

 

 何時間も声を出し、とても熱心ゆえに声の調子を悪くする人もいます。

研究所は一人ひとりに目が行き届く個人レッスンですので、安全安心です。

 声が出にくくなったら、それは注意信号です。トレーナーは、そのリスクを避けることを最大限考慮します。危険なときは休ませたり、レッスンを中断し、カウンセリングをします。

 レッスンというのは、一年365日、つきっきりで行えるわけではありません。ですから、自己管理が必要です。研究所では、メールで、担当トレーナーに声の管理に関するアドバイスを求められるようにしています。

 

○声をこわす要因

 

 声をこわす主な原因は、次のようなものです。

1.限度を超えて声を出した(大声、ハイトーン、連続)

2.休めたり水分補給するなど、体調とトレーニング時間での配分を考えなかった

3.自分の合わない方法やイメージを用いて誤用した

 

○役者の基礎の大声

 

 劇団などの大声発声練習は、声楽やポップストレーナーの立場から、ほとんど否定する人が多いです。ですが、私は一理あるのと、人によって効果も違うということで、現場と相手を見ずには否定していません。

 一流の役者が、そこで確かに声が鍛えられたという実績のあるもの、そういう人がそれで身についたと思い、そういう指導もしているところに、第三者としては、介入できないからです。

 そこが合わなくてここに来る人もいます。他人の行なっているヴォイストレーニングは、単純に肯定も否定もできないものです。長期的な基礎づくりに目的をおいているものは、効果がみえにくい時期もあります。悩まれている人が多いと思いますので、それぞれの問題については、個別にアドバイスを求めにいらしてください。

 

○合わないという嘘☆

 

 本人の感覚、もしくはトレーナー、声楽家の判断や理論を元に、ヴォイストレーニングが間違っているという人もいます。これは、「自分には合わなかった」「自分ではうまく取り込めなかった」ということとどう違うのでしょうか。効果をあげるように使えなかったということです。それが本当にあるかどうかは、決定はできません。

 他のトレーナーがそのように教えなかったり、それを否定したからといって、継続的なトレーニングをしてもいないのに、それを根拠にするのは一方的です。

 その偏狭さのためにどこでも、まっとうな人材は育たなくなって久しいのです。小さくまとまったうまい人は多くなったのですが、まっとうな大スターは不在です。

 間違っていないし、うまいけど面白くともすごくもない人ばかりになったのです。日本のJ-POPSも、ミュージカル界も声楽も似ています。海外のステージ、ブロードウェイやオペラを見ればわかることなのでしょう。

 

○研究と面談

 

 私のところでは、およそ8つの音楽大学で指導を受けた声楽家がいます。偏狭な考えでは、共同研究などできません。日本や海外から発声に関するあらゆる教材を集め、ときには、直接伺って学ばせていただいています。

 

 ヴォイストレーニングの方法の誤用は、日本人のベースの声のなさにまでさかのぼります。あたりまえのことがあたりまえになっていないことに、問題をくみとることです。なかには、まれにヴォイトレの必要のない人もいます。そのためもあって、私は、必ずレクチャーをしてから、いろんな意味で可能性からその可否をみてレッスンを引き受けるようにしています。

 

○声と統合

 

 最初は、基礎2年間を必修として受け付けていました。やがて、グループで基礎をマスターさせるには、個人差が大きすぎることと、声だけの育成の場で、あまりに音楽性のなさを目にして、早く作品から入れていく必要を感じました。そのため、発表やライブの場を与えつつ、音楽的感覚を習得させるのを優先しました。

 私が声づくりそのものを受け持った人は、かなり限られ、大半はグループでの音楽的感覚、フレーズ感のコピーレッスンがメインでした。

 次に、私はプロデューサー的感覚で、声よりも歌について、判断せざるをえなくなってきました。90年代以降、歌と音楽の傾向が変わって、アレンジ面でのトータルサウンド的な作品、つまり、声のオリジナリティが、体からの肉声での表現でなく、歌手としての高い声をもつ人の歌唱中心になってきたからです。

 12については、私の基本マニュアルであった、シンコーミュージックの「基本講座」「実践講座」をお勧めします。注意を細かく加え、大幅に増補して出したので、読んでください。

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