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第80号「やり方を教える限界」

○声の使用度合別にみる

 

 声は体に内在しているところから外に出ます。楽器として体のなかにあるということと共に、あなたの感覚・イメージ・意志と一緒に使われています。すでに表現のツールとして個性もくせも伴った声として演じられているのです。

 ですから、新しい声を習得したりつくったりするのではありません。よい面も悪い面も含めて、あなたの声の素材としての可能性と、使い方の可能性を追求しトレーニングで変えていくのです。今ある声でかなりの部分は、実現されています。

声の実力としては、これまでよく使ってきた人ほど有利で使ってきていない人ほど不利ですが、トレーニングでの実力アップの度合いとしては逆です。使ってきた人ほど、よほどのことでないと大きく変われる可能性はなく、使ってきていない人は少しでも好転する可能性(少しやっている人並レベルですが)は大きいのです。伸びしろのことです。

 

〇力がつかないヴォイトレ

 

 声楽家や役者、私のヴォイトレなどはプロも含めますが、ふつうのヴォイトレは、初心者をターゲットにしています。初心者は状態や使い方だけでも大きく変わります。しかし、プロレベルの人は、初期条件である体、感覚を根本的に変えなくては大して変わりようがないのです。

 外国人の有名なトレーナーのトレーニングとなると、生徒となる相手が日本人のプロレベル以上に基本が身についているために、使い方、テクニックが主になります。それゆえ一見、日本人にもすぐにあてはまるように思えるのです。実のところ、大きな錯覚です。結局、声の使い方だけ変えても力はほとんどつきません。

 実際には、初心者に(日本はプロやトレーナーでも声の力では初心者に近い)応用プレイを教えて、本人たちにスキルを習得したつもりにさせているだけです。まさにフレンドリーな関係づくりのプロテクニックです。

 

○ヴォイトレのタイプ別5パターン

 

 次のような5パターンに考えてみるとよいでしょう。

 

1.初心者 A小さな器 a)状態と使い方

2.一般 A小さな器 b)条件と鍛錬

3.声楽・日本のプロ A小さな器 b)条件と鍛錬

4.研究所のヴォイトレ B大きな器 b)条件と鍛錬

5.プロのアドバイス・欧米のプロ B大きな器 a)状態と使い方 欧米のヴォイトレ

 この場合、器とは、声域、声量についてもですが、最終的にはプロの音色(体、呼吸、発声)とコントロール力ということです。状態とは、状態をよくすること、使い方というのは、歌においては音楽的処理となります。

 もちろん、単純にこの5パターンに分けられるものではなく、一人ひとり、けっこう違います。しかし、こういうことを知っておくのは、ハイレベルをめざす人や渡欧(米)を考えている人には、有意義でしょう。

 

○欧米のヴォイトレの結果

 

 欧米にいってヴォイストレーナーからテクニックを覚えたとしても、ほとんどの日本人は、声が大して変わっていません。それは、Aa)、向こうでは初心者(一般ヴォイトレ)扱いとなっているからです。声を聞いて比べてみればよくわかることです。何回か本場で体験してほめられて自信を得てきただけなのです。向こうもビジネスです。それを売りにする人は、歌手にならない(なれない)し、何よりも声は大して普通の人と変わらないでしょう。器用に歌えるけど、声のない人が、ますます器用な歌い方になるか、器用をとって素直な歌い方になってきたというのが、私のみているところです。そこがおかしいと思いませんか。

 

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