« 第83号 | トップページ | 第84号「すぐれているものをとり込むには」 »

Vol.80

○プロミネンス(prominence 強調)

 

 プロミネンスとは、表現を相手に強く伝えることです。強調してはっきりと伝えることを示します。全ての言葉を強く言うと、均等化され、平坦になります。

それを避けるため、特に意味をもつ大切な言葉だけを強調します。ただし、大きく言ったために、発音が不明瞭になったり、何を言ったのかわからなくなるようでは、本末転倒です。

 文のなかでは特に伝えたい言葉があれば強く言うのが原則です。強く言うと、大きく高くなりがちですが、結果的に、しっかりと伝わればよいのです。

ですから、大切な言葉をゆっくりいうとか、太くいうこともあります。短くはっきりというのも、表情や方向を変えていうのも、プロミネンスです。そのために、その言葉の前後を弱く言うとか、前後に間をとることもあります。

 つまり、プロミネンスとは強弱アクセントではなく、語や文章そのものを強めるということです。

 

○強調のトレーニング

 

1)低く、弱く読む

 強調したい言葉を、声を低く弱く、小さな声にして読みましょう。カタカナの言葉の意味を強める気持ちをこめて音読します。

1.音もなく スゥーと 消えたんです。

2.教室で シズカに 自習をしましょう。

3.ここに置いたはずなのに、ナイなんて おかしい。

 

2)伸ばして読む

 一つの音を長く伸ばすと、その言葉の意味が強調されます。

広い海岸→ヒローイ海岸  小さな子供→チーサナ子供

長い坂道→ナガーイ坂道  冷たい雨→ツメターイ雨

 言葉の一つ(形容詞、副詞)を長く伸ばしましょう。その言葉の意味を強める気持ちをこめて音読します。

1.オーキイ 犬がいたら注意してね。

2.ぞうさんは、 ユックリと 歩いていきました。

3.ほら、チャント あなたの本もありますよ。

4.そんな オカシナ話があるものですか。

 

3)速く読む

 言葉を、声を速めて、つまり早口で読みます。言葉の意味を強めるため気持ちをこめて、しっかりと音読します。

1.そうじを テキパキと 終わらせる。

2.めだかが スイスイ 泳いでいるわ。

3.幸い、わたしの勘が ピタリと 当たった。

 

4)間をあけて読む

 間をあけて言葉の意味を強調する方法があります。いろいろな間のあけ方とその効果を学びましょう。

 「わたしは、あの人が、だいすきです。」の文で考えてみましょう。次に読点(テン)のところで間をあけて読むことにします。その変化による意味の伝わり方の違いを感じてください。

1.わたしは、みんなが、だいすき、です。

(「だいすき」の上と下で間をあけて「だいすき」と速く読む。)

2.わたしは、みんなが、だ、い、す、き、です。

(「だいすき」の一つひとつの音をゆっくりと間をあけて読む。)

3.わたしは、みんなが、だーい、すき、です。

(「だいすき」の上と下と、中間で間をあけ、「だーい」と伸ばす。)

4.わたしは、みんなが、だいっ、すき、です。

(「だいすき」の上と下と、中間で間をあけ、速く読む。)

 

○ポーズ(pause 間)

 

 話のなかで音声がない空間、時間を間といいます。そこでは話が休止したり、終止したりしているのではありません。間は、言葉を生き生きさせ、伝えるために、大きな働きをしているのです。

 間のない読み方をしてみてください。あなたがどんなに饒舌でも、早くなるほど、聞いているほうは、疲れるでしょう。聞きづらい人、飽きさせる人は、間をうまく活かせていません。間は短すぎても長すぎてもいけないのです。間は、状況に応じて選択しなくてはなりません。

 間をおくにも、間を破るにも、呼吸の力が必要です。呼吸が間を決めます。

 緩急、強弱といったメリハリのなかでの一方の極が、間であるといえます。

時間、空間、そして、人間、すべてに“間”という字が入っています。間は魔であるといわれます。それだけ重要なことなのです。

 

○声を伝わりやすくする「間」の使い方

 

 間のおき方によって、聞いている人にわかりやすく伝えることができます。間をうまくとるとわかりやすく聞こえます。

 間のとり方を間違えると、伝えることが伝わらなくなったり、意味が変わることもあります。

 間は、息つぎにも関係してきます。体の状態のよくない人の言葉は、とても聞きとりにくいものです。声を送り出す息や間が、聞こえないからです。

 

 このように呼吸は、表現を伝えるために、とても大きな働きをします。呼吸の合っていない言葉は、とても聞きにくいものです。聞いている人も呼吸をしているからです。息の流れを無視しないことです。呼吸や息つぎをうまく利用することによって、声に大きな表現効果をもたすことができるのです。

 間は、プロミネンスと切っても切れない関係にあります。「うん、そうか、あのね」と「うーん…。そうかぁ…あのね」とでは、全く違うのです。

 

○間の練習

 

 間は多くの場合、「こっちを向いてください」「私をみてください」「これから、大切なことを言いますよ」というような意味合いをもちます。間をとるためには、どこかをより速く言わなければならなくなります。全体の流れ、リズムがあるからです。こういうことにも、慣れていくことです。

 

1.言葉の緩急

 /のついているところまで速く、//のついているところまでゆっくり言ってみましょう。

 わたしの姉は、/ここからずっと離れたところに//引っ越しました。

 

2.間合い//で、適当な間をとってください。

  まあ//あんた//どこへ行ってた

 プロミネンスのためのポーズです。ここでは、ブレスをしないことも多いのですか、間をおくことで、次の言葉を際立たせます。つまり、声をとめることによって、次に口から出てくる言葉を目立たせるわけです。

 

3.「わたしは、この人が好きです。」

 これを、「この人が」にプロミネンスをおいて、大きな声で強調すると、まるで何か事件があって、皆のまえで訴えるようになってしまいます。親しい人に「この人が」と伝えるのなら「わたしは」のあとに、きっと間を入れることでしょう。「この人が」を小さく、ゆっくりと言うことによって強調することもできます。意味を正しく伝えることだけではなく、言葉に意味をしっかりと含め、言いたいことを際立たせるために、間が使われるのです。

 

« 第83号 | トップページ | 第84号「すぐれているものをとり込むには」 »

3-1.声の話」カテゴリの記事

ブレスヴォイストレーニング研究所ホームページ

ブレスヴォイストレーニング研究所 レッスン受講資料請求

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

発声と音声表現のQ&A

ヴォイトレレッスンの日々

2.ヴォイトレの論点