Vol.88
〇情報のデメリット
最近の若い人は、年齢よりもませて、判断できるレベルを超えて、たくさんの情報を得ています。そのことで、行動しにくくもなります。
情報が多いため、一つずつ目でみて手間をかけることができないので、選択の判断を情報に任せてしまいます。そして、情報から、結果を予測してしまうからです。
やってもみないのに「やってもムリ」と思うと、動かないのです。そこには、「やってムリなら、無駄、損した」というような、省エネ思考が見受けられます。「ムリなことをやるのは恥ずかしい」と安っぽいプライドに支配されつつあるようにも思います。
声を出したり、他人に声をかけることも同じではないかと思うのです。
○声の力を使う
「あなたは、この二日間、何も食べていません。お金も持っていません。さて、どうすればよいでしょうか」今の若い人にそのように聞けば、「ネットで検索して調べます」と答えるかもしれません。ネットで調べても、あなたのお腹はふくれないでしょう。メールで、食べものを送ってもらいますか。
外に出て、通りがかりの人に片っ端から事情を話してみたら、たぶんそれほどかからずに、あなたは一食分、手に入れているでしょう。
声をかけたからです。それが、あなたのすべきことなのです。
もちろん、1、2回でうまくいかないので、そこでやめると動けなくなります。「そんなことをしても、できない」というしばりになります。もったいないことです。もらうことが目的なら、もらうまで、声をかけ続けたらよいのです。
もらえなくても、「ムリそうなのでやらない」というのと、「やってもできなかった」というのはまったく違います。そこで体験ができたということが大切なのです。その体験から学んでいけるからです。
すると、次にやってまたできなくても、少しは近づけます。そうして学んでいけばよいのです。
○失敗は成功の元
情報はいくら手に入れていっても何も変わらないのです。その情報ですぐできてしまうものなどは、できたといわないからです。ただ、やり終えただけです。できないようなことをできるようになって、できたというのです。
できた、できていない、成功、失敗を一時で決めないことです。時間をかけることです。
できないことをやり続けるのが、人生の醍醐味です。
〇行動しよう、声を出そう
何ごとも成功よりも、失敗したときに味わいがあります。人間関係も同じです。失敗しないと成功もまた味わえません。
成功したときに誰もが楽しく失敗談を話します。失敗せずに成功した人はいないのです。
つまり、試みることに意味があるのです。
成功、失敗と白黒に分けるのでなく、成功も失敗も体験しなかったことがもったいないのです。
だから、行動しましょう。はい、「声を出しましょう」ということです。
〇自分の首をしめる声
首をしめたときの声は、死ぬ間際の声で、殺されるような声ですね。「借金で首が回らない」といいますが、本当に筋肉がこわばり、首が回らなくなるのです。すると声も、出なくなります。押し殺された声になります。
暗い声を元気なさそうに使う、ヒネたふりをする、子どもっぽい声を出す、それらは、すべてあなたの首をしめることになります。
昔、私は、ほとんど風邪が治りかけていたのに、まだ具合の悪い振りをしていたことがあります。声を力なく出していたら、本当に気分が滅入って具合が悪くなりました。
病気に逃げると、多くの人は病気に慕われて、本当に病気になってしまうのです。
○バランスを整える
人間の心身は、とても際どいバランスをとって、ようやく成り立っているので、気を抜き、息を抜き、声を抜くと、しぼんだ風船のようになってしまうのです。そのときには、あなたの体は、まわりにあふれている病原菌のかっこうの棲み家になってしまいます。恐いことですね。
しかし逆にあなたが、気を入れ、息を入れ、声を出したら、風船はパンパンに膨らみ、何ごとをも跳ね返します。気合いを入れ、「イエィ」と叫んでみてください。
暗い声を使いたくなったら、まずニコッとして笑い、その気分を吹きとばしてください。
○ネガティブ感情の昇華
自分に否定的な言葉やネガティブな声を使うのをやめましょう。
言葉のクセはなかなかとれません。まず、声だけでも明るくしましょう。
悲しい歌を悲しく歌うのは悪くありません。他人には、悲しさが伝わります。少し救われます。しかし、プロは、悲しい表情で歌い切ったら、ニコッと笑います。あなたの心の悲しさを少しもちあげて、何かを気づかせ、そっと解消させてくれます。それが芸というものです。
人は、救いを求めるのです。悲しいことを喜んで言ってはなりませんが、声はそれほど暗くする必要はありません。陰気にしていると、幸福も逃げてしまうのです。
〇ストレスで声が出なくなる
マイナスイメージのいきつくところ、発声の機能に何の損傷がみられないのに声が出にくくなってしまうことになります。
ストレスによって、心身にはいろんな変化が生じます。そのなかでも、声は比較的、大きな影響を受けます。ヒステリーで声を張り上げ、その後出せなくなる人もいます。
落ち込んだときの声は、暗くこもってしまいます。心の壁を巡らしたことを、声はまわりに伝えてしまいます。
「一人にしてくれ」というときには、声は出しません。声からその人の状態がわかります。
でも、こういうことを笑いとばすことでよい方向へ早くもっていけることもあります。
○ストレスの効用
ストレスは、生きていくために必要な刺激です。ストレッサーといいます。それをプラスに受けとめるかマイナスに受けとめるかは、あなたしだいです。受け身になるほどに、つらいのです。
ポジティブになると楽になり、楽しくなります。人の心身は、そのようにつくられています。
あなたはジェットコースターは好きですか。動物は、その事情がわからないから、もし乗せられたらパニクって、大嫌いになるでしょう。まるで拷問のようになります。
あなたも嫌いなら、絶対に乗りたくないでしょう。好きでも具合がとても悪いときは、つらいでしょう。自ら選んでストレスを受けるのは快感ですが、強いられて受けるのは不快なのです。
ジェットコースターで手を上げ、声をあげ、楽しむ人は、そのストレスで大きく心身を解放しているのです。ためたら暗くつらくなることが、声で発散させることで、楽しくなるのです。
〇ダイエットは声に悪い
ダイエットは、声によくないのですが、スタイルと声と、どちらかを選べといわれたら、多くの人はスタイルをとるのではないでしょうか。
しかし、過度のダイエットは健康のためにも声のためにもよくありません。
声のよいのは太ったオペラ歌手と相場が決まっていました。太れば声がよくなるのではありません。しかし、体が楽器ということでは、体格は関係します。大太鼓と小太鼓では、迫力が違いますね。
しかし、声は、迫力だけで勝負するわけではありません。深い音色ではチェロにかなわないヴァイオリンも、オーケストラでは重要なポジションにあるのです。
かつては体が大きく強い男たちの時代でした。もちろん、多産の時代は、女性も大きなお尻が求められたものです。日本では少子化がとどまらず、もう遠い時代となりましたね。
とにかく、魅力的な声は、健康が売りもの、健康な体がベースです。声によい食べものは諸説ありますが、栄養価の高いものです。
〇考えないから、ややこしくなる
何ごとも、常に主導権は、自分にあると思うことです。嫌がらせを受けても、無理してすぐ心を閉ざしてしまうのはよくありません。気にせず放っておけばよいし、それでやまないのなら、原因や対抗策を考えることです。
それは、自分のどこが悪いかと反省するためではありません。まずは、事実を客観視するためです。もしかすると、嫌がらせだと一方的に思い込んでしまったのかもしれません。何ごとも決めつけ拒まないことです。真剣に考えることです。ことばにすることです。相手に言うことかどうか、どういえばよいのかまで考えて行動することです。
○声と人間関係
新聞や雑誌、TVのニュースなどの情報だけで判断して行動するのは、あなたの人生を狭くつまらないものにします。
あなたの声、言葉一つで、およそですが、どんな人とも良好な関係を築くことも可能です。成功した人は、こういう小さなことを一つずつ、自分のためになる人間関係に転じる努力を惜しまなかったと考えてみてください。
世の中に出て、何年かは、人に振り回されてみるのも大きな勉強です。充分に人間の嫌なところ、くだらなさも体験し、実感してください。その時期が過ぎていつまでも、一生、振り回されていては、先もありません。あなたから切る必要はありません。すべての人にうまく関わっていこうとは考えなくてよいのです。それでも、あなたは生きていけるでしょう。はっきりとことばにして、自分の考えをまず自分に言ってみましょう。
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