Vol.91
○コンサートに行かない理由
私は、あまり日本のコンサートに行かなくなりました。「何でも顔を出さなくては」という時期は終わり、どうしても行きたいと心を動かされるものだけに、しぜんに行こうと思い始めたからです。人生は短いのですから、すべてのライブなど、みられません。
もう一つは、旧態依然としたシステム、客席に詰め込んで、一方的にステージから送りつけられるスタイルに閉口してきたからです。開場時間まで行列して待って、開演したら終わるまでは出にくい。選択の自由が少ないことに窮屈になってきたのです。年寄りの我がままというものですが。
○本物とは、関係において問う
さて、本物というこというなら、どんなに人気があっても、多くの人が好きでも、私にとっては、それだけでは全く本物というものではないわけです。
だからといって、そのコンサートで思い出に浸ったり、涙を流す人たちを否定しているのではありません。
そういうことが、日本の歌ではすっかり少なくなってきた私には、アーティストとファンに成り立つそういった関係は本物で、うらやましいのです。つまり、本物とはどこかにあるのでなく、そこでの関係性にあります。本物の仕事も本物の恋愛も単独であるわけではないのです。あなたと誰かとの間に、それが生じることがあるということです。
〇本物のもつエネルギー
私もいろんな創造活動をしています。イベントやレジャーではくつろぐ中でも、息抜きとしては、音楽は専門ゆえに、くつろげないのです。私はそれを職業に選び、しぜんに楽しむことを相当に奪われました。
私にとって、イベントとライブは、大きく違います。イベントはそこで楽しませ、すっきりとさせてくれます。しかし、ライブは明日へのエネルギーまで与えてくれるのです。
レジャー、イベントは、終わったら疲れますが、本物のライブは、その日もゆっくりと眠れない、何かやらなきゃとエネルギーまでくれます。しかも次の日からを充実させてくれるのです。それが私にとっては、本物なのです。
○もう一歩の声
恋や愛にもいろいろあります。どれが本物でどれが偽りだと野暮なことを言うつもりはありません。二人の関係に他人は口をはさめません。
でも、あなたが人生をよりよく生きていくなら、それを見分ける必要はあるでしょう。本物とは、美、永遠、真理を引き出すものです。それゆえ、大きなエネルギーが与えられるのです。
恋すると美しくなる、これは恋した瞬間から、それをかなえるために美しくなろうと行動するとともに、美しくあろうと努力するからです。自分の外見にも内面にも、目が向きます。服、化粧、持ち物、表情、すべてに一層、気をつかうことになるでしょう。これは、大変ですが、楽しいことなのです。だから、美しくなるのです。
もう一つ、内面に踏み込んで、そこで声にまで気をつかうかどうかを考えてみてください。運命の別れ道は、常にもう一歩、踏み出すかどうかにあるのです。
○声の潜伏期間
関係において成り立つということは、本物になるということでなく、その関係においての本物度です。
タイミングというのも大きく左右します。そのズレによって、運命が変わります。せっかく巡り会っても、時期尚早ということもあります。あなたがどんなに思っても、相手が100パーセントかけて打ち込んでいる関係が別にあれば、無理でしょう。人間のパワーというのは、それさえ乗り越えてしまうこともありますが。
よい恋をしていたら、あなたはよくなっていきます。表情もよくなっていきます。その恋が破れても、叶わなくても、次の可能性を大きくしてくれるのです。声についても少し複雑なところがあります。何かをかなえるために、すぐにうまく働くとは限りません。人によって、得手不得手のあるように、個人差も大きいのです。
〇大人になれない日本の女性とその声
あなたは年齢を重ねることを楽しみにしていますか。きっと嫌でしょう。なぜなら、日本では若い方が好まれるからです。若いほどよいというような価値観が、あいかわらず、はびこっているからです。
これは欧米などの若者が早く大人になりたく思い、若い女性が早く年齢を重ねたく思うのとは逆です。
海外に行くと、中高年のカップルがメインです。本当にセンスよく、よいものを着て、カップルとして人生を楽しんでいます。大人の恋愛というものの粋を楽しみます。それに対して日本の中高年というのは、何か今一つ、みすぼらしいからなのですが、この頃は、そうでない人たちも多くなってきました。人は未来へ生きるのですから、年齢とともによくなるのは、とてもよいことと思います。
○ロリコンと少女の声
困ったことに、日本の男性はそうでない一握りのいい大人もいますが、総じてロリコンなのです。
これが声の文化、女性の声の使い方にも大きな影響を与えています。その代表が、アニメの主流の高くかわいい声です。
もう一つは、「ウッソォ~」「ホントー」「ヤダー」の類です。私はこれを、キャピキャピ声といっています。ぶりっ子風の声ともいえます。子どもが遊ぶのに似た所作や発声を伴います。1980年代、山根一眞氏が変体少女文字の研究をしていたとき、私は「変体少女発声」の研究をしていたわけです。
〇キャピキャピ声では愛されない
このキャピキャピ声に対しては、
1.そういう声をわざと使っている人
2.使っているのに自覚のない人
3.嫌っている人
大きく分けてこの3タイプがいます。2のタイプが増えています。媚びている、甘えているだけの声ですから、これは大人のセクシーヴォイスとは、全く違います。
幼さの自己演出となれば、表現力といえなくもないのですが、ぶりっ子の元祖、松田聖子さんは、女性から依然、大きな支持を得ていますが、そのショーは、まったく大人のものです。
○日本のアニメ声
日本のアニメとともに、こういうつくり声も、海外に出ているのかと思うや、海外では、アニメの吹き替えでは、しっかりとした声になっていました。
○海外進出できない声
ちなみに日本人の歌の海外進出は難しく、そのレベルはまだ王・長嶋時代の野球以下、当時の日本のサッカーのレベルです。
私はカラオケの普及活動に頼まれていったとき、「アジアに日本はカラオケとガキの声を広げている」といって、ひんしゅくを買いました。確か、日本の少年隊をまねて、隣国に消防隊というのが出た頃です。日本のカラオケが進出すると、アジアの歌のレベルが落ちると言われていたのは確かです。
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