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Vol.94

○声がよいということ

 声がよいという自信があると成功します。もちろん、声がよくなくとも、声の使い方がよい人もいます。さらに、声も声の使い方もよくないのに、声の感じがよい人もいます。どれでもよいのです。

A.声のよさ(生まれつきの声、育ちの声)

B.声の使い方のよさ(教育された声)

C.声の感じのよさ(受け手の感じる声)

 多くの人は、声のよさは生まれつきと思っているかもしれません。しかし、それは楽器としてのできにすぎません。さらに、よしあしといっても、体質などと同じく個性です。

A~Cがよくないのに、信頼できる印象を与える人もいるわけです。

 

○これからの研究

 声楽なら声の評価もありますが、この「個声」については、基準は設けられていません。顔や体型やファッションほど研究もなされてこなかったのです。

 大切でないからではありません。

 人間は文字を書くまえから絵を描きました。人相書きなども、そう難しくなかったでしょう。しかし声は、近年、蓄音機の発明からようやくスタート、そして一般の庶民にはレコーダーが普及するまで、聞き返すことも残すこともできなかったのです。つまり、手をつけにくい未開の分野だったのです。

○声の使い方と感じ方

 

 声のよさに個性はあっても、優劣はないとわかりました。それではどこで判断するのでしょう。

声そのものを変えることよりも簡単にできることとして、声の使い方というのがあります。歌なら、発声や歌い方のことです。役者なら、せりふ、言い回しです。アナウンサーなら、アクセント、イントネーション、発音と、それぞれに訓練があります。

 一方で、もっと大切なのは、声の感じ方です。本当に声について決めるのは、発声している側でなく、聞き取る側であるということを、ここでもう一度、確認しておきましょう。

○声に反映されるもの

 

 声を聞くと「何か元気ないな」「悪いことあったのかな」など、わかります。その人に不幸があると、体に出ます。表情、眼、姿勢、体つき、動作、そして声に表われるのです。

 以前は羽振りのよかった人が逮捕されると、TVで別人のように暗い顔をしています。暗い声になっています。報道でそういうのを選んでいるのもありますが、誰でもそうなるものでしょう。

 子どもなどは、すぐわかります。“今泣いたカラスがもう笑った”と、表情の変化のスピードの速さや幅の大きさに驚かされます。かつて、私たちも子どもの頃はそうだったのです。

 あなたはどうでしょうか。笑ったり笑い転げたり、泣いたり泣き腫らしたり、そのときの声は、それに反応していますか。

 

○声の魔力

 

声が出るのは、とても複雑なメカニズムです。声帯は、どんな楽器よりすぐれています。わずか2センチほどで、これだけの自在な音を扱えるものを、人間はつくり出せるでしょうか。

 声でのコミュニケーション術、それは、言葉とともに、人間の獲得した最大の武器であり、芸術です。わずか2歳の子がいくつかの言葉だけで会話します。いえ、赤ちゃんは、言葉もなく、声だけで自分の意志をまわりに伝えています。大変なことなのです。

〇愛される声になる方法

 「○○の声」と言われても、わかりにくいときがあります。そういうケースでは、逆の声を考えましょう。

たとえば、「愛される声」に対して「愛されない声」とは、どんな声でしょうか。

 つまらなそうな声、ぶっきらぼうな声、平坦な声や、事務的な声、官僚的な声、つまり、表情のない声ですね。

 おどおどした声、落ち着きのない声、あわてたような声、このあたりは、ときに魅力的ですが、いつもそうであると、ついていけず疲れそうですね。

 暗い声、こもった声、鼻に抜けた声、つまった声は、あまりよくないでしょう。

 なまめかしい声、ハスキー声、悪女っぽい声、セクシーな声、このあたりは好き好きでしょうか。

 一方、愛される声は、やさしい声、明るい声、元気な声、さわやかな声など、これもいろいろと言えますね。

 声そのもののよしあし以上に、声に心を込めて使うこと、そしてきちんと相手の胸に届けること、キャッチボールのできる声が大切です。

○大切なことを伝える声

「どんな声を使えばよいですか」というのは、すべて相手の立場から考えてみればよいのです。カン高い声、すっとんきょうな声で大切なことを告げる人はいません。そう、大切なときは、大切なことを伝える声を使うのです。

 どんな声ならあなたは嬉しいですか。言葉にもよると思いますが、TV番組ふうにいうなら、花束を渡されて「お願いします!」。そのとき、顔、スタイル、態度、他にもいろんな条件もありますが、それをだめ押しするのが、そのときの声から伝わるものでしょう。

 世の中では、声の勢いで思わず返事して、結婚してしまったということもあるでしょう。タイミングと合った声、それが適切な言葉に伴ったとき、思わぬ効果をあげるのです。

武器は言葉だけではありません。声という魔法の力を手に入れましょう。

〇声のセックスアピール

 人をとりこにする声、それは、その道のプロ、映画の俳優が教えてくれます。あるいは、歴代の歌い手にもみてとれます。

 人を好きになると、人は外見上も変わります。動物では発情のシーズンとして訪れます。人間は、それがいつでも訪れるようにし、恋という言葉に置き換えました。

 まなざし、しぐさ、そぶり、子どもが大人になる一時、声も色っぽくなります。恋できれいになる、恋で魅力的な声になります。色気とセックスアピールは、体に表われます。特に、声には、大きく表われます。目がうるおって、声にも艶が出てきます。性腺刺激ホルモンが活性化すると、声がセクシーになるのです。

〇文化としての声の装い

 

 たとえば、寝起きの声はセクシーです。なぜなら、鼻声になるからです。異性をひきつけるのに、自然が用意した体のメカニズムです。

 「色気を振りまいて」に、目くじらを立てないでください。ファッションや香水にこだわるのも同じことなのです。性愛をストレートに出さずにつつみこんだ、それを文化というのです。

 オシャレしてきれいになるのが、いけないことでしょうか。性的魅力―、それに対して、ネガティブな考えを捨てることです。

○受け入れてみる

 

異性にもてない人ほど、アプローチをこばむといわれます。もちろん慣れもあります。声をかけられて、あなたはどう対応しますか。ちょっとした猥談でも、適当にあしらえるのが魅力ある大人です。何もかも拒んでは、どんな関係も発展していきません。

 心を開き、いろんな経験をもっておくことも大切です。コミュニケーションをとらなくて、自分に合った人が見つけられることはありません。

 近所でも職場でも、身近なところにいる人は、確かに似た育ち、考え方、生き方を選んでいるのですから、あなたと似ています。うまくいくかもしれません。

 でも、本当にふさわしいかどうかは、違うタイプの人を知ってからこそわかるのではないでしょうか。いろんな人に適度にモテているのも、余裕になり、魅力となり、確かな判断力をつけられることになるでしょう。

 逆に考えてみましょう。あなたしか知らず、あなただけを追い求めている人を、あなたは好みますか。あなたが好きなタイプでなければ、ストーカーのように恐く思いませんか。

○知ったあとに

 

どちらにしろ、決め手は、コミュニケーション力です。それは会話がメインです。会話は最初は知識、お互いの共通の話題を言葉で交わし、知り合っていきますね。そこからいろんな体験を共有して、その反応で本当のところを知っていきます。

 話すことや体験することが、一段落したとき、待っているのは、存在感の世界です。そこは言葉も体験もいらず、イメージを思い浮かべたり、表情を思い描いたりして、コミュニケーションします。それを引き出すのが声なのです。

〇出会いを引き寄せる声

 「出会いを引き寄せる声とは」と、聞かれたことがあります。引き寄せる、「ほらほら、ほらーあ」って、それではホラーですが。

相手を惹きつける匂いってありますよね。そう、ウンコと似た成分の香水。動物や子どもは、ウンコの匂いを嗅ぎます。「色っぽい声だね」っていうのは、まさに原始的な本能を刺激する、セックスアピールのある声なのです。

それをいつも出しているなら、ただの動物、しかし、動物は、発情期以外でそんな信号を発しません。

あなたも仕事は仕事、生活は生活、遊びは遊び、それぞれのモードの声でよいのです。

 恋愛モードでは、艶めかしい声をチラッとみせるのです。声チラ。そこで相手はドキッと、そしてメロメロとなります。あなたの声で。桃井かおりさん、大原麗子さん、竹下景子さん、声に色気がありましたね。

○イタリア人の人生観

 イタリア人は、人生の価値を愛すること、歌うこと、食べること、この三つに見い出しています。愛することは、声ですねえ。歌うこと、これも声です。食べること、これも喉を通ります。もちろん、これはおいしいものを味わうことですから、少し違いますが。人はパンのみにて生きるにあらず、芸術好きなイタリア人は、グルメであり、オペラ、そしてアモーレを楽しむのです。

○日本人の文化

 

 翻って日本人はどうでしょう。あなたはどうでしょう。

 見合い結婚で“沈黙は金”、“質素、契約を旨とする”を、かつての日本人は美徳としていました。そして、バブル期に“ぜいたくは敵”から、“ぜいたくは素敵”になった。

 恋愛での結婚形態は、人類史上、特殊なことで、ようやく最近、ポピュラーになってきたばかりです。西欧でもかつては許されなかった。今も、多くの国では、まだ許されているものではありません。

 その自由の獲得がものごとを大変にしているところもあるのです。

 しかし、日本人も恋愛するようになりました。アモーレ、愛し合ったら結ばれやすくもなる。カンターレ、そして、誰もかも、カラオケで歌っています。

 マンジャーレ、グルメ、これはもう、イタリアを超えたでしょう。

 こうして、口や口の中や喉が豊かになっていくのは、私も嬉しいです。あとは、あなたから発せられる声がよくなれば……。

〇世界で一番よい声を目指して

 日本人は、それなりに偉大で、自分たちのもっとも弱いところを努力で解決してきた国民だと思います。

声が出なくて歌がへたなのを、カラオケなんかつくってしまった。声も歌もだめなのに、じょうずに聞こえる魔法のキカイ。こんなもの日本人以外は、考えつきません。しかも大きなビジネスにしてしまった。音響技術も、ピカイチでしょう。

ですから、私もいつか、日本人の声も世界一にすることができるような夢を、ずっとみているのです。世界に名の知られる歌手は、まだ、いないけど、そのうちどんどんと出てくるようにと。

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