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「土俵を創る」

○土俵を創る

 

 私なりに経験上言えるのは、人生捨てたものでなく、個性や才能は一本道でない、多様なものだということです。スポーツのようにフィールドが決まっていると100メートル走でも、最初からそこそこに速くないと、生涯どう努力しても選手にはなれません。しかし、アートは、同じでないものを創り出すところでの勝負、いえ、勝負というのは同じ土俵ですから、それでもありません。真の創造は、土俵を選びません。土俵を創り出すことです。声もまた、大きな自由と可能性を得ているということです。

 

○イメージを扱う

 

 私たちトレーナーは、相手の喉や体を直接、触れて動かそうとしているのではありません。イメージを介してコントロールします。迷ったりわからなくなるのは曖昧なイメージのためです。レッスンは、それを一時的にしろ、明瞭に定めていきます。

 医者のように、直接、手当や手術するなら患者は動かなければよいのです。武術もスポーツもイメージの力が大きいのですが、多くは実践を伴い、身振り手振りを交えて伝えます。楽器も、触って覚えていきます。

 イメージは、ことばを介していくので、ときに整合性がつかなくなることがあります。そこを流せるか、こだわるか、それが、「ことばで考える頭」か、「イメージで動かせる体」かの大きな分かれ目です。「頭に邪魔させるな」ということです。

 

○できない

 

 「できない」とときおり、生徒がトレーナーに言うのを聞きます。「それで」と思います。できるのであればトレーナーは不要です。少しずつできていく、それは、できていないということを少しずつ明確にわかっていくことからです。そこから、どこまでどうできていないのかという細部へ入っていくことがレッスンの進化です。どうすればできるのかが頭でなく、体でわかってくるのです。

 「これをやってください」と言うと「わかりました。やりました。次は」という人もいます。これは例えれば、蕎麦打ちのように思ってください。わかって打ったつもりのあなたはの蕎麦は、他の人は食べたくないレベルの蕎麦でしょう。

 「終わりました」けど、「できていない」のです。「わかりました」けど「できていない」のです。そのなかに一本でもハイレベル、通じるものがあれば、あとは時間の問題です。その一本からスタートにつくというのが私の考えるレッスンの一歩です。体を少しずつレベルアップしていくと、しぜんになるのです。イメージの発露を邪魔するものもイメージです。のどでしゃべろうとするほどに、のどは固まるわけです。

 

○ゼロに戻す

 

 声が通るのは、相手にきれいに技がかかったような感覚でしょうか。多くのケースでは、そこまでにかなりの準備が必要です。心身がいつも動けるような柔軟な人は、ほとんどいません。

 1日のなかで一番よい状態を知りましょう。まずはレッスンの場にそれをもってこられるようにします。そういうことができるようになると、これまでのマイナスからがゼロからになります。楽しくて笑っているような状態、これを指摘だけで、喜んでくれる人が多いのは、驚きであり意外なことです。

 他のスクールのトレーナーなら、ここが目的、到達点です。その声でせりふ、歌でOK。声はOKだから、すぐに歌に入りましょう、できあがり、となるのです。

 本当は、そこはゼロ地点です。そこから真っ直ぐ上に行くのはよくありません。しばらくは、根をきちんと深く伸ばすことです。個性の発現は迂回するようになっています。その回り道に味がある。それをおおらかに見過ごしてあげないと、よくてもトレーナーの二番煎じのような声と歌になります。本当に高いレベルに行かせたければ、トレーナーに必要なのは、指導より忍耐なのです。

 

○教え方に合わす

 

 器用というのは、人間的に、ということなら、どのトレーナーともうまくやれることです。案外と仕事の力に近いのですが、うまくレッスンの指導を取り入れて活かせるということにもなります。つまり、教え方に合わせられる才能というのがあるのです。

 その上でトレーナーから評価がよい。となると…。評価というのは2つあって、今の力があるということと、吸収力(伸びしろ)があるということです。

 レッスンということでは、後者が望ましいわけです。しかし、どちらもないよりは何でもあった方がよいわけです。教え方に合わせるのがうまいのと、それに振り回されるのは違うので、そこはチェックします。

 私としては、あまりにトレーナーの教え方にうまく合ってしまう人こそ、もう一人、真逆のタイプのトレーナーを勧めるようにしています。大きく伸びたいのなら、逆タイプのトレーナーをも吸収できる器をつくるのです。

限界を打ち破って広げていくのと、限界を踏まえてそのなかでギリギリに詰めていくのは、レベルだけでなく段階が違うのです。勝負までの時期とかタイプでも違うのです。

 

 

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